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「乳がん検診」について医師が解説!マンモグラフィとエコー検査の違いとは?

 公開日:2023/08/18
「乳がん検診」について医師が解説!マンモグラフィとエコー検査の違いとは?

乳がん検診では何がわかる?Medical DOC監修医が産婦人科や健康診断の乳がん検診で発見できる病気や検査結果の見方・再検査の内容などを解説します。

影山 広行

監修医師
影山 広行(医師)

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CT,MRI,PETなどの画像診断が専門、PET-CTを含めた健診、生活習慣治療、アンチエイジング、スポーツ医学などの実績も豊富
保有資格
放射線診断専門医
核医学専門医
PET核医学認定医
日本医師会認定産業医
日本医師会認定健康スポーツ医
抗加齢医学専門医
日本スポーツ協会公認スポーツドクター

乳がん検診とは?

乳がん検診の目的は、乳がんによる死亡率を減少させることです。
そのためには早期発見・早期治療がとても重要で、適切な治療によって治癒の確率も高くなります。

乳がん検診とはどんな検査?

乳がん検診(一次検診)と乳腺X検査(マンモグラフィー)の二種類があります。異常なしと診断された場合は、ひとまず安心ですので今後も定期的に検診を受けましょう。要精密検査と診断された場合には、乳がんの可能性がありますので精密検査(二次検査)を受けてください。精密検査(二次検査)で本当に乳がんかどうかを確かめます。異常なし(良性の病変)と診断された場合は今後も定期的な検診を欠かさずに行ってください。乳がんと診断(確定診断)されて場合には、医療機関で治療を開始します。

乳がん検診の費用・保険適用の有無

自己負担の場合、マンモグラフィ検診5,000円前後・超音波検診(エコー)3,500円前後です。
自治体が行っている「住民検診」などの乳がん検診はマンモグラフィ検査が中心で、対象は40代以上の女性です。自治体によっては、30代の女性でも、超音波(エコー)検査による乳がん検診が受けられるところもあります。費用は自治体や年齢によって自己負担金が異なりますが、無料~3,000円程度です。

乳がん検診はいつから・何歳からどれくらいの頻度で受けるべき?

乳がん検診が推奨されるのは40歳以上の症状のない女性です。
2年に1度定期的に受診することが推奨されています。

乳がん検診の種類

乳がん検診で行われる乳房超音波(エコー)検査とマンモグラフィの違いについてみていきましょう。

乳房超音波(エコー)による乳がん検診

乳房超音波(エコー)検査とは、超音波という耳にきこえない高い周波数の「音」ですので、放射線被ばくはありません。腫瘍の特徴がわかりやすく、乳がんやそれ以外などの腫瘍の質的診断に有用です。

マンモグラフィによる乳がん検診

マンモグラフィ検査とは、乳房専用のレントゲンで、乳がんや初期の乳癌を疑う石灰化、局所的非対称性陰影などの所見を発見します。乳房全体をプラスチック製の板で挟み薄く伸ばして、2方向からレントゲンを撮ります。乳房を薄く拡げることで病変を見つけやすくします。
個人差はありますが、乳房を圧迫するので痛みを感じる人が多い傾向があります。

乳がん検診の結果の見方と要精密検査と言われたら

ここまでは乳がん検診について基本的なことを紹介しました。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

乳がん検診の結果・判定・カテゴリーの見方

カテゴリー分類 検査結果の説明 判定区分
カテゴリー1 異常なし 異常所見はありません。 A1
カテゴリー2 良性 異常所見はありますが、明らかに良性と診断できるものです。精密検査の必要はありません。 A2
カテゴリー3 良性
しかし悪性を否定できず
異常所見があり、良性の可能性が高いですが悪性(乳がん)も否定できません。精密検査を受けてください。 G2
カテゴリー4 悪性の疑い 異常所見があり、悪性(乳がん)の可能性が高いです。早急に精密検査を受けてください。 G2
カテゴリー5 悪性 異常所見があり、ほぼ悪性(乳がん)と考えられます。早急に精密検査を受けてください。 G2

マンモグラフィ検査所見

よくみられる所見 所見説明
石灰化 乳房内部に輝度の高いカルシウムが沈着したと考えられる部分が点状や線状の影にみられます。良性疾患でも悪性疾患(乳がん)でもみられることがあります。影の形状や分布範囲などをもとに悪性の可能性を判定しています。
腫瘤 白い塊状の影です。良性疾患でも悪性疾患(乳がん)でもみられることがあります。影の形状や濃度などをもとに悪性の可能性を判定しています
局所非対称陰影
(FAD)
腫瘤ほどはっきりした境界をもたない白い影です。良性疾患でも悪性疾患(乳がん)でもみられることがあります。影の形状や周囲の乳腺の様子などをもとに悪性の可能性を判定しています。

乳房超音波検査所見

よくみられる所見 所見説明
乳腺のう胞
(疑い)
乳管がのう状に拡張した状態です。乳管内部に水分がたまることが原因とされています。一般的に良性であることが多く、袋の中身はただの水分なので治療の必要はありません。
ただし、のう胞内に腫瘤(疑い)がある場合は良性の乳頭腫や頻度は少ないもののがんの可能性があります。
乳頭腫
(疑い)
乳管やのう胞内にできる乳管の表面の細胞が盛り上がって増殖するものです。乳頭から血性分泌物がでる原因になることがあります。一部に初期の乳がんとの区別が難しいことがあります。
乳腺線維腺腫
(疑い)
30代位の女性に多い良性の腫瘤です。乳腺とその周辺の線維成分が共に増殖して、乳腺内に丸くて弾力があり触ると良く動くしこりができるのが特徴です。小さいものであれば治療の必要はなく、経過を観察します。
2cm以上になる場合や急に大きくなる場合は乳腺科の受診が必要となります。受診の要否は判定区分を参照してください。
石灰化
(疑い)
乳房内部に輝度の高いカルシウムが沈着したと考えられる部分が点状や線状にみられる状態です。様々な原因で石灰化が生じますが、多くは良性であり放置しても問題ありません。しかし中にはがんに伴って生じる石灰化があります。精密検査受診の要否は判定区分を参照してください。
腫瘤
(疑い)
乳房内で、他の細胞とは異なる組織の塊がみられます。良性・悪性いずれの場合もありますので詳しい検査が必要です。乳腺科を受診してください。
乳管拡張症
(疑い)
乳管が拡張している状態です。乳腺の分泌過剰や、炎症によるもの、腫瘍などが原因で拡張します。多くは無症状ですが、乳頭から茶褐色や血液が混じった分泌物を生じる場合は、早急に受診が必要です。
乳腺症
(疑い)
30~50歳代の女性によくみられるホルモンバランスが崩れることによって乳腺に生ずる様々な良性の病変の総称です。痛みを伴ったりしこりができることもあります。受診の要否は判定区分を参照してください。

乳がん検診の再検査・精密検査内容(MRI/CT/細胞診/組織診など)

乳がん検診では、マンモグラフィ再検査、エコー検査、病理検査(細胞診・針生検など)、乳房MRI検査などの検査を行います。
検査費用は、保険診療でマンモグラフィ2,500円前後、エコー検査は2,000円前後、細胞診、組織検査は2,000円~12000円前後、MRI検査は10,000円~15,000円程度です。
お近くの、乳腺科、乳腺外科、乳腺外来を標榜している医療機関を受診してください。
はっきりした腫瘍がある場合はできるだけ速やかに医療期間を受診してください。また、腫瘍がはっきりしない場合でも2ヶ月以内の受診をおすすめします。
乳がんの治療には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法(内分泌療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的治療など)があり、それぞれの治療を単独で行う場合と、複数の治療を組み合わせる場合があります。治療の内容は「がんの種類」、「がんの進行度」、「治療を受ける体全体の状態」を総合的に判断して、最良と考えられる治療を選択します。

乳がん検診でわかる病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「乳がん検診」で発見できる病気を紹介します。
どのような症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

乳がん

乳がんは乳腺組織にできる癌で、主に乳管から発生し、女性のみと思われがちですが、稀に男性も発生することがあります。男性も、女性と同様に多くは乳管からがんが発生します。乳がんの発生には、女性ホルモンのエストロゲンが深く関わっています。体内のエストロゲンが多い、エストロゲンを含む経口避妊薬、閉経後の長期のホルモン補充療法、初経年齢が低い、閉経年齢が高い、出産経験がない、初産年齢が高い、授乳経験がないなどが乳癌の発生リスクを高めます飲酒、閉経後の肥満、運動不足といった生活習慣も乳がんを発生するリスクも高めます。乳がんになった血縁者がいることも乳癌発生のリスクとなり、BRCA1、BRCA2という遺伝子の変異が知られています
治療法には、手術(外科治療)、放射線治療、薬物療法(内分泌療法、化学療法(抗がん剤治療)、分子標的治療など)などがあります。
しこりなどの気になることがある場合は自己判断せず、乳腺科、乳腺外科、乳腺外来を標榜している医療機関を受診しましょう。

乳腺線維腺腫

乳腺線維腺腫は10~20歳代の女性によくみられる乳房のしこりで、女性ホルモンのバランスが影響していると考えられています。線維腺腫は2~3cm以上に大きくならず、1/3~2/3ぐらいの割合で自然に小さくなり目立たなくなります。線維腺腫をそのままにしておいても、40~50歳代になるころには消失することが多いです。
念のために細胞診を受けておき、細胞診の結果、線維腺腫とはっきり診断されたら治療の必要はありません。
しこりなどの気になることがある場合は自己判断せず、乳腺科、乳腺外科、乳腺外来を標榜している医療機関を受診しましょう。

「乳がん検診」についてよくある質問

ここまで検診の内容や発見できる病気などを紹介しました。ここでは「乳がん検診」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

妊娠中や授乳中に乳がん検診を受けても問題ないでしょうか?

影山 広行影山 広行 医師

妊娠期は乳房の張りなど違和感が出てくるため乳がん検診を希望される方も多く、乳がん検診を受診できます。マンモグラフィは放射線を使用し、被爆の問題がありますが、放射線量としてはごく微量で、妊娠と知らずにマンモグラフィ検診を受けたとしても全く問題になりません。超音波検査も乳がん検診で問題なく行える検査方法です。
ただし妊娠の経過とともに乳腺組織が発達して、マンモグラフィではデンスブレスト(高濃度乳房)となり、超音波検査でも乳腺が著しく厚みを増し、正常の乳腺とは違うため、診断が難しくなります。
授乳中も同様に乳腺組織が発達しているため、診断が難しくなりますが、半年程度経過すれば検査への影響は少なくなるとされています。

乳がん検診は痛いと聞くのですが痛みが少ない検査方法はありますか?

影山 広行影山 広行 医師

生理前から生理中は乳房が張ることが多く、乳房を圧迫する際に痛みがより強く出ることがあります。痛みが不安な方は、この期間は避けて受診しましょう。
費用が気にならなければ、超音波検査やMRI検査での乳がん検診も可能です。

乳がん検診はマンモグラフィとエコー検査両方を受けるべきですか?

影山 広行影山 広行 医師

乳がん検診はマンモグラフィ検査が国際基準ですが、マンモグラフィ検査に「超音波検査」を加えたり、超音波検査のみとしているところもあります。
マンモグラフィ検査のみのグループと、マンモグラフィ検査に超音波検査を加えたグループを比較した大規模な臨床研究では、がんの発見率が超音波検査を加えたグループの方が1.5倍高かったという報告もあります。

乳がん検診はいつから受けるべきですか?20代の女性でも必要ですか?

影山 広行影山 広行 医師

乳がん検診が推奨されるのは40歳以上の症状のない女性です。ただし、家族に乳がんや卵巣がんにかかった方がいる場合には、20代でも受診をおすすめします。 40歳未満の方は、乳腺エコーが第一選択です。

まとめ 乳がん検診で乳がんを早期発見

乳がんは日本の女性のがんの中で頻度が高く、死亡原因の上位に位置します。無症状のうちに検診を受診すれば早期発見につながり、適切な治療によって治癒の確率も高くなります。
早期の乳がんは自覚症状がありません。しこり、乳房のひきつれ、乳頭から血性の液が出る、乳頭の湿疹やただれなどは乳癌が疑われる症状なので、すぐに医療機関を受診する必要があります。
乳がん検診(マンモグラフィ)で100%乳がんが検出されるわけではありません。検診から次回の検診までの間にブレスト・アウェアネス、すなわちご自分の乳房の状態を知り、乳房の変化に気をつけ、変化に気づいたらすぐ医師へ相談し、40歳になったら2年に1回乳がん検診を受けることで乳癌の早期発見の確率が高まります。

「乳がん検診」で発見できる病気

「乳がん検診」から医師が発見できる病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

乳がん検診は乳腺に特化した検査なので、乳腺疾患以外の偶発症が見つかることはほぼありません。

この記事の監修医師