「空腹時の血糖値が高い・低い」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!


監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「空腹時血糖値が高い・低い」原因と対処法
血糖値とは、血中のブドウ糖の濃度を表した数値のことですが、その中でも、空腹時血糖値は10時間以上食事をとらない状態で採血する状態のことです。空腹時血糖値が高いとどうなるか、気になる方も多いのではないでしょうか。 この空腹時血糖値が高い・低い原因について解説していきます。空腹時に血糖値が高い原因と対処法
空腹時に血糖値が高い原因として考えられるのは、糖尿病や慢性膵炎などのインスリンの分泌量が少なくなる病気が考えられます。 これらの病気になると、体の中でインスリンを適切に利用できないため、空腹時血糖値が高くなる傾向です。なお、空腹時血糖が高い数値の目安は以下の通りです。- 要注意:100~125mg/dL
- 高値:126mg/dL以上
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、水泳などの全身運動
- 筋肉トレーニング:腹筋、ダンベル、腕立て伏せ、スクワットなどの運動
空腹時に血糖値が低い原因と対処法
空腹時に血糖値が低い原因として考えられるのは、以下のような病気や原因が考えられます。 ・インスリノーマ 膵臓でインスリンを過剰に分泌する腫瘍が原因で、低血糖が引き起こされます。 ・副腎不全 副腎から分泌されるコルチゾールが不足し、血糖値の維持が困難になります。 ・肝臓疾患 肝臓の機能が低下すると、グリコーゲンの分解がうまくいかず、低血糖が起こることがあります。 ・糖尿病治療中の低血糖 糖尿病の治療中に、インスリンや薬の量が過剰になることで低血糖が生じることがあります。 血糖値が70mg /dLより低い場合や、それ以上でも低血糖症状がある場合には低血糖と診断されます。 低血糖の状態になると、冷や汗・動悸・めまいなどが起こります。血糖値が50m g /dLとなるとより深刻な場合として、意識がない状態になることがあります。 空腹時に血糖値が低くなる原因としては、病気の他にも食事の量や炭水化物の不足・空腹時に激しい運動をおこなっている・飲酒なども考えられますが、病気が隠れている場合もあります。 空腹時に血糖値が低い場合は、炭水化物を取り入れた食事の見直しを行いましょう。また、低血糖の症状がみられた場合は、ブドウ糖10g、ブドウ糖を含む清涼飲料水150〜200mL、砂糖20gなどを摂って安静にするのが重要です。 ただ、これらの症状が続く場合は、早めに内科や糖尿病内科を受診しましょう。空腹時の血糖値が入院レベルのときの原因と対処法
空腹時血糖値が500mg/dL以上の場合は、糖尿病の重症なレベルと判断されます。極度の脱水症状を起こし、吐き気・嘔吐などの症状だけでなく、意識障害につながる可能性があるため入院レベルとなる場合があります。 空腹時血糖値が500mg/dL以上ある場合には、以下の病態が疑われます。- インスリン不足によって体が脂肪をエネルギー源として使うため問題が生じる「糖尿病ケトアシドーシス」
- 高度の高血糖と脱水状態が続くことで発症する「高浸透圧高血糖症候群」
すぐに病院へ行くべき「空腹時の血糖値」に関する症状
ここまでは症状が起きたときの原因と対処法を紹介しました。 応急処置をして症状が落ち着いても放置してはいけない症状がいくつかあります。 以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。空腹時の血糖値の基準はどれくらい?
詳細な数値は発表している学会によって異なりますが、空腹時血糖値の基準はおおむね以下の通りです。- 基準範囲:99mg/dL以下
- 要注意:100~125mg/dL
- 異常:126mg/dL以上
空腹時の血糖値が高い場合は、糖尿病内科へ
空腹時の血糖値が高い場合、糖尿病の疑いがあります。糖尿病の初期症状はほとんどないことが多いです。しかし、放置しておくと頻尿・喉の渇き・目のかすみ・疲労感などの症状がみられます。その他にも、インスリン抵抗性・ストレス・ホルモンの異常などが原因で血糖値が高くなることがあります。 そのため、空腹時の血糖値が高い場合は一度、糖尿病内科を受診しましょう。 糖尿病内科を受診すれば、血糖値の管理や治療に関する専門的な治療やアドバイスを受けることができます。また、必要に応じて栄養士の指導を受けられます。 受診時の注意点としては、より適切な指導を受けるために、受診時には、最近の食事内容や運動習慣、症状の経過を詳しく伝えましょう。また、血糖値の測定結果や過去の医療機関の情報を持参することで、スムーズに診察ができるはずです。受診・予防の目安となる「空腹時の血糖値」のセルフチェック法
- 空腹時に異常な口の乾きを感じる場合
- 頻繁にトイレに行く場合
- 急激な疲労感を感じる場合
「空腹時の血糖値が高い」症状が特徴的な病気・疾患
ここではMedical DOC監修医が、「空腹時の血糖値が高い」に関する症状が特徴の病気を紹介します。 どのような症状なのか、どのように対策すれば良いのか、など病気について気になる事項を解説します。糖尿病
糖尿病は、血液中の血糖の濃度が慢性的に高くなる病気で、インスリンの分泌量が不足したり、働きが悪くなったりすることで発症します。 この糖尿病は、1型と2型に分かれています。 1型は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が壊されて、自分でインスリンを作ることができなくなることで発症します。2型は生活習慣や遺伝的要因が関与してインスリンの効果が低下することで発症します。 糖尿病の主な症状には、口渇・多飲・多尿・体重減少・倦怠感などがあります。しかし、初期段階では自覚症状がほとんどないため、定期的に健康診断を受けることが重要です。 治療法としては、食事療法・運動療法・薬物療法があり、特に2型糖尿病では生活習慣の改善が効果的といわれています。 健康診断で異常を指摘されたり、口渇・多飲・多尿・体重減少・倦怠感などの症状があったりする場合は、内科や糖尿病内科を受診しましょう。慢性膵炎
慢性膵炎は、膵臓の炎症が持続することで膵臓の細胞が破壊される病気のことです。腹部や背中の痛み・食欲不振・体重減少などの症状がみられます。さらに、膵臓の機能が低下するためインスリンの分泌が減少し、血糖値が上昇する場合もあります。 慢性膵炎の原因は、男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多いです。 治療としては、禁酒や禁煙を行います。そして、腹痛に対しては、鎮痛薬や蛋白分解酵素阻害薬などを用います。膵管が細くなっている場合は、内視鏡を使って膵管を広げる場合もあります。 腹部や背中の痛み・食欲不振・体重減少などの症状が気になる場合は、消化器内科を受診しましょう。甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下することで生じる病気です。 甲状腺ホルモンは体の新陳代謝を調節する役割があります。そのため、不足すると代謝が低下し、無気力・疲労感・むくみ・寒がり・体重増加・動作緩慢・記憶力低下・便秘などの症状が生じます。また、血糖値が上昇することもあります。 治療法としては、甲状腺ホルモンを補う方法が一般的です。甲状腺機能低下症が疑われる場合は、内分泌内科を一度受診しましょう。下垂体機能低下症
下垂体機能亢進症は、下垂体にできた良性の腫瘍が原因で、下垂体からのホルモン分泌が過剰になることで生じる病気です。 下垂体からはさまざまなホルモンが分泌されていますが、その中でも成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモン(TSH)の過剰分泌が知られています。成長ホルモンの過剰な分泌が起こると、先端巨大症・糖尿病、高血圧などが起こります。TSHの過剰な分泌が起こると、動悸・脈拍の増加・発汗・体重減少などの症状が出現します。 治療には腫瘍の摘出手術が第1選択になりますが、手術は行わず、放射線治療や薬物療法を行う場合もあります。 上記の症状が気になり、下垂体機能亢進症が疑われる場合は、内分泌内科を受診して、検査・診断をしてもらいましょう。「空腹時の血糖値が高いとき」の正しい対処法は?
空腹時の血糖値が高い場合は、糖質の摂取を控えるなどの食事内容を見直しましょう。また、ウォーキングや軽いジョギングなどの適度な有酸素運動を取り入れることで血糖値を下げる効果が期待できます。 空腹時血糖値が高い状態を早く治したい場合は、適切な治療が必要です。医師の指導のもとでインスリン注射や血糖降下薬を使用することで、血糖値をコントロールすることが可能です。 空腹時血糖値が異常に高いことで意識障害や極度の疲労感がある場合は、緊急性が高いため、注意が必要です。早急に医療機関を受診しましょう。「空腹時の血糖値」についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「空腹時の血糖値」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
空腹時の血糖値が高いとどうなりますか?
木村 香菜 医師
空腹時の血糖値が高い状態が続くと、2型糖尿病を発症するリスクが高くなります。また、糖尿病の症状が進行すると、視力障害や腎障害などの合併症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
空腹時の血糖値はどれくらいが正常な基準値ですか?
木村 香菜 医師
空腹時血糖値の正常値は99mg/dL以下です。要注意は100~125mg/dLで、126mg/dL以上は異常値と判断され、糖尿病と診断される可能性があります。 ただ、細かい基準値によっては受診する医療機関によって異なる場合があります。
空腹時に血糖値が100を超えたら病院に行くべきでしょうか?
木村 香菜 医師
空腹時の血糖値が100mg/dLを超えた場合は、すぐに病院へ行く必要はありませんが、要注意の数値になるため、空腹時の血糖値が100mg/dLを超えた状態が続くのであれば、病院を受診して検査や治療をおこないましょう。
血糖値の測り方を教えて下さい。
木村 香菜 医師
自己での血糖値の測り方は、基本的に以下の手順でおこないます。 ①試験紙(チップ)を測定器にセットする(内蔵型の場合もあり) ②穿刺器具を使用して、血液を出す ③血液を吸引して試験紙につける ④測定を行い、測定値が表示される なお、血糖値は食後2時間後の値を計測しましょう。




