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「紅板症」の症状・原因・見分け方はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/06/03
「紅板症」の症状・原因・見分け方はご存知ですか?医師が監修!

紅板症と聞いても多くの方はどのような病気なのか想像できないのではないでしょうか。紅板症は紅色肥厚症とも呼ばれる口腔粘膜疾患で、舌や歯肉(歯茎)などの口腔内の粘膜に鮮紅色の紅斑が発生します。

口腔粘膜疾患には口内炎・口腔乾燥症・ヘルパンギーナなど様々な病気が含まれ、一部がん化のリスクを伴う病気もあるため注意が必要です。

紅板症は口腔粘膜疾患の中でも発症率が低く、一般にはあまり知られていない病気です。今回はそのようなまれな疾患である紅板症について、特徴や症状といった基本的な知識だけでなく、がん化リスクや治療方法に至るまで詳しく解説します。

紅板症について詳しく知りたい方、口腔内に痛みや違和感がある方はぜひ参考になさってください。

酒向 誠

監修歯科医師
酒向 誠(酒向歯科口腔外科クリニック)

紅板症の症状と見分け方

頬に手を当てる女性

紅板症はどのような病気ですか?

紅板症は口腔粘膜疾患の一種で、「前がん病変」または「口腔潜在的悪性疾患」に分類されます。口腔粘膜疾患の中でも悪性または悪性に変化する疾患は従来「前がん病変」と「全がん状態」の2つに分類されていて、紅板症は前者の「前がん病変」に含まれていました。
その後、2017年にWHOが「前がん病変」と「前がん状態」をまとめて「口腔潜在的悪性疾患」と改称し、現在は紅板症を含め12の疾患がこれに該当します。紅板症はこの「口腔潜在的悪性疾患」の中でも悪性化率が高いので注意が必要です。

症状を教えてください。

口腔粘膜に発生する鮮紅色の病変で、舌や歯肉の粘膜が薄くなり刺激痛を伴うことが多いです。
患部はビロードのようになめらかで周囲との境界は明瞭ですが、一部にびらんや患部が盛り上がる顆粒状隆起が見られる場合もあります。同じ「前がん病変」に分類されている白板症と比べ非常にまれな疾患です。

紅板症ができやすい部位を教えてください。

口腔粘膜に広く発症する可能性がありますが、中でも軟口蓋(上顎)・口腔底粘膜(下顎)・舌の縁などに好発します。

紅板症と似た病気との見分け方はありますか?

類似した病気に、白板症・口腔カンジタ症(紅斑型)・扁平苔癬・口内炎などがあります。特に口内炎は一部が赤みを帯びた状態になる上に刺激痛も伴うため、紅板症とよく似ていて見分けるのが難しい病気です。
実際、口腔がんには口内炎と勘違いして発見が遅れるケースが多く見られます。口内炎は長くても2週間程で治癒するので、3週間以上の長期にわたって症状が継続する場合は注意しましょう。

発症の原因を教えてください。

正確な原因は判明していませんが、以下のような口腔内の慢性的な刺激によると考えられています。

  • 飲酒
  • 喫煙
  • 義歯の不適合
  • ビタミンA・Bの不足

他にも、発症者の約80%が50代以上の高齢者であるため、加齢も要因のひとつと考えられます。

紅板症の受診科と診断

聴診器とカルテ

受診するべき初期症状を教えてください。

以下のような場合は受診しましょう。

  • 刺激物や歯ブラシなどが触れた際に刺激痛がある
  • 口腔粘膜の一部が鮮紅色に変化している
  • 口内炎が治らない

このような症状が3週間以上続いている場合はもちろん、違和感がある場合は痛みが無くても受診することをおすすめします。

紅板症を疑う場合は何科を受診すれば良いでしょうか?

「口腔内に赤い斑点がある」「口内炎が2週間たっても治らない」など、違和感がある場合は口腔外科や耳鼻咽喉科を受診しましょう。歯科検診で口腔がんが見つかることもあるので、口腔内に違和感がある場合はまずかかりつけの歯科医院に相談してみても良いでしょう。
口腔がん検診を行っている歯科医院やクリニックもありますので、定期的な検診を受ければ安心です。

どのような検査で紅板症と診断されますか?

紅板症では以下のような所見がみられます。

  • 口腔粘膜の一部が鮮紅色である
  • 患部がなめらかなビロード状である
  • 周囲の粘膜との境界が明瞭である
  • 多くは刺激痛がある
  • 2週間ほど経過しても治癒しない

このような紅板症の所見が見られる場合、多くは擦過細胞診が行われます。擦過細胞診とは患部を綿棒やブラシなどで擦り、表面の細胞を採取するものです。
婦人科の細胞診などで主流な方法で、痛みはほとんど無いので安心してください。その後、必要に応じて患部組織を切除して生体組織診断が行われます。紅板症は悪性化リスクが高く、受診の段階でがん化していることも多いため診断は慎重に行われます。

治療方法を教えてください。

紅板症は白板症より発生頻度は低いですが、悪性化リスクが高いため、手術による切除が一般的です。手術を望まない場合や症状が軽度の場合は経過観察を行う場合もありますが、経過観察は長期に及ぶことが多く、治療の中断や終了後に悪性化することもあるので注意が必要です。
手術を行った場合でも、再発が無いか慎重に経過を観察する必要があります。既にがん化していた場合は口腔がんの治療に移行し、手術・放射線療法・化学療法を組み合わせた治療が行われます。
初期の小さな口腔がんであれば簡単な手術のみで治療でき、入院の必要が無いこともあります。後遺症も軽度に抑えられるので、早期の発見が非常に重要です。口腔がんの治療後は継続的な摂食や嚥下のリハビリテーションが必要な場合もあり、長期的に病気と付き合っていくことになります。

紅板症のがん化リスクと自然治癒

医師

紅板症は治りますか?

紅板症は一般的に手術によって治癒します。しかし、悪性化率が高いため手術後も継続的に経過を観察することが大切です。
口腔がんは初期における5年生存率は90〜95%ですが、進行がんでは50%ほどに低下します。進行スピードも早いので、なるべく早く治療に入ることが重要です。
がん化する前に治療できるのが理想ですが、すでにがん化してしまっても初期であれば予後は非常に良好です。

紅板症にがん化リスクはあるのでしょうか?

紅板症は約40%から50%ががん化するといわれています。以下のような場合は悪性化の可能性が高まりますので注意が必要です。

  • 患部の表面に潰瘍が形成されている
  • 大きさが1cm以上である
  • 舌・頬粘膜などの可動粘膜に発生している
  • 多中心性・多発性である

悪性化を防ぐためにも、早期発見・早期治療が大切です。

紅板症は自然治癒しますか?

紅板症は似た症状の口内炎と異なり、自然治癒は望めません。しかし初期であれば切除範囲も小さく、がん化していたとしても治癒率は非常に高いです。病気の早期発見には口腔がん向けのセルフチェックも有効なので、ぜひお試しください。
セルフチェックは明るい光の下で鏡を使って行います。唇の内側・上下の歯肉・頬の粘膜・舌などを目視や指で触って確認しましょう。
セルフチェックを行い、違和感・刺激痛・赤みなどの症状が続く場合は受診しましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

紅板症は口腔潜在的悪性疾患の一種で、がん化リスクが高い病気です。がん化リスクが高いと聞くと驚かれるかもしれませんが、口腔がんは初期に発見すれば5年生存率が90〜95%と非常に良好で早期発見が大切な病気です。
月に1度のセルフチェックや歯科検診に加えて、年に1度は口腔がん検診を受けることをおすすめします。また、口腔内を清潔に保つ・刺激物を摂りすぎない・歯の詰め物のメンテナンスを怠らないなど日々の生活習慣を見直すことで紅板症のリスクを減らせます。

編集部まとめ

チューリップ
口腔潜在的悪性疾患の中でもまれな症状である紅板症についてご紹介しました。紅板症は悪性化するリスクが高い病気ですが、たとえがん化してしまっても早期発見・早期治療によって副作用も最小限に抑えられ、予後は非常に良好です。

口腔がんは進行が早い上に気付きにくい病気でもあります。口腔セルフチェック・歯科検診・口腔がん検診などを利用し、日頃からお口の状態をチェックする習慣をつけることが大切です。違和感・痛み・赤みが3週間以上続く場合は早めに受診しましょう。

丁寧なブラッシングや刺激物を控えるなど、生活習慣の改善には紅板症の予防効果も期待できます。お口は栄養を摂取する、健康の基本となる部分です。ご自身の体をいたわって、紅板症の早期発見・早期治療に努めましょう。

この記事の監修歯科医師