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【HPVワクチン】親友効果が接種を促進させる可能性「娘の親友が先に接種すると母親が前向きに」

 更新日:2023/03/27
「親友効果」がHPVワクチン接種を促進させる可能性

HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの接種について、大阪大学の研究グループが接種対象年齢の娘を持つ母親を対象に調査した結果、娘の親友がHPVワクチンを接種したことで自身の娘も接種に前向きになる「親友効果」が、接種促進につながる可能性があると学術誌に発表しました。このニュースについて浅野先生にお話を伺います。

浅野 仁覚 医師

監修医師
浅野 仁覚 医師

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福島県立医科大学大学院卒業。所属:ロイヤルベルクリニック。主な研究内容・論文:切迫早産、先天性サイトメガロウイルス感染症、子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術など。

研究グループが報告した内容は?

今回、大阪大学の研究グループが報告した内容について教えてください。

浅野 仁覚 医師浅野先生

今回取り上げるニュースは、2021年3月に大阪大学の研究グループが、10~29歳の娘を持つ母親を対象に実施したインターネット調査を分析した内容です。研究グループは調査対象を3つのグループに分けました。グループ1は1994~99年度生まれの娘がいる532人の母親、グループ2は2000~03年度生まれの娘がいる514人の母親、グループ3は2004~08年度生まれの娘がいる530人の母親です。調査では、ワクチン接種率が低下した2000年以降に生まれた娘の母親であるグループ2とグループ3では、「娘の親友が娘より先にワクチン接種を受けた」ことがワクチン接種を最も前向きに考えさせられるという結果が出ました。割合を見ると、グループ2では41.6%、グループ3では48.5%がワクチン接種の意思に影響を与えたと回答しています。これは「自治体からワクチン接種を推奨する通知を受け取った」と同じ程度か、それ以上のプラス効果があるという結果になりました。

研究グループは、「ワクチンを接種した女性が親しい友人に接種を勧めれば、親友効果によって娘への接種をためらっている母親に対しても良いニュースが広がるだろう。HPVワクチンの接種を再び社会的規範に位置付けられれば、社会的な集団心理がワクチン接種率のさらなる改善を促進する可能性がある」としています。

子宮頸がんワクチンとは?

子宮頸がんワクチンについて改めて教えてください。

浅野 仁覚 医師浅野先生

HPVワクチンは、子宮頸がんの原因であるHPVの感染を予防するためのものです。子宮頸がんの患者数は日本では20~40代を中心に増えていて、厚生労働省によると毎年およそ1万1000人の女性が罹患しており、およそ2800人が亡くなっている病気です。

主にHPVは性交渉によって感染することから、予防のためには性交渉を経験する前にワクチンを接種することが最も有効と言われています。HPVワクチンの接種をめぐって、日本では2013年4月に定期接種化されたのですが、接種後に様々な部位の痛み、倦怠感、運動障害、認知機能の異常などを訴える声が相次ぎ、同年6月に積極的勧奨は中止されたという経緯がありました。その後の2021年、8年ぶりに積極的勧奨が再開されました。

HPVには200種類以上のタイプがあります。現在、小学6年生から高校1年生までの女性が定期接種として無料接種できる「サーバリックス」と「ガーダシル」という2種類のワクチンは、子宮頸がんを引き起こしやすいHPV16型と18型の感染を防ぐことができます。6カ月間に3回接種することによって子宮頸がんの原因の50~70%を防ぐことができるとされています。

今回の報告内容への受け止めは?

大阪大学の研究グループが報告した内容についての受け止めを教えてください。

浅野 仁覚 医師浅野先生

HPVワクチンは2013年に定期接種化されましたが、接種後の体の痛みやしびれ、けいれんなどの症状の様子がマスコミに大きく取り上げられたため、国は安全性が確認できるまで積極的接種を一旦中止としていました。その後、安全性が確認されて2022年4月より積極的接種を再開しましたが、積極的推奨が外されてHPVワクチン接種を受けられなかった年代に対して、もう一度接種の機会が得られるようにキャッチアップ接種を開始しています。

こうした背景の中、いかに接種率を上げていくかの取り組みの1つとして、今回の大阪大学の研究グループの報告が挙げられます。ワクチンに限らず私たちが安心を得るのは、意外に狭い世界(家族や親戚、知り合いなど)の口コミが大きな役割を果たすことが多いと思います。「〇〇さんの娘さんや□□さんのお宅の娘さんもHPVワクチンを打って大丈夫だったから大丈夫なんだろう」みたいな感覚は、私たちが身近に経験する心理で、こうした心理をうまく表現した発表ではないかと思います。これから、こうした身近なところから接種の輪が広がっていくことを期待しています。

まとめ

大阪大学の研究グループが、娘の親友がHPVワクチンを接種したことで母親が自分の娘の接種に前向きになる「親友効果」が接種促進につながる可能性があると学術誌に発表したことが今回のニュースでわかりました。今後も接種促進につながる今回のような研究は注目を集めそうです。

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