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「ビタミンK欠乏症」の症状・原因・予防する食べ物はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/03/09
「ビタミンK欠乏症」の症状・原因・予防する食べ物はご存知ですか?医師が監修!

人体に必要な栄養素はビタミン・ミネラルとさまざまです。ビタミンKも必要とされる栄養素ですが、特に新生児・乳児は不足しやすいといわれています。

ビタミンK欠乏症は、ときには命の危険を伴う恐ろしい病気です。しかし、正しい知識を持って対処することで未然に防げる可能性が非常に高い病気でもあります。

この記事ではビタミンK欠乏症の症状・原因・新生児や乳児に多い理由・治療方法・予防方法も詳しくご紹介いたします。

大切な命を守るための知識として、ぜひ参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

プロフィールをもっと見る
徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

ビタミンK欠乏症とは

管で繋がれた赤ちゃんの足

ビタミンK欠乏症はどのような病気ですか?

ビタミンK欠乏症は、特に母乳で育てられている新生児・乳児に多くみられる病気です。ビタミンKはビタミンA・ビタミンD・ビタミンEなどと同じ脂溶性ビタミンの1種で、出血の抑制に必要な成分です。
人体において血液凝固作用に欠かせないため、ビタミンKが欠乏することにより出血を引き起こすリスクが高まります。特に肝胆道系疾患を持っている場合は頭蓋内出血を起こす可能性があり、ハイリスクとされています。
生命を脅かすケースも多いため、予防に努めることが大切な病気です。

症状を教えてください。

ビタミンK欠乏症による症状は主に「出血」が認められます。出生から24時間以内に発症する早発型と24時間~7日程度経過した後に発症する古典型に分類され、これらは新生児ビタミンK欠乏性出血症と呼ばれます。
早発型では、頭血腫・頭蓋内出血・胸腔内出血などが発症するケースが多いです。一方、古典型の場合、軽度の皮下出血・消化管出血が発症するケースがほとんどです。
また、新生児期に限らず乳児期にも発症のリスクがあります。乳児ビタミンK欠乏性出血症と呼ばれ、生後2週間~半年ほどの乳児に発症することが多いです。予後不良な疾患で、80%以上が頭蓋内出血を起こしてしまうため、注意しましょう。
また、新生児ビタミンK欠乏性出血症・乳児ビタミンK欠乏性出血症に当てはまらない、その他のビタミンK欠乏性出血症を起こす場合もあります。さまざまな要因が重なって発症すると考えられ、主に消化管出血がみられるケースが多いです。
血尿・鼻血などで発症が分かる場合もあり、なかには注射・採血の際に出血がなかなか止まらないことがきっかけで発症が認められるケースもあります。

発症の原因を教えてください。

ビタミンKが欠乏する原因はいくつか考えられます。

  • 摂取不足
  • 吸収不足
  • 腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の状態変化
  • 薬品による利用障害

どれか1つが原因で発症するとは限らず、複合的な要因がみられる場合も多いです。特に摂取不足・吸収不全は成人よりも新生児・乳児に多く、ビタミンK欠乏症が起こりやすい要因の1つといえるでしょう。
新生児の場合、出生前の母体から供給されるビタミンKの量がわずかであることや、母体が低栄養状態である場合なども影響します。また、母乳に含まれるビタミンKの量は少ないため、新生児期・乳児期共に摂取不足になりやすく注意が必要です。
他にビタミンKが脂溶性ビタミンであることから、腸炎や胆道閉鎖症などを発症しているときには吸収不全に陥りやすい傾向です。また、本来腸内では大腸菌などの細菌バランスによってビタミンK2が生産されています。しかし、まだ未熟な新生児・乳児は生産がうまくいかず、成人であっても抗菌剤を投与している場合などにはこのバランスが崩れてしまい欠乏に至る可能性があります。
抗菌薬だけでなく抗血栓薬のワルファリンなどを服用している場合にも、ビタミンKを生産・吸収するサイクルがうまく働かず、欠乏状態に陥る可能性が高いでしょう。

新生児に起こりやすいと聞いたのですが…。

新生児・乳児は特に注意が必要です。出生前は母体から胎盤を通して栄養を受け取っていますが、ここで受け渡されるビタミンKの量は非常にわずかです。そのため、出生時に新生児が体内に備蓄しているビタミンKの量も少なくなります。
母乳に含まれるビタミンKの量がわずかであることに加えて、新生児の場合腸内でのビタミンKの生産・吸収を行う機能が未熟であるのも要因のひとつです。
こういった複合的な理由から、ビタミンK欠乏症は新生児・乳児が特に発症しやすいといえます。

成人でも発症しますか?

稀ですが、成人でも発症するケースはゼロではありません。
ビタミンKの摂取量が極端に少ない状態が続いたり、低栄養状態だったりする場合、発症する可能性もあるでしょう。とはいえ通常は成人であれば自身の腸内でビタミンK2を生産することができるため、摂取量不足による欠乏状態に陥る可能性は非常に低いです。
一方で、腸炎や胆道閉鎖症などを発症している場合、脂溶性ビタミンであるビタミンKは吸収されにくくなります。また、抗菌薬による腸内環境バランスの崩れや、抗血栓症薬によってサイクルが崩れる点には注意しましょう。

ビタミンK欠乏症の診断と治療

医薬品

早期発見のポイントを教えてください。

ビタミンK欠乏症は、何らかの出血を起こしてから発症が確認されます。皮下出血・下血・吐血などの症状がみられた場合にはビタミンK欠乏症の可能性があるため、すぐに病院を受診しましょう。また、肝胆道系疾患を持っている場合は頭蓋内出血を起こすケースが多いため、特にハイリスクといえます。
頭蓋内出血を起こすと、生命予後・神経学的予後のどちらも不良です。そのため、肝胆道系疾患の早期発見が大きなポイントといえるでしょう。母子手帳に記載されている便カラーチャートを活用し、日常的に便の変化などに気を配りましょう。

どのような検査で診断されるのでしょうか?

ビタミンK欠乏症は血液検査で診断します。ビタミンKが欠乏すると血液が凝固しにくくなるため、凝固機能を測定することで判断が可能です。また、すでに出血がみられる場合、出血している部位に応じて検査を行います。
頭蓋内出血がみられる・疑われる場合には頭部CTを撮るなど、血液検査に限らず状況に応じた検査を行うことが大切です。
新生児・乳児の場合には、頭部にある大泉門と呼ばれるやわらかい箇所から超音波検査を行い、頭蓋内の出血状況を評価するケースもあります。

治療方法を教えてください。

治療の基本はビタミンKの補充です。緊急性が高かったり吸収不全を起こしていたりする場合は、注射(静脈内投与)で対処します。
通常、投与から1時間以内には止血効果が認められるでしょう。緊急性がない場合には、経口投与によるビタミンKの補充を行うケースもあります。
いずれも悪化を防ぐために、検査による診断の結果を待たずに投与することが重要です。

ビタミンK欠乏症の予防

離乳食を食べる赤ちゃん

ビタミンK欠乏症を予防する方法はありますか?

基本的な予防方法として、新生児期からのK2シロップの投与が行われています。
出生後、適度に期間をあけつつ回数を分けて投与することで、ビタミンKの欠乏を予防する効果が期待できるでしょう。また、出生後24時間以内に発症してしまう早発型の場合、母体がビタミンKのサイクルを阻害する薬を内服している・吸収障害を持っているなどのケースも多くみられます。
その場合、早発型の可能性が高い新生児には、出生後すぐにビタミンK2注射用製剤を静脈内投与する方法で対処するケースも多いです。もしくは出生前から母体にビタミンK製剤を経口投与し、出生後の新生児に対し凝固機能の測定を行う方法もあります。
成人の場合は原因となる薬剤の服用はしていないか・吸収不全に陥る要因はないかを意識し、気になる場合は早めに医師に相談すると良いでしょう。栄養不良にならないよう、食事のバランスに注意することも大切です。

ビタミンKを多く含む食品を教えてください。

ビタミンKは大きく分けて2種類あります。緑黄色野菜・海藻などに多く含まれるビタミンK1(フィロキノン)と、腸内でも生産されるビタミンK2(メナキノン)です。
ビタミンK1が多く含まれる食品は下記が代表的です。

  • ほうれん草
  • 小松菜
  • 納豆
  • 春菊
  • 大根の葉
  • ブロッコリー
  • にら

食品からビタミンKを摂取するには、上記のように緑黄色野菜が主力となるでしょう。他に青梗菜・キャベツ・白菜にも多く含まれています。手軽に摂取したい方にはケールの入った青汁なども良いでしょう。
動物性食品なら鶏肉などにもビタミンKが含まれていますが、緑黄色野菜の含有量よりはずっと少なく、効果的に摂取するにはやはり緑黄色野菜がおすすめです。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

ビタミンK欠乏症は頭蓋内出血などを起こすと予後も悪く、恐ろしい病気といえます。まずは予防を意識しておくことが何よりも大切です。しかし、それでも発症を必ずしも防げるわけではありません。
新生児・乳幼児であれば様子や便の色に変わったところがないか、成人であれば服用している薬や体調に気を配るなど、早期発見できるよう努めることで少しでもリスクを減らしましょう。

編集部まとめ

お母さんと赤ちゃん
ビタミンK欠乏症の症状・原因・新生児や乳児に多い理由・治療方法・予防方法など、詳しくご紹介いたしました。

発症してしまうと重症になるリスクもあり、新生児・乳幼児に多いため不安に感じる方も少なくないでしょう。

一方で、知識を味方につければ予防早期発見にも役立てることができる病気です。

日常的に大人も子供も栄養状態に気を配り、変わった様子があればすぐに気づけるようにしましょう。もしも気になる症状があれば早めに医療機関を受診してくださいね。

この記事の監修医師