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「大腸がん」と単純糖質の摂取量に関連なし、ただし女性は「直腸がん」リスク上昇傾向

 公開日:2024/01/05

国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループは、「糖質摂取と大腸がんの関連を部位別に解析したところ、単純糖質の摂取量が多い女性は直腸がんのリスクが上昇傾向を示した」と発表しました。この内容について甲斐沼医師に伺いました。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。2023年、TOTO関西支社健康管理室産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

研究グループが発表した内容とは?

今回、国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループが発表した内容について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループは、日本人における単純糖質の摂取と大腸がんとの関連性を検討しました。

今回の研究では、1995年および1998年に全国10地域の保健所管内に在住していた45~74歳の男性4万2405例、女性4万8600例の合計9万1005例を対象におこなわれました。調査開始時の食事摂取頻度調査票の回答をもとに、ブドウ糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖といった6種類の単純糖質摂取量と、合計単純糖質、合計果糖の摂取量を推定して五分位に分け、最も摂取量が少ない第1五分位群を対照群としました。

解析の結果、男女ともに各単純糖質、合計単純糖質、合計果糖の摂取量と大腸がん罹患については、有意な関連は認められませんでした。ただし、大腸がんの部位別に解析すると、女性の直腸がんと合計単純糖質摂取量については、摂取量が多い群ほど罹患リスクは有意な上昇傾向を示したことがわかりました。

今回の結果について、研究グループは「単純糖質の摂取量と大腸がん罹患に明確な関連は示されなかった点は、欧米の先行研究とも結果が一致していた。一方で、日本人中高年女性の直腸がんに関しては、合計単純糖質摂取量とリスク上昇との関連がみられた」と結論づけています。また、男性ではなく女性にこうした傾向がみられたことについては、「女性は男性よりも糖質を多く摂っていたこと、摂取源は菓子類が多かったことが影響した可能性がある」と指摘しています。さらに、部位で違いがみられた理由については「日本人の場合、単純糖質の主な摂取源の1つに果物がある。果物の予防的な働きが結腸と直腸で異なる可能性がある」と考察しています。

大腸がんとは?

今回の研究対象になった大腸がんについて教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

大腸がんは、直腸と結腸からなる大腸に発生するがんで、良性のポリープががん化して発生するものと、正常な粘膜から直接発生するものに分類されます。日本人はS状結腸と直腸にがんができやすいと言われています。大腸の粘膜に発生した大腸がんは大腸の壁に深く侵入し、やがて大腸の壁の外まで広がり腹腔(ふくくう)内に散らばります。さらに、リンパ節転移をしたり、血液の流れに乗って肝臓、肺など別の臓器に遠隔転移したりします。

症状については、早期では自覚症状はほとんどありません。代表的な症状として、血便や下血がみられます。また、進行してくると腸閉塞となり、便は出なくなり、腹痛や嘔吐(おうと)などの症状が起こります。⼤腸がんは男性では11⼈に1⼈、⼥性では13⼈に1⼈が⼀⽣のうちに⼀度はかかると言われています。

今回の発表内容への受け止めは?

国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループが発表した内容についての受け止めを教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼先生

大腸がんは世界的に見て、がん罹患率の3位、がん関連死亡の2位に位置し、日本人では大腸がんは臓器別で男女ともに2番目に多いとされています。そのような状況の中で、大腸がんの発症率と肉類やアルコールの摂取などを含む食生活との関連性はこれまで多く報告されてきた一方で、糖質との関連を検討した報告は乏しく、特にアジア人を対象とした既報は症例対照研究に限られており、エビデンスが不足していた現状がありました。

今回の研究成果を通じて、特に日本人の中高年女性の直腸がん罹患率に関しては、合計単純糖質摂取量とリスク上昇との関連性が認められたと結論づけられており、今後の周知啓蒙が期待されます。ただし、本研究内容の限界点として、追跡期間中の食事変化の影響を排除しきれていないこと、あるいは単純糖質の摂取量を推定する際に計算対象となった食品が限定されていたことなどが挙げられているので、今後さらなる研究の追求や症例数の蓄積が必要であると考えられます。

まとめ

国立がん研究センターがん対策研究所の研究グループは、糖質摂取と大腸がんの関連を部位別に解析したところ、単純糖質の摂取量が多い女性は直腸がんのリスクが上昇傾向を示したと発表しました。大腸がんは日本のみならず世界的にみても罹患率が高い疾患のため、今回の研究は注目を集めそうです。

この記事の監修医師