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様々な病気が考えられる血便や下血、その受診先とは

 更新日:2023/03/27

もし、お尻を拭いた紙が真っ赤になっていたとしたら。痔だとすれば、受診先は肛門科です。その一方、腸の中から出血している可能性もあります。肛門科で診られるのは、どの範囲までなのでしょう。場合によっては、消化器系のクリニックに相談すべきでしょうか。この判断基準を「幕張ももの木クリニック」の武藤先生に伺いました。

武藤頼彦

監修医師
武藤 頼彦(幕張ももの木クリニック 副院長)

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東邦大学医学部卒業。千葉大学医学部附属病院食道・胃腸外科(旧・第二外科)や各医療機関で消化器系の診療を積んだ後の2020年に現職へ。身近なかかりつけ医として、高水準の医療提供に努めている。医学博士。日本外科学会認定専門医、日本消化器外科学会認定専門医、日本消化器内視鏡学会認定専門医。日本大腸肛門病学会会員。

消化器と肛門の双方を診られるとベスト

消化器と肛門の双方を診られるとベスト

編集部編集部

血便や下血って、大腸が原因となることもありますよね?

武藤頼彦武藤先生

大いにあり得ますが、胃や小腸の可能性も捨てきれないです。一般に、黒い色の便だったら、肛門からみて「奥の方の異常」、つまり胃や小腸の異常を疑います。逆に鮮明な赤色をしていたら、肛門かその近くの異常が疑われます。

編集部編集部

つまり、便が赤ければ肛門科、黒ければ消化器科?

武藤頼彦武藤先生

どこで何が起きているかは、診てみないとわかりません。ですから、肛門科と消化器科の両方を標榜しているクリニックが理想的です。なお、医療制度の改定により、大きな病院での初診に制限が課せられるようになりました。そのため、初手としては幅広く診てくれるクリニックを受診しましょう。

編集部編集部

守備範囲の広い医院が近くにない場合、どうやって判断すればいいですか?

武藤頼彦武藤先生

その場合、内視鏡を扱えて、専門的な肛門科の知識も有しているクリニックなら万全です。その意味で最も好ましいのは、「内視鏡も扱える肛門科」でしょうか。また、受診前に「便の様子をスマホなどで撮影する」ことを推奨します。いずれの標榜科でも、医師が画像で便の様子を見れば、診断予測の助けになると思います。

編集部編集部

各医師が、自分の得意分野に偏った診断を付けようとすることはないのですか?

武藤頼彦武藤先生

全くない話ではないと思います。消化器の疾患と痔を併発していたときが怖いですよね。その意味でも、腸内と肛門の両方を調べるべきでしょう。死に直結する病気は腸内に生じるので、やはり内視鏡で診ておきたいところです。そして「スマホで撮った写真」は、内視鏡検査の必要性を図る重要な手がかりになります。

出血を伴う消化器系疾患

出血を伴う消化器系疾患

編集部編集部

ちなみに、出血を伴う消化器の病気は何がありますか?

武藤頼彦武藤先生

それこそ多岐にわたりで、網羅するのは大変です。一般に頻度が高い症例としては、「炎症によってただれた腸壁から血が出ている」か、「ポリープや腫瘍の先が便とこすれることで傷ついて出血しているか」です。

編集部編集部

そして、なぜ炎症を起こしているのかは一概に言えないということですか?

武藤頼彦武藤先生

そうですね。大腸の血管が詰まることによって炎症が起きる「虚血性大腸炎」や大腸憩室(だいちょうけいしつ)食中毒自己免疫疾患などが疑われます。

編集部編集部

一方のポリープや腫瘍も、原因は様々ですよね?

武藤頼彦武藤先生

出血に限って言えば、ポリープよりがんの方が著しいです。問題は「どこのがんから出血しているか」ですが、胃がんがかなり減ってきています。おそらく、ピロリ菌の除菌が功を奏しているのでしょう。逆に大腸がんは増えている印象です。内視鏡は、発見と同時に切除ができますので、有効な検査・治療方法といえるでしょう。

編集部編集部

原因が不明ということはあり得るのでしょうか?

武藤頼彦武藤先生

いつの間にか「治っている」ということは考えられますが、そうなると原因が追えません。ただし、「出血が止まった」ことをもって「治った」とは言いきれないので、ご注意ください。きちんと調べたうえで「治っていた」のであれば、安心していただいて結構です。

出血を伴う肛門の疾患

出血を伴う肛門の疾患

編集部編集部

続いて、出血する痔の種類についてもお願いします。

武藤頼彦武藤先生

出血を伴っているとしたら、基本的には「切れ痔」か「いぼ痔」です。これらは診察すれば鑑別できますし、いずれの場合でも治療成績は良好です。問題なのは、根本原因を抱えたまま再発することですね。具体的な例としては、便秘による力みや下痢の勢いによる受傷などです。

編集部編集部

消化器と肛門のどちらもが出血原因であることも考えられるのですよね?

武藤頼彦武藤先生

そうですね。実際、肛門科の先生なら内視鏡も扱えると思います。ですから、今回の結論としては「肛門科と消化器科の両方を標榜しているクリニックが安心」ということになるのでしょう。なお、大きな病院だからといって肛門科を有しているとは限りらないので、事前に調べておきましょう。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

武藤頼彦武藤先生

患者さんが便の様子からご自身で「どのような病気なのか」を調べようとしても、難しいと思われます。そこで時間を割くよりは「スマホで撮影」して、最寄りの医療機関へご相談ください。

編集部まとめ

肛門科は専門性が高いだけに、「きちんと見られる医師の数」が少ないということでした。したがって、肛門科の医師が所属する消化器科や内科も少ないということです。他方で、肛門科の医療機関には肛門科の医師がいます。また、内視鏡を扱える場合が多いとのこと。そう考えると、受診先としては、肛門科に分がある印象です。なお、病気の種類については精通する必要はなく、医師に任せましょう。

医院情報

幕張ももの木クリニック

幕張ももの木クリニック
所在地 〒262-0032 千葉県千葉市花見川区幕張町6丁目79−17
アクセス JR総武線「幕張駅」 徒歩5分
診療科目 内科、肛門科、消化器科、婦人科、外科、美容皮膚科

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