大腸がんを早期発見できる大腸CTコロノグラフィってどんな検査?
「大腸CTコロノグラフィ」はあまり聞きなれない検査名ですが、大腸がんの早期発見に有用と聞きます。一体どういう検査なのか、内視鏡検査との違いとあわせて、メリットとデメリットなどを 「診療放射線技師」の隅田さんに伺いました。
監修放射線技師:
隅田 吉政(放射線技師)
CTコロノグラフィとは
編集部
CTコロノグラフィとは、どんな検査なのでしょうか?
隅田さん
CTで撮影した画像をコンピュータで画像処理することで、内視鏡で見ている様な3D画像を作成し、その画像をもとに腫瘍性病変などを診断する検査です。実際には内視鏡を挿入しないため「バーチャル大腸内視鏡検査」とも呼ばれています。
編集部
どのような病気が発見できますか?
隅田さん
大腸がんやポリープのほかに、腸管の狭窄や癒着も調べることができます。日本では大腸がんの術前検査として発展してきましたが、大腸がん検診としてCTコロノグラフィ検査を行っている施設は限られています。すでに欧米では普及が進んでおり、大腸がん検診への応用が一般的になっています。また大腸の診断だけでなく、CTで腹部全体を撮影するため、肝臓や膵臓、子宮や前立腺、腎臓など腹部臓器の診断が行えます。
編集部
どういう人におすすめの検査ですか?
隅田さん
内視鏡検査に比べ少ない痛みで検査が可能なため、高齢者や子宮内膜症の女性、腹部の手術歴のある方などはCTコロノグラフィ検査がおすすめです。また、内視鏡の下剤がどうしても苦手で飲めないという方にも、ぜひご検討いただきたい検査になります。
CTコロノグラフィ検査の流れ
編集部
検査の流れについて教えて下さい。
隅田さん
まず、検査前日から腸管の前処置として、便を少なくする検査食を食べていただきます。そして少量の造影剤(バリウム)や下剤を服用します。検査当日は絶食していただき、撮影前に腸の動きを抑える注射を行います。その後、細いチューブを肛門から挿入し、炭酸ガスを注入して大腸を膨らませます。撮影は仰向けとうつ伏せの2回行い、15分ほどで終了します。
編集部
CTコロノグラフィ検査のメリットを教えてください。
隅田さん
内視鏡の挿入が困難な方でも検査可能なのが、最大のメリットです。腸管が長かったり、癒着したりしている方でも検査できます。また、内視鏡検査に比べて下剤量が半分以下ですむため、日常生活への負担も軽減されます。さらに鎮静剤の必要がなく、体内に吸収されやすいガスで腸管を膨らませるため不快に感じにくいでしょう。あとは、内視鏡では見落とされがちな、大腸のひだの裏にある病変の観察において優れている点もメリットと言えます。
編集部
逆にデメリットはありますか?
隅田さん
ポリープの切除や細胞検査(生検)ができないのがデメリットになります。また、CT撮影を行うので最低限の被ばくを伴います。そのため妊娠中や妊娠の可能性のある方、一部のペースメーカーをつけられている方の検査はお断りする場合があります。また、平坦な形状の病変は検出しにくいというデメリットがあります。
大腸がん検診の大切さ
編集部
大腸がんになりやすいのはどんな人でしょうか?
隅田さん
お酒を毎日2合以上飲む方、喫煙者、肉類ばかり食べ、野菜・果物類をほとんど食べない方、座り仕事の方、運動習慣のない方、肥満・メタボの方、血縁者に大腸がんや大腸腺腫などの病歴がある方は大腸がんになるリスクは高いと言えます。特に40歳以上の方は性別に関わらず、生活習慣に気をつける必要があります。
編集部
大腸がんの患者数は増えているのでしょうか?
隅田さん
食生活の欧米化に伴い、年々増加しています。日本におけるがんが原因の死亡者数は、大腸がんは男性で3位、女性で1位と非常に多いのが現状です。一方で大腸がん検診の受診率は25%程度と低率で、便潜血反応陽性で精密検査が必要とされた方の受診率も50%程度となっています。大腸がんは早期発見・早期治療が重要で、進行すればする程その治療は大変なものとなります。
編集部
どうして検査の受診率が低いのでしょうか?
隅田さん
大腸内視鏡検査は痛いというイメージや恥ずかしいという気持ち、検査前の準備が大変というイメージが受診を躊躇する原因としてあげられます。また、便潜血検査で陽性でも、痔による出血と思ったり、自覚症状がなかったりすると、精密検査を受けないという自己判断をする方も多いようです。一方、大腸CTコロノグラフィ検査なら内視鏡検査よりも心理的負担が軽減されるとの報告があります。こうした状況から、人間ドックで内視鏡検査を希望されない場合のオプションとして臨床応用が始まっていて、今後の普及に期待したいところです。
編集部まとめ
CTコロノグラフィは、大腸がん検診の新たな検査方法として早期発見・早期治療に貢献する有用な検査である事が分かりました。大腸がんは年々増加傾向にあるとのことです。内視鏡検査に抵抗のある方は、一度CTコロノグラフィ検査について医療機関に相談して受けてみてはいかがでしょうか。