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「脳室内出血」で起こる“3つの症状”とは?生存率と原因も医師が解説!

 公開日:2026/03/17
「脳室内出血」で起こる“3つの症状”とは?生存率と原因も医師が解説!

脳室内出血とは?メディカルドック監修医が脳室内出血の症状や特徴・原因・検査方法・余命・生存率・治療法などを解説します。

佐々木 弘光

監修医師
佐々木 弘光(医師)

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医師、医学博士。香川大学医学部卒業。奈良県立医科大学脳神経外科に所属し、臨床と研究業務に従事している。現在、市立東大阪医療センターに勤務。脳神経外科学会専門医、日本脳神経血管内治療学会専門医、脳卒中学会専門医、の資格を有する。

「脳室内出血」とは?

脳の中には「脳室」と呼ばれる部屋(空間)がいくつか存在します。専門的には「側脳室」「第三脳室」「第四脳室」、などと名前がついていて、それぞれの部屋は連続的につながっています。そして「脳室内出血」とはその名の通り、この空間の中で出血が生じる病気のことです。従って、脳そのもの(脳実質)の内部で出血し、脳細胞を直接的に破壊していくような、いわゆる脳(内)出血とは少し様子が異なります。しかし仮に脳細胞が直接破壊されなかったとしても、脳に与える影響は甚大です。ここでは脳室内出血についてその症状や原因などについて詳しく解説していきます。

脳室内出血の代表的な症状や特徴

脳や脊髄は硬膜と呼ばれる膜に覆われ、膜の中は脳脊髄液と呼ばれる透明な液体で満たされています。スーパーなどで売られているお豆腐のパックで例えると、パックが硬膜、お豆腐が脳、中に満たされている水が脳脊髄液、とイメージしていただければわかりやすいかと思います。そして脳室の中もこの脳脊髄液で満たされています。脳脊髄液は成人で約150mlの量に保たれており、1日あたり約500ml程度、産生されます。つまり脳脊髄液は産生と排出を繰り返しながら循環し、1日あたり3-4回程度入れ替わっていることになります。そしてこの循環が滞りなく行われることによって我々の脳細胞は常に保護され、意識も覚醒した状態が保たれています。脳室内出血は、主にこの脳脊髄液の空間に向かって出血が生じることになります。

急激な頭痛、嘔吐

脳脊髄液の許容量を超えて脳室内に出血が充満してしまうことで、頭の中の圧力が急上昇し、突然の頭痛や嘔吐などの症状を生じます。急激な症状が現れた場合は、脳神経外科や救急科のある医療機関を直ちに受診する必要があります。

意識障害

脳室内出血の量が多い場合は、脳脊髄液の循環(排出)が阻害されて頭の中に脳脊髄液がたまって、脳室が膨らんで拡大する「水頭症」と呼ばれる状態になることがあります。専門的には「急性閉塞性水頭症(非交通性水頭症)」と言われ、この状態になると意識不明になり、極めて危険な状態になります。一刻を争う緊急事態ですので、救急車を要請してください。

運動麻痺や感覚障害

脳室内出血だけという状態と少し異なりますが、脳の中で視床や小脳、脳幹と呼ばれる脳室に近い個所から出血すると、出血の一部が脳室の中に流れだして脳室内出血(脳室内穿破:のうしつないせんぱ と言います。)になります。この場合、視床や小脳の損傷に伴う麻痺や感覚障害、めまい、ふらつきといった関連症状を認める場合があります。

【新生児】脳室内出血の代表的な症状や特徴

ここまで成人の脳室内出血について説明してきましたが、新生児でも脳室内出血を生じる場合があります。新生児の場合は症状が非典型的で、活気がない、哺乳力が弱い、反射が増加する、無呼吸、痙攣発作といったものが代表的です。また新生児の頭蓋骨は完全にはつながっていないため、水頭症を来たすと大泉門と呼ばれる前頭部の隙間が膨隆してくる場合もあります。逆に言えば骨の隙間からエコー検査を用いて、脳室内の出血を確認して診断することも可能です。また新生児脳室内出血の90%程度は、生後72時間以内に生じるとされます。

脳室内出血の主な原因・治療

前述のような症状が見られた場合、特に意識障害などを生じている場合は救急救命科や脳神経外科・内科などに救急搬送されるケースが多いです。そして原因を特定するために頭部CTや頭部造影CT、カテーテルによる脳血管造影などの緊急検査が行われます。脳室内出血の原因は様々ですが、いずれにしても何らかの外科治療を行わなければならない場合が多く、脳神経外科が治療を担当することになります。入院期間は原因や後遺症の程度などによって様々で、2-4週間程度のこともあれば、リハビリのために半年以上の治療期間を要する場合もあります。ここでは代表的な脳室内出血の原因について解説します。

水頭症に対する緊急治療

意識障害を伴う水頭症は放置すると命にかかわるため、脳室拡大を解除するための緊急手術を行います。具体的には脳室ドレナージ術といって、頭蓋骨に小さな穴をあけ(穿頭と言います。)、脳の表面から脳室の中に向かってチューブを通す手術です。手術後、チューブは体表の外に出してしばらく管理します。つまり血液の混じった脳脊髄液を体外に排出することで、髄液の量をコントロールして水頭症を軽減させ、さらに血液の除去も同時に行います。病院によっては内視鏡手術が行われる場合もあり、これは小さく開頭して脳の表面から脳室内に向かって内視鏡を挿入し、直接的に出血を取り除く方法です。いずれの方法にせよ、脳室が縮小することによって意識障害は徐々に改善していきます。

原因:脳血管の異常

脳室内出血は主に脳血管の異常によって生じます。具体的には、脳(内)出血の脳室穿破、くも膜下出血(脳動脈瘤の破裂)、脳動静脈奇形、もやもや病、といったものが挙げられます。それぞれの原因によって対処法は異なりますが、何らかの外科治療を要する場合がほとんどです。

  • 脳(内)出血:脳出血の原因の多くは高血圧です。手術ができない部位(脳幹)の出血であったり、出血が少なかったりすると、手術せずに経過観察する場合もあります。出血量が多い場合は手術で血腫を除去します。
  • くも膜下出血:くも膜下出血の原因の多くは脳動脈瘤の破裂ですが、時に脳室内を中心に出血する場合もあります。再破裂を生じると致死的になるため、緊急で開頭術やカテーテルによる動脈瘤の止血処置を行います。
  • 脳動静脈奇形:頭蓋内の動脈と静脈とに異常な血管のつながりができ、それが塊となって頭蓋内に存在している病気です。破裂を予防するために手術で摘出したり、カテーテルによる塞栓術を行ったりします。
  • もやもや病:頭蓋内の血管が徐々に細くなり、もやもやとした見た目になっていく病気です。成人の場合は脳出血を生じやすいとされます。再出血を予防するために脳血管のバイパス術を行う場合があります。

原因:脳室内腫瘍

脳室内にできた腫瘍から出血する場合もあります。その場合は腫瘍の摘出も合わせて検討されます。腫瘍の種類によって、術後に行う治療方針も変わってきます。

原因:特発性

入院中に精査を行ったとしても、稀に原因が特定できない場合もあります。再発の懸念もありますが、ひとまずは外来で厳重に経過観察を行っていきます。

慢性期の水頭症に対する治療

脳室内出血の急性期を乗り越えた後にしばらくして水頭症が出現する場合もあります。このような病態を出血後の二次性水頭症といい、歩行障害や認知機能障害、尿失禁といった症状で気づかれます。治療は手術しかなく、シャントと呼ばれる機械を埋め込んだり、内視鏡を用いて新しい髄液の通り道を作ったり(第三脳室底開窓術)する方法があります。

【新生児】脳室内出血の主な原因・治療

原因:脆弱な組織と止血異常

新生児の脳室内出血の多くは低出生体重児、特に出生体重1500g未満の極低出生体重児に生じます。低出生体重児は胚芽層と呼ばれる脳室内の組織が脆弱で、脳血流や低酸素などの変化によって出血するといわれています。また、ビタミンK欠乏症や先天的な止血機能の異常を有する疾患(血友病、血小板減少症など)もリスクとなります。

水頭症に対する治療

新生児の場合でも成人と同じように、脳室拡大を伴う水頭症は重症であるため、水頭症を解除するための脳室ドレナージ術を行う場合があります。さらに二次性水頭症を生じる可能性もあり、その場合は、少し成長を待ってから前述のシャント手術や内視鏡手術を行うこともあります。

脳室内出血の後遺症・余命・生存率

成人の場合の後遺症

脳室内出血単独での後遺症の特徴としては、意識障害を伴うような重症出血であったかが重要です。日本の統計資料によると、重症の脳出血ではドレナージ手術で一定の効果があったとされるものの、意識障害が遷延して寝たきり・介護状態となる患者さんが多かったとされます。意識障害を伴う重症なものは余命や生存率も低くなる傾向にあるといえます。

新生児の場合の後遺症

新生児における脳室内出血の重症度はGrade 1-4に分類されます。脳室拡大や脳実質の出血を伴うようなGrade 3-4は重症で予後不良とされ、後遺症が残る確率も30~50%以上とされています。死亡率は5-10%、出血後に水頭症へと進行する可能性は5-20%とする報告もあります。

「脳室内出血」についてよくある質問

ここまで脳室内出血について紹介しました。ここでは「脳室内出血」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

脳室内出血は完治するのでしょうか?

佐々木 弘光医師佐々木 弘光(医師)

基本的に脳出血は時間がたてば自然に吸収され、最終的にはなくなります。しかし急性期に水頭症を生じる場合は緊急でドレナージ術が必要となりますし、慢性期に二次性の水頭症を来す場合はシャント手術や内視鏡手術が必要となる場合もあり、脳への影響は甚大です。また脳室内出血の原因となる疾患によっては、クリッピング術、塞栓術、摘出術、バイパス術など様々な外科治療が検討される場合もあります。

まとめ

ここまで脳室内出血について解説してきました。成人、新生児ともに様々な原因があり、治療の方法も異なります。しかし急激な変化によって緊急手術を要する場合もあります。これらの疾患は脳神経外科で対応します。予防方法についても一概には説明できませんが、成人の方は普段から生活習慣病の予防に努めることがおすすめです。新生児の場合も、かかりつけの産婦人科の先生としっかり相談していきましょう。

「脳室内出血」と関連する病気

「脳室内出血」から医師が考えられる病気は18個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

内科系

脳神経系

産婦人科・小児系

成人の場合は生活習慣病の予防が脳室内出血の発症予防につながる可能性があります。子供の場合には出生体重の低さや先天性疾患の影響で発症する可能性があり、年齢によって発症原因は異なります。

「脳室内出血」と関連する症状

「脳室内出血」と関連している、似ている症状は11個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

成人の突然のサイン

新生児のサイン

  • 活気がない
  • 皮膚色が悪い
  • 哺乳力が弱い
  • 反射が増加する
  • 無呼吸
  • 痙攣発作

症状の特徴としては、いずれの症状も突然発症するということが挙げられます。新生児が脳室内出血した場合には、いつもと様子が異なることから気づかれるケースが多いです。これらの症状が見られる場合には、すぐに医療機関を受診するようにしてください。

参考文献

  • 脳卒中治療ガイドライン2021
  • 脳卒中データバンク2021
  • 脳神経外科学Ⅰ~Ⅲ
  • 菅野啓一. 新生児頭蓋内出血. 周産期医学 Vol.46 増刊号/ 2016 713-717
  • 石黒秋生. なぜ早産児では脳室内に出血しやすいのか. 周産期医学 53(増刊): 327-329 2023
  • 山田直史. なぜ超早産児では生後72時間までに脳室内出血が起こりやすいか. 周産期医学 53(増刊): 330-333 2023
  • 宮嶋雅一ら. 未熟児脳室内出血と出血後水頭症の周術期管理.脳神経外科ジャーナル 22: 276-282, 2013.

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