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内視鏡検査で服用する薬が緑内障を悪化させる場合も! 検査前に知っておきたい「自分の緑内障のタイプ」

 更新日:2023/03/27

内視鏡は消化管の異常を調べる検査です。しかし、内視鏡検査前に目の緑内障の既往歴を聞かれることがあります。その理由は、内視鏡に使われる一部の薬が緑内障の禁忌とされているからです。そこで今回、詳しい話を「にしむら内科クリニック」の西村先生に伺いました。

西村 大医師

監修医師
西村 大(にしむら内科クリニック 院長)

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滋賀医科大学医学部医学科卒業。市立敦賀病院での臨床研修医や各医療機関での内科勤務を経た2018年、埼玉県さいたま市に「にしむら内科クリニック」を開院。地方の基幹病院で得た経験を地域医療に活かしている。指扇病院内科の非常勤医師。日本内科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本医師会認定産業医、日本糖尿病協会認定療養指導医、難病指定医。

キーワードは「ブスコパン」と「閉塞隅角緑内障」

キーワードは「ブスコパン」と「閉塞隅角緑内障」

編集部編集部

内視鏡の検査前に、「緑内障の治療歴」を聞かれることがあるって本当ですか?

西村 大医師西村先生

はい。内視鏡検査の前処置で「ブスコパン」という消化管の緊張を抑えて内視鏡が通りやすくするための薬を投与することがあります。ところが、副作用として瞳を拡大させてしまうことがあり、一部の緑内障には好ましくないのです。

編集部編集部

「好ましくないタイプの緑内障」について教えてください。

西村 大医師西村先生

“閉塞”隅角緑内障」です。この診断がついているのに治療を済ませていないとしたらブスコパンの禁忌に該当するため、内視鏡検査時に申告してください。なお、内視鏡検査の問診票に記入欄が用意されていることもあるので、その際は記載をお願いします。

編集部編集部

その一方で、「内視鏡検査ができる緑内障」もあるのですか?

西村 大医師西村先生

はい。「“開放”隅角緑内障」です。ただし、「閉塞隅角緑内障」でも、治療を終えていれば内視鏡検査ができることもあります。不安でしたら、眼科の主治医に内視鏡検査をしても大丈夫か確認しておきましょう。

編集部編集部

ブスコパンを使わない内視鏡検査もあるのですか?

西村 大医師西村先生

あります。むしろ近年では、ブスコパンを使用しない施設が多いかと思います。当院でも原則使用していません。つまり、未治療の「閉塞隅角緑内障」があっても絶対に内視鏡検査を受けられないのではなく、多くの医療機関では対応が可能です。ちなみに、「問診票に緑内障の既往歴を確認する欄が設けられている」からといって、「ブスコパンを用いる内視鏡検査である」とは限りません。念のために確認しておくことも重要です。

知らない間に「閉塞隅角緑内障」にかかっていたら

知らない間に「閉塞隅角緑内障」にかかっていたら

編集部編集部

緑内障は、自覚が難しい病気だと聞きます。

西村 大医師西村先生

そうですね。緑内障になると、片方の目の視野がもう片方の目の視野を補うため、症状に気づきにくいのです。そこで問題となるのは、ご自身が「閉塞隅角緑内障」だと知らずに内視鏡検査を受けるケースです。

編集部編集部

つまり、内視鏡検査を受ける前に眼科を受診しておいた方がいいということですか?

西村 大医師西村先生

なんとも言えません。緑内障の主な自覚症状は「視野の欠け」です。そのため、もしなんらかの視野異常の自覚があったら、内視鏡検査前に申告していただけると助かります。そのときの内視鏡検査担当医の指示に従うのが確実です。

編集部編集部

異常の有無を確認するとしたら、目を優先すべきでしょうか? それとも、消化器を優先すべきでしょうか?

西村 大医師西村先生

具体的な弊害が起きている箇所の検査・治療を優先すべきだと考えます。例えば、胃腸や大腸の調子がすでに悪かったり、健診などで便潜血が認められていたりしたら、まずは消化器の医院を受診して、そのときに「実は見えの不具合がある」と申告する流れです。

編集部編集部

見えの不具合の方が気になる場合は、眼科受診を先にすべきだということですね?

西村 大医師西村先生

そうかもしれません。いずれ内視鏡検査を予定していて、「閉塞隅角緑内障」と診断された場合は、先に「閉塞隅角緑内障」を治しておきましょう。治療後であれば、ブスコパンを用いた内視鏡検査でも問題ありません。

普段から服用している薬も申告しておくべき

普段から服用している薬も申告しておくべき

編集部編集部

ブスコパン以外で、内視鏡検査に絡めて服用が問題になる薬はありますか?

西村 大医師西村先生

「血液をサラサラにする類の薬」でしょうか。いわゆる抗血栓薬と呼ばれますが、もし、内視鏡検査中に小さなポリープを見つけて切除した場合、この抗血栓薬を服用していると、切除跡からの出血が止まりにくくなってしまいます。ポリープの切除を希望される場合は、あらかじめ休薬していただくことが望ましいですが、休薬による塞栓症(脳梗塞や心筋梗塞など)のリスクが増えてしまうため、休薬には慎重な判断が求められます。

編集部編集部

先生の医院ではどうしていますか?

西村 大医師西村先生

塞栓症の発症リスクと、患者さんの考えによります。リスクが低く「二度手間が嫌だ」という患者さんに対しては、抗血栓薬の服用を止めて検査をおこないます。この場合、取り去るべきポリープが見つかった場合、その場で切除が可能です。他方、休薬による塞栓症のリスクが高い場合、もしくは患者さんが希望されない場合は、内服したまま検査をおこないます。その際ポリープが見つかっても切除はせず、後日、服用を止めて再施術します。抗血栓薬が他院から処方されている場合には、主治医にあらかじめ休薬ができるか確認したり、休薬できない場合やハイリスクの患者さんは専門病院へ紹介させていただいたりする場合もあります。いずれにしても、患者さんに十分ご説明させていただき、書面にて同意いただいたうえで検査・施術をします。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

西村 大医師西村先生

ブスコパンを用いた内視鏡検査は少数派になりつつありますが、事前に確認するにこしたことはありません。医院のサイトなどに「記載がない」としても、「用いていない」とは限らないので、問い合わせてみるのも1つの手です。

編集部まとめ

今では少数派になったとはいえ、ブスコパンという薬が「閉塞隅角緑内障」の禁忌になっているということでした。気をつけたいのは、「閉塞隅角緑内障」に気づいていない人が内視鏡検査を受けるケースです。ぜひ、この機会に“視野異常と消化管の検査”が全く無関係ではないことを知っておいてください。

医院情報

にしむら内科クリニック

にしむら内科クリニック
所在地 〒338-0832 埼玉県さいたま市桜区西堀5-3-40 中浦和クリニックモール内
アクセス JR埼京線「中浦和駅」 徒歩12分
JR武蔵野線「西浦和駅」 徒歩15分
診療科目 内科、消化器内科、小児科

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