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「ポリープと腫瘍の違い」はご存知ですか?がん化の可能性があるポリープも解説!

 公開日:2024/03/26
「ポリープと腫瘍の違い」はご存知ですか?がん化の可能性があるポリープも解説!

ポリープと腫瘍の違いとは?Medical DOC監修医がポリープと腫瘍の違い・大腸ポリープの種類・胃ポリープの種類・声帯ポリープの種類・がん化の可能性があるポリープなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「ポリープ」とは?

「ポリープ」とは、病気の名前ではなく、粘膜の表面から突出した腫瘤のことです。ポリープは胃や大腸、声帯、胆のうなどいろいろな場所にできます。

「腫瘍(しゅよう)」とは?

細胞が増殖する際に変異が起こることで細胞が無秩序に増え続けてしまい、この増殖でできた細胞の塊を「腫瘍」といいます。細胞の増え方や広がり方の違いにより、悪性腫瘍と良性腫瘍に分けられます。
悪性腫瘍は細胞が無秩序に増えながら周囲に染み渡るように広がり(浸潤)、血管やリンパ管などを介してあちこちに散らばる(転移)腫瘍です。この悪性腫瘍のことを「がん」といい、治療が必要なことが多いです。一方、浸潤や転移はせず周囲の臓器を圧排するように大きくなる腫瘍を良性腫瘍といいます。良性腫瘍は腫瘍のできた場所や大きさ、種類により手術が必要か判断します。

「ポリープ」と「腫瘍」の違いとは?

ポリープと腫瘍とは区別されます。
ポリープは粘膜から突出した腫瘤をいい、病気の名前ではありません。見た目の名称のようなものです。このポリープを病理組織で区別し、腫瘍と非腫瘍に分けています。腫瘍は細胞が無秩序に増殖した塊のことを言い、性質により悪性腫瘍と良性腫瘍に分けられます。
大腸ポリープの約8割は腫瘍です。腫瘍は良性の腺腫と悪性の腺がんに分けられています。

大腸ポリープの種類

大腸ポリープは組織の違いによって腫瘍性ポリープと非腫瘍性ポリープに分かれています。それぞれの違いについて解説します。

腫瘍性ポリープ

腫瘍性ポリープは2つに分けられ、良性のものを腺腫(せんしゅ)、悪性のものをがんといいます。腺腫が大きくなるとがんを含む可能性が高くなります。このため、患者さんの背景や大きさ、個数など総合的に見た上でいつ切除するべきか判断されます。

非腫瘍性ポリープ

非腫瘍性ポリープは、過誤腫性ポリープ、炎症性ポリープおよび過形成ポリープなどに分類されます。一般的には、大腸内視鏡検査での見た目などにより腫瘍性ポリープと区別することができますが、鑑別が難しい場合には病変を切除したり、一部をとって顕微鏡で詳しく調べる生検を行ったりします。
腫瘍性ポリープと比べると癌化の可能性は低いため、通常は経過観察のみでよいと考えられていますが、出血を起こしたり、サイズが大きく腸閉塞や腸重積などの症状が出る場合には切除する場合もあります。

胃ポリープの種類

胃のポリープはほとんど症状がなく、バリウム検査や内視鏡検査(胃カメラ)で指摘されて初めて気がつく方がほとんどです。胃ポリープは「胃底腺ポリープ」と「胃過形成ポリープ」「腺腫性ポリープ」の3つのタイプがあります。

胃底腺ポリープ

周囲の粘膜と同じような色調で赤みが少なく、表面も滑らかな形状が特徴です。胃底腺ポリープは胃体部によく見られ、胃ポリープの中では発生頻度が比較的高いです。ピロリ菌の感染のない、きれいな胃に発生するポリープで癌化の可能性は低いと言われています。

胃過形成性ポリープ

赤みが強く表面が凸凹した形状をとることが特徴のポリープです。胃のどの部分にもみられ、大きさもさまざまです。ピロリ菌に感染した萎縮性胃炎のある粘膜に発生します。頻度は低いのですが、癌化の可能性もあり、年に1回程度の胃カメラの検査が推奨されています。

腺腫性ポリープ

ピロリ菌の感染が長期にわたり持続し、胃粘膜の炎症や萎縮が進んだところに発生するポリープです。白っぽくなだらかに盛り上がった扁平型をしています。腺腫性ポリープは良性であることがほとんどですが、内部にがんが含まれている場合もあり、基本的に切除を行うことが検討されます。

声帯ポリープと似ている声帯の病気

声帯にできる代表的な病気について以下にまとめました。声帯ポリープと症状が似ているため注意が必要です。

声帯結節

声帯にできる「ペンだこ」の様に結節状に盛り上がったものです。声を出すときに、強くこすれあう声帯の中央部に発生します。両側に起こることが多く、声の使い過ぎが原因となります。よく見られる症状は、声のかすれ、声の変化、喉の違和感などです。声がれ対策を行うことで治る場合もありますが、効果がない場合には手術を行います。しかし、手術をしても同じように声を酷使すると再発してしまうため、注意が必要です。

声帯ポリープ

声帯にポリープができた状態です。声の酷使により声帯の粘膜に炎症ができ、粘膜の充血が起こります。この状態で大声を出すなど、さらに声帯に強い刺激が加わると、粘膜の下の血管が破れて血豆ができ、粘膜が膨れます。これが繰り返されることで発生するのがポリープです。声帯ポリープは、無理な発声が一番の原因となり、歌手や教師など声を使う人に良くみられます。喫煙や風邪などによる喉の炎症も原因となります。治療は、初期であれば声を使わず声帯を休めること、消炎剤の吸入や内服です。しかし、効果がなければ手術をします。声帯ポリープ自体は炎症により起こる病気で、癌化することはないです。しかし、見た目だけでは癌との区別がつきにくいこともあります。組織の検査をしたり、定期的な経過観察が必要な場合もあります。

ポリープ様声帯

ポリープ様声帯は、声帯全体がむくんだように腫れた状態です。多くは両側に起こります。ヘビースモーカーに多いため、喫煙が原因と言われています。声のかすれやだみ声、喉の違和感や乾燥を生じます。治療は禁煙が大切です。また、消炎剤の内服や吸入薬を使用することもあります。無効である場合には、手術を行います。

がん化の可能性があるポリープ

ここまでいろいろなポリープについて解説してきました。この中で、がん化する可能性があり注意が必要なポリープについて特にお話をします。

大腸腺腫

大腸にできるポリープのうち大腸腺腫は、時間の経過とともに大きくなっていきます。大きさが大きくなるほど癌化の可能性が高いです。5mm以下の小さなポリープでは癌化している可能性は低いですが、大きくなるにつれ癌化率が高くなるため、6mm以上の腺腫は切除が勧められます。大腸内視鏡検査を行った際に、ポリープの見た目や大きさ、数、患者さんの状態などを総合的に判断して、切除するか経過観察をするかを検討します。腺腫が見つかったことがある方、ポリープを切除した方では年に1回の大腸内視鏡検査を受けましょう。

胃腺腫性ポリープ

高齢男性に多いポリープです。ピロリ菌感染が長く続くことにより炎症や萎縮が進んだ胃粘膜にできるポリープです。良性であることがほとんどですが、内部にがんが含まれている場合もあり、基本的に切除を行うことが検討されます。胃カメラの検査の際に、ポリープの状態を見てもらい適切な治療を受けましょう。

胃過形成ポリープ

過形成ポリープはピロリ菌が感染した萎縮性胃炎のある胃粘膜に発生したポリープです。ピロリ菌を除菌することで縮小したり、消失することもあります。良性のポリープですが、まれに癌化することもあるとされ、年に1回程度の胃カメラ検査が勧められています。また、大きさ2cm以上で大きくなる傾向にあり癌化の可能性があるものや、出血して貧血の原因となるものは切除の適応があります。

「ポリープと腫瘍の違い」についてよくある質問

ここまでポリープと腫瘍の違いなどを紹介しました。ここでは「ポリープと腫瘍の違い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸ポリープが大腸がんになる確率はどれくらいでしょうか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

大腸ポリープはサイズによるがん化の確率が報告されています。ある報告では、径5mm以下で癌化率0.46%、6~9mmでは3.3%、10mm以上では28.2%となっており、大きくなるほどがん化率が高いです。また、遺伝性の病気である家族性大腸腺腫症では、40才で約50%、60才でほぼ100%がんが発生していると言われています。このような家族歴がある場合には、早めに病院で相談しましょう。

ポリープが良性か悪性か判断するためにどのような検査を行いますか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

内視鏡の拡大機能やNBIという特殊な光を用いて、ポリープの表面の血管や粘膜を観察し判断することができます。ただし必要に応じて、内視鏡で切除を行なったり、良悪性の区別がつかない時には、組織の一部をとり、顕微鏡で詳しく組織をみる生検という検査を行うことがあります。

何ミリ以上のポリープががんと診断されるのでしょうか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

何ミリ以上のポリープをがんと診断しているわけではありません。しかし、腺腫性ポリープは6mm以上の大きさの場合には切除の適応です。これは、5mm以下ではがんが含まれている可能性が低かったという今までの報告を根拠に推奨されています。また、径が10mm以上のものでは癌化率が10~25%と上昇すると報告されています。

まとめ ポリープの中には癌化の可能性あり!

ポリープは体のさまざまなところに発生します。このポリープは発生の仕方により病理組織的には異なり、一概にポリープといってもそのままにしておいても良いわけではありません。そのまま放っておくと癌化する可能性もあります。今回、大腸・胃・喉のポリープについて解説いたしましたが、ポリープの種類によりどのように経過を見るか、治療をするかは全く異なります。病院でそれぞれの専門医に診断してもらい、どのようにすべきかを判断してもらうことが非常に大切です。

「ポリープと腫瘍の違い」と関連する病気

「ポリープと腫瘍の違い」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

同じ部位にできるポリープの中には、癌化していくものもあります。定期的な経過観察が必要と言われた場合には、医師からの指示に従い経過を見る必要があります。定期的な経過観察が必要な状態を放置をすることで、癌化しないように気をつけましょう。

「ポリープと腫瘍の違い」と関連する症状

「ポリープと腫瘍の違い」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 喉がかれる
  • 声が出にくい
  • 貧血が進む
  • 便に血が混ざる
  • おなかが張る

症状からはポリープが良性か悪性かの区別はつきません。気になる症状があった場合には、まず病院を受診しましょう。喉の症状であれば耳鼻咽喉科を、おなかの症状が中心であれば消化器内科が専門となります。それぞれの科で内視鏡、ファイバースコープなどで病変を診察してもらうことが大切です。

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