「腹膜がんがステージ3」に進んだ時の”余命”は?進行して現れる症状も医師が解説!

腹膜がんは卵巣がんと類似していますが卵巣がんとは異なる性質も持ち、希少がんのひとつと数えられることもあります。初期に自覚症状がほぼないため、気付いたときには病気が進行しステージ3となっているケースもみられるがんです。
では腹膜がんのステージ3と診断されたときの生存率はどのくらいなのでしょうか。症状、治療法と併せてみてみましょう。

監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
腹膜がんとは
腹膜がんは腹膜から生じたがんであり、卵巣がんの類縁疾患です。漿液腺性がん(卵巣がんに多いタイプの組織型)ではあるが卵巣がんではない場合に、腹膜がんと診断されます。卵巣がんより予後不良であるなど、卵巣がんとは異なる特徴を持っています。
腹膜がんステージ3の余命と生存率
がんの余命を知る指標に生存率があります。例えば、5年生存率といえばがんと診断された患者さんが5年後に生存している確率です。腹膜がんの5年生存率は卵巣がんとほぼ同じとされ、ステージ3ではおよそ46%とする統計が出ていますが、薬物療法の進歩などで生存率は改善される傾向にあります。
腹膜がんステージ3の症状
腹膜がんではリンパ節に転移しているか、骨盤外に転移している状態をステージ3と呼びます。腹膜がんは初期にはほとんど症状が現れませんが、病状がステージ3まで進行すると以下のような症状が現れてきます。
もしこれに似た異常に気がついたときには、早めに医療機関で受診してください。
腹部膨満感
腹腔内を満たしている腹水は通常の状態では一定量が保たれていますが、がんにより機能不全を起こすと異常な体液貯留が起こります。正常では50cc程度のものが末期には20リットル程になることもあり、そのため腹部がふくれあがり、腹部膨満感となって知覚されるのです。
スカートやズボンがきつくなったことで気付くケースもよく見られます。
腹腰痛
腹水が溜まることにより腹部が圧迫されて、腹部や腰に痛みがみられます。また腫瘍の圧迫によっても腹腰痛が発生します。
不正出血
頻度は高くはありませんが、卵鞘腫瘍によりホルモンが生成され、不正出血がみられる場合があります。
食欲不振・体重減少
がんにより腹水が異常にたまると、消化器に障害が現れ食欲不振を引き起こし、体重減少につながります。また、がんが進行すると身体が摂り込んだ栄養をがんが吸収してしまい、体重が減少する場合もあります。
腸閉塞
腹膜がんが成長して漿膜(外側の表面)に出ると、表面から剥がれたがん細胞が腹腔のなかに散らばって転移巣を作ります。これが腹膜播種です。
この状態になり散らばった転移巣がさらに成長すると目に見えるかたまりとなり、小腸や大腸の通りが悪くなる腸閉塞を発症するケースがあります。
腹膜がんステージ3の治療法
腹膜がんは初期で自覚症状がなく発覚したときには病状が進行していがちな病気です。そのため治療も多臓器摘出など大がかりとなる傾向ですが、治療法は日々画期的な進化を遂げており、有効な方法の開発が進んでいます。
腫瘍減量術
予後を良好にするために、術後の残存腫瘍径は小さければ小さい程いいとする考え方のもと、手術により病巣の徹底的な摘出を目指す方法です。肉眼で確認できる腫瘍はすべてもしくは可能な限り、摘出をめざします。
病状によっては消化器など多臓器も摘出する場合があり、術後は化学療法が施されます。
腹水濾過濃縮再静注法(CART)
がんにより腹腔にたまった腹水を注射針で抜き、そこからアルブミンなどの身体に必要なたんぱく質などを回収して点滴で身体に戻す方法です。
CARTだけでがんが完治するわけではありませんが、大量にたまった腹水が取り除かれると、心臓への負担の軽減・むくみの解消・臓器や血管への圧迫の除去がなされ、寝たきりだった患者さんでも自分で立てるまでに回復します。患者さんの状態がよくなれば、寝たきりになり余命数週間と言われていた患者さんでもふたたびがん治療と向き合えるでしょう。
化学療法
抗がん剤を用いた治療で術後に補助療法として用いられ、手術の際に残存した病巣の消失や再発防止が目的です。
また、がんが進行しており手術を行っても腫瘍が取り切れないと判断されたり多臓器摘出が予想されたりする場合に、あらかじめ腫瘍を小さくし取り除きやすくするために術前に施されることもあります。抗がん剤ではパクリタキセル、カルボプラチンが使用されます。
免疫療法
身体が自然に持っている防御機構をいっそう強化し、がん治療に役立てようとするものです。例えば制御性T細胞は本来自己免疫病を防ぐために自己に対する免疫応答の抑制をしていますが、がん細胞はこの制御性T細胞を利用して、免疫系からの攻撃を回避しています。
この制御性T細胞のコントロールで、がんに対する免疫応答を強化し、有効な免疫療法を開発する研究が進められています。さらにTCR遺伝子治療とよばれる、T細胞にT細胞受容体遺伝子を導入してがんを特異的に攻撃するT細胞を体内に戻す治療法も開発中です。
また、白血球成分に含まれるNK(ナチュラルキラー)細胞は高いがん細胞殺傷能力を持つことで知られていますが、その増幅や活性化にはまだ課題があり、NK細胞による治療効果を引きあげるべく世界中の研究者たちが課題の克服に取り組んでいます。
緩和ケア
治療や延命を目指すのではなく、病に直面している患者さんや家族のQOL(生活の質)向上を目的とするケアです。化学療法や放射線治療など生存期間延長のための治療と組み合わせて行われ、痛みの緩和や身体的、心理的苦痛の予防やケアを行います。
痛みをやわらげる方策には、鎮痛剤や医療用麻薬の投与・放射線治療・神経ブロックなどの処置が施されることもあります。
腹膜がんステージ3の余命についてよくある質問
ここまで腹膜がんステージ3の生存率・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「腹膜がんステージ3」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
腹膜がんステージ3は完治しますか?
以前がんは治らない病気と言われていましたが、現在は治療方法の大幅な進歩により早期発見されたがんは完治もできるようになりました。ステージ3となり転移しているがんに関しては完治はむずかしいかもしれませんが、完全寛解とよばれる、症状や検査での異常が見られなくなる状態に至ることは可能です。完全寛解では再発の可能性が残りますが、維持療法や観察を続けるなど再発を防ぐまたは再発を早期に発見する方法があるので、医師とよく相談をして治療後のケアに注意を払うことが大切です。
腹膜がんを早期発見するポイントを教えてください。
腹膜がんは卵巣がんと同じく検診の確立がなく、初期では自覚症状がないため早期発見が困難な危険な病気です。多くは腹水がたまることによる腹部膨満感や腹腰痛により発見されるため、気がかりな点があるときには早めに医療機関を受診してください。正式な診断は内診・腫瘍マーカー・画像検査・超音波断層検査などを経て、開腹または腹腔鏡による腹腔内の観察やがん組織の一部を採取したのちの病理検査で明らかにされます。
編集部まとめ
今回は腹膜がんがステージ3に至った場合の余命と生存率、症状や治療方法を解説しました。腹膜がんがステージ3まで進行していても、手術と化学療法で完全寛解する例は多くあります。また治療方法や薬物療法も日々大きく進歩しているため、予後のさらなる改善が期待できます。
腹膜がんは早期発見が難しい病気ですが、がんの治療には少しでも早い受診がなによりも大切です。少しでも普段と違うおなかのハリや腰痛などが現れた場合には、ぜひためらうことなく検査を受けてください。
腹膜がんと関連する病気
「腹膜がん」と関連する病気は2個程あります。
各病期の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
腹膜がんは病理学的には卵巣原発漿液性腺癌とほぼ同じであり、化学療法の有効度が高い点も同じです。そのため卵巣がんに準じる扱いをされることがあり、欧米では両者を区別する必要を認めない意見もあるようです。また卵管がんも卵巣がんと区別がつかない事象もみられる類似した病気です。いずれも初期は自覚症状がなく、早期発見が困難ですが、普段からご自分の身体とよく向き合って、わずかな異常も見逃さないことが大切です。また卵巣がんの20%は遺伝性であるとする説もあるため、身近に卵巣がんを発症した例がある場合は特に気をつけてください。
腹膜がんと関連する症状
「腹膜がん」と関連している、似ている症状は9個程あります。
各症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
「腹膜がん」が見つかりやすいのはやはり腹水がたまることによる腹部の膨満感やハリの自覚です。スカートやズボンが不自然にきつくなったなどの症状が出たら腹膜がんを疑ってください。早めの受診がなによりも大切です。
参考文献



