「気管支拡張症」とは?症状・原因・治療法についても解説【医師が監修】

気管支拡張症とは、さまざまな原因で気管支が拡張したまま元に戻らなくなってしまう病気です。症状の中心は咳や痰ですが、ときに発熱がみられることもあります。
気管支拡張症の症状は、風邪とよく似ています。しかし、感染に伴う炎症を反復することで病気が進行してしまう場合もあります。気になる症状があるときは、「ただの風邪」と自己判断せずに、呼吸器内科を受診するのがおすすめです。
今回は、気管支拡張症とはどのような病気なのか、原因や治療法も含めて解説します。

監修医師:
甲斐沼 孟(TOTO関西支社健康管理室産業医)
著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など多数。
日本外科学会専門医 日本病院総合診療医学会認定医など。
気管支拡張症とは
気管支拡張症とはどのような病気ですか?
気管支拡張症を治療せずに放置すると、気管支の拡張した部分に細菌やカビが増殖していきます。その結果、炎症を起こし、感染を反復することにより病気が進行します。
病気が進行すると、増殖した細菌やカビは肺の中まで広がり、肺炎を起こして肺を損傷してしまう場合もあります。
気管支拡張症の症状
気管支拡張症の症状を教えてください。
また、感染症を引き起こすと痰の量が増加し、炎症によって気管支の血管も増加していきます。その結果、血痰や喀血(かっけつ:咳とともに血液が吐き出されること)といった症状が出る場合もあります。
気管支拡張症が原因で、別の病気になることはありますか?
また、気管支拡張症が進行すると、肺炎や肺膿瘍、膿胸といった肺感染症を合併することもあります。
気管支拡張症の原因
気管支拡張症の原因を教えてください。
- 生まれたときから気管支が拡張している先天性のもの
- 後天的な原因で発症するもの
- 他の病気に引き続き発症するもの
先天性の気管支拡張症
先天的に発症する気管支拡張症について詳しく教えてください。
原発性線毛機能不全症候群とは、気道粘膜に発症する先天性の病気で、肺への感染症を反復するのが特徴です。
後天性の気管支拡張症
後天的な原因で発症する気管支拡張症について詳しく教えてください。
ほかにも、以下が気管支拡張症の原因となる場合があります。
- 中葉症候群
- アレルギー性気管支肺アスペルギルス症
- 閉塞性細気管支炎
- Swyer-James症候群
- 長期にわたる気管支への異物嵌入
他の病気に引き続き発症する気管支拡張症
他の病気に引き続き発症する気管支拡張症について詳しく教えてください。
気管支拡張症の受診科目
気管支拡張症を疑ったときは何科を受診すればいいですか?
風邪のような急性疾患の場合は通常の内科を受診してもいいですが、咳が2週間以上続く場合は、肺炎や喘息といった呼吸器の病気が原因となっている可能性が高いため、呼吸器内科を受診するのがよいでしょう。
また、咳が止まらない、咳がひどくて眠れない、咳が続き呼吸が苦しい、息切れがひどいといった強い症状がある場合も、呼吸器内科を受診するのがおすすめです。
気管支拡張症の性差・発症数
気管支拡張症になりやすいのはどのような人ですか?
気管支拡張症の検査
気管支拡張症が疑われた場合には、どのような検査が実施されますか?
また、感染症が疑われるときには、原因となっている菌の種類を調べるため痰の培養検査を行います。
特に喀血の症状が強いときには、血管の拡張程度を確認するために血管造影を行う場合もあります。
気管支拡張症の治療方法
気管支拡張症はどのように治療するのでしょうか?
自覚症状がほとんど見られないような軽症例は、経過観察をすることもあります。
去痰薬以外の薬物治療としては、炎症を抑制し症状を軽減するためにマクロライド系抗生物質を少量使用する場合もあります。感染症を合併したときには検査で原因菌を特定し、適切な抗生物質を選定して治療します。血痰や喀血がみられる場合は、止血剤を使用します。
薬物治療や呼吸リハビリテーションを行っても喀血が止まらない場合は、気管支鏡的止血法や気管支動脈塞栓術、外科的切除術などの外科的処置を検討します。
気管支拡張症の治療中に気をつけることはありますか?
治療中に市販薬やサプリメントを使いたいときには、担当医、薬剤師や登録販売者に相談してから使用しましょう。
気管支拡張症の治療では、肺の損傷による呼吸不全への進行を防止するのが最も重要です。そのため、感染症状悪化の繰り返しを可能な限りコントロールする必要があり、毎日の治療を続けられるかどうかが治療の成功を左右します。
自宅での呼吸リハビリテーション実施や、飲み忘れのないように薬を飲むなど、患者さんも積極的に治療に参加することが求められます。
編集部まとめ
気管支拡張症とは、気管支が拡張したまま戻らなくなってしまう病気です。症状の中心は咳や痰ですが、血痰や喀血、発熱がみられることもあります。
気管支拡張症の初期症状は風邪とよく似ていますが、病気が進行すると肺を損傷し、呼吸不全に至るケースもあります。そのため、薬物治療や呼吸リハビリテーションなどの治療で症状をコントロールすることが大切です。
子どもの頃に気道感染症を繰り返していた人や、慢性副鼻腔炎をもつ人が発症しやすいとされています。痰や咳が長期間続いている、血痰が出ているなど、心当たりのある人は早めに呼吸器内科を受診しましょう。
参考文献