「腎臓がんの原因」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】
腎臓がんとは腎細胞がんともいわれています。
初期症状はほとんど無く、健康診断や他の疾患の検査をした際に見つかることが多いという特徴があります。
進行すると、肺・肝臓・脳・骨など他の臓器に転移する場合があり、その影響で症状が生じることがあるため注意が必要です。
この記事では、腎臓がんの原因や検査方法・治療方法などについて解説します。
特徴的な症状がなく、病気を自覚することが困難な腎臓がんの特徴を理解することで、定期的な健康診断を受けることや早期発見の大切さを実感できるでしょう。
気になる症状がある場合は、医療機関を早めの受診をおすすめします。
監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
腎臓がんの原因とは?
腎臓がんになる原因は、以下のものが挙げられます。
- 喫煙
- 肥満
- 高血圧
- 人工透析
- VLH(フォン・ピッペル・リンドウ病)
- BHD(バード・ホッグ・デュベ症候群)
- 後天性のう胞
一番の原因とされているのが、喫煙と肥満です。特に肥満である場合、発生率は4倍になるといわれています。
日本人が腎臓がんにかかる確率はがん全体の2%程度と低いですが、近年増加傾向にあります。生活習慣が影響を与える疾患ともいえるでしょう。
また、VLHやBHDといった遺伝因子による疾患は、高い確率で腎細胞がんを発症するといわれているため、定期的に検査をすることが大切です。
腎細胞がんについて
ここでは腎細胞がんについて、下記の4項目に沿って詳しく解説します。
- 症状
- 診断
- 病期(ステージ)
- 予後
上記の項目について詳しく見ていきましょう。
症状
腎細胞がんの初期症状はほぼみられません。腫瘍が小さいうちは、症状が出ないことが特徴です。進行し腫瘍が大きくなってくると、尿に血が混じる(血尿)・腹部のしこり(腹部腫瘤)・腹部の痛み(腰背部痛)といった症状が現れます。
肺・肝臓・骨・脳などに転移している場合は、転移に伴った症状が出てくるため注意が必要です。例えば、呼吸症状や肝障害・病的な骨折・神経障害などです。
また、がん細胞により腎臓の機能が低下すると、赤血球増多少や高血圧になることもあります。全ての症状が腎細胞がんが原因とは限らないため、他の疾患の可能性も考えなくてはいけません。気になる症状があれば早めに医療機関を受診しましょう。
診断
腎細胞がんの診断には、主に腹部超音波検査・腹部CT/MRI検査・経皮的針生検が行われ、これらの検査結果を総合して診断がつけられます。超音波検査は体への負担がなく行える検査です。人間ドックなどで腹部のスクリーニング検査として取り入れられています。
また、確定診断のために行うのが腹部CT/MRI検査です。造影剤を使用するCT検査を優先的に行い、がんの大きさや性状を確認します。また、周囲の臓器に転移している状況も知ることができます。CT検査は腫瘍周辺の血管の走行も分かるため、手術をする際の医師の資料としても活用することができ、大切な検査の1つです。
MRI検査は、造影剤アレルギーでCT検査できない場合や、CTの画像診断がはっきりしない場合などに行います。CT検査やMRI検査で病変の状況がはっきり分からなかったときは、経皮的針生検を行うケースがあります。腫瘍が小さい場合・すでに他臓器へ転移が見られる場合に、がんであるか・悪性度はどのくらいなのかの診断を行うために有効な検査です。
局所麻酔を使い経皮的に細い針を腎臓に穿刺し、腎臓の細胞の一部を取り出す検査のため、患者さんへの身体的負担がある検査になります。
病期(ステージ)
病期(ステージ)とは、がんの進行の程度を表すものです。腎細胞がんはI期~IV期というグループに分類され、数値が大きくなるほど進行しているという指標になります。ステージは、TNMという下記の3種のカテゴリの組み合わせにより決まります。
- Tカテゴリー:がんの大きさや広がりの程度
- Nカテゴリー:リンパ節へ転移のしているか
- Mカテゴリー:がんがある場所から離れた臓器やリンパ節に転移しているか
大きさは、4cm以下・4〜7cm以下・7〜10cm以下・10cm以上という区分に分けられます。
予後
予後とは、病気や手術・治療などの後、どのくらい回復するのか・余命はどのくらいなのかを表す指標です。腎細胞がんは、早期に小さな腫瘍で見つかった場合、腫瘍を摘出することで根治が可能とされており、治りやすい疾患といわれています。
しかし、腎細胞がんが進行したり、他臓器に転移したりしているときは、予後不良となり5年生存率・10年生存率が低下します。
腎細胞がんの検査
診断の項目で前述しましたが、腎細胞がんの診断には画像検査が有効であるため積極的に実施されます。
- 超音波検査
- 腹部CT・MRI検査
ここでは上記の2つの検査方法について詳しく解説します。
超音波検査
超音波検査とは、エコー検査ともいわれるもので、腎細胞がんを見つけるために最も有効な検査の1つです。小さな器械を直接腹部や背部に当て、先端から出る超音波を利用し臓器の状態を調べます。
患者さんの体への負担がなく検査できるため、人間ドックなどの腹部スクリーニングに用いられています。
腹部CT、MRI検査
腹部CT検査とは、体の断層を撮影し、腫瘍の大きさや性状・周囲の臓器への腫瘍がどのくらい広がっているかなどを調べることができます。また、造影剤を使用し、腎臓や尿管・膀胱などへの影響なども調べることができるため、正確な診断につなげることができる検査なのです。
MRI検査は、強力な磁気(磁場)を使って、断層像をさまざまな方向から映し出すことができる検査方法です。CT検査だけでは画像診断が難しく、腎細胞がんの判断ができない場合に実施します。
例えば、腎機能が著しく悪化しており、造影剤を使用できない場合などです。そのような場合は、エコー検査とMRI検査を併用することで診断をつけることが可能になります。
腎細胞がんの治療方法
腎細胞がんの治療方法には以下の3つの方法があります。
- 放射線治療
- 化学療法
- 外科的治療
上記について詳しく解説します。
放射線治療
放射線治療とは、X線や電子線などの放射線によりがんを治療する方法です。放射線を腫瘍に当て、細胞の遺伝子にダメージを与え壊していくことで腫瘍を小さくしていきます。
非浸潤的なため、患者さんの体への負担が少なく治療できるという利点があります。脳や骨・腹膜などに転移がある場合、がんの進行を抑えたり、痛みを緩和させたりする目的で行われます。
化学療法
化学療法とは、抗がん剤を利用した薬物療法です。手術によって腫瘍が取れない場合や、手術前に腫瘍を小さくし治療の効果を高める目的で行われます。
化学療法には、分子標的治療・免疫療法の2種類があり、腫瘍の悪性度や多臓器への転移状況などにより選択されます。
外科的治療
早期の腎細胞がんは、外科的治療が第一選択になることが多いようです。主な手術方法は、腎部分切除術と全摘出術です。どちらも開腹で行う方法と腹腔鏡下で行う方法の2通りがあります。
腫瘍の大きさや周囲の臓器への転移状況など、病変の状態から手術方法は選択されます。また、患者さんが全身麻酔や手術侵襲に耐えられる状態であるかによっても手術方法は変わってくるでしょう。
早期の腎臓がんに対する手術方法
先述しましたが、早期の腎臓がんに対する手術方法は下記の2つがあります。
- 部分切除術
- 全摘出術
上記について詳しく解説します。
部分切除術
部分切除術とは、腎臓の一部を腫瘍と一緒に切除する手術方法です。残った腎臓の機能を温存できるため、手術後の合併症への影響を少なくできます。
4cm以下の小さいがんに対して適応となりますが、腫瘍がある場所によっては部分切除で対応できない場合があります。今までは開腹手術で行う症例がほとんどでしたが、最近はダヴィンチ手術といったロボットを利用した腹腔鏡手術で行う施設も増えてきています。
全摘出術
全摘出術は、腎腫瘍を周りの脂肪組織と一緒に腎臓ごと摘出する方法です。根治的腎摘徐術ともいわれます。
開腹手術と腹腔鏡下で行う方法があり、患者さんの全身状態や病変の状態により手術方法は選択されます。片方の腎臓を摘出してしまう手術ですが、残った腎臓が正常であれば日常生活に与える影響は少なく、問題はないとされています。
編集部まとめ
この記事では、腎細胞がんの原因や検査方法・治療法について解説してきました。
腎細胞がんは、腎実質の細胞が悪性腫瘍になったものです。
初期には特徴的な症状がないため、他の病期の検査や検診を受けた際に見つかることが多く、偶発がんともいわれています。
尿に血が混じる(血尿)・腹部のしこり(腹部腫瘤)・腹部の痛み(腹腰部痛)を自覚したときには進行している可能性が高く、他の臓器への転移が考えられます。
腎細胞がんは50~70歳代で多く発症し、男女比は7:3というデータがあります。
50歳を過ぎた頃から定期的な検査を受けることで早期発見につながり、適切な治療をいち早く受けることが可能になります。
また、自覚症状がある場合は、病状が進行している可能性もあります。
気になる症状がある場合は、早めに病院へ行き医師に相談しましょう。
腎臓がんと関連する病気
腎臓がんと関連する病気は8個あります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎臓がんは、健康診断で見つかったり、他の臓器の検査をした際に見つかったりする疾患です。定期的な検診で早期に見つけることで、進行を防ぐことができ根治につなげることが可能になります。
腎臓がんの症状と関連する症状
「腎臓がん」の症状と関連している症状は8個あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎臓がんは初期の段階では、自覚症状がほぼない疾患です。上記のような症状は、腎臓がんが進行した場合に見られることがあるため注意が必要です。
また、他の疾患にかかっている可能性もあるため、腎臓がんとの識別も大切になります。どのような疾患も、早期発見・早期治療で生存率を高めることにつながります。少しでも気になる症状があれば、早めに医療機関を受診しましょう。