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「転移性肺がん」の症状や原因はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/09/29
「転移性肺がん」の症状や原因はご存知ですか?医師が監修!

肺がんは、世界中で多くの人々が直面する深刻な健康問題の一つです。特に、転移性肺がんは他の部位のがんが肺に転移することで発症します。そのため、転移性肺がんの診断や治療には一層の注意が必要です。

この記事では、転移性肺がんの原因・症状・治療方法について詳しく解説します。

転移性肺がんに関する正確な知識を持つことで、早期発見や適切な治療への一歩となることを願っています。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

転移性肺がんの原因や症状

診察

転移性肺がんとはどのような病気ですか?

転移性肺がんとは、他の部位(例:乳腺・大腸・腎臓など)で初めて発生したがんが、さらに進行して肺に広がった結果、肺に新たに形成されるがんのことを指します。この転移は、がん細胞が血液やリンパの流れを利用して移動することで起こります。
肺は体の中で大量の血液が流れる臓器です。そのため他の部位からのがん細胞が肺に到達しやすい環境が整っています。がん細胞が肺に到達すると、肺の組織内で増殖し、新たな腫瘍を形成する場合があるのです。
この転移性肺がんの発症は、がんの発生源となるがんの種類・進行度・ステージによっても異なります。例えば、腎臓がん・悪性黒色腫・骨肉腫のがんは初期段階であっても肺に転移しやすいという特性を持つことが知られています。このため、これらのがんが発見された場合、肺への転移の有無も同時に確認することが重要です。

原因を教えてください。

転移性肺がんは、他の部位で発生したがん細胞が血液やリンパ系を通じて肺に移動し、そこで増殖することで発症する病気です。
がん細胞は、他の正常な細胞とは異なり、増殖や移動の能力が非常に高いとされています。これにより、がん細胞は元々の部位から血管やリンパ管に侵入することで体内を移動できます。
この移動の過程で、がん細胞は肺という血流の中心となる臓器に到達し、そこで新たな腫瘍を形成することが多いのです。特に、大腸がん・乳がん・腎臓がんなどは、進行すると肺への転移が頻繁に報告されています。転移の過程やメカニズムは、がんの種類や進行の度合い、ステージによっても異なるため、定期的な健康診断や検査が非常に重要です。

どのような症状が出るのですか?

転移性肺がんの症状は、原発性肺がんと似ており、咳・息切れ・胸痛・喀血などが主な症状として挙げられます。しかし、初期段階では症状が出にくく、他部位のがんの検査や治療の過程で偶然発見されることも多いです。
また、症状の出方は転移の位置や大きさ・数によっても異なります。症状が出る場合、それは転移がんの大きさや位置、周囲の組織や器官への影響によるものです。

原発性肺がんとの違いを教えてください。

原発性肺がんは、肺の細胞が変異してがんとなるもので、最初から肺で発生します。一方、転移性肺がんは、他の部位で発生したがんが肺に転移してきたものです。治療戦略や予後もこれらの違いによって異なります。
具体的には、原発性肺がんは肺の特定の部位での治療が中心となりますが、転移性肺がんの場合は、元々がんが発生した部位におけるがんの治療と併せて行うことが多いです。また、転移性肺がんの診断や治療のアプローチは、原発部位のがんの種類や特性によっても変わることがあります。

転移性肺がんの検査や治療方法

電子カルテ

どのような検査が行われますか?

転移性肺がんの診断では、以下の検査が行われます。

  • 胸部レントゲン
  • CTスキャン
  • PETスキャン
  • 気管支鏡検査
  • 組織生検

胸部レントゲン・CTスキャン・PETスキャンは、いずれも画像に基づいて転移性肺がんの診断を行う検査方法です。これらの画像診断によって、腫瘍の有無や腫瘍の位置・大きさ・形状などを確認するとともに、転移の可能性についても診断できます。
また、気管支鏡検査は直接肺の内部を観察することで、異常な部位や腫瘍を発見し、その腫瘍の組織を採取できる検査です。最後に、組織生検は腫瘍の組織を採取し、病理学的に転移性肺がんであることを確認する検査です。これらの検査により、転移性肺がんの診断やその進行度の評価が行われます。

治療方法を教えてください。

転移性肺がんの治療方法は、原発部位のがんの種類・ステージ・転移の範囲や数・患者さんの健康状態などによって異なります。以下は主な治療方法とその特徴です。

  • 放射線療法
  • 化学療法
  • 分子標的治療薬
  • 免疫療法

放射線療法は、放射線を使用して、転移した腫瘍を縮小または除去する治療方法です。特定の部位に高精度で放射線を照射することで、周囲の正常な組織へのダメージを最小限に抑えられます。化学療法は薬物を使用してがん細胞の成長や分裂を阻止する治療方法です。全身に作用するため、体内の複数の部位に転移したがん細胞にも効果を示すことが期待されますが、副作用も伴うことがあります。
分子標的治療薬は、特定のがん細胞の特性を標的とした薬物治療です。正常な細胞には作用しづらいため、副作用が化学療法に比べて少ないとされています。免疫療法は、体の免疫システムを活性化してがん細胞を攻撃する治療方法です。特定の免疫チェックポイントを標的とする薬物を使用し、体自身の免疫応答を強化してがん細胞を排除することを目指します。
これらの治療方法は、1つの治療法のみに頼って治療を行うとは限りません。患者さんの状態やがんの特性に応じて、単独または組み合わせて行われることがあります。

手術が行われるケースもあるのですか?

転移性肺がんの治療として手術が行われることはあります。手術が選択される主なケースは、転移腫瘍の転移が肺の一部に限られていて、他の部位に広がっていない場合です。このような場合、手術によって転移腫瘍を完全に除去することが可能であり、がんの進行を抑制することが期待されます。
また、他の治療方法での効果が期待できない場合にも、手術が選択されることがあります。例えば、放射線療法や化学療法などの他の治療方法が適用できない場合や、これらの治療に反応しない場合には手術が検討されるでしょう。
手術の目的は、転移腫瘍の完全な除去を行い、症状の緩和を目指すことです。しかし、手術の適応は患者さんごとに異なります。転移の範囲・数・患者さんの健康状態・原発部位のがんの状態など、多くの要因を考慮して、医師と患者さんが共に手術の適応を検討する必要があります。

転移性肺がんの原因となりやすいがんや早期発見

診察

肺に転移しやすいのはどの臓器のがんですか?

大腸がん・乳がん・腎臓がん・骨がん・皮膚の悪性黒色腫(メラノーマ)は、特に肺への転移が多く報告されているがんです。これらのがんが肺に転移しやすい理由として、がん細胞が血流を介して他の部位に広がる性質を持っていることが挙げられます。
肺は体内の血流の大部分が通過する臓器です。そのため、がん細胞が血流に乗って肺に到達し、そこで増殖する可能性が高まります。このような理由から、これらのがんは進行すると、特に肺への転移のリスクが高まるといわれています。

転移性肺がんを早期発見する方法はありますか?

転移性肺がんの早期発見のためには、定期的な健康診断や画像診断(胸部レントゲンやCTスキャン)が有効です。特に、他の部位でがんの診断を受けている場合やがんの家族歴がある場合は、定期的な検査を受けることが推奨されます。
また、咳・息切れ・胸痛などの症状が現れた場合は、速やかに医師の診察を受けることが重要です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

転移性肺がんは、他の部位のがんが進行することで発症することが多い病気であり、早期発見・早期治療が非常に重要です。そのため、定期的な健康診断や自身の体調の変化に注意を払うようにしましょう。
また、がんの診断や治療を受けている方は、医師とのコミュニケーションを大切にし、疑問や不安を積極的に相談してください。健康を守るために、自身の体と向き合うことの大切さを忘れずに、日々の生活を過ごしてください。

編集部まとめ

医療従事者
この記事を通じて、転移性肺がんの原因・症状・検査方法・治療方法などについて詳しく解説しました。

転移性肺がんは、他の部位のがんが肺に転移して発症する病気です。転移性肺がんの診断や治療には、医療技術の進歩により多くの選択肢が増えてきました。

しかし、早期発見が最も重要であり、定期的な健康診断や自身の体調の変化に注意を払うことが必要です。

この記事の監修医師