FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 【医師解説】大腸がんの早期発見にもつながる「内視鏡検査」とは? 自覚症状がなくても受けるべき?

【医師解説】大腸がんの早期発見にもつながる「内視鏡検査」とは? 自覚症状がなくても受けるべき?

 更新日:2024/01/29
内視鏡検査を医師が解説 痛みや違和感・自覚症状がなくても受けるべき?

早期がんの発見などに役立つ内視鏡検査。しかし、「苦しい」「怖い」などの理由で避けている人も多いのではないでしょうか? 実は、内視鏡の専門医は「自覚症状がなくても内視鏡検査を受診すること」を推奨しています。その理由について、末木内科医院の末木先生に教えていただきました。

末木 良太

監修医師
末木 良太(末木内科医院)

プロフィールをもっと見る
2002年3月北里大学医学部医学科卒業。山梨医科大学医学部附属病院(現・山梨大学医学部附属病院) 第一内科、共立蒲原総合病院、地域医療機能推進機構 山梨病院で勤務。2011年 山梨大学大学院医学工学総合教育部 修了。2023年7月 末木内科医院胃腸科血液科 開業。医学博士、日本内科学会認定内科医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本ヘリコバクター学会H.pylori(ピロリ菌)感染症認定医、日本消化管学会胃腸科認定医、禁煙サポーター、難病指定医。

消化器内科の内視鏡検査ってどんな検査? 胃カメラ・大腸カメラなど内視鏡検査の種類や受けるべき年齢は?

消化器内科の内視鏡検査ってどんな検査? 胃カメラ・大腸カメラなど内視鏡検査の種類や受けるべき年齢は?

編集部編集部

内視鏡検査とはどのような検査のことを言うのですか?

末木良太先生末木先生

内視鏡とは細長い管の先端に小型カメラを内蔵した医療機器のことで、鼻や口、肛門から挿入して病気を発見する検査のことを指します。さらに、一部組織を採取して診断する、内視鏡の先端からいろいろな処置具をだしてポリープや早期がんなどを組織診断することもあります。

編集部編集部

内視鏡検査は胃カメラや大腸カメラと同じものですか?

末木良太先生末木先生

胃カメラや大腸カメラと内視鏡検査は、厳密にいうと違います。胃カメラは1950年に日本で開発されたもので、管の先端にスチルカメラと照明用ランプがついています。通常のカメラと同じように写真を撮り、あとで画像を確認するという仕組みでした。

編集部編集部

内視鏡はどのような違いがありますか?

末木良太先生末木先生

内視鏡は光を伝送する光ファイバーを用いた機器です。胃カメラと違いリアルタイムで観察や記録ができるもので、1960~1970年代周辺から普及してきました。このように厳密にいえば両者は違いますが、現在ではわかりやすくいうために上部内視鏡検査は「胃カメラ」、下部内視鏡検査は「大腸カメラ」という言葉が用いられるようになっています。

編集部編集部

胃や大腸のほかにも、内視鏡検査には種類があるのですか?

末木良太先生末木先生

内視鏡検査にはいろいろな種類があります。一般に「胃カメラ」という言葉が意味するのは主に食道、胃、十二指腸を観察する「上部消化管内視鏡検査」で、「大腸カメラ」が意味するのは大腸を観察する「下部消化管内視鏡検査」です。そのほかにも膵臓や胆道を調べる「膵臓・胆道内視鏡検査」、小腸を調べる「小腸内視鏡検査」、それから消化管のなかから超音波検査を行う「超音波内視鏡検査」などがあります。また小さなカプセルにカメラがついており、それを飲み込んで撮影する「カプセル内視鏡」などもあります。

特に自覚症状や胃腸の痛みがなくても病院で定期的に内視鏡検査を受けるべき理由とは? 早期発見・治療につながる病気を医師が解説

特に自覚症状や胃腸の痛みがなくても病院で定期的に内視鏡検査を受けるべき理由とは? 早期発見・治療につながる病気を医師が解説

編集部編集部

内視鏡検査はどのような人が受けるべきでしょうか?

末木良太先生末木先生

内視鏡検査の種類によって違いますが、たとえば「上部消化管内視鏡検査」なら、胸やけ、食事のときに食べ物が詰まる感じ、上腹部痛、吐き気、食欲不振、体重減少などの症状がある人は受けた方が良いでしょう。

編集部編集部

大腸を観察する「下部消化管内視鏡検査」はどうでしょうか?

末木良太先生末木先生

たとえば健康診断などで便潜血検査を行い、陽性反応が出た人は受けることをおすすめします。そのほか血便、便秘や下痢が続く、便が細くなった、粘液便が出る、腹痛や腹部膨満感がある、残便感があるといった人も受けた方が良いでしょう。

編集部編集部

そのような症状がなければ受けなくても良いのでしょうか?

末木良太先生末木先生

最近は減少傾向にありますがヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)に感染している人がいます。ピロリ菌に感染すると慢性胃炎を起こし、胃がんのリスク因子となります。なるべく若いうちにピロリ菌を除菌した方が将来的な胃がんリスクを減らせることが知られています。

編集部編集部

内視鏡検査を受ければピロリ菌の有無が分かるのですか?

末木良太先生末木先生

内視鏡で胃粘膜を観察すればピロリ菌がいるかいないかだいたい判断することができます。ですので、若いうちに一度は検査を受けることをおすすめします。

編集部編集部

そのほか、内視鏡検査を受けるメリットはありますか?

末木良太先生末木先生

下部消化管内視鏡検査は大腸がんの早期発見に役立ちます。大腸がんは良性のポリープが成長して発生することもあるので、良性のうちに切除してしまえば予防することができます。“便潜血反応陰性=大腸がんやポリープがない”ということではないので、大腸がんの発症率が上がる40歳になったら一度は下部消化管内視鏡検査を受けることをおすすめします。

編集部編集部

症状がない人は、どれくらいの頻度で受ければ良いですか?

末木良太先生末木先生

20歳を過ぎて一度上部消化管内視鏡検査を受け、ピロリ菌感染もなく特に大きな問題がないことが分かれば、その後は3年に一度くらいの頻度でよいでしょう。ピロリ菌がいる場合はなるべく早いうちに除菌し、胃炎の程度にもよりますが基本的には年に1回は内視鏡検査をした方が良いと考えます。定期的に検査を受ければ、もしがんが見つかったとしても内視鏡による治療で治癒が見込めます。

編集部編集部

下部消化管内視鏡検査も定期的に受けるべきでしょうか?

末木良太先生末木先生

以前日本では5mm以下のポリープはがんのリスクが低いため経過観察することが多かったのですが、今でも大腸がんの患者数は増えています。一方、アメリカでも2000年代大腸がんの方は増えていましたが「クリーンコロン」といってポリープを見つけたらすべて切除しキレイな腸にするというキャンペーンを行った結果、大腸がんによる死亡率が低下しました。現在、日本でもこの「クリーンコロン」の考え方が浸透しており、定期的にポリープができていないか検査し、見つかったら切除することは大腸がんのリスク減少に役立つと考えられています。

特に胃腸の痛みがない人が内視鏡検査を受ける時の注意点は? 胃カメラ・大腸内視鏡検査時の痛みを和らげる方法はある?

特に胃腸の痛みがない人が内視鏡検査を受ける時の注意点は?胃カメラ・大腸内視鏡検査時の痛みを和らげる方法はある?

編集部編集部

症状がない人が内視鏡検査を受けるときには、どんなことに注意すれば良いでしょうか?

末木良太先生末木先生

繰り返しになりますが、定期的に検査を受けるのを忘れないようにするということです。症状がないとつい検査を受けることをおろそかにしがちですが、知らないうちに体内で病巣が育っていることもあるので、必ず定期的に検査を受けましょう。また、親族が大腸がんになった場合には遺伝の可能性も考えられるので、そのような人も定期的に下部消化管内視鏡検査を受けることをおすすめします。

編集部編集部

「内視鏡検査は痛い、苦しい」という印象がありますが、どうしたらよいのでしょうか?

末木良太先生末木先生

確かに、上部消化管内視鏡検査に関しては痛みというよりは苦しさがあると思います。個人差がありますが一般的には若い人ほど嘔吐反射が強い傾向があります。ですが、内視鏡を受ける際に体位、呼吸の仕方、力を抜くタイミングなどポイントをおさえることで比較的楽にできることもあります。受ける際担当の先生とよく相談してください。

編集部編集部

下部消化管内視鏡検査が特に辛いと聞きます。

末木良太先生末木先生

以前は下部消化管内視鏡検査の際に空気を入れて観察していましたが、最近は施設によって炭酸ガスと言って空気の200倍ほど吸収されやすいものを使うことでおなかの張りに伴う痛み、吐き気などがほとんどでなくなっています。また鎮静薬を使用すれば、寝ている間に検査が終わり楽にできます。医療機関のなかにはそのような検査を行っているところもありますが、当然その薬によるデメリットもあるので、担当の先生によく確認してください。

編集部編集部

そのほか、痛みを和らげる方法はありますか?

末木良太先生末木先生

上部消化管内視鏡検査であれば、口からスコープを入れるよりも鼻から入れることで反射が起きにくく検査できます。また鼻から入れるような細い内視鏡を口から挿入することで、通常径のスコープと比較して楽に飲めることもあります。下部消化管内視鏡検査の場合は、一般的には少量の空気で管腔を確認しスコープを進めますが、浸水法という空気の代わりに水を注入しながらスコープを入れる方法もあり、こちらの方が痛みは出にくいと思います。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

末木良太先生末木先生

内視鏡検査は大変ですが、同時に非常に大事な検査でもあります。比較的楽に受けていただければその後の検査への抵抗も減ると思いますし、その積み重ねが将来的な消化器がんによる死亡率の減少につながります。ぜひ、担当の先生とよく相談していただければと思います。

編集部まとめ

内視鏡検査で辛い思いをした人は「もう二度と受けたくない」という気持ちがあるかもしれませんが、医療機関を変更することで意外と楽に受けられる、ということもあるようです。医療機関に一度相談し、定期的に検査を受けるようにしましょう。

医院情報

末木内科医院

末木内科医院
所在地 〒400-0845 山梨県甲府市上今井町950-1
アクセス JR身延線 甲斐住吉駅から車で5分
診療科目 一般内科、消化器内科、血液内科

この記事の監修医師