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「腹膜がん」が進行すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/02/21
「腹膜がん」が進行すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

腹膜がんは胃や肝臓など、腹部の臓器の全体・または一部を覆っている膜に発生するがんです。

男女比は1:3と女性の罹患率が多い病気で、50~60代に発生しやすいといわれています。

今回は腹膜がんの主な症状や年齢との関係性、検査や治療方法についてなど詳しく解説していきます。

症状に心当たりのある方だけでなく、腹膜がんを詳しく理解していない方にも読んでいただきたい内容になっているので、参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

腹膜がんとは?

ベテラン医師

腹膜がんとはどのような病気ですか?

腹膜は、胃・肝臓・小腸・大腸など腹部の臓器の全体・または一部を覆っている薄い半透明の膜のことです。腹膜がんはそこに発生するがんを指します。
漿液性腺がん(しょうえきせいせんがん)に分類されるがんで、卵巣がんと似ているといわれています。そのため、検査や治療方法も卵巣がんと同様に行われることが多いです。
腹膜がんは希少がんとよばれ罹患者はそこまで多くありません。それゆえ詳しく理解されていないことから、発見が遅れてしまうというケースもあります。

腹膜がんになる原因は何ですか?

腹膜がんは、消化器系や婦人科系など近い組織に発生したがんが剥がれ落ちることで転移して発生することが多いです。そのため、他のがんにも共通していえる喫煙・過度な飲酒・偏った食生活などの生活習慣が原因となって引き起こされるといえます。
特に喫煙は百害あって一利なしともいわれ、他の病気を発症するリスクがあるため医学的にもおすすめできません。加工肉や添加物など発がん性があるといわれる食品の摂りすぎにも注意が必要です。また、肥満の方もがんに罹りやすいというデータがあります。
適度な運動はがんのリスクを下げてくれるので、無理のない範囲で継続的に行うと良いでしょう。運動が苦手な方は、自宅でストレッチをする・近場は車に乗らず歩くことから始めてみてください。

腹膜がんが進行した際にはどのような症状がみられるのでしょうか?

腹膜がんが進行した際に現れる主な症状は下記の通りです。

  • お腹の張り
  • 腹痛
  • 腰痛
  • 不正出血
  • 排泄時の異常

卵巣がんなどの女性生殖器に発生するがんと症状が似ているの特徴があります。ただし腹膜がんの場合、これらの自覚できる症状が現れた際は既に病状が進行している状態といえます。
自己判断が非常に難しい病気であるため、医師の適切な診断が早期発見の鍵であるともいえるでしょう。

腹膜がんは初期症状としてどのような症状があるか知りたいです。

胃腸症状や便秘、腹痛などは腹膜癌と分かる前に臓器症状として診られる腹膜がんは他の部位に発生したがん細胞が転移して引き起こすことが多い病気です。症状が出たときには既に病状が進行しているケースも多く、初期症状が現れることはほとんどないとされています。
ただし、転移元の癌が増大していることによる症状を感じるケースがあります。胃腸症状・便秘・腹痛などは腹膜癌と分かる前に臓器症状として診られることがあるでしょう。
自治体などで行われているがん検診にも含まれていないため発見できる機会が少なく、見つかったときには既に末期だというケースも少なくありません。

腹膜がんの年齢の関係とリスク

お腹が痛い女性

腹膜がんを発症するのは何歳くらいの方が多いのでしょう?

発症年齢は50~60歳代以降が多いです。ただし、若い方に発症しないというわけではありませんので注意する必要があります。
先述した通り、腹膜がんは他の臓器にできたがん細胞が転移して発生することがある病気です。胃がんや婦人科系のがんは若い方の罹患率も増加傾向にあるため、「若いから大丈夫」と過信しすぎないようにしましょう。

腹膜がんが進行した場合のリスクを教えてください。

腹膜がんが進行している場合は命にかかわるリスクもあります。進行してからの発見となった場合は手術をすることが困難なため、ほとんどの場合放射線治療や抗がん剤などの科学治療が行われます。物理的に取り除けない以上、上記の治療によってがんが小さくなることを期待するしかありません。
また腹膜がんが見つかった際には、他の臓器への転移がみられるケースも多いです。このように、がんの発見が遅れてしまうことは命を脅かすリスクが上がってしまうことを覚えておきましょう。

腹膜がんの受診目安や検査・治療方法

闘病生活

腹膜がんはどのタイミングで受診すると良いのでしょうか?

受診のタイミングを掴むのは非常に困難な病気です。良好な予後のために早期発見をしたいところですが、初期症状がほとんどないことも特徴なので、自覚して受診するのは難しいかもしれません。
腹膜がんは卵巣がんや卵管がんと同時または臓器切除術後、病理での診断によって見つかることが多い病気です。
卵巣がんも多くの場合症状が出る頃には進行期になっており、生理不順・不正出血・下腹部痛など女性器疾患特有の症状が現れた際はがんである可能性も0ではないため、早めに婦人科を受診してください。

腹膜がんの検査方法が知りたいです。

腹膜がんの検査方法は卵巣がんと同様であることが一般的です。

  • 腹部の触診
  • 内診
  • 直腸診
  • 超音波検査
  • CT・MRIによる画像診断

腹部の触診はがんによる腫れがないかをチェックするために行います。内診・直腸診も同様です。超音波検査は腫瘍の大きさや内容(種類)まで調べられるため、実施されることの多い検査方法といえます。
CT検査では肺やリンパ節などの遠隔部位への転移がみられないか調べることが可能です。MRI検査は骨の内部など細かいところのがんの性質などの情報まで得られます。正確な診断は適切な治療につながります
検査には時間がかかるものもあるため億劫に感じる方もいるかもしれません。しかし、寛解を望むためには検査はとても重要な過程であるといえます。

腹膜がんにはどのような治療方法がありますか?

主な治療方法は外科手術と抗がん剤投与です。外科手術では、子宮や卵巣など関連する部位の全摘出を行うこともあります。ただし、繰り返しになりますが腹膜がんは進行期に見つかることが多いため、発見時には外科手術が困難なケースもあることを覚えておきましょう。
外科手術が困難な場合は、他の治療方法で腫瘍減量をはかります。抗がん剤が合えば完全寛解を望むことも可能です。良好な予後のためには、経験豊富で確かな情報を持った婦人科医の適切な診断と治療が重要であるといえます。

腹膜がんの治療に伴う副作用があれば教えてください。

副作用が現れる治療方法は抗がん剤投与が挙げられます。抗がん剤投与による副作用は、自覚できるものと病院での検査で判明するものの2種類です。自覚できる副作用は下記の通りです。

  • 吐き気
  • 食欲不振
  • 胃や胸のむかつき
  • 倦怠感
  • 脱毛
  • むくみ

人によっては手足にしびれが生じるなど、副作用の内容や程度には個人差があります。反対に自覚するのは難しく、検査で判明する副作用は下記の通りです。

  • 肝機能・腎機能障害
  • 白血球・好中球・血小板の減少
  • 貧血

副作用は軽度であれば自然に治まります。重篤な副作用が生じた場合は、薬剤の変更や減量を行い、それでも改善しない場合は治療の中断となるケースもあり得ます。抗がん剤治療を行う際は事前に医師と相談しながら、抗がん剤に対する理解を深めていくことが重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

腹膜がんは命を脅かすリスクのある怖い病気ではありますが、適切な治療を受けることで完全寛解を望めます。
発見時には既に進行期であることも多いです。初期症状がほとんどないことから、早期発見できる例は稀だとされています。
ただ卵巣がんと類似しているという特徴があるため、生理時以外の出血や下腹部痛など女性器疾患特有の症状が現れた際は、早めに婦人科を受診するようにしてください。

編集部まとめ

運動へ参加
腹膜がんは1:3の割合で女性に多い希少ながんで、50~60歳代の方に発生しやすいとされています。卵巣がんに類似していて、検査や治療方法は同じであることが多いです。

初期症状がほぼなく、自覚できる症状が出たときには進行しているケースもあります。予後が厳しい病気ともいわれていますが、治療が合えば完全寛解も可能です。

治療には副作用を伴うこともあります。副作用が辛い場合にはその旨をしっかりと医師に伝え、対策を立ててもらいましょう。

がんの治療は長期戦であることがほとんどです。自らの行動が大切な身体を守る鍵となります。

早期発見・早期治療が寛解への鍵となるので、腹部や女性器などに違和感があれば早めに受診することを心がけましょう。

この記事の監修医師