「急に血圧が上がった時の症状」はご存知ですか？急に上がる原因も医師が解説！

血圧とは？

血圧とは、心臓から送り出された血液が血管（動脈）の壁を押す力の強さです。血圧の高さは、心臓が血液を押し出す力と血管の拡張具合の両方が関わり、以下2つの数値で表されます。

l 収縮期血圧（最高血圧）：心臓が収縮して、血管にもっとも強い圧力がかかる際の値
l 拡張期血圧（最低血圧）：心臓が拡張して、血管から血液が戻ってくる際の値

血圧が高い状態が続くと、血管に負担がかかり以下のような病気のリスクが高まります。

l 脳卒中（脳梗塞・脳出血など）
l 心筋梗塞
l 慢性腎疾患

基本的には、診察室での最高血圧が140mmHg以上最低血圧が90mmHg以上であれば「高血圧症」と診断されます。

急に血圧が上がる原因

急に血圧が上がる原因を、いくつか紹介します。

暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室へ入った

暖かい部屋から寒い部屋へ移動すると、急激な温度変化によって血圧が上がり、体調不良が起こりやすくなります（ヒートショック）。
とくに、暖かい部屋から寒い脱衣所・浴室に入る際は、血圧の変動による脳卒中、心血管障害などの病気が起こりやすいため注意が必要です。あらわれる症状の例は、以下のとおりです。

・意識を失う
・ 胸の痛み（不整脈や心筋梗塞）
・体に力が入らない

循環器内科、脳神経外科への受診となりますが、自分で歩いての受診が難しい場合は速やかに救急車を呼びましょう。

排泄で長い時間いきんだ

排便時に長い時間強くいきむと、急に血圧が上がるケースがあります。トイレが寒い場合、暖かい部屋との温度変化によって血圧が急に上がるリスクも考えられます。

あらわれる症状の例は、以下のとおりです。

・頭痛
・胸の痛み
・意識の消失

和式便器はしゃがみこむため、洋式便器よりも血圧への影響が大きいという説もあります。
暖かい部屋で休んでも良くならない場合、循環器内科や脳神経外科を受診しましょう。

激しい運動をした

適度な運動は血圧を下げるのに効果的ですが、いきなりの激しい運動は急に血圧を上げる可能性があります。
急激な運動の後に以下のような症状があらわれた際は、注意が必要です。

・いつもよりひどい息切れ
・収まらない動悸や胸の痛み
・ふらつき

どの程度の運動が適切なのかは個人差があるため、医師にあらかじめ相談するとよいでしょう。受診すべき科は、循環器内科です。

怒りや不安などの大きなストレスがかかった

血圧は、怒りや不安などの精神的要因でも大きく変動します。たとえば、以下のような病気
による精神的要素によって、急に血圧が上がるケースもあります。

・パニック障害：強い不安や恐怖感のある突然の発作を繰り返す病気
・過換気症候群：精神的不安や極度の緊張により過呼吸の状態となり、血液が正常よりもアルカリ性になりさまざまな症状が出る病気

不安を取り除いて30分以上安静にしても症状が治まらない場合は、受診を検討します。血圧に関しては循環器内科の受診となりますが、パニック障害や過換気症候群の主治医がいる場合は、主治医への相談も検討しましょう。

脳卒中を起こしている

脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの「脳卒中」が起きて24時間以内の「超急性期」、1～2週間以内の「急性期」は、血圧が高くなる傾向があります。

脳卒中の症状・初期症状は以下のとおりです。

・突然の歩行困難
・足がもつれる
・突然の激しい頭痛や嘔吐
・急激に意識を失ったりもうろうとしたりする
・眼球の動きが異常になり、両目が片方に寄ったり片側が外を向いたりする

脳卒中を疑う場合、脳神経外科への受診が必要です。速やかな治療が必要なため、迷わずに救急車を呼びましょう。

心臓に大きな負担がかかっている

心臓のはたらきがいきなり悪くなる「急性心不全」でも、血圧が急に上がるケースがあります。
原因としては、心筋梗塞や過度なストレスなどが挙げられます。
急性心不全であらわれる症状は、以下のとおりです。

・息切れ・息苦しさ
・呼吸困難
・むくみ

急性心不全の場合、内科や循環器内科への受診が必要です。

高血圧緊急症が起きている

「高血圧緊急症」とは、血圧が異常に高いことによって脳や心臓、腎臓、血管などの臓器が大きなダメージを受ける病気です。
多くの場合、血圧は180/120mmHg以上と非常に高い値となり、以下のような症状があらわれます。

・頭痛
・視力障害
・悪心・嘔吐
・胸・背中の痛み

放置すると大きな臓器のダメージから命にかかわる可能性もあるため、速やかに受診して治療を始める必要があります。
なお、高血圧緊急症の場合、基本的には入院が必要です。

受診科は循環器内科ですが、設備の整った大きな医療機関での治療が必要になるケースがほとんどです。速やかに救急車を呼び、処置を受けましょう。

急に血圧が上がった時の症状

急に血圧が上がると、どのような症状があらわれるのでしょうか。
ここからは、急に血圧が上がったときの症状や対処法などを解説します。

めまい・ふらつき

急に血圧が上がると、めまいやふらつきがあらわれるケースがあります。

いきなり走った、睡眠不足、ストレスなどが原因で血圧が上がった場合は、快適な室温の部屋で安静にすると落ち着くケースもあります。
しかし、症状が強い場合や意識がもうろうとしているような場合は、速やかに循環器内科を受診しましょう。

激しい胸の痛み

激しい胸の痛みとともに急に血圧が上がった場合は、心筋梗塞や大動脈解離などを起こしている可能性があります。激しい胸の痛みがある場合には早急な治療が必要です。
救急車を呼び、設備の整った循環器内科を持つ医療機関での治療を受けましょう。

激しい頭痛

激しい頭痛があり急に血圧が上がった時は、脳卒中や高血圧緊急症の可能性があります。

処置の速さがその後の生存率や後遺症の重さに関わる可能性もあるため、すぐに救急車を呼びましょう。脳卒中の場合は脳神経外科、高血圧緊急症の場合は循環器内科の対応となります。

息切れ・息苦しさ

息切れ・息苦しさがあり、急に血圧が上がった場合は急性心不全を起こしているかもしれません。
心不全の場合、寝ている状態よりも身体を起こすと呼吸が楽になるケースもありますが、呼吸が苦しいほどの場合は、速やかな対処が必要です。循環器内科の受診もしくは緊急性の高い場合は救急車を呼びましょう。

突然の足のもつれや嘔吐

血圧が急に上がって足のもつれや嘔吐、意識障害などがあらわれた場合、脳出血や脳梗塞などの脳卒中が起きている可能性があります。

すぐに救急車を呼び、脳神経外科での処置を受けましょう。

急に血圧が上がった時の対処法

急に血圧が上がった際の対処法を、解説します。

安静にする

一時的なストレスや温度変化、睡眠不足などによって急に血圧が上がった場合、安静にすることで血圧が落ち着くケースがあります。
しかし、
血圧の上昇が続く場合や原因が分からない場合は受診しましょう。

主治医を受診する

急激に血圧が上がっても、本人の意識がはっきりしており緊急性が薄いと見られる場合は、主治医を受診します。
血圧が上がった際の状況や、どの程度の血圧だったかを記録しておくとよいでしょう。

救急車を呼ぶ

急激な胸の痛みや息苦しさ、激しい頭痛があるような場合は、早急な処置が必要です。迷わずに救急車を呼び、設備の整った医療機関による治療を受けましょう。

急な血圧の上昇を予防する方法

急な血圧の上昇は、血管を傷め、脳や心臓の病気のリスクを高めます。以下の方法を心がけて、血圧のコントロールにつとめましょう。

処方された薬は正しく服用する

血圧の薬を飲み忘れたり正しく飲めていなかったりすると、コントロールが悪くなり血圧が急に上がりやすくなります。
毎日飲む薬は正確に服用し、主治医の指示がない限り自分で調節したり中止したりしないようにしましょう。

急激な温度変化を避ける

脱衣所・浴室やトイレが寒いと、急激な温度変化によるヒートショックで血圧が上がりやすくなります。温度変化を避けるための方法は、以下のとおりです。

・暖房器具を使ってトイレや脱衣所・浴室を暖める
・ 浴槽にお湯を溜める際は、高い位置からシャワーでお湯を溜めて蒸気で浴室を暖める自動給湯の場合、最後の5分だけシャワーで溜めて浴室をあたためるだけでも効果があります。

これらの方法を使い少しでも脱衣所と浴室の温度変化を緩やかにしましょう。

血圧を下げる生活習慣を心がける

血圧コントロールを良好にするために、普段から以下の内容を心がけるとよいでしょう。

・塩分を控える
・適度な運動をする
・禁煙する
・十分な睡眠や休養を取る

ただし、いきなりの激しい運動は、一時的に血圧を上げる可能性があります。医師と相談し、無理のない強度の運動を習慣的におこなうよう心がけましょう。

便秘を防ぐ

便秘によって排便時に強くいきむと、血圧が急に上がるリスクがあります。
便通を良くするために、以下の内容を心がけましょう。

・毎日決まった時間にトイレに行く
・朝食前に水分を取る
・繊維の多い野菜や海藻類を取り入れる
・適度に運動する
・便秘薬の処方を医師へ相談する

無理のない範囲で、できるものから少しずつ取り入れてみてください。