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「腸管穿孔」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/09/08
「腸管穿孔」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

腸管穿孔という病名を聞いたことはありますか。腸管穿孔は医学の進んだ現代においても緊急性の高い注意が必要な病気とされています。

治療開始が遅れると命に関わることも少なくありません。腸管穿孔の発症原因は様々で誰にでも起こり得る可能性がある病気です。

注意が必要な病気ではありますが、症状を知ることですぐに対処することが可能になります。

今回は腸管穿孔の原因・症状・治療方法などについてご紹介いたします。万が一のときに備えてご参考にしていただけると幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

腸管穿孔の原因や症状

医師 手元 

腸管穿孔とはどのような病気ですか?

腸管穿孔とは小腸や大腸といった消化管になんらかの原因によって穴が空いてしまう病気のことをいいます。腸管に穴が空いてしまう原因は様々ですが、どの年代でも起こりうる病気です。
腸に穴が空くことで内容物が腸外に漏れ出すことで腹膜炎や敗血症といった症状を引き起こす危険性があるため注意が必要です。

原因について教えてください。

腸管穿孔の原因として以下のようなものが挙げられます。

  • 外傷
  • 異物
  • 内視鏡
  • 放射線治療
  • 憩室炎
  • 虫垂炎
  • イレウス
  • 腸結核
  • がん

小腸や大腸といった腸管の穿孔には、外傷などの外的な力によるものと病気によって引き起こされるものの2種類があります。事故などにより腹部を強く打撲することで腸管に穴が空くケースや、飲み込んだ異物や内視鏡検査のカメラによって穴が空くケースが外的な力による腸管穿孔です。
また、がん治療などに使われる放射線治療が原因で腸管穿孔を起こすケースがあります。これも放射線という外的な要因によって発生する腸管穿孔です。一般的な放射線検査では発生しません。あくまでも治療に使われるような高線量の放射線を受けた時のリスクです。もう一つは他の病気が引き金となって腸管穿孔が引き起こされるケースです。
大腸に憩室と呼ばれるエクボのような袋状の窪みが出来ることがあります。この憩室が炎症を起こすことで痛みなどが引き起こされる症状を憩室炎といいます。この憩室炎によって腸管に穴が空くことがあるのです。同じような理由で虫垂炎(盲腸)によっても虫垂に穴が空き腸管穿孔が起こることがあります。
この他、絞扼性イレウスによって腸管が壊死することで穴が空くケース・腸結核や腸に発生したがんによって穴が空いてしまうケースなど原因は様々です。腸管穿孔は外的な力や病気が引き金となり誰にでも発生し得る病気です。発症を見逃さないためにも腸管穿孔の症状について知っておくと良いでしょう。

どのような症状がありますか?

腸管穿孔を発症すると次のような症状が現れます。

  • 腹痛
  • 嘔吐
  • 腹部の硬直

胃や十二指腸といった上部消化管の穿孔の場合、急激な激しい腹痛が起こります。しかし、小腸や大腸といった腸管の穿孔では突発的な痛みが現れないケースも少なくありません。まず自覚する症状の一つとして食欲不振が挙げられます。腹部に違和感を覚えるとともに食欲が落ちて食事ができない場合には、一度検査してみた方が良いでしょう。
小腸や大腸といった腸管穿孔においても腹痛は特徴的な症状の一つです。穿孔が発生した箇所により痛みの感じ方や痛む場所が異なります。小腸や大腸といった腸管に穿孔が生じた場合、発症初期はそれほど強い痛みを感じないケースがあります。これは小腸や大腸から漏れ出た内容物が腹腔内の限定的な箇所に留まり、あまり広がらないケースがあるためです。また腸管穿孔には、起因となる憩室炎などの病気の症状がすでに現れているケースが少なくありません。そのため、元からある病気が悪化して痛みが増してきたと勘違いして見過ごしてしまうケースがあります。
腹部に違和感や痛みを感じ徐々に強くなるようであれば、腸管穿孔を起こしている可能性があるので注意が必要です。腹痛に加え吐き気を感じたり嘔吐したりすることもあります。腸管穿孔の症状が進み腹膜炎を発症すると、腹部全体の痛みとともに腹部が硬直して硬くなります。腹部を押すと強い痛みが走るというのも大きな特徴です。腹部を押してみてお腹の硬さと強い痛みを感じた場合は腸管穿孔から腹膜炎を発症している可能性があります。このように小腸や大腸といった腸管の穿孔では、発症初期にそれほど大きな痛みを感じないケースが少なくありません。
しかし、腸管穿孔は早期発見・早期治療が重要です。素早く治療できたかどうかがその後の予後を左右します。上記のような症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診してください。

受診が遅れた場合どのような危険がありますか?

医学が進んだ現代においても腸管穿孔は緊急性の高い注意が必要な症状の一つとして挙げられます。その理由は発見が遅れた場合の致死率の高さにあります。
医療機関の受診が遅れ腸管穿孔の症状が進んでしまうと、腹膜炎から敗血症を起こして死に至るケースが少なくありません。腹部全体に腹膜炎が広がっているケースでは、発症から8時間以内の緊急手術が推奨されているほどです。腸管穿孔とはそれほど緊急性・危険性ともに高い重篤な状態といえます。
発見が遅れるほど危険な状態になるので、腸管穿孔を疑う症状が現れたら迷うことなく速やかに医療機関を受診してください。

腸管穿孔の検査や治療

手術

腸管穿孔が疑われる場合どのような検査を行いますか?

腸管穿孔が疑われる場合、以下のような検査が行われます。

  • レントゲン検査
  • CT検査

腸管穿孔が疑われる場合、レントゲン検査やCT検査といった画像検査を行うのが一般的です。レントゲン検査では胸部や腹部の撮影をします。これはフリーエアーを確認するためです。通常腹腔内には空気は存在しません。
しかし腸管穿孔が起こると、腸に空いた穴から腹腔内に空気が漏れ出すため、通常は存在しない箇所に空気が現れます。この空気がフリーエアーと呼ばれるもので、消化管穿孔全体では50〜75%の症例にみられ、大腸穿孔では約50%・小腸穿孔では約35%の症例にみられます。フリーエアーの有無が腸管穿孔を含む消化管穿孔の鑑別ポイントの一つとなるため、最初にレントゲン撮影が行われるのが一般的です。
基本的には立位にて撮影しますが、立つのが難しい場合には左を下にした左側臥位という姿勢で撮影を行います。レントゲン検査では鑑別がつかない場合にはCT検査(コンピューター断層撮影検査)にて腹部の撮影を行います。CT検査では体を輪切りにした映像を撮影できるので、腹部の各臓器をより詳しく調べることが可能です。
レントゲン検査では描出不可能だったフリーエアーを発見することも可能なので、フリーエアーの描出率が低い小腸や大腸の穿孔もより発見しやすくなります。穿孔部から内容物が漏れ出ている場合にはその場所の特定も可能なので、手術前にCT検査を行うことで穿孔箇所の特定にも役立ちます。

治療方法を教えてください。

腸管穿孔の治療方法としては手術や保存的治療が行われます。手術では腹腔内ドレナージ・腸管穿孔部を切除しての人工肛門造設・腸管穿孔部の切除及び腸管吻合などが行われます。保存的治療は絶食・輸液投与・抗生剤投与による治療です。

手術を行うことが多いのですか?

小腸や大腸といった下部消化管の穿孔においては手術を行うケースが多いです。特に大腸穿孔の場合、糞便が腸管外に流出することで早期に腹膜炎を発症し敗血症に至るとされています。そのため腸管穿孔は緊急手術での対応が一般的です。
しかし、患者の健康状態・穿孔の発生機序・穿孔箇所の状態などの条件によっては保存的治療が行われることもあります。

腸管穿孔の再発や注意点

危険マーク

腸管穿孔が再発することはありますか?

腸管穿孔を発症した原因によっては再発することがあります。また、高齢者は突発的な腸管穿孔を起こすことがあり、再発することが多々あります。腸管穿孔を発症した原因が外傷や内視鏡検査といった外的な力によるものである場合、再発する危険性は高くありません。
しかし、憩室炎・潰瘍・がんなどといった病気の影響で腸管穿孔が起こったケースでは再発する危険性があります。

普段の生活での注意点を教えてください。

物理的な刺激による腸管穿孔を防ぐには、腹部に強い衝撃を受けないように注意が必要です。特に高齢者の場合はそれほど強い衝撃でなくても腸管穿孔に至るケースがあります。つまずいた拍子に椅子の角に腹部をぶつけたことがきっかけとなり腸管穿孔を起こすケースもあるので注意しましょう。
自分では大したことが無いと思っても、お腹をぶつけた後に腹部の違和感や急激な腹痛が起こったら医療機関を受診して下さい。受診した際には腹部をぶつけたことを医師に伝えてください。他の病気に起因して起こる腸管穿孔では病気のコントロールがポイントになります。
例えば大腸に憩室があると診断された場合には、過度なストレスや暴飲暴食といった憩室炎発症の原因となる行為は避けるべきです。腸管穿孔のきっかけとなるような基礎疾患を持っている方は医師の指導に従い、病気の治療やコントロールを正しく行うことが大切です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

腸管穿孔は現代においても注意が必要な病気の一つです。腸管穿孔の予後はどれだけ早く処置したかによって大きく変わります。腸管穿孔を疑うような症状が現れた場合には、すぐに医療機関を受診し検査を受けることが重要です。

編集部まとめ

2人の医師
一般的に腸管穿孔は基礎疾患を持つ高齢者に発生しやすい病気です。しかし、事故や打撲といった外的な力や腸の炎症などの病気が引き金となることで年齢に関係なく発症します。

腸管穿孔は現代においても危険性の高い注意すべき病気の一つです。

特に大腸の穿孔は腹膜炎から敗血症を発症しやすいため早期発見・早期治療が予後を左右します。

腸管穿孔では食欲不振・腹痛・嘔吐・腹部の硬直・腹部の圧痛などの症状が現れます。これらの症状を自覚したら我慢することなく速やかに医療機関を受診するようにしましょう。

この記事の監修医師