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「声帯ポリープ」ができる原因・症状はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/05/09
「声帯ポリープ」ができる原因・症状はご存知ですか?医師が監修!

声帯ポリープとは声帯にできる腫瘤(しゅりゅう)のことを指します。ポリープというとがんをイメージされる方も多いですが、声帯ポリープががん化することはほとんどありません。ただし見た目でがんと診断することが難しい場合もあります。

「声帯」という日常生活において必要不可欠な器官において起きる病気のため、早期発見・早期治療が望ましく、決して放置できない病気です。

きちんと病態を理解して治療すれば、完治も期待できます。必要以上に恐れないためにも、正しい知識を身につけましょう。

本記事では、声帯ポリープの病態やその治療法について解説します。

小島 敬史

監修医師
小島 敬史(国立病院機構 栃木医療センター)

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慶應義塾大学医学部卒。医師、医学博士。専門は耳科、聴覚。大学病院および地域の基幹病院で耳鼻咽喉科医として15年以上勤務。2年間米国で基礎研究に従事の経験あり。耳鼻咽喉科一般の臨床に従事し、専門の耳科のみならず広く鼻科、喉頭、および頭頸部腫瘍疾患の診療を行っている。
日本耳鼻咽喉科学会専門医、指導医。日本耳科学会、日本聴覚医学会、日本耳鼻咽喉科臨床学会の各種会員。補聴器適合判定医、補聴器相談医。

声帯ポリープとは

喉が痛い

声帯ポリープとはどのような病気でしょうか?

声帯ポリープは、喉頭(こうとう)の粘膜の上に、小さな腫瘤ができる病気です。声帯ポリープは長期間にわたって声を使い続けたり、声を張り上げたりすることが原因で発症します。教師などの声を多く使う職業の方々によく見られることが特徴です。歌手も同じように声を使った職業ではありますが、正しく発声の訓練を行っている場合には発症のリスクが下がるとされています。
声帯を上手に使えていれば発症リスクが下がることを押さえておきましょう。他にも、普段声を出さない方がスポーツ観戦などで大声を出すことでも発症のリスクがあります。声帯ポリープ初期症状は、声がかすれる・声が出しにくいなど喉に関連することがポイントです。これらの症状がある場合は、速やかに耳鼻咽喉科の医師による診察を受けるようにしましょう。
初期であれば、なるべく発声せずに安静にすることで元に戻ることが多いです。治療が必要な場合は、鎮痛剤・ステロイドを吸入するなど行います。数ヶ月様子を見ても症状が改善されないと手術が必要になる場合もあるので、医師と相談しましょう。
声帯ポリープはがんのように悪性化することはほどんどありませんが、声帯ポリープと似たような初期症状で「喉頭がん」があります。特に喫煙者の方で、2週間以上声がかれている場合には、声帯ポリープよりも喉頭がんの可能性が高いことが指摘できるでしょう。決して放置せず、早期発見・早期治療することが重要です。

どのような症状がみられますか?

声帯ポリープの主な症状は、以下の3つです。

  • 声がかすれる
  • 声が裏返る
  • 声が弱くなる

これらの症状は、発声の際に、声帯の振動と声帯ポリープが干渉することで発症します。専門家による内視鏡での診察、診断が望ましいです。症状がある場合は、早めに医師の診察を受けることをおすすめします。

発症の原因を教えてください。

声帯ポリープの原因は、以下のようなものが挙げられます。

  • 長時間にわたる発声:声を多く使う職業や趣味に従事する方は長期間にわたって発声することがあり、その分声帯への負担も大きくなりやすい傾向にあります。そのため、声帯ポリープの発症リスクが高いです。ただし、正しく発声訓練を行っている場合はその限りではありません。
  • 喉頭の慢性的な刺激:喫煙・アルコールの過剰摂取・大声の発声・慢性的な鼻や喉の炎症・胃酸逆流など喉頭に刺激を与えられると声帯ポリープの原因となることがあります。風邪による炎症がきっかけとなることも多いです。
  • 無理な発声:風邪を引いているときに無理に声を出したり、行事や仕事で普段出さないような大声を出すことが原因となる場合もあります。

声帯ポリープは、長期間の声の乱用や声帯への過度な刺激が原因で発生することが多いといえます。適切な発声を意識することや、喉頭に刺激を与えない生活習慣を心がけることが予防に最適です。

声帯結節とはどのような違いがありますか?

声帯ポリープと声帯結節(せいたいけっせつ)は、どちらも声帯の疾患であり、似た症状を引き起こすことがあります。声帯ポリープは粘膜の上にできた腫瘤であり、ぶつぶつとした形が声帯の片側にできることが特徴です。声帯の振動を妨げるため、声がかすれるなど、喉に関する症状を引き起こすことがあります。
一方、声帯結節は声帯の振動で物理的なストレスがかかることで、声帯の上皮組織の隆起が生じたものです。いわゆるペンダコのようなもので、声帯の両側に2箇所できることが特徴です。
声がかすれる・声が裏返る・声が弱くなるなど、声帯ポリープと似たような症状を引き起こすことがあります。声帯ポリープは声の乱用や慢性的な刺激によって引き起こされることが多いのに対して、声帯結節は声の乱用に加えてストレスなども原因として多いです。
いずれも過度な声帯の刺激や炎症が原因で引き起こされることが多く、治療の際には声を出さずに安静にすることが求められます。

声帯ポリープの検査と治療方法

男性患者と看護師

好発部位を教えてください。

声帯ポリープの好発部位は、声帯の前部の粘膜上であることが多いです。これは、声を出すときに最も振動する場所が声帯の前部であるためです。
声を出し過ぎると前部の粘膜に炎症が起こり、充血が起こります。充血した状態でもさらに無理して声帯を酷使してしまうと、血管が破れて血腫ができてしまうのです。そのままさらに声を出し続ければポリープとなります。
ただし、声帯ポリープは個人差があり、他の部位にできることもあります。声帯ポリープができる部位によって、声がかすれる・声が裏返るなどの傾向が異なることがあるため、症状ごとにポリープの位置を特定することが重要です。
声帯ポリープは、声を多く使う方・喫煙者・アルコールの過剰摂取・ストレスなどの要因がある方に発症しやすい傾向があります。適切な声の使い方や生活習慣の改善を心がけて予防に努めてください。

どのような検査を行うのでしょうか?

声帯ポリープの診断には、喉頭内視鏡検査が行われることが一般的です。喉頭内視鏡検査は、医師が喉頭ファイバースコープを用いて喉の奥を観察し、声帯ポリープの有無や位置・大きさ・形状などを確認します。
少し違和感がありますが、比較的短い時間で検査が可能です。粘膜の振動を確認するためにストロボスコープという声帯の動きを観察する検査を行う場合もあります。ストロボスコープを行える施設は限られており、喉頭・音声専門外来などで行われる場合が多いでしょう。
これらの検査によって、声帯ポリープが確認された場合は、その大きさ・形状・位置に応じて、適切な治療法が決定されます。発症早期であれば投薬治療や声の安静で治癒することもありますので、疑った場合は早めに受診することが重要です。

治療方法を教えてください。

声帯ポリープの治療方法は、ポリープの大きさ・位置・症状の程度によって異なります。以下に紹介するのは、一般的な治療方法です。

  • 薬物療法: ステロイド吸入薬や去痰剤、咳止めなどを使用して、炎症を抑え、症状の改善を促します。
  • 手術療法: ポリープの大きさや症状の程度によっては、手術が必要です。局所麻酔下で摘出する方法もありますが、全身麻酔下に顕微鏡を用いた直達鏡下内視鏡手術を行うことが一般的です。粘膜を正確に切除し、術後に必要な沈黙期間を遵守することが重要です。きちんと手術ができれば、高確率に音声の改善が期待できます。
  • 言語療法:手術後や治療期間中に言語療法を受けることで、正しい発声方法や発声のクセを修正できます。

声帯ポリープは基本的に切除で完治が期待できる疾患ですが、音声を酷使した場合再発することもあります。適切な音声の使い方については主治医に確認するようにしましょう。

声帯ポリープの予後と再発

看護師

悪性の可能性もあるのでしょうか?

一般的に、声帯ポリープ自体は良性の病変であるため、がん化することはほとんどありません。ただ、似たような初期症状で「喉頭がん」が挙げられるため、きちんと医師の診察のもと鑑別する必要があります。
前述のように、特に喫煙者の場合は喉頭がんを発症するリスクが高いため、声がかれる症状を自覚した時点で速やかに医療機関を受診することが大切です。喉頭がんは手術によって声をなくすことでも知られていますが、早期発見できれば放射線治療やレーザー切除によって声をなくさずに完治できる可能性が高いです。
声帯ポリープ自体には悪性の可能性は低いですが、似たようながんがあるということを覚えておきましょう。少しでも喉に異常が見られる場合には、早めに医療機関を受診してください。

声帯ポリープは自然治癒しますか?

声帯ポリープは、初期の段階であれば自然治癒することもあります。ただそれは、ポリープができる前段階である血腫ができた時点での話になります。ポリープが形成されてしまった段階では、自然治癒する可能性は高くないと思っておきましょう。
ポリープが形成される原因が継続する限り、ポリープが大きくなってしまうこともあります。基本的に声帯ポリープは声帯の片側にできる病気ですが、あまりに放置していたり片側のポリープが大きくなったりすると対側にもできてしまうことがあります。
ポリープが非常に大きい場合には呼吸困難に陥ることもあるので十分な注意が必要です。ポリープが小さく症状が軽度の場合には、声の休養や生活習慣の改善などによって、ポリープが縮小することがあるとされています。ポリープが自然治癒するかどうかは、個人差や症状の程度などによって異なります。
声帯ポリープの初期症状である「声のかすれ」が2週間以上続く場合には、個人で判断せず、医療機関を受診することが大切です。医師の指示に従い、適切な治療を受けましょう。

再発するのでしょうか?

声帯ポリープは適切な治療を受けた場合、再発するリスクは非常に低くなりますが、完全に再発しないとは限りません。再発するかどうかは、ポリープが形成された原因によって異なります。
たとえば、大声を出し続ける・喫煙などが原因である場合、再発のリスクは高まるでしょう。なぜなら、声帯ポリープの原因は声帯への過度な刺激が挙げられるからです。声帯ポリープの再発を防ぐためには、ポリープが形成された原因を改善することが大切です。
無理に声を出さない・喉を酷使しない・喫煙を控える・バランスの取れた食生活を心がけることなど、生活習慣を見直すことが、再発を予防するためのポイントとなります。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

職業上、発声を頻繁に行う方は、特に予防に努めることが大切です。必要以上に声を発しない・喫煙を控える・喉を乾燥させないなど、生活習慣を見直すことでも抑制は可能です。
仮に発症してしまっても、適切に治療を受けることで、症状の完治が期待できます。そのためにも、声に違和感のある方は早めに医師の診察を受けることが大切です。

編集部まとめ

ビジネスマン
声帯ポリープは、声帯前部の粘膜部分にできる腫瘤です。主に喉を酷使する・喉に過度な刺激を与えることで、発症します。

代表的な症状は、声がかすれる・声が裏返る・声が弱くなるなどです。

検査については喉頭内視鏡検査ストロボスコープ検査を行います。

治療は、軽度であれば発声を控えるなど喉の療養を行うことで対応します。

しかし、症状が緩和されない場合は投薬治療を行うこともあり、数ヶ月経過を観察しても治らない場合は手術になる可能性もあるでしょう。

がん化のリスクはほとんどありませんが、再発の可能性があり、注意が必要です。いずれも、早期発見・早期治療に努めてください。

この記事の監修医師