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「神経内分泌がん」を発症すると現れる症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/02/21
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神経内分泌がんは全身に分布する神経内分泌細胞に発生するがんです。体のほぼすべての臓器から発生する可能性があります。

非常にまれながんですが、増殖速度が速く早期に転移・再発を起こしやすい悪性度・毒性度の高いがんです。発見が遅れると治療が困難になるケースがあります。

症状・検査方法・治療方法・治療後の注意点について説明していきます。早期発見にお役立てください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

神経内分泌がんの症状と原因

腹痛を感じる男性

神経内分泌がんとはどんな病気ですか?

膵臓や消化管に多くできる大変まれながんで、ホルモンやプチペドを分泌する神経内分泌細胞にできます。低分化型で増殖度が早く転移・再発を起こしやすい悪性度の高いがんです。
神経内分泌細胞は全身に分布していますので、すべての臓器から発生する可能性があります。悪性度が高いがんなので早期発見が大切です。
消化器に発生すれば、消化器の不調がおきることがあります。また膵臓に発生すれば、背中にしこりや痛みがおきることがあります。このような徴候・症状があるときは早めに専門医に相談しましょう。

神経内分泌がんの症状を教えてください。

発生したがんの部位や大きさによって異なります。がんが発生した部分に違和感や痛みが起こることがあります。大腸などの消化器に発生したときの症状は次のようなものです。

  • 腹痛
  • 食欲の不振
  • 体重の減少
  • 血便や黒色便
  • 貧血

貧血・黒色便はがんからの出血によるものです。また膵臓にがんが発生すると次のような症状が起こることがあります。

  • 上腹部の痛み
  • 背中の痛み
  • 背中のしこり

膵臓に発生したがんが胆管を詰まらせ胆管炎を起こすこともあります。進行が非常に早く、転移を起こしやすいがんです。発見が遅れると他の器官にも広まり、治療が困難になる可能性が強いので注意が必要です。症状が出た場合、早めに医療機関を受診してください。

神経内分泌がんの原因は何でしょうか?

原因が何によるものなのか、またどのような仕組みで発生するものなのかは、まだ明確にわかっていません。

神経内分泌がんは希少ながんだと聞きましたが。

消化器原発の悪性腫瘍のうち消化器神経内分泌がんの割合は1%未満であるとされています。
膵臓の神経内分泌腫瘍の罹患率が10万人あたり1.27人、消化器の神経内分泌腫瘍の罹患率が10万人あたり2.1人です。神経内分泌がんは神経内分泌腫瘍全体の5~8%ですから、極めてまれながんといえます。

神経内分泌がんの診断・治療方法

聴診器

神経内分泌がんはどのように診断されますか?

診断には次のような検査が行われます。

  • 超音波検査:体の表面に超音波をあて、はね返ってきた超音波を画像として写し出します。がんの位置・大きさ・広がり具合・まわりの臓器との関係などを調べる検査です。簡易的に調べるときに使います。
  • CT:体にX線をあて、コンピューターを使って体の断面を画像にします。がんの位置・大きさ・広がり具合・がんの転移の有り無しなどを調べる検査です。治療の効果や治療後の再発の有り無しの確認にも使われます。
  • MRI:強力な磁石と電波を使い、体の断面の精密画像をコンピューターで作成します。トンネル状の装置です。造影剤を使用する場合があります。がんの位置・大きさ・広がり具合を調べる検査です。
  • PET:放射性フッ素を付加したブドウ糖を静脈から注射し、ガン細胞に取り込ませます。あおむけになりブドウ糖の分布を撮影します。がんの位置・大きさ・広がり具合を調べる検査です。
  • 内視鏡:先端にカメラの付いたチューブを体の中に入れ、画像で内部の様子を確認する器械です。胃や大腸の内部を調べる時に使います。
  • 病理検査:がんの組織の一部を採取して顕微鏡で詳しく観察する検査です。神経内分泌がんかどうかの確定に必要です。神経内分泌がんと神経内分泌腫瘍は細胞の核の状態が異なります。病理検査で正しく鑑別を行なわなければなりません。治療方針が大きく異なるからです。消化管に発生した病変組織の採取は内視鏡を用いて採取します。また、膵臓に発生した病変組織の採取は超音波内視鏡を使って、胃や十二指腸から針を刺して行います。

神経内分泌がんの治療方法を教えてください。

手術で完全に腫瘍を取り除ければ切除を検討します。しかし増殖速度が速いため切除できる場合は少ないので、多くの場合化学療法で病状の制御を行います。化学療法は次の2つです。

  • EP療法:エトポシド+シスプラチン療法
  • IP療法:イリノテカン+シスプラチン療法

以下、これらの抗がん剤について説明します。

  • エトポシド:北米原産の植物アメリカミヤオソウの根茎に含まれるポドフィロトキシンの誘導体を用いた抗がん剤です。注射剤と内服薬があります。骨髄抑制・貧血・食欲不振・吐き気・嘔吐・アレルギー反応が現れることがあります。また非常に脱毛が起こりやすいとされる抗がん剤です。連続投与では、白血球とヘモグロビンの減少などの骨髄抑制が現れやすくなります。発熱・せき・呼吸困難などをともなう間質性肺炎のおそれもあります。
  • シスプラチン:白金(プラチナ)を含む抗がん剤です。がん細胞の遺伝子(DNA)と結合して抗腫瘍効果を発揮します。静脈化から点滴される注射剤です。尿の量が少なくなる・足がむくむなどの腎機能障害が現れることがあります。吐き気・おう吐・下痢・貧血・出血・白血球の減少・アレルギー・脱毛が現れることがあります。
  • イリノテカン:イリノテカン塩酸塩水和物を用いた抗がん剤です。注射剤で、発熱・寒気・のどの痛み・出血・嘔吐・筋肉痛・めまい・頭痛などの副作用が現れることがあります。

神経内分泌がんの生存率はどのくらいですか?

1990年以降に北里大学病院呼吸器外科において切除され、肺大細胞神経内分泌がんと診断された42例の5年生存率が34.7%であったという報告があります。非常に進行が速く、生存率が極めて低い悪性度の高いがんです。

神経内分泌がんの治療後の注意点

診察をする男性医師

神経内分泌がんの再発の可能性はどれくらいですか?

進行が速く転移や再発を起こしやすい悪性度の高いがんです。そのため治療後も定期的な検査が必須となります。
そして生活習慣や食生活の見直しや、ストレスを軽減する工夫をすることも、がんの再発予防に役立ちます。

治療後の日常生活における注意点を教えてください。

治療後の日常生活においての注意点には、以下のようなものがあります。

  • 定期的な検診:治療後も定期的な検査を受ければ、がん再発の早期発見や早期治療ができます。がんの再発を防ぐには治療後のフォローアップが重要です。
  • 生活習慣の見直し:治療は大きく体力を消耗します。健康的な食生活・適度な運動・ストレスを軽減を心がけ、体力の回復に努めましょう。
  • 治療の副作用への対処:治療によって副作用が生じる場合があります。治療を受ける前に、副作用について医師に説明を受けておきましょう。
  • 感染予防:化学療法により免疫力が低下することがあります。予防接種・うがい・手洗いなど、感染対策に細心の注意が必要です。
  • 心理的なサポート:がんの治療は心理的にも大きなストレスを抱えやすいです。治療中や治療後に、カウンセリングなどの心理的なサポートを受けることによりストレスが軽減できます。
  • 治療によって変化した生活に対応する:治療によって障害が発生し、生活に変化が生じる場合があります。そうした場合には、適切な対応をし生活の変化に対応しなければなりません。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

神経内分泌がんは、まれながんですが進行が早く転移を起こしやすい悪性のがんです。そのため早期発見が重要です。
貧血・体重の減少・消化器の不振・背中のしこり・背中のいたみなどの徴候・症状があるときは、早めに専門医に相談してください。
治療で化学療法を用いた場合、副作用が伴うことが多くあります。治療を受ける前に医師に説明を受け、対処方法を理解しておく必要があります。

編集部まとめ

アイデアを思いつく女性
神経内分泌がんは、進行が速く転移や再発を起こしやすい悪性度の高いがんです。

そのため早期発見が重要です。また治療後は定期的な検査が必須となります。

そして生活習慣や食生活の見直すことや、ストレスを軽減する工夫をすることも、がんの再発予防に役立ちます。

この記事の監修医師