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「血液検査でLDH」が高いとどうなるの?考えられる病気も医師が解説!

 公開日:2024/06/10
「血液検査でLDH」が高いとどうなるの?考えられる病気も医師が解説!

血液検査で調べるLDH(血清乳酸脱水素酵素)とは?Medical DOC監修医がLDHの基準値や数値が高い時に疑われる病気等を詳しく解説します。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

血液検査のLDH(乳酸脱水素酵素)とは?

「LDHって何?」と思われた方も多いかもしれません。また、LDHが高いとどうなるのか、という疑問を持ったことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
LDH(血清乳酸脱水素酵素)は血液検査で数値を確認でき、体内での細胞損傷の有無や程度を知るための重要な項目です。ここでまず、LDHについて詳しく解説します。

LDH(血清乳酸脱水素酵素)とは何?

LDH(血清乳酸脱水素酵素)は肝臓や腎臓、赤血球などに存在する酵素のことです。「Lactate Dehydrogenase」の頭文字を取って、LDと省略される場合もあります。
この酵素の主な役割は、エネルギー生成過程の一部として乳酸の代謝を促進することです。LDHは、グルコースが分解されエネルギーが生成される過程で、乳酸をピルビン酸に変換することで、細胞のエネルギー効率を高めます。簡単に伝えると、酵素は体内の小さな工場のようなもので、食べ物から得た糖分をエネルギーに変える手助けをしています。特に、乳酸という疲れた時に出る物質を、もう一度エネルギーに変える役割があります。
そんな酵素のLDHは、人間の体内で広く分布しており、特に下記の場所で多く存在します。
・骨格筋
・肝臓
・心臓
・膵臓
・脾臓
・赤血球
この酵素がうまく働いているかどうかは血液検査でチェックすることができます。

血液検査でLDHの数値が高いとどうなるの?

LDHの血液検査値が基準値を上回っている際には、体内の細胞が何らかの損傷を受けている可能性があります。LDHは先程お伝えしたように、骨格筋・肝臓・心臓・膵臓・脾臓・赤血球などに多く含まれていますが、これらの細胞が損傷するとLDHが血液中に放出され、数値が上昇します。
実際にLDHの数値が高い場合には、下記の症状が疑われます。
・心筋梗塞:心筋が損傷を受けると、LDHは特に急速に血液中に放出されるため、数値が高くなります。心筋梗塞では、LDHは梗塞が発生してから12時間以内に上昇し、2~5日後には、正常値に戻ります。
・溶血性貧血:赤血球が正常よりも早く破壊されることによって起こる貧血の状態で、その結果としてLDHの値が高くなります。
・肝疾患:肝臓病、特に肝炎や肝硬変では、肝細胞の破壊によりLDHが放出されます。
・腫瘍の存在:特定の種類の癌、特に悪性リンパ腫や白血病では、腫瘍細胞が分解することでLDHの数値が高くなります。
その他にも、脳卒中・腎疾患・肺疾患などの場合もLDHの数値が高くなることがあります。しかし、LDHの項目が高いからといってすぐに病気があるとは限りません。実際、激しい運動後や妊娠時、小児期(15歳以下)などの場合は、病気がなくても数値が高くなることがあります。
また、LDHは多くの組織に存在するため、高値だけではどの臓器が損傷しているか診断することは難しいため、他の検査結果と組み合わせて総合的に診断されることが一般的です。

血液検査でLDHの数値は低くても体に影響する?

一般的に血液検査の結果、LDHの数値が正常値より低くても特に心配する必要はありません。また、LDHの数値が低くても、直接的に体に影響を与えることは一般的にはあまりないと考えられます。
ただ、LDHの数値が極端に低い場合は、先天性の代謝疾患である乳酸脱水素酵素Hサブユニット欠損などの可能性があります。そのため、医師に相談して、他の健康問題がないかどうかを調査するために、さらなる検査や治療を受けることが重要です。

血液検査のLDHの数値の見方と再検査が必要な診断結果

ここではLDH血液検査の数値について説明します。
再検査・精密検査を受診した方が良い結果がいくつかあります。
以下のような診断結果の場合にはすぐに病院に受診しましょう。

血液検査のLDH(LD)の基準値・異常値

血液検査におけるLDHの基準値、つまり正常値は、IFCC法という測定方法で124~222U/Lとされています。この範囲内や少し高い程度であれば問題ありませんが、LDHの数値がこの基準値を超えると、異常値とみなされ、下記のように何らかの病気や体の異常を生じている可能性があります。LDHを直接下げるというよりは、原因となっている疾患を見つけ出し、必要であれば治療することが大切です。
・重度高値異常:基準値上限の4~5倍にあたる500 U/L以上の場合は、急性肝炎・肝臓がん・心筋梗塞などの重篤な状態を示す場合があります。
・中等度高値異常:300 U/L程度と基準値上限よりも高いものの重度高値異常ではない場合は、慢性肝炎・肝硬変・腎不全・悪性貧血・筋ジストロフィー・間質性肺炎・さまざまな臓器のがんなどが考えられます
これらの数値は、1つの指標にはありますが、LDHの数値だけで病状を特定することはできないため、他の臨床的な症状や追加の検査結果と組み合わせて、医師が診断を行います。

血液検査のLDH(LD)が高い・低い場合の再検査内容

血液検査をおこなった結果、LDHが高い・低い場合は下記のような再検査をおこなう場合があります。

・LDHアイソザイム検査:血液検査でLDHの数値を見ただけでは、どの臓器に問題があるのか分かりません。しかし、LDHアイソザイム検査をおこなうことで、どの臓器に問題があるのかを特定する手がかりになります。
・肝機能検査:ASTやALTなど他の肝機能の数値を合わせて評価します。
・心電図(ECG):心筋梗塞などの心疾患を調べるために実施される場合があります。
・マンモグラフィー・超音波検査:乳がんの有無を調べるために実施する代表的な検査です。
・腹部エコー、CT、MRI:内臓の詳細な画像診断をおこないます。

これらの検査の費用は、検査内容によって異なりますが、保険適用内であれば自己負担は限定的で、2,500円~3,000円程度が一般的です。具体的な費用は受診する医療機関により異なります。
再検査や精密検査は、一般的には総合病院や専門医療センターの内科・消化器内科などの専門医に依頼することになります。
再検査の結果に基づき、治療計画が立てられます。LDHの異常値に対する治療は、原因となる疾患によって異なります。そのため、例えば心筋梗塞が原因であれば、適切な心疾患の治療が、肝疾患が原因であれば肝機能を改善する治療が行われます。
これらの適切な治療を開始するためにも、再検査・精密検査は、結果を受け取ってから可能な限り迅速に検査を受けるようにしましょう。

血液検査でLDHが高い時に疑われる病気は?

ここではMedical DOC監修医が関連する病気・疾患について解説します。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の筋肉組織から発生する良性の腫瘍で、30歳以上の女性に多く見られます。子宮筋腫が発症する原因は明らかではありません。しかし、女性ホルモンのエストロゲンによる影響で成長するため、ホルモンの分泌が減少する閉経後には子宮筋腫は縮小する傾向になります。
子宮筋腫で血液中のLDHが上昇することは一般的ではありません。しかし、子宮筋腫が壊死を起こしている場合などにはLDHが上昇する場合もあります。また、子宮肉腫という悪性の腫瘍では、LDHが上昇することがあります。
子宮筋腫の対処法や治療法には、薬物療法と手術療法があります。薬物療法では、ホルモンの分泌を抑えることで子宮筋腫の成長を抑制し、症状を緩和します。症状が深刻な場合は、手術療法として、子宮全摘出術や筋腫核出術などがあります。
子宮筋腫で病院へ行くべき目安としては、月経の頻度が多い・月経痛が強い・貧血・下腹部の痛みなどの症状がある場合です。また、子宮筋腫は不妊の原因となる可能性もあるため、気になる方は婦人科または産婦人科を受診しましょう。

悪性リンパ腫

悪性リンパ腫は、リンパ系の細胞ががん化することによって発生する血液のがんの一種です。
リンパ系の細胞は、体の免疫系に関わる重要な細胞で、リンパ節・脾臓・扁桃などに存在しています。悪性リンパ腫では、血液中のLDHが高くなることが知られています。
この悪性リンパ腫の発症原因は完全には解明されていません。しかし、遺伝子の異常・ウイルスや細菌への感染・免疫不全状態・化学物質への曝露などが関係していると考えられています。
悪性リンパ腫には多くの種類があるため、それぞれの病型に応じて治療法は異なります。抗がん剤などの化学療法・放射線療法・生物学的療法などを単独で、あるいは組み合わせることが一般的な治療内容となります。
悪性リンパ腫を疑う症状は、リンパ節の腫れ・発熱・体重減少・夜間の寝汗などがあります。こうした症状が長期間続く場合には、悪性リンパ腫や他の悪性疾患の可能性があります。早めに、医療機関を受診しましょう。
受診すべき科は、血液内科や腫瘍内科などとなります。悪性リンパ腫の症状はさまざまで、しこりのできる部位も人によって異なるため、血液内科以外の診療科で発見されるのがほとんどです。そのため、気になる症状がある場合は、まずは内科を受診すると良いでしょう。

菊池病

菊池病は、首のリンパ節に良性の炎症が起こる病気で、主に20~30代の女性に多く見られます。治療の実施関係なく2~3カ月程度で自然治癒するケースがほとんどですが、稀に再発する場合があります。

発症する原因はまだはっきりと分かっていませんが、いくつかのウイルス感染症や免疫の異常によって引き起こされると考えられています。
菊池病を疑う症状としては、首のリンパ節の腫れや痛み・発熱・食欲不振・嘔吐・体重減少・発疹などが見られます。その中でも首のリンパ節が腫れて痛みを伴うことが典型的な症状です。
臨床検査 所見 上の特徴として、一過性の 白血 球減少(56%)や、末梢 血中の1~2%の 異型 リンパ球 の出現、そしてLDHの 上昇 も時 にみられます。特 に、壊 死病 変が目立つ症例 では LDH上昇の頻度が高く、上昇の程度も著しいとされています。 リンパ 節の病 理組織所 見が確定診断となります。
現在の治療法としては、根本的な治療法はまだ確立されていないものの、症状に応じてステロイド薬などの解熱鎮痛薬を内服します。
病院へ行くべき目安としては、首のリンパ節の腫れや痛みが見られたら、まずは耳鼻咽頭科や内科を受診しましょう。また、それ以外の症状も1週間以上長引く場合や、症状が強い場合も受診することが重要です。受診すべき科としては、総合内科・感染症内科・血液内科・小児科などになります。

心筋梗塞

心筋梗塞は、心臓の筋肉に酸素を供給する冠動脈が詰まった結果、心筋が酸素不足となり、死んでしまう病気です。心筋梗塞の主な原因は動脈硬化で、糖尿病・高血圧・高コレステロール血症・喫煙などがリスク要因です。心臓の筋肉が壊死し、細胞が壊れるために、LDHが上昇します。
治療法には、カテーテル治療や冠動脈バイパス術などの手術が主となります。また、それ以外でも血管を拡げる薬や血液をサラサラにする薬を使用した薬物療法も行われます。
心筋梗塞を疑って、病院へ行くべき目安は、胸の痛みや圧迫感・息苦しさなどの症状が現れた場合は注意が必要です。特に胸の痛みが強く、10分以上続く場合は、すぐに救急要請をし、循環器内科を受診しましょう。
心筋梗塞は循環器系の疾患であり、専門的な診断と治療が必要なため、気になる症状が出た場合は迷わず循環器内科を受診してください。

「血液検査のLDH」についてよくある質問

ここまで精密検査について紹介しました。ここでは「血液検査のLDH」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

血液検査のLDH(LD)は何を調べる項目ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

LDHは、細胞が損傷したときに血液中に放出される酵素です。血液検査でLDHの値を測定することにより、体内の細胞がどれくらい損傷しているのか、特定の疾患を持っているのかを評価する指標の1つです。

健康診断でLDH(乳酸脱水素酵素)が高い人は放置しても大丈夫ですか?

木村 香菜木村 香菜 医師

LDHが高いという結果だけで、病気があるとは断定できません。しかし、基準値を大幅に超えたLDHの値である場合には、精密検査の対象となります。LDHの値が高い場合は、医師と相談し、必要に応じて追加の検査を受けることをお勧めします。

アトピーの場合、血液検査でLDHに影響が出ることはありますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

アトピー性皮膚炎などの炎症性疾患では、炎症によって細胞が損傷し、LDHの値が上昇することがありますが、LDHは多くの状況で上昇するため、アトピーだけが原因とは限りません。

子宮筋腫の女性の場合、血液検査でLDHが高くなることはありますか?

木村 香菜木村 香菜 医師

子宮筋腫があるからといって、LDHの上昇を引き起こすことは一般的ではありません。しかし、子宮筋腫が壊死を起こしている場合などにはLDHが上昇する場合もあります。

血液検査でLDHが基準値より低い時は何が原因でしょうか?

木村 香菜木村 香菜 医師

LDHが基準値より極端に低い場合は、代謝異常などが原因である可能性があります。

まとめ 血液検査でLDHが引っかかったら病院へ

血液検査でLDHが引っかかったら、健康問題の警告信号かもしれません。LDHは体内のさまざまな組織に存在し、細胞が損傷を受けると血液中に放出されるため、その数値は高くなり、場合によっては悪性腫瘍や肝臓病変などの早期発見につながるかもしれません。
一方、LDHの数値が異常に低い場合は、代謝異常が原因である可能性もありますが、一般的にはあまりみられません。
そのため、血液検査の結果、LDHが高値の場合は医療機関を受診して、さらなる細かい検査を受けるようにしましょう。

「血液検査のLDH」の異常で考えられる病気

「血液検査のLDH」から医師が考えられる病気は11個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器内科の病気

消化器内科の病気

腎臓内科の病気

  • 腎損傷

呼吸器内科の病気

脳神経内科の病気

これらの疾患はLDHの値が高い場合に疑われる疾患ですが、LDHの値だけで診断を下すことはできず、他の臨床的な症状や追加の検査結果と組み合わせて診断します。LDHの数値が異常であることがわかった場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。

この記事の監修医師