「血圧の下が高い」原因はご存知ですか?男女別の原因・血圧の下の基準値も解説!

血圧の下が高いのはどうして?Medical DOC監修医が男女別の原因・水分補給で下げられるか・考えられる病気・予防法などを解説します。

監修医師:
伊藤 陽子(医師)
目次 -INDEX-
血圧とは?
血圧とは心臓から送り出された血液が血管の内側にかかる圧力のことです。心臓から押し出される血液の量(心拍出量)と血管の太さや弾力性が影響します。
いくつから高血圧と診断されるか、血圧が高いと考えられる病気や対策について解説します。
血圧の数値で体の何がわかる?
血圧が異常値であっても症状が現れない場合がほとんどですが、血圧が高ければ高血圧の可能性があり、動脈硬化が進行するリスクになります。
血液検査など、血圧測定以外の検査も行うことで、腎臓病・心臓病など他の病気の発見にもつながります。
血圧の測定方法
家庭での血圧測定方法は、上腕式の血圧計を使用し2回測定した平均値を測定値とします。
家庭血圧を朝と晩の2回、それぞれ7日間測定した平均値が家庭測定値の高血圧の判断基準です。
朝の血圧は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、座って1〜2分安静後に測定し、晩の血圧は座って1〜2分安静後に測定します。
寒さ・会話・カフェインの摂取・喫煙などは血圧上昇に、入浴や飲酒は血圧の低下に影響を与えます。環境を整えて測定しましょう。
血圧の上とは?
心臓が収縮して血液を送り出す時の血圧が収縮期血圧で、一般的に上の血圧と呼びます。
血圧の上の基準値
正常血圧は診察室で120mmHg未満、家庭で115mmHg未満です。
血圧の上はいくつから高いと判断できる?
診察室で140mmHg以上、家庭で135mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。
収縮期血圧の分類(mmHg)
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
正常血圧 | 120未満 | 115未満 |
正常高値血圧 | 120~129 | 115~124 |
高値血圧 | 130~139 | 125~134 |
I 度高血圧 | 140~159 | 135~144 |
II 度高血圧 | 160~179 | 145~159 |
III 度高血圧 | 180以上 | 160以上 |
血圧の下とは?
血液が心臓に戻ってきて拡張している時の血圧が拡張期血圧で、一般的に下の血圧と呼びます。
血圧の下の基準値
正常血圧は診察室で80mmHg未満、家庭で75mmHg未満です。
血圧の下はいくつから高いと判断できる?
診察室で90mmHg以上、家庭で85mmHg以上の場合、高血圧と診断されます。
拡張期血圧の分類(mmHg)
診察室血圧 | 家庭血圧 | |
---|---|---|
正常血圧 | 80未満 | 75未満 |
正常高値血圧 | 80未満 | 75未満 |
高値血圧 | 80~89 | 75~84 |
I 度高血圧 | 90~99 | 85~89 |
II 度高血圧 | 100~109 | 90~99 |
III 度高血圧 | 110以上 | 100以上 |
【男性】血圧の下が高い原因
下の血圧が高くなる原因は末梢血管の動脈硬化で血管の抵抗が増加しているものの太い大動脈の弾力性がまだ保たれている状態です。動脈硬化が起こっている初期の段階と考えられます。このため、動脈硬化を起こす病気が原因にあると考えられます。男性の場合で下の血圧が高い原因として考えられる病気は肥満・飲酒・喫煙・高尿酸血症や痛風などです。
肥満
肥満があり内臓脂肪が蓄積した状態は血圧が上がる原因となります。
肥満があれば体重を減らしましょう。
多量飲酒の習慣
少量のアルコールは一時的に血圧を下げる作用がありますが、習慣的にアルコールを過剰に摂取していると、血圧が上がる原因となります。
過剰飲酒の習慣があれば節酒や禁酒をしましょう。
高尿酸血症や痛風
高尿酸血症や痛風になると代謝異常が起こり、血圧が上がる原因となります。
肥満の解消や節酒するなど、生活習慣の改善をしても改善しない場合は一般内科を受診しましょう。
【女性】血圧の下が高い原因
女性の下の血圧が高い原因は女性ホルモンの減少により、血管の柔軟性を維持できなくなったり、自律神経が乱れることなどです。
更年期障害
更年期では女性ホルモンのエストロゲン・プロゲステロンなどの分泌が低下します。エストロゲン、プロゲステロン共に血管の拡張作用があります。これらのホルモンが低下することで高血圧が起こりやすくなります。
血圧が高い場合、内科、循環器内科を受診し高血圧の治療をしましょう。
女性ホルモン剤などの内服
ピルなどの女性ホルモン剤は副作用で高血圧が起こる場合があります。
高血圧が起こった場合は婦人科を受診し内服について相談しましょう。
妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症候群は妊娠中に高血圧が続く病気です。原因は解明されていませんが、胎盤の機能が不十分であると、胎児に送る酸素や栄養が不足します。母体は不足を補うため、子宮や胎盤へ血流を増やすことで血圧が上がると考えられています。
安静にすること、タンパク尿がある場合は入院が必要です。
血圧の下が高くなりやすい人の特徴
血圧の下が高くなりやすい人は、先に解説したように動脈硬化が末梢血管におよび、大動脈はまだ弾力性が残っている状態です。動脈硬化が始まっている状態が血圧の下が高くなりやすい人の特徴として考えられます。つまり、動脈硬化の原因となる食塩の過剰摂取・肥満・過剰飲酒・喫煙・運動不足などの生活習慣があることが特徴として挙げられます。
メタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームは、内臓肥満蓄積が中心的な役割を果たしています。内臓脂肪蓄積型の肥満は、インスリンというホルモンの働きが弱くなり、インスリンが過剰に分泌されることで血圧が上がりやすくなります。
食事や運動で内臓脂肪を減らすことが改善につながります。
健康診断で高血圧や肥満を指摘されたら、一般内科を受診しましょう。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群は交感神経の亢進・昇圧作用のあるホルモン分泌の活性化・酸化ストレスなどの影響で血圧が上がりやすくなります。睡眠時無呼吸症候群の治療をすることが高血圧の改善につながります。
健康診断などで高血圧を指摘され、いびき・日中の眠気・夜間尿などの症状があれば、耳鼻科や呼吸器内科を受診しましょう。
飲酒量が多い
少量の飲酒は血圧を一時的に下げる作用がありますが、長期に多量な飲酒の習慣があると血圧が上がり、脳や心臓の病気を起こすリスクになります。飲酒制限により1~2週間のうちに降圧が認められると報告されています。日本酒1合程度の適量の飲酒にとどめることが重要です。
飲酒の習慣があり、健康診断で高血圧を指摘された場合は循環器科や一般内科を受診しましょう。
運動不足
運動不足や座位時間が長いなど活動量が少ないと、消費エネルギーが少なくなり肥満を招き、血圧が上がる原因になります。
運動習慣がなく、すぐに始めるのが難しい場合は、階段を使う・ストレッチをする・座っている時間を減らすなど、日常生活の中で活動量を増やすことがおすすめです。
運動不足の自覚があり、健康診断で高血圧を指摘されたら一般内科を受診しましょう。
腎臓病
高血圧と腎臓は相互に影響します。腎臓の機能が低下すると、血液量が増加し、血圧を調節する機能も低下するため血圧が上がりやすくなります。
健康診断などで高血圧や腎機能の低下を指摘されたら、早めに腎臓内科を受診しましょう。
水分をたくさん飲むと血圧の下は下がる?
脱水・脳梗塞・心筋梗塞の予防のために水分補給は大切です。腎臓や心臓の機能が問題なければ通常水分を多く摂っても血圧が変動することはありません。しかし、食塩の過剰摂取の食習慣や腎機能が低下していると、体に水分がたまり血液の量が増え、血圧を上げる原因になります。
水分摂取は適量にしましょう。
「血圧の下が高い」状態の特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「血圧の下が高い」に関する病気を紹介します。
どのような病気や症状なのか、他に身体部位に症状が現れる場合があるのか、など病気について気になる事項を解説します。
高血圧
高血圧の原因は食塩の過剰摂取・肥満・過剰飲酒・運動不足・喫煙・加齢・遺伝などです。高血圧の状態が続くと動脈硬化が進み、脳卒中・心臓病・腎臓病などの病気を発症するリスクが高まります。
食塩制限・肥満の解消・節酒・禁煙や運動など、生活習慣の改善と必要に応じた薬物療法が主な治療法です。
健康診断などでの高血圧の指摘や、家庭での血圧が基準値を越える状態が続くようなら早めに循環器科や一般内科を受診しましょう。
動脈硬化
動脈硬化とは血管が硬くなった状態です。高血圧など生活習慣病・加齢・喫煙などが原因で、血管の弾力が低下したり、血管内が狭くなり血管が厚くなります。
動脈硬化が進行すると、脳卒中・心臓病・腎臓病などの病気を発症するリスクが高まります。
動脈硬化の進行予防は、危険因子である生活習慣病を改善することです。
健康診断などで高血圧を指摘されたら早めに循環器科や一般内科を受診しましょう。
慢性腎臓病
慢性腎臓病とは腎機能の低下や腎障害が3ヶ月以上持続した状態です。
発症の主な原因は高血圧・糖尿病・高尿酸血症などの生活習慣病や喫煙です。
治療は食事療法や症状に応じた薬物療法を行います。
健康診断で高血圧や腎機能の低下を指摘されたり、むくみ・夜間尿などの症状がある場合は早めに腎臓内科を受診しましょう。
脳卒中
脳卒中とは高血圧や動脈硬化が主な原因で、脳の血管が詰まって起こる脳梗塞と脳の血管が破れて起こる脳出血・くも膜下出血があります。
脳卒中の予防のために、高血圧などの生活習慣病の治療を行います。肥満の解消・禁煙・節酒など生活習慣の改善も必要です。
ろれつが回らない・体の半身が動かないなどの症状があれば早急に救急要請をしましょう。
虚血性心疾患
虚血性心疾患とは心臓の冠動脈という血管に動脈硬化が起こることで、血管の閉塞や、心臓に血液が十分に届かなくなり、心臓の細胞の壊死が起こる病気です。
狭心症は血管が狭くなった状態、心筋梗塞は血管が詰まり、心臓の細胞の壊死が起こった状態です。
発症の主な原因は高血圧・糖尿病・脂質異常症などの生活習慣病や喫煙による動脈硬化です。
虚血性心疾患の予防は高血圧などの生活習慣病の治療を行います。減塩食・肥満の解消・禁煙・節酒など食事療法や生活習慣の改善も必要です。
激しい胸痛や呼吸困難、吐き気、嘔吐などの心筋梗塞を疑う症状の場合は早急に救急要請をしましょう。
血圧の下が高くならないための予防法
血圧の下が高い原因は肥満・過剰飲酒・食塩過剰摂取・喫煙などによる動脈硬化です。これらの生活習慣がある場合は改善することで予防効果が期待できます。
肥満があれば解消しましょう
内臓脂肪が蓄積された肥満は、ホルモンのバランスを乱し血圧を上げる原因になります。
BMI(体格指数)20kg/m²と比べて、BMI25〜29.9kg/m²では高血圧の発症リスクが1.5〜2.5倍になると推定されています。
BMIの正常範囲は18.5~25です。25以上が肥満と判定されます。
BMIの算出式
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
例)165cmで60kgの場合
BMI=60kg÷1.65m÷1.65m=22.0
標準体重までの減量が難しくても、現体重から3%以上の減量で降圧効果が期待できます。現状より少しでも減量できるような生活改善に取り組みましょう。
節酒や禁酒しましょう
多量飲酒の習慣は高血圧の原因となります。
節酒を1~2週間継続すると降圧効果が期待できます。推奨されている摂取量の達成が難しい場合は、現状より少しでも節酒しましょう。
高血圧治療ガイドライン2019では、一日の摂取量で、男性では純アルコールで20〜30ml以下、女性は10〜20ml以下が推奨されています。
純アルコール20gの目安(アルコール度数により異なります)
・ビール 500ml
・日本酒 1合(180ml)
・焼酎 約110ml
・ワイン 180ml
・缶チューハイ 500ml
減塩にしましょう
食塩の過剰摂取は血圧が上がる原因です。
目標は一日6g未満ですが、日本人の食塩摂取量は多く、減塩を意識していても達成が難しい目標値です。
食塩は調味料、梅干しや漬け物などの塩蔵品、汁物、麺類、加工品などに多く含まれます。
目標の一日6g未満の実践が難しくても、一日の食塩摂取量を約2.5g減らすことで降圧効果が期待できます。市販品や外食の栄養成分表示で食塩含有量の確認を習慣化し、どれくらい食塩を摂取しているか把握することから始めてみましょう。
「血圧の下が高い」についてよくある質問
ここまで血圧の下が高いことについて紹介しました。ここでは「血圧の下が高い」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
血圧の下が90以上だと体にどんな影響を与えますか?
伊藤 陽子(医師)
血圧の下が90以上は高血圧と診断されます。高血圧が持続することは、動脈硬化進行のリスクになります。動脈硬化が進行すると心臓病や脳卒中などの病気の発症の原因となります。下の血圧が上がり始めたら、生活習慣を見直し注意しましょう。
編集部まとめ 血圧の下が高いのは動脈硬化のサイン!
下の血圧は、食塩の過剰摂取・肥満・過剰飲酒の習慣・喫煙など生活習慣が原因で高くなります。高血圧が続くと動脈硬化が進行し、腎臓病や脳卒中や心臓病を起こしやすくなります。
家庭測定の血圧が高い・健康診断で高血圧を指摘されたら医療機関の受診と生活習慣の改善に取り組みましょう。
「血圧」で考えられる病気と特徴
「血圧」から医師が考えられる病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
循環器科の病気
- 心不全
- 冠動脈疾患
腎臓科の病気
- 慢性腎臓病
- 糖尿病性腎症
呼吸器科の病気
眼科の病気
血圧は肥満や過剰飲酒や喫煙などの生活習慣や脂質異常症、糖尿病、高尿酸血症などの生活習慣病が原因で高くなります。血圧を上げる原因となる病気を発症している場合もあるので、健康診断などで血圧の異常を指摘されたら早めに医療機関を受診しましょう。