「肝臓がんの進行速度」は他のがんに比べどうなのか?特徴も医師が解説!

肝臓がんの進行速度と治療法は、患者さんの肝臓の機能によって変わることがあります。また、肝予備能とChild-Pugh分類も医師が患者に合った治療計画を立てる際に重要な指標となります。
本記事では、肝臓がんの進行速度について以下の点を中心にご紹介します。
- 肝臓がんの特徴
- 肝臓がんの進行度
- 肝臓がんの進行速度
肝臓がんの進行速度について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

監修医師:
本多 洋介(Myクリニック本多内科医院)
目次 -INDEX-
肝臓がんの特徴
肝臓は人体で大きな臓器の一つで、多くの重要な生理機能です。肝臓がんは大きく「肝細胞がん」と「胆内細胞がん」の二タイプに分けられます。 肝内胆管がんが肝臓の胆管を構成する胆管細胞から発生するということになります。 肝細胞がんは、肝臓の細胞から直接発生し、B型やC型の肝炎ウイルス感染、アルコールによる肝障害、非アルコール性脂肪肝疾患などが主な原因とされています。 一方、胆内細胞がんは肝臓の胆内細胞から生じ、特に進行が速いという特徴があります。肝臓は血管が複雑なため、手術が困難であり、治療法は患者さんの状態を考慮して慎重に選ばれます。 肝臓がんは、一度治療しても肝臓内で再発する傾向にあるため、肝臓がんの適切な対処は、患者さんの生活の質と将来の予後に大きく影響します。肝臓がんの進行度
肝臓がんの進行度は、がんの広がりや影響を受ける組織の範囲によって異なります。 以下で詳しく解説します。肝予備能
肝臓がん治療において、肝予備能は、治療方法を選択し、患者さんの安全性を確保するうえで決定的な役割を果たします。 肝機能の状態に応じて治療の適応を判断する「肝障害度」と、治療後の肝機能維持の見込みを評価する「Child-Pugh分類」が用いられます。 これらの分類は、肝臓の損傷程度をAからCまでの3段階に分け、治療の可能性を示します。 特に進行した肝硬変の場合、選択できる治療法は限られており、慎重な検討が求められるため、患者さんに適切な治療計画を立てることが、よりよい結果を得るために不可欠です。Child-Pugh分類
肝臓がん治療法を選定する際、「Child-Pugh分類」は肝機能の状態でも治療が可能かどうかの判断基準となります。 手術や焼灼療法、化学療法といった治療は肝臓に負担を与えるため、肝障害度が高い場合やChild-Pugh分類でCに該当する患者さんは、肝不全のリスクが高く、治療法が限られます。 特に肝障害度が高い患者さんでは、肝切除の範囲が限られることもあるため、肝機能を精密に評価し、患者さんに適切な治療計画を立てることが不可欠です。ステージ
肝臓がんの進行度は、ステージⅠ~ステージⅣまでのローマ数字で表され、ステージが進むに連れがんはより進行していることを示します。 特に肝細胞がんの場合、ステージにはがんの数、大きさ、脈管浸潤の有無、リンパ節や遠隔転移の状況が考慮されます。 日本では「臨床・病理原発性肝癌取扱い規約」や国際的には「TNM悪性腫瘍の分類」を用いてがんのステージが定義されています。 これにより、適切な治療方針が決定され、患者さんの予後に影響を及ぼすため、正確なステージングが重要です。肝臓がんの進行速度
肝臓がんはほかのがんよりも進行スピードが速く、多くの場合、初期には症状が現れにくいため診断が遅れやすいとされています。 ただし、進行の速さはがんの種類や肝臓の健康状態、ステージ、身体の免疫力、肝臓外への転移の有無によって異なります。 したがって、早期発見が肝臓がんの進行を遅らせ、治療効果を高める鍵となるため、リスクのある患者さんは特に定期的な健康診断を受けることが推奨されます。肝臓がんの診断・検査
肝臓がんはどのように診断・検査するのでしょうか?以下で詳しく解説します。エコー検査
肝臓がんの診断に用いるエコー検査は、体表に超音波を当てて内部を画像化し、肝臓内のがんの位置や大きさ、血管との関係などを詳しく調べます。 この検査は負担が少なく、特にウイルス性肝炎の既往がある患者さんに対してのスクリーニング手段となります。腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカー検査はがんの診断補助や治療効果のモニタリングに用いられる方法で、がん種に応じてタンパク質や物質を測定します。 肝細胞がんでは、AFP(アルファ・フェトプロテイン)、PIVKA-II(非ビタミンK依存性プロトロンビン)、およびAFP-L3分画といったマーカーを血液から検出します。CT・MRI検査
肝臓がんの診断には、造影剤を使用したCT検査やMRI検査が広く用いられます。 CT検査はX線を使って身体の断面を画像化し、がんの位置や進行度、周囲の臓器への影響を把握します。 一方、MRI検査は磁場と電波を活用し、放射線被ばくのない状態で体内を多角的に映し出します。肝臓がんの治療
肝臓がんの治療法について以下で詳しく解説します。肝切除
肝臓がんの治療での肝切除は、がんと周囲の肝組織を手術で取り除く方法です。 肝切は、がんが肝臓内にあり、3個以下の腫瘍がある場合に推奨されます。 脈管への広がりがあっても可能ですが、腹水がある場合は肝不全のリスクが高まるため、ほかの治療法が考慮されます。ラジオ波焼灼療法
ラジオ波焼灼療法は、針を腹部の皮膚からがん組織に直接挿入し、高熱を発生させてがん細胞を局所的に焼き滅する治療法です。 10〜30分程度で行われ、局所麻酔と鎮痛剤を使用して患者さんの不快感を軽減し、腫瘍を小さくします。肝動脈化学塞栓術
肝動脈化学塞栓術(TACE)は、抗がん剤と油性造影剤を混ぜた薬剤を肝動脈に直接注入し、その後塞栓物質で動脈を塞ぐ治療法です。この方法でがん細胞への血流を遮断し、薬剤によってがん細胞を死滅させます。Child-Pugh分類
肝臓がんの治療方針を決定する際、Child-Pugh分類は以下のように活用されます。 ・Child-Pugh A:肝機能が良好であるため、外科的切除や肝移植、ラジオ波焼灼療法(RFA)などの積極的な治療が適応されることが多い。 ・Child-Pugh B:中等度の肝機能障害があるため、治療選択肢が制限されることがあります。これらの患者には、肝動脈化学塞栓療法(TACE)や低リスクな治療法が選ばれることが多い。 ・Child-Pugh C:重度の肝機能障害があり、積極的な治療が困難な場合が多いため、症状緩和や支持療法が中心となることがある。肝移植
肝移植は、患者さんの肝臓を全て取り除き、ドナーからの健康な肝臓を移植する治療法です。日本では、近親者から肝臓の一部を提供する「生体肝移植」や脳死後のドナーからの「脳死肝移植」も行われていることがあります。 肝移植による治療は、ミラノ基準(5cmのがん1つ、または3cmのがんが3個以下)や「5-5-500基準」(5cm以内のがん5個以内、AFP500ng/mL以下)を満たす場合に適用されます。薬物療法
全身薬物療法では、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬を使用して進行性がんを治療します。 薬物療法は、肝切除や肝移植などほかの治療が適用できない場合、患者さんの身体の状態や肝機能が良好である(Child-Pugh分類A)場合に推奨されます。放射線治療
放射線治療は、標準治療としては確立されていませんが、手術や局所療法が困難な場合に利用されることがあります。 特に骨への転移がある場合や脈管内への広がりが見られるがんに対し、痛みの緩和やがんの進行を抑える目的で行われます。緩和ケア・支持療法
緩和ケア・支持療法は、がんと診断されたときから始まり、がんや治療による心身の苦痛や社会的な悩みを軽減させます。 これには、症状の管理や副作用の緩和が含まれ、終末期だけでなく治療全過程で利用可能です。肝臓がんの予後
肝臓がんの予後は病期によって異なります。 病期Ⅰでは3年生存率が約81.7%、5年生存率が44.5%、病期Ⅱでは3年生存率66.1%、5年生存率44.7%、病期Ⅲでは3年生存率36.6%、5年生存率27.1%となります。 特に病期Ⅳでは、3年生存率がわずか4.9%に留まりました。 肝臓がんはほかのがんよりも再発リスクが高い傾向にあり、長期的な観察と対策が必要とされています。肝臓がんについてよくある質問
ここまで肝臓がんの進行速度を紹介しました。ここでは肝臓がんについてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
肝臓がんの症状について教えてください。
根来 和輝 医師
肝細胞がんは、黄疸(皮膚や目が黄色くなる)、むくみ、かゆみ、だるさや倦怠感などの症状が現れることがあります。 また、肝細胞がんが進行すると、腹部にしこりや痛み、圧迫感が生じることがあるため注意が必要です。
肝臓がんの原因について教えてください
根来 和輝 医師
肝細胞がんの主な原因はB型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染です。 そのほかのリスク因子には、アルコール摂取、喫煙、肥満、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、糖尿病、男性であることもがんリスクを高める要因とされています。
まとめ
ここまで肝臓がんの進行速度についてお伝えしてきました。肝臓がんの進行速度についての要点をまとめると以下の通りです。
⚫︎まとめ
- 肝臓がんは大きく「肝細胞がん」と「胆内管細胞がん」に分けられる
- 肝臓がんの進行度は、肝予備能やChild-Pugh分類に基づいて評価され、ステージ1から4までのがんの広がりで定義される
- 肝臓がんはほかのがんよりも進行スピードが速いが、がんの種類や肝臓の健康状態、ステージ、身体の免疫力、肝臓外への転移の有無によってスピードは異なる
肝臓がんと関連する病気
肝臓がんと関連する病気は6個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。 具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。肝臓がんと関連する症状
肝臓がんと関連している、似ている症状は7個ほどあります。 各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。関連する症状
- 無症状
- 腹部のしこり
- 圧迫感
- 痛み
- 腹水・むくみ
- 黄疸
- 肝性脳症




