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「食後の血圧」が低い時・高い時に現れる症状とは?考えられる病気も医師が徹底解説!

 公開日:2025/08/19
「食後の血圧」が低い時・高い時に現れる症状とは?考えられる病気も医師が徹底解説!

食後の血圧はどうなる?Medical DOC監修医が低くなる原因・低いと現れる症状・考えられる病気・予防法などを解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

血圧とは?

血圧とは、心臓が血液を送り出すとき血管の壁にかかる圧力のことです。通常、血圧は動脈内の圧力を指します。心臓が収縮して血液を押し出すときの血圧を「収縮期血圧(上の血圧)」といいます。一方、心臓が拡張して血液が再び心臓にたまる間の血圧を「拡張期血圧(下の血圧)」といいます。血圧は、自律神経の働きや体の状態に応じて自動的に調整されますが、食事や運動、ストレスによって変動することもあります。今回の記事では、特に「食後の血圧変化」に注目していきます。そして、血圧が低いとどうなるのか、どのような原因や病気が考えられるのかについて解説します。

血圧の数値で体の何がわかる?

血圧の数値からは、体のさまざまな状態を読み取ることができます。 例えば、収縮期血圧が高くなる原因には、動脈硬化によって大動脈の弾力性が低下することが挙げられます。また、甲状腺機能亢進症による血液量の増加などが原因となることもあります。 一方、拡張期血圧が高くなるのは、動脈硬化によって末梢血管の抵抗性が強くなる場合などがあります。 また、自律神経の調節機能がうまく働かないと、血圧の変動が大きくなることもあります。 このように、血圧は、心臓や血管、自律神経、そして全身の健康状態を反映する、重要な指標といえます。 特に、高血圧は自覚症状がないまま進行することも多いため、健康診断などで定期的にチェックすることが大切です。

血圧の測定方法

血圧測定方法について解説します。血圧には、病院や健診施設などで測る「診察室血圧」と、家庭で測る「家庭血圧」があります。診察室での血圧は、聴診器を使う方法や、腕に巻く自動の血圧計を使って測定されます。使われる機器には、アネロイド血圧計や電子式の血圧計などがあります。いずれの場合も、1〜2分の間隔を空けて、最低2回は測定し、その平均値を血圧値とします。血圧測定の前の飲酒、喫煙、カフェインの摂取は避けるようにします。

食後の血圧はどうなる?

高齢者や、糖尿病・パーキンソン病などの方では、食後に血圧が下がりやすいことが知られています。 なお、食後低血圧は食事後に血圧が異常に低下する症状を指します。 具体的には、以下のような要件を満たす場合に診断されることが多いです。
食事後2時間以内に収縮期血圧が20mmHg以上低下した場合
100mmHg以上あった収縮期血圧が90mmHgに未満に低下した場合
食後低血圧は、失神や転倒、脳卒中、狭心症のリスクを高めることも知られており、見逃せない問題と考えられています。

食後の血圧が低くなる原因

食後低血圧の機序は、まだ十分に解明されていない部分もあります。 現状では、食後の血圧が低くなる原因について、考えられる原因は以下のようになります。

内臓への血液の集中

食事をすると、消化管の働きが活発となり、内臓に送りこまれる血液が増加します。すると、静脈からの血液量が低下します。 健康な人は、交感神経の活動や心拍数、心拍出量を増加させ、静脈から心臓へ帰ってくる血液を補い、血圧を保つことができます。一方で、自律神経の働きが低下する病気がある場合や高齢者の方では、このメカニズムが十分に働かないこともあります。その結果、心臓に戻ってくる血液が少なくなり、食後低血圧を起こす場合があると考えられます。

神経伝達物質の影響

神経伝達物質であるカルシトニン遺伝子関連ペプチドや、血管作動性腸管ポリペプチドなどは、血管拡張作用を持ちます。これらのペプチド(アミノ酸が結合したもの)が、食後低血圧と関連している可能性があるとする報告もあります。

インスリンの影響

炭水化物やブドウ糖を多く含む食事は、インスリンなどのホルモンの分泌を促します。血液中でインスリンの濃度が上昇すると、血管拡張作用などによって食後低血圧を引き起こす可能性があると示唆されています。

食後の血圧が高くなる原因

通常、食事をとると血圧は下がる傾向にあります。しかし、下記のような場合は血圧が上がってしまうこともあります。

高塩分食

例えば大盛りラーメンを汁まで飲み干すなどすると、摂取する食塩量が過多になってしまうこともあります。そうした場合には、食後に血圧が上昇する可能性があります。

カフェインの摂取

コーヒーなどに含まれているカフェインを摂取すると、血圧が一時的に上がる場合があります。特に、普段コーヒーを飲まない方で、こうした影響が出やすい可能性があります。

動脈硬化が隠れている

食後低血圧を起こす方には、実は動脈効果が隠れているかもしれないといった研究データもあります。

食後の血圧が低いと現れる症状

食後低血圧が起こると、これらの症状が現れることがあります。しかし、特に高齢者の場合には、症状がないために食後低血圧が発見されにくいこともあります。

食後の気分不快感

血圧が一時的に低下することで、食後に気分が悪くなってしまう方もいます。

立ちくらみ

血圧が低下すると、立ちくらみが起こってしまうこともあります。

眠気

食後低血圧によって、強い眠気が起こることもみられます。

失神や転倒

食後低血圧によって、失神(気を失う)や、それに伴って転倒してしまうこともあります。高齢者にとっては、特に転倒による骨折やそれに伴う寝たきりのリスクなども見過ごせません。

手足の麻痺

頸動脈や脳内の動脈に高度の狭窄をきたしている場合に、食後低血圧によって虚血性脳血管障害が発生するという報告もあります。その場合には、手足の麻痺やろれつが回らなくなるなどの症状が現れます。このような症状がみられる際には、早急に脳神経内科を受診しましょう。

食後の血圧が高いと現れる症状

食後に血圧が上がるとしても、その程度としては10mmHg程度であり、ほとんど症状はない場合も多いと考えられます。そもそも、高血圧であっても特徴的な症状はあまりありません。しかし収縮期血圧/拡張期血圧が180mmHg/120mmHg以上となる重症高血圧の方の場合、以下のような症状を呈する場合があります。

激しい頭痛

血圧が異常に高いと、激しい頭痛が引き起こされる場合があります。脳出血やくも膜下出血などの脳血管障害の可能性もあります。このような症状が現れた場合には、早急に脳神経内科を受診しましょう。

胸痛

血圧が高すぎると、胸痛が起こるケースもありますが、狭心症や心筋梗塞などの心臓の病気の恐れもあります。冷や汗を伴う場合や、安静にしても改善しない場合、循環器内科を受診するようにしてください。

めまい

血圧が一時的に高値になることで、めまいを感じる方もいます。めまいの他の原因はさまざまです。ぐるぐる目が回る感じがあるめまいは耳鼻科的、ふわふわとするようなめまいは脳神経内科的なめまいを疑うことが多いです。しかし、もちろん例外はあります。めまい症状が続く場合には、医療機関を受診しましょう。

息切れ

血圧が異常に高い場合、息切れを感じる方もいます。息切れの原因としては、COPDなどの呼吸器や、心不全などの心臓の問題もあります。息切れが強くみられる際には、呼吸器内科あるいは循環器内科を受診しましょう。

吐き気

血圧が非常に高い状態が続くと、吐き気がみられることもあります。安静にしても治らない場合には、内科をまず受診しましょう。

「食後に血圧が低くなる」状態の特徴的な病気・疾患

ここではMedical DOC監修医が、「食後に血圧が低くなる」に関する病気を紹介します。どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。

糖尿病

糖尿病は、血糖値が異常に高い状態が続く病気のことです。血糖値を下げる働きをするインスリンというホルモンの働きが悪くなる、あるいはインスリンが不足することで起こります。糖尿病は、心臓や目、腎臓の障害といった合併症の他、神経にも障害が現れます。糖尿病による自律神経障害と食後低血圧の関連が報告されています。糖尿病では37%の方で食後低血圧が起こったとする報告もあります。

パーキンソン病

パーキンソン病は、脳の黒質にあるドパミン神経細胞が減少することで起こります。震えや動作がゆっくりになる動作緩慢、筋肉が硬くなる筋固縮、転びやすくなる姿勢保持障害が主な症状です。パーキンソン病の方では、自律神経の働きが低下してしまうことで、食後低血圧が引き起こされる場合があります。パーキンソン病の方の40〜100%に食後低血圧がみられたという報告もあります。

アルツハイマー病

アルツハイマー病は、神経細胞が変性してしまうこと(タウパチー)と、アミロイド蛋白が異常に脳に蓄積してしまうことが特徴の病気です。認知症を発症する大きな原因となっています。アルツハイマー病でも、食後低血圧が引き起こされることが知られています。パーキンソン病と同様に、自律神経の働きが低下してしまうことが原因かと示唆されています。

胃切除後

胃がんなどによって、胃を切除した方においては、ダンピング症候群という症状が現れることがあります。これは、食事をとった際に急激に小腸に食物が流れ込むことによって、腸管から血管を広げる作用のある物質が分泌されることによって起こります。症状としては、血圧低下の他にも、冷や汗や動悸、めまい、しびれ、だるさ、腹痛や下痢などがあります。 対処法としては、しばらく横になるといったことがあります。

高血圧

血圧がもともと高い方は、食事後の血圧低下がみられるということも報告されています。

食後に血圧が低くならないための予防法

では、食後に血圧が低くならないようにするために気を付けるべき点について解説しましょう。

食事を小分けにして食べる

食後低血圧を予防するためには、食事の1回量を少なめにして、食事の回数を多くすることが良いとする報告があります。食事量を減らすことで、胃などの内臓の血液を減らし、心血管系の代償を軽くすることができると考えられています。

食前に水を飲む

食前に水を飲むことによって、自律神経失調患者さんや健康な高齢者の血圧が上がることが認められています。最適な水の量や飲む速度はまだ明らかになっていませんが、食後低血圧を起こしやすい場合には試してみることもよいでしょう。

食事後に歩く

食後の歩行運動は、心臓から送り出される血液量や、内臓の血管抵抗の増加に関連しているという報告もあります。食後に歩くことで、血圧を上げる方向に働く可能性があります。特に、食後低血圧を起こす高齢者の方には、効果的な可能性があります。

「食後の血圧」についてよくある質問

ここまで食後の血圧について紹介しました。ここでは「食後の血圧」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

食後どれくらい経てば血圧を測定してもいいのでしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

食後すぐは、消化のために血液が内臓に集まる影響で、血圧が一時的に変動しやすくなります。そのため、できれば食後30分から1時間ほど経ってから測定するのが望ましいとされています。とくに血圧を正確に知りたいときや、家庭血圧の記録をつける場合には、食前か起床後1時間以内の安静時に測るのがベストです。

まとめ

今回の記事では、食後の血圧の変化について解説しました。食後にめまいやふらつきなどの症状が現れる場合、特に高齢者の場合や糖尿病などの場合には食後低血圧の可能性もあります。症状が頻回に起こる場合には、かかりつけ医あるいは内科などで相談してみるとよいでしょう。

「血圧」の異常で考えられる病気

「血圧」から医師が考えられる病気は15個ほどあります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

脳神経内科系の病気

腎臓内科系の病気

内分泌内科系の病気

血圧の異常があるときは、「ただの体質」ではなく、背景に病気が隠れている可能性もあります。健診や家庭での測定値が気になるときは、ぜひ一度医療機関で相談してみてください。

この記事の監修医師