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血液がサラサラになる薬の服用中に「内視鏡検査」は受けられますか?

 更新日:2023/03/27

出血を伴う手術の場合、抗血栓薬の服用が問題になります。血液がサラサラであるほど、止血しにくいからです。では、内視鏡検査ならどうなのでしょうか。「見て検査するだけ」なので、抗血栓薬の服用を問わないのでしょうか。今回は、この疑問に「たけうち内科クリニック」の竹内先生が回答します。

竹内 俊文

監修医師
竹内 俊文(たけうち内科クリニック)

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三重大学医学部卒業。三重大学大学院医学系研究科修了。大学病院や総合病院の勤務を経た2021年、三重県津市に「たけうち内科クリニック」を開院。わかりやすい説明と苦痛の少ないカメラの検査を心がけている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本内科学会認定医。日本胆道学会、日本臨床腫瘍学会、日本血液学会、日本リンパ網内系学会の各会員。

内視鏡検査と抗血栓薬の関係

内視鏡検査と抗血栓薬の関係

編集部編集部

血液がサラサラになる薬を飲んでいると、外科手術を受けられないと聞きました。

竹内 俊文先生竹内先生

はい。その理由は、出血が止まりにくくなるからです。今回の主題である内視鏡検査ですが、通常であれば、検査中に出血はしません。問題はポリープなどが見つかったときで、大きさによっては内視鏡で切除することができるのですが、このとき血液がサラサラになる薬、つまり抗血栓薬を飲んでいると出血リスクが高まります。

編集部編集部

つまり、内視鏡検査も受けられないということですか?

竹内 俊文先生竹内先生

胃腸内視鏡と大腸内視鏡で違ってきますね。胃のポリープは“良性のまま”でいることが多いので、めったに切除しません。したがって、胃腸内視鏡検査で抗血栓薬の服用を止めるケースも、ほとんどないでしょう。例外は、「擦れて出血しているようなポリープ」や「悪性が疑われるポリープ」です。これらが事前にわかっていて内視鏡で切除する場合は、抗血栓薬を飲まずに施術することもあります。

編集部編集部

他方の大腸内視鏡検査は、事情が違うのですね?

竹内 俊文先生竹内先生

大腸のポリープはがんになりやすいので、見つけたら切除することが多いでしょう。しかし、「大腸ポリープがあるのかどうか」は事前にわかりにくいです。大腸ポリープがないかもしれないのに抗血栓薬の服用を止めるかどうかは、担当する医師によって考えが分かれるところだと思います。

編集部編集部

異常のないことを前提にしているのですね。もし、抗血栓薬を飲んで検査して、大腸ポリープを発見した場合は?

竹内 俊文先生竹内先生

その場では切除しません。二度手間になるかもしれませんが、後日、薬の服用をやめた状態で内視鏡を挿入して、改めて切除します。「抗血栓薬を飲んで検査する派」の医師は、この手間を必ず説明して、確認をとると思います。どちらかというと、この進め方が現在の主流という印象です。抗血栓薬の必要な人が例え一時的にでも服用をやめると、むしろ脳梗塞や心筋梗塞のリスクを上昇させます。

編集部編集部

ほかにも、内視鏡検査と抗血栓薬の関係で知っておきたいことがあればお願いします。

竹内 俊文先生竹内先生

処方されている抗血栓薬の数によって、内視鏡検査の進め方が変わるかもしれないことでしょうか。単剤で処方されている場合、飲んでいても内視鏡で組織を採取するくらいのことはできます。一方、2剤以上の抗血栓薬を処方されている場合はケース・バイ・ケースですね。内視鏡検査の目的や病変の状態によって異なります。

血糖の薬の方が服用を中止するケースは多い

血糖の薬の方が服用を中止するケースは多い

編集部編集部

医師から受けている薬の処方は、抗血栓薬に限らないですよね?

竹内 俊文先生竹内先生

そうですね。内視鏡検査で問題となるのは、血糖を下げる薬でしょうか。内視鏡は空腹の状態で挿入しますので、いわゆる「食後の高血糖状態」が起きません。であれば、血糖を下げる薬は当日に限り“不要”なのですが、これも医師によって判断が変わると思います。

編集部編集部

高血糖が起きないのに薬を飲むと、胃カメラに影響が出るのですか?

竹内 俊文先生竹内先生

薬を飲んだことによる「低血糖状態」が懸念されます。低血糖状態では、意識障害やけいれんなどが起きかねないのです。場合によっては、死亡リスクすらあります。加えて、麻酔をして検査をしていますので、なんの影響がどこに出ているのか把握しにくくなってしまいます。血糖を下げる薬に限って言えば、医師と相談のうえ“飲まずに検査する”ことの方が多いでしょう。

編集部編集部

なるほど。処方を受けている薬がある場合は、事前に申告しておくべきですね。

竹内 俊文先生竹内先生

はい。もしくは、事前の診察時に「お薬手帳」をご持参ください。ただし、「お薬手帳」には市販薬が反映されていないかもしれません。市販薬を常用されている場合は、念のために、その報告もしておきましょう。

編集部編集部

実際に服用を止めるかどうかは、そのときに判断するということですね。

竹内 俊文先生竹内先生

はい。一般的には、薬を飲んだまま内視鏡検査をするケースの方が多いでしょう。患者さんが“良かれ”と思って自発的に服用を止めることは、ぜひとも控えていただきたいですね。そもそも、必要があるから薬を処方しているのであって、中止するかどうかは医師の判断に委ねるようお願いします。

サプリメントや飲み物についての注意点

サプリメントや飲み物についての注意点

編集部編集部

薬とは呼べないサプリメント類についてはどうでしょうか?

竹内 俊文先生竹内先生

ビタミン剤などであれば、そこまで神経質になる必要はありません。しかし、血圧や血糖値をコントロールする目的のサプリメントなら、医師として事前に知っておきたいです。そのうえで、サプリメントや漢方薬を止めるかどうかは、そのときの判断になります。

編集部編集部

普通の飲み物なら、内視鏡検査の当日に飲んでも大丈夫でしょうか?

竹内 俊文先生竹内先生

お水やお茶、スポーツドリンク類なら構いません。ですが、コーヒーや牛乳のような「濃い色の付いた飲み物」は控えましょう。胃にそのまま残っていると、検査の妨げになります。また、固形物の入った飲み物もダメです。缶や粉状のスープ類などは控えてください。仮にコーンのツブが胃壁に張り付いていたとしたら、その部分が見られなくなります。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

竹内 俊文先生竹内先生

基本方針は「薬などを飲んだまま内視鏡検査をする」です。処方を受けているとしたら、その方が患者さんの健康のためにもなります。ただし、事前検査などでポリープや病変の可能性が高いとわかっていれば、服用をやめるか基礎疾患に対する別の手段を講じたうえで、慎重に内視鏡の検査や切除を進めましょう。

編集部まとめ

抗血栓薬を飲んでいても、内視鏡検査は受けられるとのことでした。しかし、実際に服用をストップするかどうかは、医師が決めることのようですね。その際、「あるかどうかわからないポリープ・病変対策より、確実にかかっている基礎疾患の対策、つまり薬の服用を優先する」という考え方があることを知っておきましょう。「ポリープがあったら二度手間になる」のではなく、「患者の健康を優先した手順」ということです。

医院情報

たけうち内科クリニック

たけうち内科クリニック
所在地 〒514-1113 三重県津市久居野村町872-2
アクセス 近鉄名古屋線「久居駅」 徒歩12分
診療科目 内科、消化器内科、内視鏡内科

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