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糖尿病性神経障害の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27
糖尿病性神経障害

糖尿病性神経障害とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

糖尿病性神経障害とは

糖尿病性神経障害とは高血糖により引き起こされる末梢神経障害です。

糖尿病の代表的な合併症(糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症)の一つです。

手足のしびれや感覚鈍麻(感覚のにぶさ)、便秘などの症状が出現します。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

糖尿病は自覚症状の乏しい病気ですが、糖尿病性神経障害は糖尿病の代表的な合併症の中で最も早く症状が出現します。

糖尿病の病状によって発症時期はまちまちですが、糖尿病を放置した場合は糖尿病を発症して数年後に症状がでることもあります。

糖尿病性神経障害の症状

運動神経、感覚神経、自律神経などの全身の末梢神経が障害を受けることでさまざまな症状が出現します。

手足の先から広がるしびれや痛み、感覚のにぶさを自覚することが多いです。また、便秘や排尿障害、起立性低血圧(立ちくらみなど)、勃起不全などの自律神経障害もみられます。

頻度の低い症状として、眼球運動障害(目が動かしづらくなること)による複視(ダブって見える)、顔面神経麻痺(顔の動きが悪く曲がってしまう状態)などが出ることもあります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

糖尿病性神経障害では自覚する症状以外に、感覚神経の障害によって、本来自覚するべき痛みなどの症状に気づかないことも問題になります。

痛みに気がつかないことで、心筋梗塞や末梢血管の血流低下、褥瘡(床ずれ)などの発見が遅れ、病状を悪化させてしまう場合があります。

糖尿病性神経障害の原因

糖尿病性神経障害は高血糖に伴う代謝異常、血流障害、神経再生障害が原因と考えられています。

代謝異常による活性酸素(体内に取り込んだ酸素のうち、酸化させる力が強力に変化したもの)の増加や血流障害による低酸素、神経栄養因子の産生低下により神経が障害されて再生されないことで症状が進行します。

高血圧や喫煙、飲酒なども糖尿病性神経障害の悪化に関与しているといわれています。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

糖尿病は血液中のブドウ糖を処理しきれなくなり、血糖値が高くなる病気です。

ブドウ糖は脳細胞の主な栄養素であり、体のエネルギー源として重要です。

しかし、高血糖は活性酸素の産生を増やすことなどで周囲の細胞に障害をあたえます。

血管内皮障害による毛細血管の血流低下が、糖尿病合併症の大きな要因の一つです。

また、糖尿病性神経障害ではアルドース還元酵素により、グルコースがソルビトールに変換されて細胞に蓄積することも神経障害の大きな原因と考えられています。

糖尿病性神経障害の検査法

神経診察では、腱反射や触覚、振動覚などの低下があるかどうか評価します。

血液検査で糖尿病の程度を、神経電動速度検査で神経障害の有無を評価します。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

糖尿病性神経障害の診断は、自覚症状の有無が重要視されることが多いです。

糖尿病性神経障害の進行予防効果のある薬剤もあり、より早期に診断することで症状の出現を予防できることがあります。

より早期の診断には、神経診察や神経電動速度検査が重要です。

糖尿病性神経障害の治療方法

糖尿病性神経障害の発症や進行予防には血糖コントロールが重要です。

血糖コントロールには食事療法や運動療法が特に重要となりますが、不十分な場合には薬物治療も行います。
喫煙、飲酒なども関与するため、非薬物療法として生活習慣の改善が必要です。

また、末梢神経障害がある場合には進行予防としてアルドース還元酵素阻害薬が治療薬として保険承認されています。
糖尿病性神経障害の症状の治療は対症療法で行います。
しびれや痛みの治療にはメキシレチン、デュロキセチン、プレガバリンを使用します。

便秘に対しては緩下剤の使用、起立性低血圧には降圧薬の中止や生活指導など、それぞれの症状に合わせた治療を行います。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

糖尿病性神経障害の治療では、血糖値のコントロールが重要です。

生活習慣の改善も重要で、禁酒・禁煙を行うことが必要になります。

神経障害によって、痛みやしびれが出現している場合には、対症的に投薬します。

糖尿病に伴う目の動かしづらさ(動眼神経麻痺など)は、数ヶ月後に自然回復することが多いといわれており、ビタミン剤投与などで経過観察します。

糖尿病性神経障害の予防方法

糖尿病性神経障害による症状のほとんどは自然に症状が改善することはないため、発症予防を行うことが非常に重要です。

糖尿病性神経障害の発症予防にはHbA1c 6.5%以下が推奨されていますが、血糖降下薬の使用時は夜間低血糖の懸念もあり、目標の達成が困難であることも多いです。

そのため糖尿病の治療のみではなく、禁煙や節酒、高血圧の治療なども合わせて行うことが非常に重要です。

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