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【男性必見!】「慢性前立腺炎」は年齢を問わず座っているだけで発症の可能性アリ、防ぐために取り入れたい習慣

 更新日:2023/03/27

昨今、増加傾向にあるのが男性の「慢性前立腺炎」です。はたして、どのような自覚症状を伴うのでしょうか。また、慢性と対をなす「急性前立腺炎」との違いも知りたいところです。そこで今回は、「神楽坂泌尿器科クリニック」の室宮先生に、詳しい解説をお願いしました。

室宮 泰人

監修医師
室宮 泰人(神楽坂泌尿器科クリニック 院長)

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帝京大学医学部卒業。東京女子医科大学病院での研修後、同病院や一般医院にて泌尿器科を中心に臨床を重ねる。2020年、父親が営んでいた銭湯を建て替える形で、東京都新宿区に「神楽坂泌尿器科クリニック」を開院。対話を大切にした相談しやすいクリニックをめざしている。日本泌尿器科学会専門医。日本泌尿器内視鏡・ロボティクス学会、日本抗加齢医学会、日本性感染症学会、日本臨床腎移植学会、日本透析医学会の各会員。

病気の仕組みと、急性・慢性の違い

病気の仕組みと、急性・慢性の違い

編集部編集部

慢性前立腺炎は、男性にしか起きない病気なんでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

はい。前立腺は、男性の尿道を囲むように位置する男性にしかない器官です。そして昨今、慢性前立腺炎の患者さんが増加傾向にあります。理由としては、リモート勤務などによる自宅作業での「座り仕事」が増えているのが考えられます。座っている体勢はお尻の周辺に長時間圧がかかり、前立腺に血流障害を起こしてしまう可能性があります。

編集部編集部

この血流障害が前立腺の「炎症」を引き起こすわけですか?

室宮 泰人室宮先生

いいえ、慢性前立腺炎は炎症を生じさせません。字面的に誤解の起きやすいところですが、血流障害による悪影響がこの病気の本質です。具体的な症状としては、お尻や陰のうの周りの痛み、排尿時の違和感、残尿感など様々で、「血流不足による弊害」を総じて慢性前立腺炎と呼んでいます。ただし、血流不足そのものが起きていても症状に現れなければ病気とはみなしませんし、受診しようとも思わないですよね。

編集部編集部

「慢性」と言うからには、症状が長期化しているのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

その点もわかりにくい部分で、「血流障害」の長期化を問います。つまり、背景にうっ血状態などがあって、“急に”患部の痛みや違和感を覚えたとしても、慢性前立腺炎とみなすということです。ですから、「慢性骨盤痛症候群」という別の名前が用いられることもあります。痛みが主訴という印象で、各種検査の異常には現れにくく、「ただ、痛みや違和感だけがある」といったイメージですね。

編集部編集部

参考までに知りたいのですが、急性の前立腺炎もあるのですか?

室宮 泰人室宮先生

あります。急性前立腺炎は文字どおり炎症で、菌による感染が認められた場合に診断されます。急性前立腺炎の自覚は、炎症なので発熱を伴うほか、主に排尿時の痛みです。ただし、慢性・急性の症状に問わず「陰部の違和感」を覚えたら、受診するようお願いします。

座位は知らないうちに血管を圧迫している

座位は知らないうちに血管を圧迫している

編集部編集部

今回は話を慢性前立腺炎に限定するとして、かかりやすい人の特徴について教えてください。

室宮 泰人室宮先生

お尻や前立腺の圧迫が続いている人、つまり長い時間座っている人に顕著です。ドライバーはもちろんのこと、管理職になってデスクワークが増えることも要因に含まれます。ほかにも、サイクリングやバイクが趣味の人にも多い印象です。また、学生の場合、学校や塾の椅子の多くは「硬い板」なので、そのことで圧迫されて発症する場合もあります。他方で高齢者は、「前立腺肥大症」に進むことが多いようです。

編集部編集部

予防するとしたら、何に気をつければいいでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

「座る時間を減らすこと」に尽きます。1時間の座り仕事が続いたら、冷蔵庫に飲み物を取りに行くくらいの動作でいいので、立ち上がってください。「座位を解除する」だけで違ってきます。なお、足のストレッチ運動などができるとベターです。

編集部編集部

あと、血流障害というと、冷え性なども関係してきそうですが?

室宮 泰人室宮先生

はい。「血管が細くなること」は、副次的な慢性前立腺炎の要因になり得ます。喫煙も同様です。しかし、やはり長時間のお尻や前立腺の圧迫を避けることが予防の要です。個人的には、ドーナッツ型のクッション、いわゆる「円座」の使用を推奨しています。ちょうど、陰のうの当たる部分に穴が空いていますし、通気性も確保されているからです。

編集部編集部

大人と比べて子どもは自己管理意識が薄いので、対策が難しそうです。

室宮 泰人室宮先生

一休みが取れない、あるいは取りにくいのであれば、上述した円座を使用するといった環境整備が大切です。とくに受験生には、ぜひ学校や塾にクッションを携帯していただきたいです。実際、10代の慢性前立腺炎は増えてきているので、周囲の大人が配慮してあげましょう。

普段の生活や姿勢が左右する病気

普段の生活や姿勢が左右する病気

編集部編集部

続けて、受診してからの流れについてもお願いします。

室宮 泰人室宮先生

慢性前立腺炎の基本は除外診断です。感染による炎症や前立腺肥大症などを除いていって、「何も異常がないのに主訴のある場合」に診断が付きます。「直腸診」を用いる場合もありますが、デリケートな箇所なので当院ではほとんどおこなっていません。

編集部編集部

保険による治療も可能なのですか?

室宮 泰人室宮先生

はい。血行を促進する薬には、保険の適用が認められています。なかには、同様の目的で漢方薬を処方するクリニックもあるようです。また、生活指導のアドバイスも欠かせないでしょう。「座位を定期的に解除する」とともに、患部を温めることが血行促進につながります。

編集部編集部

痛みが激しい場合、鎮痛剤もお願いできるのでしょうか?

室宮 泰人室宮先生

鎮痛剤を処方することもありますが、多くの場合は血行促進で快方に向かわれることが多いですね。ただし、これまでの話は慢性前立腺炎を前提にしています。急性前立腺炎やほかの病気の治療方法については割愛させていただきます。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

室宮 泰人室宮先生

慢性前立腺炎は予防が可能ですし、仮になったとしても治せる病気です。ただし、生活スタイルが深く関わっているため、再発するケースも少なくありません。そのため、なおのこと「座っている時間、仕事や趣味のやり方」を見直すべきだと考えます。また、前立腺肥大症に進行するリスクもありますので、座っているときの圧迫感や血流を意識してみてください。

編集部まとめ

座っていると楽なので、そのままの姿勢を保ちがちですが、前立腺にとっては「つらい姿勢」のようです。また、慢性前立腺炎に発熱などはありませんが、痛みや違和感を伴うとのことでした。受診してみて病気ではなかったとしても、一定間隔で休み時間を取り入れて、全身の血行促進を促しましょう。それが慢性前立腺炎の予防につながります。

医院情報

神楽坂泌尿器科クリニック

神楽坂泌尿器科クリニック
所在地 〒162-0804 東京都新宿区中里町13
アクセス 東京メトロ東西線 神楽坂駅 徒歩3分
東京メトロ有楽町線 江戸川橋駅 徒歩7分
都営大江戸線 牛込神楽坂駅 徒歩9分
診療科目 泌尿器科・女性泌尿器科・内科

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