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【肺がん治療】トリパリマブと化学療法の併用で生存期間が延長、新たな選択肢の可能性

 公開日:2025/02/23

中国国立がんセンターは、中国国内の59の病院が参加して実施された臨床試験「CHOICE-01」の結果を報告しました。この研究の成果は、2024年12月24日に科学誌「Signal Transduction and Targeted Therapy」に掲載されました。この内容について五藤医師に伺いました。

五藤 良将

監修医師
五藤 良将(医師)

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防衛医科大学校医学部卒業。その後、自衛隊中央病院、防衛医科大学校病院、千葉中央メディカルセンターなどに勤務。2019年より「竹内内科小児科医院」の院長。専門領域は呼吸器外科、呼吸器内科。日本美容内科学会評議員、日本抗加齢医学会専門医、日本内科学会認定医、日本旅行医学会認定医。

研究グループが発表した内容とは?

今回、中国国立がんセンターが発表した内容を教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

本研究「CHOICE-01」は、中国国立がんセンターを中心に、中国国内の59の病院が参加して実施された第3相臨床試験です。2019年4月2日~2020年8月5日の間で、進行性非小細胞肺がん(NSCLC)の未治療患者465人を対象に、トリパリマブと化学療法の併用による治療効果とバイオマーカーの探索がおこなわれました。

トリパリマブは、中国で開発されたPD-1阻害薬であり、本試験では標準的なプラチナベースの化学療法と併用することで、化学療法単独と比較して全生存期間(OS)の延長が確認されました。特に非扁平上皮がん(non-SCC)患者において顕著な効果が示された一方、扁平上皮がん(SCC)患者では統計的に有意な差が認められませんでした。

また、本試験は循環腫瘍DNA(ctDNA)と腫瘍組織を比較しながらバイオマーカーを解析した初の第3相試験であり、腫瘍変異負荷(TMB)やFA-PI3K-Akt、IL-7シグナル伝達経路の変異が治療反応性の予測因子となる可能性が示唆されました。しかし、扁平上皮がん患者に対する効果が限定的であったこと、免疫化学療法の反応性に影響を与える因子の詳細な解明が求められることが課題として残されています。

研究テーマになった「進行性非小細胞肺がん」とは?

今回の研究テーマに関連する進行性非小細胞肺がんについて教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

進行性非小細胞肺がんは、肺がんの中でも約85%を占める疾患であり、早期には症状が乏しく、多くの場合で診断時には進行していることが特徴です。腫瘍が増大すると、咳、血痰、胸痛、呼吸困難などの症状が表れ、さらに脳や骨、肝臓などへの遠隔転移がみられることもあります。これらの転移に対する適切な治療が重要となります。

治療法としては、病期や遺伝子変異の有無に応じて、手術、放射線治療、化学療法、分子標的治療、免疫チェックポイント阻害薬などが選択されます。特に、骨転移では放射線治療が有効であり、痛みの軽減や生活の質の向上が期待できます。また、脳転移に対しては、病変の数や大きさに応じて定位放射線治療や全脳照射をおこなうことが推奨されています。胸部病変による症状が強い場合には、緩和的放射線治療をおこなうことで呼吸の苦しさなどを和らげることも可能です。

今回のCHOICE-01試験では、進行性非小細胞肺がんの新たな治療選択肢として、トリパリマブと化学療法の併用が検討されました。特に、非扁平上皮がん(non-SCC)患者において有望な結果が示されましたが、扁平上皮がん(SCC)患者における有効性は限定的であり、さらなる研究が必要です。今後、バイオマーカー解析を通じて、より適切な患者層を特定し、個別化医療の進展に寄与することが期待されます。治療の選択は、医師や専門家と相談しながら、自身に最も適した方法を選びましょう。

研究内容への受け止めは?

中国国立がんセンターが発表した内容への受け止めを教えてください。

五藤 良将 医師五藤先生

今回のCHOICE-01試験の結果は、未治療の進行性非小細胞肺がんに対する免疫療法の可能性を広げる重要な知見があります。特に、トリパリマブと化学療法の併用により、非扁平上皮がん患者において全生存期間が延長する傾向が示され、有望な治療選択肢の1つとなる可能性が示唆されました。一方で、扁平上皮がん患者においては統計的に有意な差が認められず、治療反応性に影響を与える因子のさらなる研究が必要でしょう。

本研究では、バイオマーカー解析を通じて、腫瘍変異負荷(TMB)やFA-PI3K-Akt、IL-7シグナル経路の変異が治療効果の予測因子となる可能性が示唆されており、今後の個別化医療の進展に寄与することが期待されます。ただし、これらの知見が実際の治療に応用されるためには、さらなる臨床研究と検証が必要です。

編集部まとめ

今回の研究は、化学療法と免疫療法の併用がもたらす効果を検証し、生存期間を延ばす可能性を示しました。治療の選択肢が広がることで、より多くの方に適した治療が提供できるかもしれません。医療の進歩を活用しながら、専門医と相談し、自分に合った治療方法を選んでいきましょう。

※提供元「日本がん対策図鑑」【肺がん:一次治療(OS)】「トリパリマブ+化学療法」vs「化学療法」
https://gantaisaku.net/choice-01_os/

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