「カンピロバクター腸炎(食中毒の一種)」の症状・原因はご存知ですか?

中心まで十分に火の通っていないものを食べてしばらくしてから、発熱や頭痛、腹痛、吐き気、下痢といった症状がみられるときは、カンピロバクター腸炎という食中毒かもしれません。
カンピロバクター腸炎は、細菌の一種であるカンピロバクターに汚染された食べ物や飲み物の摂取が原因で起こります。なかでも生や加熱が不十分な鶏肉からの感染が特に多く報告されています。
今回は、カンピロバクター腸炎とはどのような病気なのか、感染の原因や治療法も含めて解説します。

監修医師:
中路 幸之助(医師)
目次 -INDEX-
カンピロバクター腸炎とは
カンピロバクター腸炎とはどのような病気ですか?
特に鶏肉からの感染が多く報告されていて、生や十分な加熱がされていない鶏肉を食べたことにより発生した事例が大半を占めています。
カンピロバクターとはどのような細菌ですか?
一般的に、細菌が原因で起こる食中毒は10万~100万個程度の菌を摂取しないと感染しません。しかしカンピロバクターでは、100個程度と比較的少ない量の菌を摂取するだけで感染してしまうのが特徴です。
カンピロバクター腸炎の症状
カンピロバクター腸炎の症状を教えてください。
- 発熱
- 頭痛
- 寒気
- 倦怠感
- 下痢
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
ほとんどの人は1週間ほどで治癒し、重篤化する例や死亡例は稀とされています。
大きな心配は要らない病気ということでしょうか?
また、カンピロバクターに感染した後に、反応性の関節炎や数週間で重篤な麻痺性疾患であるギラン・バレー症候群を発症するケースが報告されているために、注意が必要です。
ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群について詳しく教えてください。
カンピロバクター腸炎による下痢等の症状が出始めた後1~3週間してから、ギラン・バレー症候群を発症するケースがあります。国内では、ギラン・バレー症候群のうち約30〜40%が、カンピロバクターの感染によるものと考えられています。
ギラン・バレー症候群はどのような症状が出るのでしょうか?
- 手足の感覚異常
- 痛み
- 顔面の筋肉麻痺
- 目を動かす筋肉の麻痺
- 飲み込みに関係する筋肉の麻痺
カンピロバクター腸炎の原因
カンピロバクター腸炎の原因を教えてください。
食品以外では、カンピロバクターを有する動物の糞に汚染された井戸水や湧水、簡易水道水といった飲用水が感染源となることも知られています。また、抵抗力の弱い子どもについては、ペットから直接感染する事例もあります。
カンピロバクター腸炎の発生頻度
カンピロバクター腸炎は珍しい病気ですか?
注意が必要な季節はいつですか?
カンピロバクター腸炎の受診科目
カンピロバクター腸炎を疑ったときは何科を受診すればいいですか?
症状が軽く自宅で様子を見るときも、症状がなかなか改善しない場合や、症状が激しくなってくる場合には早めの受診を検討しましょう。
消化器内科を受診
消化器内科を受診するべきなのはどういったケースでしょうか?
- 血便など、排せつ物に血液が混ざっている
- 腹痛や下痢が長期間続いている
救急外来を受診
救急外来を受診するべきなのはどういったケースでしょうか?
- 水分の補給ができない
- 1日10~20回ほどの激しい下痢や嘔吐がある
- 激しい腹痛が続く
- 呼吸が不安定
- 意識が朦朧としている
- ぐったりしている
- 高熱がある
カンピロバクター腸炎の検査
カンピロバクター腸炎の診察ではどのような検査を行いますか?
また、腹部CTや内視鏡検査などの画像検査を行う場合もあります。
食中毒の診察では、症状だけで原因を特定するのは難しいため、前日から1週間程度前までの食事の内容を把握することが重要となります。受診前にあらかじめ思い出し、メモしておくなどしていただけると、スムーズな診断につながります。
カンピロバクター腸炎の治療方法
カンピロバクター腸炎はどのような治療を行いますか?
症状が強く重症化が懸念される場合については、抗生物質等による薬物治療を検討します。
対症療法
カンピロバクター腸炎の対症療法について詳しく教えてください。
症状が安定するまで食事はなるべく控え目にして、消化の良いものを中心に食べるとよいでしょう。
薬物治療
カンピロバクター腸炎の薬物治療について詳しく教えてください。
下痢止めについては、経過を悪化させてしまう可能性があるため使用しないのが一般的です。自己判断で市販の下痢止めを使用するのは避けましょう。
カンピロバクター腸炎の薬物治療中に注意すべきことはありますか?
普段から使用している薬やサプリメントがある人は、治療で使用する薬との併用について担当医に確認しましょう。また、市販品薬を購入する際には、薬局やドラッグストアで薬剤師や登録販売者に相談し、併用しても問題ない商品を選んでもらうようにしましょう。
編集部まとめ
カンピロバクター腸炎は食中毒の一種で、発熱や頭痛、腹痛、吐き気、下痢といったさまざまな症状が出ます。
カンピロバクターという細菌に汚染された食べ物や飲み物を摂取することで発症します。特に生や加熱が不十分な鶏肉からの感染が多く報告されているため、手洗いや保存方法、調理方法などに注意し、予防対策を行うことが大切です。
重篤化する例や死亡例は稀とされていますが、麻痺性疾患との関連も指摘されています。症状がなかなか改善しない場合や症状が激しくなってくる場合には、早めの受診を検討しましょう。