「卵巣がんの腫瘍マーカー検査」ってどんな検査?検査費用も解説!【医師監修】
卵巣がんにかかる女性は40歳代から急激に増加し、50〜60歳代がピークです。患者さんの数は年々増加傾向にあります。
卵巣がんは初期には症状が出にくく、診断されたときには約40〜50%が進行がんといわれています。
そのため、人間ドッグなどの検診時に腫瘍マーカー検査を受けることは、がん診断の補助に有用です。
この記事では、卵巣がんに対する腫瘍マーカー検査、検査方法や検査費用を解説します。
早期発見できれば生存率も上がります。腫瘍マーカー検査を受けるかどうか判断の参考にしてください。
監修医師:
阿部 一也(医師)
目次 -INDEX-
卵巣がんとは?
卵巣がんは、上皮性腫瘍・胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍の3つに分けられ、うち約90%が上皮性腫瘍です。
症状
腹痛・腹部の違和感・膨満感などの症状が現れますが、がんが初期の段階ではほとんど自覚症状がありません。ウエストサイズが大きくなる・下腹部にしこりがある・食欲がなくなるなどの症状がきっかけで受診し、発見されることもあります。
がんが大きくなることで出現する症状は、膀胱や腸の圧迫による頻尿や便秘、足のむくみです。がんが進行して腹水が大量にたまり、腹部が大きく前に膨らむこともあります。腹水や胸水のために、内蔵が圧迫され吐気・倦怠感・息切れの症状がでることもあります。
完治率
卵巣がんの5年相対生存率は、約60%とされています。進行度別にみると、以下のとおりです。
- 1A期93.0%・1B期85.8%・1C期87.7%
- 2A期85.0%・2B期79.1%・2C期75.0%
- 3A期59.1%・3B期49.4%・3C期48.6%
- 4期 32.4%
卵巣がんは初期の段階には症状が出にくく、がんが見つかったときには病状が進行していることが少なくありません。症状に気付いた場合には、早めに婦人科で受診しましょう。
卵巣がんの主な検査方法
卵巣がんが疑われた場合、腹部の触診や内診、超音波(エコー)・CT・MRI検査などの画像検査を行います。一般的にがんの診断には病理診断(組織診断・細胞診断)が必要ですが、卵巣の場合は腹部から針を刺し病理組織や細胞を採取できません。
このため画像検査で卵巣がんの疑いがあると判断された場合には手術を行い、術中もしくは術後に行う病理組織検査で初めて良性か悪性かの診断がつきます。
触診・内診
子宮や卵巣の状態を、腹部の触診や、腟から指を入れて調べる内診によって確認します。
エコー
超音波を体の表面にあて臓器から返ってくる反射の様子を画像にします。子宮や卵巣の場合、腟の内側から超音波をあてる経腟法による超音波断層法(エコー検査)を行います。卵巣がんの性質・状態・大きさ・位置関係を調べます。
CT・MRI
CT検査は、リンパ節転移や遠隔転移を調べるための検査です。がん細胞が血液やリンパ液に乗って、卵巣から離れた別の臓器や器官で増殖していないか調べます。
またMRI検査はCT検査に比べて、がんの組織と正常な組織の違いを画像上で区別しやすく、骨盤内を細部まで調べられます。子宮・膀胱・直腸などの位置関係や、腫瘍内部の状態、リンパ節が腫れていないかなどを観察します。
病理検査
病理検査(組織診断)は、手術で切除した卵巣の組織を顕微鏡で観察し、悪性度の判定や組織型を確定する検査です。最終的な結果が出るには2〜3週間かかります。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査は、がん診断の補助的な検査です。腫瘍マーカーとは、がんの種類によって特徴的に作られるタンパク質などの物質です。がん細胞やがん細胞に反応した細胞によって作られます。卵巣がんの場合、測定するのは血液中のCA125などです。
尿検査
尿中のマイクロRNAを抽出し、がんリスクを調べる検査です。尿を使ったがん検査であるため手軽に受けられます。ステージ1の早期がんでもリスク判定できることが大きな特徴です。
卵巣がんの腫瘍マーカー検査とは?
良性の卵巣腫瘍と卵巣がんの鑑別は、原則的に手術で腫瘍を摘出し病理組織検査で行います。しかし実際には手術前に、卵巣がんの疑いと説明されたり、良性卵巣腫瘍の可能性と説明されたりします。
この判断は、CT・MRI・超音波検査などの画像診断やCA12など腫瘍マーカー検査によるものです。
検査方法
腫瘍マーカーは、がん特異抗原と呼ばれるがん細胞から放出されている物質の血清内(血液内)濃度を測定しています。血液検査は採血のみで簡便なため、広く用いられる方法です。
特徴
卵巣がんの腫瘍マーカーのなかでもCA125は約80%と高い陽性率を示し、診断や治療効果の指標として利用されています。しかし閉経前の子宮内膜症や子宮筋腫、卵管炎などの疾患や、月経周期・妊娠などの影響により上昇する可能性もあります。
これは、CA125が女性ホルモンのエストロゲンによって生成が促されるためです。このため、生理中の検査は避けた方がよいとされています。また、女性ホルモン含有の薬剤を服用している人も注意が必要です。
HE4マーカーは、卵巣がんの患者さんで高値を示しますが、子宮内膜症などの婦人科疾患や妊娠などの影響での上昇が少ないマーカーです。特徴の異なるCA125とHE4は相関性がなく、両者の併用で感度・特異度が向上し、卵巣がんを鑑別する有用な指標となります。
ほかの検査方法との違い
がんとは無関係に腫瘍マーカーの値に影響する可能性もあり、腫瘍マーカーの値だけでは診断ができません。腫瘍マーカー検査は、診断の参考・補助となる検査のひとつです。
腹部の触診と内診、超音波(エコー)・CT・MRI検査などの画像検査を行います。また、すべてのがんで腫瘍マーカーが見つかるとは限りません。
腫瘍マーカーの検査費用
卵巣がんの腫瘍マーカー検査の費用は、保険適用外のため医療機関によって異なりますが3,000円(税込)程度です。がんを強く疑う場合やがんと診断された場合に保険適用となります。
卵巣がんの腫瘍マーカーについてよくある質問
ここまで卵巣がんの腫瘍マーカー検査の方法や費用などを紹介しました。ここでは「卵巣がんの腫瘍マーカー検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がんの腫瘍マーカー検査は痛いですか?
阿部 一也 医師
卵巣がんの腫瘍マーカー検査は血液検査により行います。検査による痛みは、採血時の痛みのみです。気になることがあれば、採血時でも看護師に相談できます。
腫瘍マーカー検査を受ける際の注意点はありますか?
阿部 一也 医師
卵巣がんの腫瘍マーカーCA125は、子宮頸がんにも共通しているマーカーです。がん以外の疾患(子宮内膜症など)の影響や、加齢・妊娠・月経・飲酒・喫煙・薬の成分などの影響で、がんとは無関係にマーカーの値が高くなることがあります。また、がんの場合でも値が高くならないこともあります。そのため、健康診断のオプションや人間ドックなどで行われる腫瘍マーカー検査は、国が推奨するがん検診には含まれません。
編集部まとめ
腫瘍マーカー検査は、がん診断の補助・診断後の経過観察・治療の効果判定などを目的として行う検査です。
卵巣がんの腫瘍マーカーのうち、CA125は約80%と高い陽性率を示します。
しかし子宮内膜症などの疾患や妊娠などの影響により、腫瘍マーカーの値が変動する可能性もあり、腫瘍マーカーの値だけでは診断ができません。
そのため、画像検査や病理検査などの検査の結果も併せて、総合的に診断します。
卵巣がんの腫瘍マーカー検査は血液検査により行います。簡単に行うことができ、がん発見のためには有用な検査です。
また、治療効果や転移、再発の診断では腫瘍マーカーの推移をみることが重要です。
卵巣がんと関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腹膜がんの腫瘍の性質は卵巣がんに類似しています。
卵巣がんと関連する症状
「卵巣がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんは初期の段階では、ほとんど自覚症状がありません。症状に気付いたら、早めに婦人科で受診してください。