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“受動喫煙”が「肺がん」の遺伝子変異を引き起こす 国立がん研究センターの発表で明らかに

 更新日:2024/05/08
受動喫煙が遺伝子変異を誘発すことが明らかに

国立がん研究センターなどの研究グループは、女性の肺がん患者について、受動喫煙の経験がある非喫煙者とそうでない非喫煙者を比べると、より多くの遺伝子変異が蓄積していることを明らかにしました。このニュースについて中路医師に伺いました。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

研究グループが発表した内容とは?

国立がん研究センターらの研究グループが発表した内容について教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

今回紹介するのは国立がん研究センターらの研究グループが発表した内容で、研究成果は学術誌「Journal of Thoracic Oncology」に掲載されています。

女性の肺がんの多くを占める肺腺がんについて、日本人の非喫煙者女性に生じた肺がんの遺伝子変異と受動喫煙歴の関係についての研究をおこないました。対象となったのは国立がん研究センター中央病院で肺がんの手術を受けた413人で、喫煙者、継続的な受動喫煙の経験がある人、ない人の3グループに分けて比較をおこないました。

研究の結果、10代、30代のいずれか、あるいは両方で受動喫煙を受けていたグループの肺がんは、受動喫煙を受けていないグループの肺がんと比べて、より多くの遺伝子変異が蓄積したことが明らかになりました。また、能動喫煙者の肺がんでみられるタバコの発がん物質により直接引き起こされる変異が、受動喫煙者の肺がんではごく稀にしか確認されなかったとのことです。

こうした結果から、研究グループは「受動喫煙は能動喫煙とは違うメカニズムで変異を誘発することが明らかになった」としています。また、「受動喫煙により誘発された変異の多くは、がん組織内の全てのがん細胞のDNAに一様には存在していないことから、腫瘍細胞の発生そのものではなく、その後に不均一性(多様性)を増加させることで初期の腫瘍細胞の悪性化を促進している」と推察されました。

肺がんとは?

今回取り上げたテーマになっている肺がんについて教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

肺がんは気管支や肺胞の細胞ががん化したもので、進行すると血液やリンパ液の流れなどに乗って転移するケースもあります。特に、リンパ節や肺の中のほかの部位、胸膜、骨、脳、肝臓、副腎に転移しやすいです。

肺がんの主なタイプは、腺がん扁平(へんぺい)上皮がん大細胞がん小細胞がんの4つです。このうち最も多いものが腺がんで、全体の半数以上を占めています。次に多いのが扁平上皮がん、その後は小細胞がん、大細胞がんと続きます。腺がんは肺腺がんとも呼ばれるので記憶にある人も多いかと思います。

治療法は、組織型が小細胞がんの場合とそれ以外の場合とで異なるので、先ほど紹介した4つのタイプとは別に、小細胞肺がん、そして非小細胞肺がんと分類されています。

肺がんは、早期では症状がみられないことも多いため、進行して初めて症状が出る場合も少なくありません。主な症状としては、咳や痰、血痰、胸の痛み、息苦しさや動悸、発熱などです。脳や骨などに転移した場合は、頭痛、ふらつき、背中や肩の痛みなどの症状が出るケースもあります。

研究グループが発表した内容への受け止めは?

国立がん研究センターらの研究グループが発表した内容について、受け止めを教えてください。

中路 幸之助 医師中路先生

これまで受動喫煙と肺がんとの関連は報告されてきましたが、本研究で遺伝子レベルでのエビデンスが明らかになったことで、受動喫煙と肺がんの関連がさらに強固になったと言えます。また、原因遺伝子が特定されたことで、その変異をおさえる「受動喫煙による肺がん」の治療薬の開発につながる可能性も秘めており、大変有用な研究結果と考えます。

まとめ

国立がん研究センターなどの研究グループは、女性の肺がん患者について、受動喫煙の経験がある非喫煙者とそうでない非喫煙者に比べると、より多くの遺伝子変異が蓄積していることを明らかにしました。受動喫煙についての問題点は広く認知されていますが、今回の発見も注目を集めそうです。

この記事の監修医師