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「舌がん」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/27
「舌がん」の初期症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

舌がんになると、いつも通り食事ができなくなる可能性があります。普段はあまり意識することがないパーツですが、がん細胞は舌に発生することもあるので、注意が必要です。

食べ物を飲み込むときも、口腔内の舌は大事な役割を果たしています。言葉を話す機能や味覚を感じる機能など、日常生活を送る上で欠かせない機能が集中している臓器です。

早期発見、早期治療のためにも、ここでは舌がんの症状・原因・予防方法・治療法をわかりやすく解説します。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

舌がんの症状と原因

鏡を見る女性

舌がんはどんな病気ですか?

舌がんは舌にがん細胞が発生する病気です。頬粘膜がん・口腔底がん・歯茎がん・硬口蓋がんと同じように、口腔がんに分類されます。がんは日本人に非常に多い病気です。しかし、その中でも舌がんを含む口腔がんは出現頻度がかなり低く、発症率は1~2%程度しかありません。
ただし、口腔がんの中でもっとも発症率が高いのは舌がんです。口腔がんの90%前後は、舌がんが占めることがわかっています。舌がんは、がん全体と比べると珍しい種類のがんになりますが、口腔がんの中では代表的ながんです。

舌がんの症状にはどんなものがありますか?

舌がんの場合、がん細胞は舌の両側に出現しやすいところが特徴的です。舌を突き出し、鏡を使って舌の両脇を見れば、表面の異常を確認できます。見た目の異常から、早期発見に至った患者さんも少なくありません。ただし、鏡を使っても見えにくい舌の裏側部分が患部になることもあります。
鏡に映すと舌の真ん中や先端が観察しやすいものの、このあたりにがん細胞が発生するケースはほとんどありません。舌がんを発症すると、最初は舌の表面を覆う扁平上皮細胞にがん細胞が増殖します。症状が進行するにつれて、舌の組織の深いところまでがん細胞が侵食し、自覚症状が強く出るようになります。
特に多い症状は、ただれ・硬いしこり・粘膜の赤い斑点・白い斑点などです。白斑症状といって、他の部位より色が白くなる症状が出ることも珍しくありません。舌を動かすと、普段感じない違和感があるケースや痺れを感じるケースもあります。
また、癌化していない状態でも白板症といって前がん病変の白斑病変もあります。代表的な症状の1つなので、注意しましょう。重症化すると、出血や痛みがいつまでも残る症状、口臭がひどくなる症状も報告されています。

口内炎との違いを教えてください。

口腔粘膜の口内炎がいつまでも治らずに病院を受診して、舌がんが見つかることもあります。長引く口内炎には要注意です。ただし、口内炎の症状しか出ていない状態で、舌がんと見分けることは簡単ではありません。
口内炎に限らず、難治性潰瘍や白斑症など舌がんと似た症状が現れる病気は何種類かあります。組織の一部を採取して精密検査を実施すれば、口内炎と舌がんを区別し、診断することは可能です。

舌がんの主な原因を教えてください。

なぜ舌がんになるのか、明確なメカニズムは解明されていません。今のところわかっているのは、何らかの物理的な刺激があると誘発しやすくなることです。例えば、喫煙や飲酒などの化学的な刺激を慢性的に受けている場合も、舌がんを発症しやすくなります。
舌がんはもちろん、喫煙や飲酒は口腔がん全体の発症率上昇原因の1つです。特に喫煙習慣は、がんにとって百害あって一利なしといえます。口腔がんは、80%もの割合で喫煙習慣が発症原因になっているため、喫煙者は普段から舌の異常を慎重に確認しましょう。
なお、喫煙や飲酒は単独でも舌がんの発症率を上げますが、煙草もお酒も嗜む方はより高い確率で舌がんに見舞われる可能性があります。他にも、歯並びの悪さにも注意が必要です。歯並びが悪いと、舌に歯のどこかが常にあたっている状態が続いてしまいます。この慢性的な刺激が舌がんを誘発する、と指摘されています。

舌がんの予防方法

酒とたばこ

舌がんは予防できますか?

舌がんの誘発要因と考えられている生活習慣を早い段階で改めれば、高い予防効果が期待できます。もっとも予防効果が高いのは、禁煙です。舌がんを含む口腔がんの主な発症原因になるのは喫煙習慣なので、煙草を吸わなくなるだけで舌がんや他のがんの予防にもつながります。
お酒も適量を守り、飲み過ぎないよう注意しましょう。舌がんを予防するためには、肥満体型も避ける必要があります。食事の栄養バランスにも気をつけて、適度な運動も習慣化して下さい。
他には、感染症の予防も、舌がんの予防に関係します。うがい手洗いの徹底など普段から衛生面もおろそかにせず生活することが大切です。

舌がんはどのような人に多く発症しますか?

これまでに舌がんと診断された患者さんの情報から、舌がんになりやすいのは、女性よりも男性ということが判明しています。約2対1の割合で、男性患者の方が多いです。
ごく稀に20~30代の若者が発症する可能性もあります。しかし、罹患者全体の4分の3は50歳以上です。50代の後半は特に発症率が高くなります。

舌がんに遺伝はありますか?

舌がんの発症と遺伝の関連性に関しては、研究が進められている状況で、はっきりしたことはわかっていません。ただ、がんという病気自体、生活習慣だけではなく遺伝要素も無視できません。
すべてのがんのうち、5~10%は遺伝要因の影響で発症しています。心配な方は、遺伝外来を受診してみてください。遺伝カウンセリング・遺伝学的検査によって、がんの遺伝の可能性を調べることが可能です。

舌がんの初期症状について教えてください。

初期の段階では、出血や痛みを伴わないことも少なくありません。鏡を使って舌をよく観察し、白斑やただれなどの症状を確認できれば、早期発見につながります。しかし、感覚の異常が伴わない場合、わざわざ鏡を使って口の中や舌を確認しようとする方はあまりいません。
見た目の異常に気づかない限り、すぐに舌がんと結びつけて考えることは難しいでしょう。また、肉眼で確認できる見た目の異常が現れても、症状が出ている部分が小さいケースや見えにくい場所に出ているケースでは、初期段階で自覚するのは簡単ではありません。

舌がんの治療法

医師

舌がんの治療法を教えてください。

舌は大事な機能を多く備えているため、できるだけ機能を温存することを目指しながら治療方法を決める必要があります。一般的な舌がんの治療方法は、がん細胞が増殖している部分を切除する切除術と放射線治療です。
手術でがん細胞を切除する場合も、切除する範囲は慎重に決定しなければなりません。切除する範囲が小さく、深さもあまりない場合は、切除術だけで完了する可能性があります。しかし、リンパ節に転移している場合など切除範囲が大きい・深い患者さんは、再建手術で欠損部分を再建するケースが大半です。
放射線治療も患部の状態によって外照射と動脈内化学療法の2通りの方法があり、複数の治療法を併用することも珍しくありません。患者さんの年齢など、色々なことを考慮して治療を進めていきます。

舌がんは完治までどのくらいかかりますか?

舌がんに限らず、がんは再発と転移のリスクを伴う病気です。そのため、治療が終わったあとも、定期的に検査を受ける必要があります。
検査で再発が認められなくても、その後経過観察の時期が長く続くので、病院は長い付き合いになるでしょう。定期検査を受けていれば、万が一再発したときも早期治療が可能です。

舌がんに入院は必要ですか?

患部のごく一部を切除する場合、局所麻酔を打ち、日帰り手術で済む可能性もあります。入院しても数日で済むケースも珍しくありません。
しかし、切除範囲が大きい場合など、全身麻酔を打つ必要があるときは入院が必要です。栄養管理やリハビリなど手術が終わった後の治療も色々あるため、しばらく入院することになるでしょう。

舌がんの術後経過を教えてください。

舌がんの切除手術を行った後、食事の経口摂取は1週間近く禁止されることが多くなります。入院し、点滴や経鼻経管栄養による栄養管理が必要です。切除した部分や範囲によっては、今まで通り食事をするのが難しくなるため、気管の誤嚥を防ぐためにも嚥下トレーニングを行わなければなりません。
術後、問題なく食事の経口摂取ができるようになるまでに、1〜2ヶ月前後の期間がかかるケースが大半です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

舌がんは、がんの中では発症率が低い病気です。しかし、年間約2万3千人以上の方が舌がんを含む口腔がんと診断されています。特に喫煙や飲酒の習慣が長い方は発症リスクと隣り合わせの生活を送っているわけですから、できるだけ早く禁煙・節酒による予防対策に取り組みましょう。
また、普段から舌の様子をよく観察して、様子がおかしいと感じたら積極的に病院に相談することも大切です。

編集部まとめ

みちしるべ
舌がんは禁煙や節酒が予防につながります。

原因不明で、予防手段もほとんど解明されていない病気に比べ、舌がんは予防対策が色々わかっています。食事や言葉の面で、いつも通りの生活ができなくなったら大変です。

舌がんを予防するためにも、できることから取り組みましょう。普段から舌の存在を意識することも大切です。

歯磨きのときなど、普段から舌を鏡で観察する習慣をつけることも、早期発見に役立つのではないでしょうか。

この記事の監修医師