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「膵臓がんの治療法」はご存知ですか?原因や症状についても解説!【医師監修】

 公開日:2023/12/14
「膵臓がんの治療法」はご存知ですか?原因や症状についても解説!【医師監修】

「膵臓がんといわれたら治療は難しい」と聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。たしかに、膵臓がんの発見が遅れると治療方法の幅は狭まるでしょう。

しかし、進行する前の膵臓がんには有効と考えられる治療法が複数あります。

今回の記事では、膵臓がんの主な治療法・原因・症状などを詳しく解説します。症状を知っておくことは病気の早期発見にも役立つでしょう。

記事の後半では、膵臓がんについての疑問についても回答しているのでぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

膵臓がんとは?

膵臓がん(膵がん)とは、膵臓にできるがんの総称です。膵臓は十二指腸側・中央・脾臓側の3部位に分けられ、それぞれの場所にできたがんを下記のように呼びます。

  • 膵頭部がん(十二指腸側)
  • 膵体部がん(中央)
  • 膵尾部がん(脾臓側)

この3つの中では膵頭部がんが最も多く、膵臓自体にできるがんの約6割を占めます。しかし、膵臓から発生するがんのうち、膵頭部がんよりも多いのが「膵管がん」です。
膵管は膵臓の中を通っている管で、膵臓で作られた消化液を十二指腸へと送り出しています。膵臓から発生するがんの8~9割は、この膵管にできる膵管がんといわれています。

膵臓がんの治療方法

もし膵臓がんと診断されたら、どのような治療を行う可能性があるのでしょうか。ここからは、膵臓がんに対して行われることが多い4つの治療法についてまとめていきます。

外科治療

膵がんになった部分を切除する治療方法です。下記に当てはまる場合は、外科治療の適用となる可能性が高いと考えられます。

  • がんの大きさが2cm以下
  • リンパ節への転移が3個以内

がんの発生部位が膵頭部・膵尾部の場合は、病気のある部分のみ切除することもあります。しかし、がんが周囲の血管・臓器を巻き込んでいる可能性があれば血管や周囲にある臓器の一部を膵臓とともに切除する可能性が高いでしょう。

放射線治療

放射線治療では、がんになった部位に放射線を当てることで、がんの進行を抑える効果が期待できます。
放射線治療は外科治療が難しい進行度ではあるものの、遠隔転移はみられない症例に対して行うことが多い治療法です。また、手術の前後に補助的に放射線治療を行うこともあります。
その他には、がんを小さくするためでなく、がんによる痛みを軽減するために放射線治療が行われるケースもあるでしょう。放射線治療の副作用には下記のようなものがあります。

  • 皮膚の炎症・色素沈着
  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢
  • 食欲不振
  • 白血球の減少

薬物治療

膵臓がんと診断された時点で手術ができる状態の方は少なく、患者さんの2~3割といわれています。そのため、膵臓がんの治療は上記の放射線療法のほか、薬物療法(化学療法)を行うことも多いでしょう。
薬物療法は、がん細胞を攻撃する薬を投与することでがんの縮小・死滅を目指す治療法です。薬物療法の副作用として代表的なものには下記が挙げられます。

  • 吐き気・嘔吐
  • 下痢
  • 口内炎
  • 脱毛

免疫療法

患者さんの身体にもともと備わっている免疫力を利用して、がんを攻撃する治療方法です。自分の免疫による治療なので化学療法のような副作用は出にくいとされています。
しかし、自分の免疫が必ずしも無害というわけではありません。自己免疫疾患・アレルギーのように自分の免疫に身体が攻撃されて、思わぬ副作用が現れる可能性があるという点には注意が必要です。

膵臓がんの原因

膵臓がんは、発見されたときにはすでに手術ができないステージに進行していることも多い病気です。
ここまで紹介したように手術以外にも治療の選択肢があるとはいえ、できれば予防したいと考える方もいるでしょう。膵臓がんの直接的な原因は分かっていませんが、下記のような要因が膵臓がんのリスクを上げるとされています。

  • 家族歴
  • 糖尿病
  • 大量飲酒
  • 胆石
  • ストレス
  • 喫煙

まず、家族歴とは「親や兄弟などの血縁者に同じ病気の方がいるかどうか」です。
家族歴の影響は大きく、膵臓がんの家族歴がある方はそうでない方と比較して発症リスクが32倍になるといわれています。また、糖尿病は悪性腫瘍のリスクを上げる要因です。
膵臓がんの場合は、糖尿病の既往がある方の発症リスクは健康な方と比べると1.85倍というデータがあります。
そのほか、膵炎は膵がんの原因になり得るとされているため、膵炎の原因となる大量飲酒・胆石・ストレスなども膵がんの間接的な原因といえるでしょう。
そして、煙草に関しては多くのがんに対して発症リスクの上昇要因となることが知られています。膵臓がんについても喫煙が原因となり得るので、予防のためには禁煙が推奨されます。

膵臓がんの症状

家族歴なども発症に関係する膵臓がんですが、症状はどのようなものがあるのでしょうか。ここからは主な症状である、腹痛・体重減少・黄疸・糖尿病について詳しく解説します。

腹痛

膵臓がんは膵臓内を通る膵管にできることが多く、腫瘍が大きくなることで膵管が圧迫されます。
膵管が圧迫されて詰まると、膵臓で作られた消化液を外部に分泌できません。その結果、膵臓が炎症を起こして腹痛・発熱などの症状が現れることがあります。
また、膵臓は胃の後ろにある臓器なので、腹痛ではなく背部痛も膵臓癌によくみられる症状です。

体重減少

膵臓癌による体重減少には「食べられない」「消化が十分にできない」という2つのパターンがあります。
膵臓は食物の通り道である胃や腸に近接しているため、膵臓がんが進行して大きくなると、周囲の消化管も圧迫される場合があります。このような状況による食欲不振が体重減少の1つめの理由です。
また、膵臓は消化液を分泌するという働きがあります。そのため、膵臓がんができると消化機能も低下して「食べても十分に消化できない」という状態に陥ります。
その結果、栄養を十分に摂れなくなることが体重減少の2つめの理由です。加えて、消化機能が低下するため下痢など消化不良による症状がみられることもあります。

黄疸

膵臓から十二指腸へ繋がる膵管は、十二指腸付近で胆管と合流しています。
この胆管は、胆のうから分泌される胆汁を分泌するための管です。しかし、膵臓の腫瘍により胆管が圧迫されると、胆管が詰まって胆汁を十二指腸に分泌できなくなります。
正常に分泌されなかった胆汁が全身にまわることで皮膚や眼球結膜(白目)が黄色みを帯びた状態を黄疸(おうだん)と呼びます。

糖尿病

膵臓は膵液という消化液以外に、血糖値を下げるホルモン(インスリン)を分泌する働きがあります。
膵臓がんにより膵臓の機能が低下することで、インスリンの分泌量が減り糖尿病を発症することもあるため「生活習慣に変化は無いのに急に血糖値が上がった」という場合は注意が必要です。

膵臓がんの検査方法

膵臓がんと思われる症状がある場合、どのような検査を経て診断するのでしょうか。膵臓がんが疑われる場合に行う検査についてまとめました。

MRI検査

血液検査・超音波検査の結果から膵臓がんが疑われる場合は、MRI・CTでさらに精密な検査を行います。
膵臓は、胃・大腸のように内視鏡で直接見て確認できない臓器です。そのため、がんの位置・サイズ・数・範囲などを確認するためには画像診断検査が重要になります。
また、膵臓がんになると膵管・胆管が圧迫されることにより症状が現れることがあります。MRIで「MR胆管膵管撮影(MRCP)」という検査を行うことで膵管・胆管の状況を詳しく確認できます。

内視鏡的膵管造影

内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)とも呼ばれる検査です。
膵臓の病変自体を内視鏡で観察することはできませんが、この検査は十二指腸まで内視鏡を挿入して胆管に造影剤を流してからレントゲンの撮影を行います。
ERCPは膵管の拡張・狭窄などを確認するほか、内視鏡で膵液を採取できる検査です。採取した膵液は病理検査に回して、がん細胞の有無を調べます。

腫瘍マーカー

腫瘍マーカーとは、血液検査により腫瘍がある可能性を確認するものです。
体内に腫瘍ができると血液中の特定の物質が増えることから、腫瘍マーカーの数値が上昇すると体内に腫瘍がある可能性が分かります。
腫瘍マーカーにはいくつもの種類があり、膵臓がんのスクリーニングを行う場合には下記の項目が主な指標です。

  • CEA
  • CA19-9
  • DUPANII
  • エラスターゼI

この検査で膵臓がんの可能性がある患者さんには、レントゲン・超音波・MRI・CTなどでさらに詳しい検査を実施します

「膵臓がんの治療方法」についてよくある質問

ここまで膵臓がんの主な症状や検査方法などを紹介しました。ここでは「膵臓がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

膵臓がんを根治する方法はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

膵臓がんは、がんの中でも予後不良になることが多いといわれています。これは、初期症状がほとんどなく「気になる症状がある」と受診したときには病気が進行しているケースが多いためです。しかし、膵臓がんは病変部の切除が可能な段階で発見できれば根治する可能性もあると考えられます。

抗がん剤を使用しなくても治療は可能ですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

転移などが無く、がんになった部分を切除する治療のみで治癒がのぞめると判断されると、抗がん剤を使用しない場合があります。しかし、膵がんは手術が可能な段階で発見することが難しく、また術後の転移・再発も多いがんといわれています。そのため、手術が適用にならず抗がん剤を中心に治療を進めたり、手術前・手術後に補助的に抗がん剤を使用したりする可能性が高いでしょう。

編集部まとめ

膵臓がんは進行すると治療が難しいとされる病気ですが、早期発見することで根治の確率を上昇させられます。

また、最近では抗がん剤の種類が増え、抗がん剤治療の中でも副作用やがんのタイプに合わせて薬の選択肢が増えました。

膵がんと診断されたら、医師と相談して自分の生活や病期に合う治療をみつけていくことが回復への第一歩となるでしょう。

まずは、気になる症状を感じたら消化器を専門とする医療機関に相談してみることをおすすめします。

「膵臓がん」と関連する病気

「膵臓がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

膵炎は膵臓がんの原因にもなり得る病気です。また、膵臓がんが原因で上記の病気を引き起こすことがあります。

「膵臓がん」と関連する症状

「膵臓がん」と関連している、似ている症状は3個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 背部痛
  • 黄疸
  • 食欲不振

上記は膵臓がん特有の症状とはいえませんが、膵臓がんでみられる症状です。

この記事の監修医師