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「腎臓がん」の初期は自覚症状がほとんどない?危険因子や症状について解説!

 公開日:2023/08/18
「腎臓がん」の初期は自覚症状がほとんどない?危険因子や症状について解説!

腎臓がんとは、腎臓の中の細胞が通常以上に増えてしまい、腫瘍を作る病気のことを指します。この病気は、初めのうちはあまり体に変化が出ないので、気付くのが遅くなってしまいがちです。

しかしながら、早く気付いて適切な治療をすれば、治る可能性も高まります。そのため、適切ながん検診を受けて、早期発見することが重要となるでしょう。

そこで、この記事では、より腎臓がんへの理解を深めるためにも、腎臓がんの症状や種類・原因・検査方法・手術・術後の日々の生活などについてわかりやすく説明します。

村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

腎臓がんの症状や種類

カウンセリング

腎臓がんの種類について教えてください。

腎臓がんには、腎細胞がん・腎盂がん・ウィルムス腫瘍などがあります。この3つの中で最も一般的なのは、腎細胞がんです。腎臓がんの全体の約90%を占めています。
次に一般的なのは腎盂がんです。これは腎臓の中心部にある腎盂と呼ばれる部分から発生します。腎盂がんは膀胱がんと同じく、尿路上皮(移行上皮)癌というタイプが一般的です。
また、主に3歳以下の幼児に見られる腎臓がんとしてウィルムス腫瘍という腎臓がんもあります。

どのような症状がありますか?

初期のがんは自覚症状がほとんどありません。だからこそ、小さな腎細胞がんは、健康診断や他の病気の検査の中で偶然に見つかることがほとんどです。肺や骨・肝臓・脳に転移したがんが先に見つかり、詳しい検査の結果、腎細胞がんが発見されることも少なくありません。
腎細胞がんが大きくなると次のような症状が現れることがあります。

  • 血尿
  • 背中や腰の痛み
  • 腹部にしこりが生じる
  • 足のむくみ
  • 食欲不振や吐き気
  • 便秘
  • おなかの痛み

転移がある場合は、症状も異なります。肺に転移すると、胸の痛み・咳・血痰(けったん)などが現れることが多いです。骨に転移すると、骨の痛みや骨折のリスクが高まります。
脳に転移した場合には、頭痛や片側の運動麻痺(まひ)などの症状が現れることが多いです。がんが全身に広がると、発熱・倦怠感・体重減少などの全身的な症状が現れることもあります。

腎臓がんの危険因子は?

危険因子として特に重要なものは、下記が挙げられます。

  • 喫煙
  • 肥満
  • 高血圧
  • 長期の腎臓病
  • 遺伝

まず、長期間にわたる喫煙は腎臓がんのリスクを高めることが知られています。しかし、禁煙を始めれば、そのリスクは時間とともに減少します。次に体重が重すぎると、つまり肥満の状態では、腎臓がんになる可能性が高くなるでしょう。健康的な体重を維持することがリスクを抑える上でも重要です。
また血圧の高さも危険因子の1つです。そのため、血圧を適切に管理することで、このリスクを抑えるようにしましょう。
長期間にわたる腎臓の病気を持つ人も、腎臓がんのリスクが高まることが知られています。さらに、特定の遺伝性の病気を持つ人や、直系の家族が腎臓がんを患ったことがある人も、腎臓がんのリスクが高まる可能性があります。
これらの危険因子が存在すると腎臓がんのリスクが高まる可能性がありますが、必ずしも因子が存在するからといって、腎臓がんになるとは限りません。またこれらの因子が存在しない人でも、腎臓がんになる可能性はあります。健康状態の管理と定期的な健康診断が重要です。

腎臓がんが転移しやすいのはどこですか?

特に肺・骨・肝臓・脳といった部位に転移する傾向が強い病気です。腎臓がんがこれらの部位に転移すると、その後の治療の進め方や、患者さんの健康状態の見通しが大きく変わることがあります。
そのため、定期的に検診を受けて、早期に転移を見つけることが非常に重要となります。

腎臓がんの診断や手術

カルテを持つ医者

どのような検査が行われますか?

診断としては、血液検査・尿検査・画像診断(CT、MRI、超音波など)が主な検査方法です。これらの検査により腎臓に異常があるか、腫瘍の大きさ・位置・転移の有無などを確認します。

腎臓がんの診断方法を教えてください。

腎臓がんを調べるためには、主に画像診断と腎生検という2つの検査が行われます。画像診断は、超音波検査・CT(コンピュータ断層撮影)・MRI(磁気共鳴画像)といった機械を使って、腎臓の中を詳しく見るための検査です。
これらの検査によって腎臓の中に何か異常があるか、または腫瘍(がん)があるかどうか、その大きさや位置はどうかなどを確認します。この画像診断ではっきりしない場合に行われる検査が「腎生検」という検査です。
針を使って腎臓の一部を採取し、その組織を顕微鏡でよく見て、腎臓がんであるかどうかを確認します。この検査により、腎臓がんの診断が確定します。

治療方法について教えてください。

腎臓がんの治療方法は、がんの進行具合や患者さんの全体的な健康状態によりますが、主に以下のような3つの方法があります。

  • 手術
  • アブレーション治療
  • 薬物療法

上記の3つの治療方法のうち、腎臓がんの最も一般的な治療法は手術です。がんが小さく、腎臓の一部に限定されている場合は、がんの部分だけを切り取る「腎部分切除」が行われます。これにより、健康な腎臓の組織を可能な限り温存できます。一方がんが大きく、腎臓全体に広がっている場合や健康な腎臓が正常に機能している場合は、がんがある腎臓全体を取り除く「腎摘除」が行われることが多いです。
手術が困難な場合や、患者さんの体調によって選択される治療方法がアブレーション治療です。アブレーション治療というのは、大きな手術をせずに、がん治療を試みる方法です。この治療にはラジオ波焼灼療法と凍結療法の2つの方法があります。
ラジオ波焼灼療法はがんを熱で焼いて消す方法です。一方で凍結療法は、がんを急速に冷やして凍らせて消す方法です。これらの治療は、特別な針を使って直接がんに対して行います。このように、大きな手術をせずにがんを治す方法を「低侵襲治療」と呼びます。
肺や骨に転移があって切除が難しい場合に採られる治療方法が薬物療法です。この薬物療法には、免疫チェックポイント阻害薬を用いた複合免疫療法や分子標的薬による薬物療法があります。これらの治療はがん細胞の成長を抑えたり、体の免疫システムを活性化させたりして、がん細胞を攻撃することを目指した治療方法です。

どのような手術が行われますか?

腎部分切除や腎摘除といった手術が一般的です。腎部分切除は、がんが小さく腎臓の一部に限定されている場合に行われます。
この手術では、がんの部分だけを切り取り、健康な腎臓の組織をできるだけ残すようにします。腎摘除は、がんが大きく腎臓全体に広がっている場合や健康な腎臓が正常に機能している場合に行われる手術です。
この手術では、がんがある腎臓全体を取り除きます。これらの手術は、開腹手術だけでなく、傷が小さくて済む腹腔鏡下手術やロボット支援手術で行われることもあります。

腎臓がんの通院や日常生活

健康診断

手術後の通院頻度はどのくらいですか?

一般的には、手術直後の数週間は週に1回の通院が必要となることが多いです。これは、手術の結果や回復状況をチェックし、必要なケアを提供するためです。
その後、回復が順調であれば、通院の頻度は徐々に減っていきます。通常は数ヶ月に1回の通院です。ただし、これらの通院頻度はあくまでも目安であって、手術の種類・健康状態・がんの進行状態によって変わります。そのため、この通りの通院頻度になるとは限りません。

手術後の日常生活での注意点はありますか?

腎臓がんの手術後の日常生活では、いくつかの注意点があります。まず、手術後は体力が落ちていることが多いので、無理をせずに十分な休息をとることが大切です。また、何か体調に変化があったり、痛みを感じたりしたらすぐに医師に連絡するようにしましょう。
食事については栄養バランスの良い食事を心がけ、体力の回復に努めます。特に、腎臓に負担をかけないような食事を心がけることが重要です。適度な運動も大切です。体力を回復させるために、激しすぎない運動を行いましょう。ただし、運動の種類や強度は、医師の指示に従って行うことが大切です。
そして、定期的に病院に行き、医師の指示に従って治療を続けることも重要です。通院の際には、自分の体調や生活状況を医師に伝え、必要なアドバイスを受けるようにしましょう。これらの注意点は一般的なもので、個々の患者さんの状況によっては異なることもあります。具体的なアドバイスは、主治医から受けることが最も確実です。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

私たちの身体は、日々の生活の中でさまざまな病気にかかるリスクがあります。腎臓がんもその一つかもしれませんが、決して一人で向き合うべきものではありません。医療チーム・家族・友人などが支えとなってくれるでしょう。
腎臓がんの早期発見は治療を行う上で非常に効果的です。何か異常を感じたら、遠慮せずに医療機関に相談しましょう。

編集部まとめ

女医
腎臓がんは早期に発見できれば、治療の成功率が非常に高い病気です。

早期の腎臓がん、特に腎臓内に限定されている場合には手術による治療が可能で、5年生存率は非常に高いとされています。そのため、早期に腎臓がんを発見できれば、がんだからといってもそう心配する必要はありません。

しかしながら、定期的な健康診断や自己チェックが大切です。何か異常を感じたら、すぐに医療機関に相談しましょう。早期発見は、腎臓がんと闘う上で最も強力な武器の一つとなります。

この記事の監修医師