「胃がんの症状」はご存知ですか?初期症状・発症しやすい年齢層も医師が解説!
胃がんの症状とは?Medical DOC監修医が胃がんの症状・初期症状・末期症状や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
根来 和輝(医師)
日本消化器病学会・日本消化器内視鏡学会所属。
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんは胃から発生するがんです。胃は食道の次にある消化管で、食べたものは食道を通って胃に溜まり胃酸によって消化されます。消化の他にも栄養の吸収やホルモンの分泌が胃の役割です。胃の内側を覆っている粘膜からがん細胞が発生すると「胃がん」になります。
日本では2018年の胃癌の死亡数は約4万4千人で、肺癌・大腸癌に次いで3位でした。(男性では2位、女性では4位)胃がんの代表的な原因はピロリ菌で、感染が確認された場合は除菌治療が必要になります。
胃がんの代表的な症状
食欲不振
食欲が少なくなり、食事の量が減少します。胃にトラブルがある時に生じやすい症状の一つです。まずは胃への負担が少ない食べ物を選び、水分はしっかり摂取するようにしましょう。具体的には油物やお肉や辛いものは避けて、うどんやお粥などの消化に良い食べ物を選び、温野菜など体を冷やさずに栄養を摂取しましょう。また、睡眠不足や運動不足やストレスなど生活習慣の見直しも重要です。緊急性は高くはないですが、症状が持続する場合は内科や消化器内科を受診しましょう。
みぞおちの痛み・胃もたれ
食後や空腹時にみぞおちに痛みを感じたり、少量の食事でも胃が重たく感じたりする症状が出ることがあります。胃がんによって潰瘍ができたり、胃炎が起こったりすることで生じる症状です。胃の動きが悪くなり消化に時間がかかることでも生じます。症状が出た際は、無理に食事せずにお腹を休めましょう。症状が落ち着けば消化に良い食べ物、お腹を冷やさない食べ物を少量から食べましょう。症状が続く場合は胃薬の内服も考えるとよいと思います。ここで注意していただきたいのは、痛み止めは安易に飲まない方が良い、ということです。特に代表的な痛み止めである「ロキソニン」をはじめとしたNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類される鎮痛薬は胃に悪影響を与え、さらに痛みが増悪する可能性があるので内服は控えましょう。市販薬に関しては薬局に聞いてみましょう。症状が持続する場合は、消化器内科へ受診しましょう。
体重減少
食欲が少なくなり、体重が減少します。痩せようと思って食事制限や運動などのダイエットはしておらず、普段と変わらない生活をしているのにも関わらず体重が徐々に減少する場合は注意が必要かもしれません。体重を毎日計測し、食事の食べる量や食欲などの体の変化に注目しながら生活しましょう。それぞれの体格にもよりますが、1ヶ月に1kg以上の体重減少が3ヶ月以上続く場合は内科を受診して精査を受けた方が良いでしょう。
黒色便
茶色ではなく、真っ黒な便のことを黒色便といいます。胃がんの症状なのになぜ便の症状が出るの?と感じる方も多いかもしれません。実は胃で出血がある場合は便が黒くなります。胃から出血した場合、その血液も消化されます。血液には鉄分が豊富なので消化された鉄によって便が黒くなるのです。胃がんは組織がもろく出血しやすいので、便が黒くなることがあります。消化管は一本の管としてお尻まで繋がっているので胃の病気であっても便が変化することがあります。重要な体のサインとして毎日の便にも注目し、便が黒くなった場合は消化器内科を受診し、胃カメラで精査してもらうことをおすすめします。
なお、鉄分を補うために薬やサプリメントとして鉄剤を内服している人は同じ原理で便が黒くなるので注意してください。
貧血症状
ふらつき・めまい・動悸・息切れといった貧血症状が現れることがあります。胃がんは組織が脆く出血しやすく、じわじわ出血することで貧血になります。胃がんによる貧血では鉄分が不足するため、食材、サプリメントや薬で鉄分を補充することが有効です。症状が続く場合は内科を受診してください。しかし、貧血症状が非常に強く歩けなくなるほどの場合は、緊急性が高い可能性があるため救急外来も含めてすぐに受診することをおすすめします。
胃がんの初期症状
日本で胃がんによる死亡数は肺がん・大腸がんに次いで3位です。人生で2人に1人はがんになるという状況において、決して他人事とは言っていられないですよね。そして、がん治療において最も大事なことの一つは「早期発見」です。そのために早期発見につながる胃がんの初期症状が知りたくなりますよね。しかし、残念ながら「初期症状」は胃がんにはありません。早期胃がんは「無症状」です。そのため、定期的な胃透視検査(バリウム)や胃カメラを受けることが重要です。
ここでがん診療において大事なことをもう一つ挙げると「がんのリスクを減らす」ことです。胃がんの最大のリスクはピロリ菌感染です。感染が確認されたら除菌治療の適応になります。除菌治療を受けることで胃がんのリスクを減らすことができます。本項ではそんな胃がんのリスクになる「ピロリ菌感染の症状」について紹介します。
胃もたれ
通常の食事でも胃が重く感じる症状です。胃炎が生じている場合に感じることがある症状です。それ以外に、脂っこい食べ物やアルコールやストレスや睡眠不足で自律神経が乱れている場合にも同様の症状が出現します。消化に良い食べものを食べられる範囲で食べましょう。睡眠不足やストレスなどの日常生活習慣全体を改善することも重要です。症状が続く場合は、消化器内科を受診してお薬による治療や胃カメラによる検査を相談しましょう。
みぞおちの痛み
胃炎によりみぞおちの痛みが現れることがあります。特に食後に症状が現れる場合は胃からの症状の可能性が考えられます。がっつりしたお肉や揚げ物などは胃に負担をかけるので避けた方が良いでしょう。市販薬の胃薬も試してみても良いかもしれません。昔から他の人よりも胃が弱いという方の中にはピロリ菌が原因になっている可能性もあります。消化器内科を受診して胃カメラ検査について相談してみましょう。
胸焼け
みぞおち付近にムカムカとした焼けるような症状が出現することがあります。これは逆流性食道炎や胃炎でみられる症状です。他にもげっぷがよく出たり胃酸が逆流する感覚がしたり少量の食事ですぐにお腹が膨れるような症状が出現することがあります。胃酸がよく分泌される脂物やがっつりしたお肉料理などは避けた方が良いでしょう。症状が続く場合は消化器内科で胃カメラを含めた検査をおすすめします。
胃がんの末期症状
激しい胃痛
胃がんが進行すると腫瘍が他臓器や神経を障害することで激しい疼痛が出現することがあります。痛みが強い場合は無理に食事せずお水を飲むだけにしましょう。水すら飲めない場合は入院が必要となる可能性もあるので、すぐに消化器内科や救急外来を受診しましょう。
吐血
胃がんが進行すると腫瘍からの出血が多くなります。動脈が破綻して急激に出血した場合は吐血してしまうことがあります。吐血は緊急性が非常に高く、緊急内視鏡検査が必要となる可能性があります。そのため、夜間であっても救急外来を受診することをおすすめします。
急激な出血でない場合は、吐血ではなく先ほど紹介した黒色便や貧血症状が出現します。こちらにも注意が必要です。
首のリンパ節が硬く腫れる
胃がんが進行するとがん細胞がリンパ節に転移します。リンパ節は全身に存在しますが、まずは胃の近くのリンパ節に転移します。さらに進行すると首のリンパ節に転移がみられることがあります。特に左鎖骨の上の窪みにあるリンパ節(左鎖骨上窩リンパ節)に転移することが知られています。これを「ウィルヒョウ転移」と呼び、胃がんがかなり進行しているサインです。がんが原因でリンパ節が腫れる場合は、感染症などで腫れる場合とは違い、痛みはなくゴツゴツと硬いことが特徴です。首にしこりがある場合は、内科や耳鼻科への受診をおすすめします。
すぐに病院へ行くべき「胃がんの症状」
ここまでは胃がんの症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。
吐血症状が見られた場合は、消化器内科へ
胃がんの末期症状の項でも紹介しましたが、胃がんが原因で吐血してしまうことがあります。吐血は胃がん以外にも胃潰瘍・十二指腸潰瘍・食道静脈瘤破裂など胃がん以外が原因になることも多いです。しかし、いずれにしても吐血は食道や胃で大量出血が起きることで起こる症状で非常に危険な状態です。放置すると出血多量で血圧が下がり、最悪の場合死に至ることもあります。すぐに消化器内科、夜間なら救急外来を受診しましょう。
受診・予防の目安となる「胃がんの症状」のセルフチェック法
・食欲不振がある場合
・みぞおちの痛みがある場合
・体重減少がある場合
「胃がんの症状」についてよくある質問
ここまで胃がんの症状を紹介しました。ここでは「胃がんの症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
胃がんを発症しやすい年齢層を教えて下さい。
根来 和輝 医師
胃がんが最も多いのは70−80歳の男性です。女性に比べて男性が多く、40歳を超えたあたりから発症する人が徐々に増えていきます。(全国がん登録罹患データより)
胃がんの初期症状で一番多い症状はどんな特徴がありますか?
根来 和輝 医師
早期胃がんでは無症状であることがほとんどです。胃がんの初期症状として特定の症状はなく、軽い胃痛や食後のもたれなどの胃炎で生じるような不調がある場合は胃カメラ検査を受けることが重要です。
げっぷとおならは胃がんの症状と関係があるのでしょうか?
根来 和輝 医師
ほとんどの場合、関係はありません。げっぷが多い時は、逆流性食道炎や食道や胃の動きが悪い場合やストレスや癖で空気をたくさん飲み込んでしまっている場合などが考えられます。おならも胃がんと直接の関係はなく、食べるものや腸内環境等によって量は変化します。
編集部まとめ
胃がんは、早期発見が非常に重要です。しかし、早期胃がんは無症状であることがほとんどです。そのため、健診での胃カメラ検査が非常に重要になります。また、ピロリ菌除菌は胃がんのリスクを低減させることができます。早めに除菌するメリットは大きいと思います。
また、最後に伝えたいこととしては「皆さん、胃カメラ受けましょう!」です。楽な検査ではありませんが、最近は静脈麻酔でなるべく比較的楽に受けられる医療機関も増えてきています。「ちょっと胃カメラ受けてみるか」というような感覚でぜひ受けてみてください。異常がないことを確認しておくだけでも、日々の安心感は違ってくると思いますよ。40歳以上のあなた、特に男性の方は今すぐ消化器内科へご相談ください。
⚫︎まとめ
- ・胃がんは早期発見が重要。症状だけで早期発見は困難。
- ・早期発見には胃カメラが重要。
- ・ピロリ菌の除菌治療で胃がんのリスクを下げられる。
⚫︎ACTION PLAN
- 20歳以上の方はピロリ抗体検査を健診で受けてみましょう。
- 40歳以上の方・胃の不調がある人は胃カメラを受けてみましょう。
「胃がんの症状」と関連する病気
「胃がんの症状」と関連する病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃がんの症状と同じような症状をおこす病気もこれほどあります。なかなか自己判断は難しいので、症状が続く場合はぜひ一度医療機関を受診してください。
「胃がんの症状」と関連する症状
「胃がんの症状」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状が当てはまる場合には、胃がんなどの異常の有無を確認するべく、早めに医療機関を受診しましょう。