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「パーキンソン病」はAIの会話解析によって高精度な予測が可能に 名古屋大ら

 更新日:2023/05/26
news-202305n0562

名古屋大学らの研究グループは、AI(人工知能)を用いてパーキンソン病患者の会話を解析したところ、「認知機能低下に関係なく会話に異常が認められ、会話内容の解析が診断につながる」との結果を発表しました。この内容について竹内医師に伺いました。

竹内 想

監修医師
竹内 想(名古屋大学医学部附属病院)

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名古屋大学医学部附属病院にて勤務。国立大学医学部を卒業後、市中病院にて内科・救急・在宅診療など含めた診療経験を積む。専門領域は専門は皮膚・美容皮膚、一般内科・形成外科・美容外科にも知見。

研究グループが発表した内容とは?

今回、名古屋大学らの研究グループが発表した研究内容について教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

今回紹介するのは名古屋大学らの研究グループが実施した研究内容で、医学雑誌「Parkinsonism & Related Disorders」に掲載されています。パーキンソン病は動作緩慢、筋強剛、振戦などの「運動徴候」、認知、精神、睡眠、自律神経、感覚障害などの「非運動徴候」が認められる疾患です。さらに、コミュニケーション上の変化も特徴的で、患者の9割以上がなんらかの言語障害を有しているとされています。

認知機能が正常なパーキンソン病患者53人と、その対照として健康な53人を対象に研究がおこなわれました。対象となった人の会話を自然言語処理を用いて分析し、さらに機械学習アルゴリズムを用いて2つのグループに特徴的な会話の傾向を調べました。評価項目は品詞と構文の複雑さに焦点を当てた、37の特徴が用いられました。さらに、機械学習の手法の1つであるサポートベクターマシンなど用いてパーキンソン病患者の会話の識別に有効な項目を絞ってそれぞれの識別率についても検証しました。その結果、パーキンソン病患者は、健康な人と比べて1文に含まれる形態素が少ないことがわかりました。また、パーキンソン病患者の会話は健康な人と比較して、動詞、格助詞、動詞の発話率が高くなり、普通名詞の発話、固有名詞の発話、フィラー発話の確率が低くなりました。このような会話の変化を利用して、パーキンソン病患者と健康な人のそれぞれの識別率は80%以上になったとのことです。

研究グループは論文の結論で「この結果は、自然言語処理によるパーキンソン病の言語解析と診断の可能性を示すものである」と述べています。

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、どのような病気なのか教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

パーキンソン病は厚生労働省の指定難病で、神経難病の中で最も患者数が多い疾患です。人口10万人あたり100~120人の患者がいると言われており、発症年齢は50~60歳代で、日本では男性よりも女性の方が多いとされています。パーキンソン病の大半は非遺伝性で、遺伝性は5~10%です。

パーキンソン病の4大症状として、体が震える「振戦」、筋肉の緊張が強くなって手足の動きがぎごちなくなる「固縮」、動作が遅くなる「寡動・無動」、転びやすくなる「姿勢反射障害」が挙げられます。運動障害にあたる4大症状以外の非運動症状としては、嗅覚低下、便秘、頻尿や排尿困難、立ちくらみ、起立性低血圧、睡眠障害、記憶障害、うつ、幻覚・妄想などがあります。

発表内容への受け止めは?

名古屋大学らの研究グループによる発表内容の受け止めについて教えてください。

竹内 想 医師竹内先生

パーキンソン病は神経難病の中でも患者数が多く、治療法も発達している疾患です。認知機能が正常なパーキンソン病患者をAIで適切に診断できれば、早期診断・早期治療につながる可能性が期待できると考えます。

まとめ

名古屋大学らの研究グループが、AIを用いてパーキンソン病患者の会話を解析したところ、認知機能低下に関係なく会話に異常が認められ、会話内容の解析が診断につながるとの結果を発表したことが今回のニュースでわかりました。AIを活用した新たな診断の可能性に、今後も期待が集まりそうです。

この記事の監修医師