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「子宮肉腫の症状」はご存知ですか?原因や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/01/27
「子宮肉腫の症状」はご存知ですか?原因や治療法も解説!【医師監修】

子宮肉腫の症状についてご存じですか?
本記事では、子宮肉腫の症状について以下の点を中心にご紹介します!

  • ・子宮肉腫の原因
  • ・子宮肉腫の治療方法
  • ・子宮肉腫の種類別の症状

子宮肉腫の症状について理解するためにもご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

プロフィールをもっと見る
筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

子宮肉腫とは?

子宮肉腫とは、子宮の筋層や結合組織などの間質から発生する悪性腫瘍のことです。子宮肉腫は、子宮がんの中では稀で、全体の約1%以下を占めます。子宮肉腫は、子宮内膜から発生する子宮体がんや子宮頸がんとは異なる病気です。子宮肉腫は、発生する部位や細胞の種類によって、分類され、子宮平滑筋腫、子宮がん肉腫、子宮内膜間質肉、子宮内膜腺肉腫、悪性線維性組織球腫、悪性ペリックス腫、悪性血管内皮腫、子宮がん肉腫などがあります。

子宮肉腫の原因

子宮肉腫の原因は、現在のところ明らかになっていません。子宮の筋層や間質などの組織に突然変異が起こって、がん細胞が発生すると考えられていますが、その詳細なメカニズムは不明です。
一方で、子宮肉腫の発症には、いくつかの要因が関係している可能性があります。以下に、いくつかの要因を挙げます。
タモキシフェンは、乳がんの治療に用いられる抗がん剤ですが、子宮肉腫の発症リスクを高めるという報告があります。タモキシフェンは、エストロゲンという女性ホルモンの働きを阻害することで、乳がん細胞の増殖を抑えますが、一方で、子宮の組織にはエストロゲンのような作用を示すこともあります。このため、タモキシフェンを長期間服用すると、子宮の組織に異常が起こる可能性があります。
放射線治療は、がんに高エネルギーの放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法ですが、子宮肉腫の発症リスクを高めるという報告があります。放射線治療は、がん細胞だけでなく、正常な細胞にもダメージを与えることがあります。このため、放射線治療を受けた部位に、後にがんが発生することがあります。特に、子宮や卵巣などの骨盤内の臓器に放射線治療を受けた場合は、子宮肉腫の発症リスクが上昇すると考えられています。
その他にも、閉経、肥満、糖尿病、高血圧などが、子宮肉腫の発症リスクを上昇させると考えられています。これらの要因は、エストロゲンの分泌や代謝に影響を与えることで、子宮の組織に異常を引き起こす可能性があります。また、遺伝的な要因や免疫系の異常なども、子宮肉腫の発症に関係している可能性があります。

子宮肉腫の症状

子宮肉腫の一般的な症状は、月経と関係なく出血することです。不正出血は、子宮内膜から発生する子宮体がんと混同されることがありますが、子宮肉腫は子宮の筋層や間質から発生するため、子宮内膜細胞診では検出できないことが多いです。
子宮肉腫が大きくなると、腹部に膨らみや圧迫感を感じることがあります。また、子宮肉腫が壊死したり、腹腔内に転移したりすると、腹痛や発熱などの症状が現れることがあります。腹部の膨らみや痛みは、良性の子宮筋腫とも区別が難しいですが、子宮肉腫は閉経後にも増大する傾向があるため、注意が必要です。
子宮肉腫が進行すると、貧血や体重減少などの全身症状や、腰痛や下肢の浮腫などの転移による症状が現れることがあります。子宮肉腫は、早期に転移することが多く、特に肺や骨に転移しやすいです。転移による症状は、子宮肉腫以外の病気とも重なることがありますが、不正出血や腹部の膨らみなどの症状と合わせて判断することが大切です。

子宮肉腫の治療方法

子宮肉腫の治療法は腫瘍の大きさや状態に合わせて選択されます。主に用いられる3つの治療法について詳しく解説します。

手術

子宮肉腫は、手術によってがんを切除するのが一般的です。手術の目的は、がんを根治することや、がんの進行や転移を防ぐことです。手術の方法は、がんの種類や進行度、患者の年齢や希望などによって異なりますが、原則として、子宮と両側の卵巣と卵管を摘出する「子宮全摘出術+両側付属器切除術」を行います。また、がんがリンパ節に転移している可能性がある場合は、リンパ節の摘出も行います。
手術は、がんを完全に切除できれば、予後を改善できます。しかし、手術には、出血や感染、術後の合併症などのリスクもあります。また、子宮や卵巣を摘出すると、妊娠や出産ができなくなるだけでなく、閉経によるホルモンバランスの変化や更年期障害などの影響も受けます。そのため、手術のメリットとデメリットを十分に理解し、医師と相談して決めることが大切です。
手術後は、傷の回復や合併症の有無などを定期的にチェックします。また、がんの再発や転移の可能性もあるため、定期的に血液検査や画像検査などを行って、がんの状態をモニタリングします。手術後のフォローアップは、少なくとも5年間は必要です。

化学療法

化学療法とは、抗がん剤と呼ばれる薬剤を血液やリンパ液などの体液によって全身に運び、がん細胞を直接攻撃して死滅させる治療法です。化学療法の目的は、手術で切除できないがんや、手術後に残存する可能性のあるがん、再発や転移したがんを減少させることです。化学療法の方法は、がんの種類や進行度、患者の年齢や体力などによって異なりますが、原則として、点滴や注射などで定期的に抗がん剤を投与します。抗がん剤は、単剤で使用する場合と、複数の薬剤を組み合わせて使用する場合があります。
化学療法は、がん細胞を効率的に殺せれば、予後を改善できます。しかし、化学療法には、吐き気や嘔吐、脱毛、貧血、感染症などの副作用もあります。これは、抗がん剤が、がん細胞だけでなく、正常な細胞にもダメージを与えることがあるためです。特に、分裂が早い細胞(毛髪、粘膜、骨髄など)に影響を受けやすいです。副作用の程度は、使用する抗がん剤や投与量、投与期間などによって異なりますが、一般的には、治療を中止すれば回復します。副作用を軽減するためには、医師や看護師などの指示に従って、水分や栄養の補給、口腔ケア、感染予防などの対策を行うことが大切です。
子宮肉腫に対する化学療法は、手術で切除できないがんや、手術後に残存する可能性のあるがん、再発や転移したがんに対して行われます。手術で完全に切除できたがんに対しては、化学療法の影響力は確立されていません。ただし、低異型度子宮内膜間質肉腫に対しては、ホルモン療法が再発予防に役立つとされています。子宮肉腫に対する化学療法には、ドキソルビシン、イホスファミド、プラチナ製剤、タキサン製剤などが使用されます。また、パゾパニブ、エリブリン、トラベクテジンなどの新しい薬剤も開発されています。

ホルモン療法

ホルモン療法とは、ホルモンの分泌や作用を調節する薬剤を用いて、がん細胞の増殖を抑える治療法です。ホルモン療法の目的は、手術や化学療法などの他の治療法と併用して、がんの治癒や再発予防を目指すことです。ホルモン療法の方法は、がんの種類や進行度、患者の年齢や体力などによって異なりますが、原則として、経口や皮下注射などで定期的にホルモン剤を投与します。ホルモン剤には、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの働きを阻害するものや、卵巣の機能を抑制するものなどがあります。
ホルモン療法は、ホルモンに感受性の高いがん細胞に対して効率的に作用できれば、がんの縮小や安定化を期待できます。しかし、ホルモン療法には、月経不順や閉経、更年期障害、骨粗しょう症、肥満、高血圧などの副作用もあります。これは、ホルモン剤が、正常なホルモンバランスに影響を与えることがあるためです。副作用の程度は、使用するホルモン剤や投与量、投与期間などによって異なりますが、一般的には、治療を中止すれば回復します。副作用を軽減するためには、医師や看護師などの指示に従って、カルシウムやビタミンDの摂取、運動、生活習慣の改善などの対策を行うことが大切です。
子宮肉腫に対するホルモン療法は、低異型度子宮内膜間質肉腫に対して役立つとされています。低異型度子宮内膜間質肉腫は、エストロゲンに感受性が高く、ホルモン療法によってがんの増殖を抑制できると考えられています。低異型度子宮内膜間質肉腫に対するホルモン療法には、プロゲステロン剤やGnRHアゴニストなどが使用されます。プロゲステロン剤は、エストロゲンの作用を拮抗することで、がん細胞の増殖を抑えます。GnRHアゴニストは、卵巣の機能を一時的に停止させることで、エストロゲンの分泌を低下させます。

子宮肉腫の種類別の症状

子宮肉腫にはいくつか種類があり、種類ごとに呈する症状が異なります。以下に平滑筋肉腫、子宮がん肉腫、子宮内膜間質肉腫の症状について解説します。

平滑筋肉腫

平滑筋肉腫は、子宮の筋肉層(筋層)から発生する悪性腫瘍です。子宮肉腫の中では多く見られる種類で、子宮肉腫の約6割を占めます。平滑筋肉腫は、子宮筋腫とは異なり、高度に悪性であり、再発や転移のリスクが高いです。
平滑筋肉腫の症状は、初期の場合には異変に気づくようなことはほとんどなく、子宮肉腫が大きくなるに従って不正出血や過多月経、下腹部の違和感や痛みになって現れてきます。不正出血は、月経以外に性器出血を起こすことをいいます。過多月経は、月経の量が多くなったり、月経期間が長くなったりすることを指します。下腹部の違和感や痛みは、子宮肉腫が周囲の組織や臓器に圧迫したり浸潤したりすることによって引き起こされます。

子宮がん肉腫

子宮がん肉腫は、子宮の筋肉層と内膜層の両方から発生する悪性腫瘍です。子宮肉腫の中では多い種類で、子宮肉腫の約半数を占めます。子宮がん肉腫は、子宮頸がんや子宮体がんとは異なり、高度に悪性であり、予後が不良です。子宮がん肉腫の症状は、不正出血や過多月経、下腹部の違和感や痛みなど、子宮肉腫と共通した点が多く、必ずしも特徴的な症状はありません。

子宮内膜間質肉腫

子宮内膜間質肉腫は、子宮内膜の下にある間質細胞という結合組織の細胞から発生する悪性腫瘍です。子宮肉腫の中ではまれで、全体の約13%を占めます。子宮内膜間質肉腫は、異型度という細胞の変化の程度によって、低異型度と高異型度に分けられます。低異型度の方が予後が良く、高異型度の方が悪性度が高く、再発や転移のリスクが高いです。
子宮内膜間質肉腫の症状は、不正出血や過多月経、下腹部の違和感や痛みなど、子宮肉腫と共通した点が多く、必ずしも特徴的な症状はありません。

子宮肉腫についてよくある質問

ここまで子宮肉腫の症状を紹介しました。ここでは子宮肉腫についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

子宮肉腫になりやすいのはどんな人ですか?

馬場 敦志医師

子宮肉腫の種類によって、かかりやすい年齢が異なります。平滑筋肉腫は50歳前後の女性に多くみられます。子宮内膜間質肉腫はそれよりも若年層に多く、閉経前の女性に好発します。
子宮肉腫の原因は明らかではありませんが、いくつかの危険因子が報告されています。例えば、放射線治療の既往、遺伝性疾患、肥満、高血圧、糖尿病、卵巣機能低下症などが挙げられます。また、子宮筋腫の治療薬として使用される「ゴナドトロピン放出ホルモン (GnRH)アナログ」の長期使用も、子宮肉腫の発生に関係している可能性があります。
子宮肉腫の予防法は確立されていませんが、危険因子を減らすことが重要です。健康的な食生活や適度な運動を心がけ、肥満や高血圧、糖尿病などの生活習慣病を予防しましょう。また、子宮筋腫の治療薬を使用する場合は、医師の指示に従って定期的に検査を受けましょう。子宮肉腫は早期発見が難しい病気ですが、不正出血や下腹部の違和感などの症状があれば、早めに婦人科を受診しましょう。

子宮肉腫の初期症状はありますか?

馬場 敦志医師

子宮肉腫の初期は、無症状の場合が多いです。症状が現れるときは、不正出血や過多月経、下腹部の違和感や痛みなどが主なものです。子宮肉腫は早期発見が難しい病気ですが、不正出血や下腹部の違和感などの症状があれば、早めに婦人科を受診しましょう。子宮肉腫の診断は、症状や婦人科診察のほか、超音波検査やMRIなどの画像検査にて行われます。最終的な診断は、手術で摘出した子宮肉腫の組織を顕微鏡で調べる病理検査によって確定されます。

編集部まとめ

ここまで子宮肉腫の症状についてお伝えしてきました。子宮肉腫の症状の要点をまとめると以下の通りです。

⚫︎まとめ

  • ・子宮肉腫の原因は、現在のところ明らかになっていないが、タモキシフェンや放射線治療、閉経、肥満、糖尿病、高血圧などの関与が指摘されている
  • ・子宮肉腫の治療法は腫瘍の大きさや状態に合わせて手術、化学療法、ホルモン療法などから選択される
  • ・子宮肉腫はいずれの種類も初期症状が乏しく、進行してくると不正出血や過多月経、下腹部の違和感や痛みなどの症状を呈することが多い

子宮肉腫と関連する病気

子宮肉腫と関連する病気は1個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

子宮肉腫と同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。

子宮肉腫と関連する症状

子宮肉腫と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 過多月経
  • 下腹部の違和感や痛み
  • 腹部の膨らみ
  • 体重増加

これらの症状が当てはまる場合には、子宮肉腫などの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師