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「胃がんで胃の3分の2を摘出した場合の生存率」はご存知ですか?【医師監修】

 公開日:2024/09/02
「胃がんで胃の3分の2を摘出した場合の生存率」はご存知ですか?【医師監修】

胃がんになった場合、進行度合いによっては手術で胃の3分の2を摘出することがあります。3分の2は大きな数字のため、手術後の生存率が気になる人もいるでしょう。

本記事では、胃がんで胃の3分の2を摘出した後の生存率をご紹介します。また、胃がんの手術・治療法・ステージごとの特徴なども詳しく解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

胃がんとは

胃がんは、胃の壁の内側を覆っている粘膜の細胞ががん化し、増殖したものです。
がんが大きくなるにつれて、粘膜から粘膜下層、固有筋層、漿膜へと広がっていきます。また、さらに進行すると大腸・膵臓・横隔膜・肝臓にも広がる病気です。
がん細胞がリンパ液や血液に入ると、胃から離れた臓器でも転移が起こる可能性があります。

胃がんで3分の2摘出した場合の生存率

胃がんの生存率は、がんのステージや治療方法によって異なります。
胃がんで胃の3分の2を摘出する手術を行う場合、ステージ2かステージ3のケースが少なくありません。
ステージごとの生存率については後で詳しく解説しますが、ステージ2の5年生存率は59.7%で、ステージ3の5年生存率は37.5%です。
ただし、ステージ2やステージ3の場合でも胃がんの部位によっては胃をすべて摘出する場合もあります。

胃がんの手術・治療法

胃がんの手術や治療法にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的には次のようなものがあります。

  • 低侵襲手術
  • 胃全摘
  • 噴門側胃切除
  • 幽門側胃切除
  • 内視鏡的治療
  • 化学療法
  • 放射線療法

それぞれの手術や治療法について詳しく解説します。

低侵襲手術

低侵襲手術は開腹せずに行う手術で、身体への負担が少ないことや術後の回復が早いことなどがメリットです。
具体的には、腹腔鏡手術やロボット支援下手術などがあります。腹腔鏡手術では胃にカメラ(腹腔鏡)を挿入し、映像を見ながら鉗子や超音波メスなどを操作する手術方法です。
ロボット支援下手術では、鉗子・メス・カメラは手術支援ロボットに接続され、医師はロボットを操作して手術を行うことが特徴です。

胃全摘

胃全摘は、食道と胃の接合部である噴門と、胃と十二指腸の接合部である幽門を含めた胃全体を切除する手術です。
胃の上部に腫瘍がある進行胃がんや、早期がんでも胃の上部に腫瘍があり、幽門側の胃を半分以上残すことが難しい場合などに選択されます。
胃全摘を行った場合の再建術としては、食道と空腸でつなぎ合わせるとともに、空腸同士もつなぎます。

噴門側胃切除

噴門側胃切除は胃の入り口、つまり食道と胃の接合部である噴門側を切除する手術方法です。
噴門側の胃を3分の1から2分の1程切除し、残りの胃を温存できます。胃の上部に限られている早期胃がんや、食道と胃の接合部にできたがんの一部に対して選択されます。
胃全摘に比べると体重減少や貧血が起こりにくいことがメリットです。
一方、温存した胃に新たながんができる可能性があるため、定期的に経過を観察する必要があります。

幽門側胃切除

幽門側胃切除は、胃の出口側である胃と十二指腸の接合部である幽門側を切除する手術方法です。
噴門を含め、胃の出口側を3分の2から5分の4程度切除する手術を行います。噴門にかからない早期胃がんや胃の上部にかからない進行胃がんに対して行われる胃切除法です。
再建方法はいくつかありますが、噴門側の残胃と十二指腸または小腸をつなぎ合わせる方法や、胃と空腸をつなぎ合わせる方法などがあります。

内視鏡的治療

内視鏡的治療は、内視鏡を使用して胃の内側から胃がんを切除する方法です。
ほかの手術に比べると身体への負担が少なく、胃がそのまま残るため、食生活への影響も少ないメリットがあります。
ただし、すべての胃がんに行えるわけではなく、がんが粘膜層にとどまっているごく早期の胃がんに行われる治療です。

化学療法

化学療法は薬物療法ともいわれ、抗がん薬や分子標的薬などの薬剤を使用してがんの進行を抑えたり、症状の緩和を目指したりする治療法です。
化学療法は、手術でがんを取りきることが難しい場合や再発した場合、また手術後の再発予防を目的として行われます。
さらに、リンパ節転移がある場合は手術前に行われることもあります。

放射線療法

放射線治療は、エックス線・電子線・ガンマ線などの放射線をがん細胞に照射して、がんを治療する方法です。
胃がんの治療法では手術が行われることが一般的なため、補助的な治療法として選択されるケースがあります。
具体的には、進行がんや再発したがんに対する補助的な治療です。また、症状緩和を目指して行われるケースもあります。

胃がんのステージごとの特徴と生存率

胃がんのステージは主に1〜4期までですが、がんの深さ・ほかの臓器への転移・リンパ節への転移などに応じてさらに細かく分けられます。
ここでは、胃がんのステージごとの特徴と生存率をご紹介します。

ステージ1(A期・B期)

胃がんのステージ1期ではA期とB期があります。ステージ1のA期はがんが粘膜層にとどまった状態でリンパ節やほかの臓器への転移はありません。
ステージ1のB期は、がんが粘膜下層にとどまった状態で、2つのリンパ節への転移が認められる傾向にあります。
ステージ1のA期・B期の5年生存率は82%です。

ステージ2(A期・B期)

ステージ2もA期とB期に分けられます。ステージ2のA期では、がんが粘膜層または粘膜下層にとどまっており、3〜6個のリンパ節への転移が見られる状態です。
ステージ2のB期ではがんが固有筋層に達しており、1〜2個のリンパ節への転移が認められます。ステージ2の5年生存率は59.7%です。

ステージ3(A期・B期・C期)

ステージ3はA期・B期・C期の3つに分けられます。
ステージ3のA期はがんが固有筋層に達しており、リンパ節転移は7〜15個あるほか、遠隔転移は見られない状態です。
ステージ3のB期は、がんが漿膜下層に達しており、リンパ節転移は7〜16個まで増えています。
ステージ3のC期はがんが胃の表面に出てほかの臓器に広がった状態で、リンパ節転移は7〜16個以上の場合もあります。ステージ3の5年生存率は37.5%です。

ステージ4期

ステージ4期は、胃がんが胃の壁を越えて広がり、胃から離れたほかの臓器にも転移がある状態です。転移した臓器によってさまざまな症状が出る場合があります。
手術ができない場合が多く、化学療法・放射線治療・苦痛を緩和する対症療法などが行われます。ステージ4の5年生存率は6.2%です。

胃がんで3分の2摘出した場合の生存率についてよくある質問

ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「胃がんで3分の2摘出した場合の生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がん手術の後遺症にはどのようなものがありますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

胃がん手術の後遺症としては、次のようなものがあります。

  • 小胃症状
  • 体重減少
  • ダンピング症状
  • 貧血
  • 逆流性食道炎

小胃症状は、手術により胃の一部やすべてを失うことにより、すぐにお腹がいっぱいになって食事摂取量が減少する症状です。また、手術後には体重減少の症状が見られることもあります。ダンピング症状は、再建術により以前より急速に食物が腸内に流れることにより、食後30分以内に冷汗・頻脈・動悸などが発生する症状です。ほかには、貧血や逆流性食道炎、下痢などの後遺症が発生する可能性もあります。

胃の摘出手術後に再発することはありますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

胃の摘出手術を行っても再発や転移することがあります。再発が起こるのは、手術した時点ですでに転移していた微小ながんがあったり、血中や骨髄に潜んでいたがんが転移して大きくなったりする場合があるからです。早期胃がんでは再発が起こりにくいですが、ステージが進行するにつれて再発する確率は高くなります。

編集部まとめ

本記事では、胃がんで胃の3分の2を摘出した後の生存率をご紹介しました。ステージ2だった場合、5年生存率は59.7%で、ステージ3では37.5%です。

胃がんの症状は特徴的なものが少なく、自覚症状が出た頃には進行している場合も多くあります。定期的な検査を受けることが早期発見のためには重要です。

胃がんと関連する病気

「胃がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

胃がんと関連する病気には胃潰瘍や逆流性食道炎があります。これらの病気から胃がんに進行する場合もあるため、定期的な検査を受けることがおすすめです。

胃がんと関連する症状

「胃がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 食欲不振
  • 胸やけ
  • 胸の不快感
  • 黒色便

胃がんは早い段階では自覚症状がほとんどありません。もし上記のような症状が長引いたり、気になったりする場合、早めに消化器内科または消化器外科へ行き相談しましょう。

この記事の監修医師