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「口腔がんの検査方法」はご存知ですか?検査の流れや注意点も解説!医師が監修!

 公開日:2024/06/14
「口腔がんの検査方法」はご存知ですか?検査の流れや注意点も解説!医師が監修!

口の中にできる口腔がんは、肺や胃など臓器にできるがんと比べて知名度が高くありません。初期の間は痛みがないことも多いので、がんが大きくなってから発見されることも多いようです。

口腔がんは初期に治療すれば5年生存率が90%以上と、予後が良好ながんです。しかし進行すると生存率が下がるうえに、手術で舌や顎などの大部分を取り除く場合があります。

失った部分は体のほかの部分を移植して再建しますが、顔の見た目が変わる・ものを飲み込みづらい・話しづらいなどの後遺症を避けることは難しいでしょう。ほかのがんと同じように、口腔がんも早期発見・早期治療が重要です。

この記事では口腔がんの検査方法・診断・口腔がん検診について解説します。早期発見に役立てていただければ幸いです。

熊谷 靖司

監修歯科医師
熊谷 靖司(歯科医師)

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熊谷歯科医院 院長

口腔がんとは

舌・歯肉・頬粘膜・唇・口腔底(下顎の舌と歯肉の間の部分)・硬口蓋(上顎の天井の固い部分)に発生するがんを、まとめて口腔がんと呼びます。口腔がんの中で患者数が多いのは舌がんで、全体の6割程度を占めています。

症状

口腔がんの初期は、口内の粘膜に白や赤の斑点ができたり、硬いしこりや盛り上がった部分ができたりするのが主な症状です。歯肉がんでは、歯がぐらぐらしたり、腫れや出血が見られたりする場合があります。痛みはないことが多いため、口内炎や歯周病と勘違いして放置されることが少なくありません。
ここに挙げる白板症・紅板症・扁平苔癬という口腔粘膜の病気があると、後にがん化する可能性があります。

  • 白板症:こすっても取れないザラザラした白い斑点ができる病変で、頬粘膜・舌・歯肉にできることが多いです。3~15%程度の確率でがん化することがあるので、がんの予防として切除する場合があります。
  • 紅板症:白板症と同じく頬粘膜・舌・歯肉にできる、表面がつるつるとした鮮紅色の病変です。約半数ががん化する危険があるため、切除するか経過観察が必要です。
  • 扁平苔癬:粘膜が角化して、白いレース状や網状の斑点ができる病気。びらんや潰瘍によって、痛みを感じたり食べ物がしみたりすることがあります。

口腔がんが進行すると、口が開けにくい・食事を飲み込みにくい・口臭が強くなるという症状のほかに、患部の痛みやただれなどが発生します。口腔がんは首のリンパ節に転移しやすいため、顎の下や首に腫れやしこりがある場合は注意が必要です。

原因

原因についてすべてが明らかになってはいませんが、口腔がんの発症に関係している要素は以下のとおりです。

  • 慢性的な刺激
  • 不衛生な口内環境
  • ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染
  • 喫煙
  • 飲酒
  • 炎症

合わない詰め物や尖ったむし歯などが口腔粘膜に慢性的に接触することで、口腔がんができやすくなります。ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染も口腔がんの原因になることが報告されており、口腔内の衛生状態が悪いとHPVに感染する確率が高まります。
喫煙は口腔がんの大きなリスク要因です。喫煙者は煙草を吸わない人と比べて口腔がんが発生するリスクが高いというデータがありますが、喫煙に加えて飲酒量も多い人は、このリスクがさらに増加します。

口腔がん検査の方法

口腔がんの検査は、視診や触診・病理検査・画像検査の3つです。まず視診・触診で粘膜の変化やしこりがないかを調べ、異常が見られた場合は病理検査を実施してがん細胞がないか検査します。さらにCT・MRI・PETなどの画像検査も行います。

視診・触診

口の中を見たり触ったりして行う検査です。口腔内の粘膜の色が白や赤に変わっている部分はないか、ほかの異常がないかを見て確認します。
粘膜にしこりや盛り上がりがないか、転移しやすい首のリンパ節に腫れがないかを触診します。

病理検査

視診や触診で異常があれば、がん細胞があるかを確認する病理検査が必要です。口腔がんが疑われる部分の粘膜を綿棒やブラシでこすって採取し、スライドガラスに塗って細胞を染色します。それを専門の医師が顕微鏡で観察して、がん細胞の有無を診断するのが細胞診という検査方法です。
細胞診は体に負担がかかりにくいというメリットがありますが、がん細胞を見落とす可能性があるため病変部の組織の検査も行います。麻酔をかけて、しこりなどがんが疑われる部分の一部をメスで切り取り、顕微鏡で調べてがん細胞があれば診断が確定します。

画像検査

がんの大きさや広がり方、リンパ節への転移などより詳しいデータを得られるのが画像検査です。口腔がんでは、以下のような画像検査を行います。

  • X線検査:顎の骨に転移しやすい歯肉がんなどの広がり具合を調べます。
  • CT検査:X線を照射して、体内の断面の画像を撮影する検査です。腫瘍の大きさ・位置・周囲の組織への広がり・リンパ節への転移を調べます。
  • MRI検査:MRI装置で電磁波を体に当て、体内の断面をさまざまな角度から撮影する検査です。腫瘍の大きさやリンパ節への転移の確認や、どのような治療を行うかを決めるなどの目的で行われます。
  • 超音波検査:超音波プローブという装置で体に超音波を放射し、反射してくる超音波を画像にして、腫瘍の大きさや転移の状態などを調べる検査です。
  • PET検査:全身のがんの状態を確認できる検査です。FDG(微量の放射性物質を加えたブドウ糖)を注射して、専用のカメラで撮影します。PET装置とCT装置を組み合わせたPET-CT装置を使用することも多く、より高い精度の診断が可能になりました。

口腔がん検査による診断・病期の決定

がんがどれだけ進行しているか、その程度を示すのが病期(ステージ)です。病期は国際対がん連合が定めたTNM分類によって、0〜IVの5段階に分けられます。

T(原発腫瘍)

最初にできたがんの、大きさや深さを表す指標です。Tis(上皮内にあるがん)・T1・T2・T3・T4a・T4bに分類され、数字が大きくなるごとにがんが大きく広がっていることを意味します。

N(所属リンパ節)

首のリンパ節への転移の有無や大きさ・個数を表す指標です。N0(リンパ節への転移がない)・N1・N2・N3に分類され、さらにN2はa~c・N3はa~bに細かく分けられます。数字が大きくなるごとにリンパ節への転移が大きくなることを意味します。

M(遠隔転移)

首のリンパ節以外の、遠くの臓器への転移の有無を表す指標です。以上のT・N・Mを組み合わせて病期を決定し、治療が行われます。

口腔がん検診の流れ・注意点

口腔がんの治療は外科手術が基本ですが、早期発見できれば切除範囲が小さく、嚥下障害や見た目の変化などの後遺症があまり残りません。放置しやすい口腔がんを早期発見するためには、口腔がん検診が有効です。

検診の流れ

検診では、最初に喫煙や飲酒などの生活習慣・過去の病歴・服用している薬について問診します。そして口の中全体を視診・触診して、前がん病変(現時点ではがんではないが、後にがんに進行しやすい病変)の白板症や紅板症がないか、しこりや盛り上がりがないか観察します。
口の中だけではなく、顔周りやリンパ節も腫れや痛みなどがないかチェックが必要です。もしがんの疑いがあれば、専門の医療機関で病理検査を行いがん細胞がないか調べます。

注意点

検診の注意点は、がんを発見できない可能性があるということです。小さいがんや見えにくいがんを発見できない場合がありますので、検診で異常なしの結果であっても、治らない口内炎など気になる症状があれば耳鼻咽喉科か歯科医院で相談しましょう。反対に、がんはなくても要精密検査の結果が出る場合もあります。

口腔がんの検査についてよくある質問

ここまで口腔がんの検査方法・診断・がん検診の流れなどを紹介しました。ここでは「口腔がんの検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

口腔がん検診は定期的に受けるべきですか?

熊谷 靖司医師熊谷 靖司(医師)

1年に一度は口腔がん検診を受けることをおすすめします。がん細胞ができてから検診で見つかるほど大きくなるまでには、通常5〜10年程度が必要です。そのため何も症状がなくても、定期的に検診を受けることでがんを早期発見することが可能になります。

気になる症状がある場合は何科を受診すればいいですか?

熊谷 靖司医師熊谷 靖司(医師)

口腔がんを疑うような症状があれば、耳鼻咽喉科か歯科医院を受診してください。

編集部まとめ

口腔がんの症状は粘膜の色の変化や、しこりや腫れですが、痛みがなく発見が遅れてしまうことも多いです。

口の中の粘膜に尖ったむし歯や詰め物などが当たっていたり、歯磨きの回数が少なかったり、過度の喫煙や飲酒をしたりすると口腔がんになる確率が高くなります。

口腔がんは体の中にできるがんとは違い、目で見える場所にできるので、早期発見しやすいがんです。

定期健診を受けるのはもちろん、普段から鏡で口の中をチェックして異常を見逃さないようにしましょう。

口腔がんと関連する病気

「口腔がん」と関連する病気は8個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

梅毒に感染すると唇・舌・上顎に固いしこりができて、その後に口の中や喉の粘膜が白くなり、ただれや痛みなどの症状が見られます。口腔カンジダ症は、舌に白い苔のようなものが付いたり、舌や上顎が痛んだりします。

口腔がんと関連する症状

「口腔がん」と関連している、似ている症状は13個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

これらの症状は口腔がん以外の病気でも見られるものですが、少し様子を見ても治らない場合は口腔がんの可能性があります。口内炎が2週間以上良くならないときは、病院で相談してみましょう。

この記事の監修歯科医師