「肺がん」を発症すると「どんな色の血痰」が出る?血痰が出る原因も医師が解説!

肺がんを発症すると血痰が出る理由とは?Medical DOC監修医が肺がんの初期症状・末期症状・原因・なりやすい人の特徴などを解説します。

監修医師:
羽田 裕司(医師)
名古屋市立大学医学部卒業。聖隷三方原病院呼吸器センター外科医長、名古屋市立大学呼吸器外科講師などを歴任し、2019年より現職。肺がんを始めとした呼吸器疾患に対する外科治療だけでなく、肺がんの術前術後の抗がん剤治療など全身化学療法も行う。医学博士。外科学会指導医/専門医、呼吸器外科学会専門医、呼吸器内視鏡学会指導医/専門医、呼吸器学会専門医。
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんは、肺の細胞ががん化し、無制御に増殖していく病気です。
肺の中心部(気管支)にできやすい小細胞がんや扁平上皮がんと、肺の外側(末梢部)にできやすい腺がんなどがあります。日本では、特に男性ではがんによる死亡原因の1位です。
初期の肺がんは自覚症状が乏しく、健康診断や胸部CTで偶然見つかることも少なくありません。しかし、進行すると血痰や咳、呼吸困難、胸の痛みなどが現れ、日常生活に支障をきたすようになります。
今回の記事では、肺がんの症状の中でも血痰について解説します。
肺がんの進行による肺組織の壊死
肺がんが大きくなるときには、血液の供給が追いつかないために肺の組織の壊死がみられます。すると、その組織から出血し、結果として血痰が出ることがあります。
肺がんの気管支粘膜への浸潤
肺がんは、空気の通り道である気管支の粘膜にも及ぶことがあります。がんが浸潤した粘膜は出血しやすくなり、血痰が出ることもあります。
閉塞性肺炎など感染の併発
肺がんによって気管支が塞がれてしまうと、閉塞性肺炎というタイプの肺炎が起こることがあります。治療が遅れて炎症が進行すると、出血や肺膿瘍など、重い合併症を引き起こすケースもあります。この際には、痰に血が混じる可能性もあります。
肺がんを発症するとどんな色の血痰が出る?
以下のような色の血痰は、肺がんを示唆していることがあります。
鮮やかな赤色
新しい血液が肺や気管支から流れ、痰に混じると鮮やかな赤色になることがあります。
錆びた鉄のような色
肺がんそのものや傷ついた肺や気管支組織からの出血が、時間が経過してから痰に混じるケースがあります。その場合には、錆びた鉄のような赤茶色を呈することもあります。
ピンク色
出血が少ない場合には、ピンク色にみえたり、あるいは赤い筋が入ったような痰がでたりすることもあります。
肺がんの前兆となる初期症状
肺がんは多くの場合、進行するまで無症状です。しかし、中には以下のような症状を契機に発見されることもあります。
咳や痰が治らない
咳や痰は、一般的な風邪でも現れる症状です。しかし、2週間以上長引いたり、血痰もみられたりするような場合には、一度医療機関を受診しましょう。内科や呼吸器内科が適切と考えられます。
熱が出てなかなか下がらない
発熱も、風邪症状の一つとして現れることが多いです。しかし、5日以上続くような発熱があるときは注意が必要です。肺がんが気管支を塞ぐことで生じる、閉塞性肺炎が起こっていることもあります。
息苦しい・胸が痛い
肺がんの進行によって胸水がたまる場合や、腫瘍が肋骨・神経へ浸潤する場合には、呼吸困難感や胸の痛みが現れることがあります。この症状は肺がんに限らず、肺炎、食道疾患、心疾患などでも起こるため、自己判断は禁物です。違和感が続く場合は、内科・呼吸器内科・消化器内科・循環器内科などの医療機関で相談しましょう。
肺がんが進行すると現れる症状(末期症状)
肺がんが肺の中で大きくなったり、あるいは身体のほかの部位に転移したりすると、以下のような症状が現れる可能性があります。
背中や腰などの痛み
肺がんが骨に転移すると、転移による神経の圧迫や病的な骨折によって、痛みが生じることがあります。背中や腰の痛みとして現れることが多いです。
頑固な腰痛などがみられる場合には、放置せずに一度整形外科などで診察を受けるようにしましょう。
頭痛や手足の脱力感
肺がんが脳に転移すると、頭痛や手足の麻痺、めまい、バランス障害などが引き起こされることがあります。特に、手足の麻痺などの症状がある際には、早急に脳神経内科などを受診することをお勧めします。
皮膚や目が黄色くなる(黄疸)
肺がんが肝臓に転移すると、肝機能障害が起こることがあります。その結果、皮膚や白目の色が黄色くなる黄疸がみられる場合があります。黄疸は、肝炎や肝硬変、胆のう結石など他の病気も原因となります。黄疸がある際には、消化器内科を受診しましょう。
肺がんの原因
ここでは、肺がんのリスクを高めると考えられている要因について解説します。
喫煙
喫煙は、肺がんの発症に最も強く関係するリスク因子の一つです。統計的には、喫煙者は非喫煙者に比べて、男性で約4倍、女性で約3倍程度肺がんを発症しやすいと報告されています。特に、若年期から喫煙を始めた人ほどリスクが高まる傾向があります。
一方で、禁煙によって肺がんのリスクは少しずつ低下し、禁煙期間が長くなるほどその効果は大きくなります。また、喫煙による影響は本人だけでなく、周囲の人の健康にも及びます。受動喫煙を日常的に受けている人は、そうでない人に比べて肺がん発症リスクが約1.3倍に上昇するとされています。
喫煙歴がある人や、家庭・職場でタバコの煙にさらされる機会が多い人は、特に肺がん検診を定期的に受けることが望ましいでしょう。定期的な肺のチェックによって、肺がんなどの異常の早期発見が期待できます。
職業的要因
アスベスト(石綿)やラドン、ヒ素、クロム化合物、ニッケル化合物など、特定の有害物質に職業的に長期間さらされることで、肺がんのリスクが上昇します。これらは建設業や造船業、鉱山業など、粉じんの多い職場で特に問題となることがあります。
また、近年では環境要因としてPM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の微粒子)などの大気汚染も肺がんとの関連が指摘されています。
過去にアスベストを扱った経験がある方で、咳・呼吸困難・胸の痛みといった症状がみられる場合は、放置せず労災指定病院や呼吸器専門医療機関への受診を検討してください。
間質性肺疾患
間質性肺疾患は、肺の間質、つまり肺を構成する小さな袋である肺胞の周りを支える組織に慢性的な炎症や線維化が起こる病気です。特発性間質性肺炎や特発性気質化肺炎など、さまざまな種類があります。
間質性肺疾患の患者では、肺がんを合併する割合が一般人口より高いと報告されており、約10〜20%と推定されています。
肺がんになりやすい人の特徴
肺がんを発症しやすい人には、いくつかの共通する要因があります。ここでは、代表的な特徴と注意点について解説します。
喫煙している、もしくは周囲に喫煙者がいる
タバコの煙に含まれる発がん物質が長期間肺に取り込まれることで、細胞の遺伝子に傷がつき、がん化の引き金になることがあります。
また、たとえ自分が吸っていなくても、家庭や職場での受動喫煙によってもリスクは高まります。特に子どもや女性など、喫煙習慣のない人にとっても悪影響があることがわかっています。
禁煙を試みてもなかなか続かない場合は、禁煙外来の利用が有効です。専門医によるカウンセリングや内服治療を組み合わせることで、成功率が高まります。咳や息切れ、血痰などの症状がある場合は、呼吸器内科を早めに受診しましょう。
過去にアスベストなどの有害物質にさらされていた
かつて建設現場や造船所などでは、アスベスト(石綿)が断熱材や防音材として広く使用されていました。現在は製造・使用ともに禁止されていますが、過去に吸い込んだアスベストが長期間肺に残ることで、肺がんや悪性中皮腫などの発症リスクが高まることが知られています。
症状としては、慢性的な咳や胸の痛み、呼吸困難などがみられる場合があります。アスベストを扱った経験がある方は、放置せず労災指定病院や呼吸器の専門医療機関に相談することをおすすめします。
肺結核など肺疾患の既往がある
肺結核や慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎などの肺疾患は、肺がんの発生リスクを高めると考えられています。何らかの肺の病気で治療を受けている方は、しっかりと継続して通院を続けるようにしましょう。万が一肺がんを発症しても、定期的通院をしている場合には早期発見も可能です。
「肺がんと血痰」についてよくある質問
ここまで肺がんと血痰などを紹介しました。ここでは「肺がんと血痰」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんの血痰は緊急性が高いのでしょうか?
羽田 裕司 医師
はい。咳に伴う血痰や喀血がある場合には、その原因を調べるためにも、早めに医療機関を受診しましょう。
まとめ
血痰は、肺がんが気道や血管にまで及んでいる、あるいはがんが大きくなり壊死しているサインである可能性があります。もし咳が出るようになり、痰に赤い色や錆のような色が混ざった際には、「少し血が混ざっただけ」と軽く考えないことが大切です。2週間以上続く咳や血痰があればすぐに医療機関を受診しましょう。
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連する病気
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血痰が出る可能性のある病気にはいろいろなものがあります。血痰が出たときには、一度内科や呼吸器内科での診察を受けるようにしましょう。
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連する症状
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんを疑う症状には、これらのようなものがあります。気になる症状があるときには、放置せずに医療機関を受診しましょう。
参考文献
- 1.危険因子と臨床症状,検出方法 日本肺癌学会 EBMの手法による肺癌診療ガイドライン
- 肺がん 予防・検診:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
- 肺がんについて:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
- Q1「肺がん」とはどのような病気ですか-日本肺癌学会
- Q3肺がんになるとどのような症状が現れるのですか-日本肺癌学会
- Q4. たんに血が混じりました。 - 呼吸器Q&A 日本呼吸器学会
- D. 間質性肺疾患 - 呼吸器の病気 - 呼吸器Q&A 日本呼吸器学会
- Lung cancer - Symptoms - NHS
- Signs and Symptoms of Lung Cancer|American Cancer Society
- Hemoptysis - Clinical Methods - NCBI Bookshelf
- Management of hemoptysis in patients with lung cancer. Ann Transl Med. 2019 Aug;7(15):358.
- Postobstructive pneumonia in lung cancer. Ann Transl Med. 2019 Aug;7(15):357.
- Lung cancer and interstitial lung disease: a literature review. J Thorac Dis. 2018 Jun;10(6):3829-3844.
- アスベスト(石綿)に関するQ&A |厚生労働省




