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「健康診断の心電図でひっかかる」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2024/04/09
「健康診断の心電図でひっかかる」原因はご存知ですか?医師が徹底解説!

健康診断の心電図がひっかかる原因とは?Medical DOC監修医が心電図異常を指摘されたら気をつけたい病気のリスクと対処法等を詳しく解説します。

小鷹 悠二

監修医師
小鷹 悠二(おだかクリニック)

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福島県立医科大学医学部卒業 / 専門は循環器内科 / 2009/4月~2013/3月 宮城厚生協会坂総合病院 / 2013/4月~2017/3月 東北大学病院循環器内科・同大学院 医員 / 2017/4月~2018/5月 仙台オープン病院 循環器内科医長 / 2018/5月~ おだかクリニック 副院長 / 診療所での外来業務に加え、産業医、学校医としての業務も行っている。 また、医師業務以外の副業も積極的に行っており、ビザスクなどを通して企業の医療アドバイザー業も副業として行っており、年間70社以上の会社にアドバイザーとして助言を行うなどしている。 ライティングも行っており、m3.comや、Ubie病気のQ&A(https://ubie.app/byoki_qa/doctors/yn8ueqd6kjn)などにて定期的に執筆活動を行っている。

心臓の健康状態を診る心電図検査とは?

心電図検査は、学校健診や会社や自治体の健康診断でも行われる機会が多いですが、何か指摘があってもどのような異常なのかよくわからず、そのままにしてしまっていたことがある方もいるでしょう。
心電図で指摘を受けても特に症状の自覚もない方が多く、持病もなく病院に通院などしていない方の場合、早い段階で受診するべきなのか、治療が必要なのか、危険なものではないのか、判断に迷う方も多いかと思います。
ただし、不整脈には、命にかかわるような危険なものや、心臓病の初期症状として出現するものもあるため、どのように対応したらよいか、皆さんに知って頂きたいと思います。

心電図とはどんな検査?

心臓は血液を送り出すポンプのような働きをしており、その心臓の筋肉を動かすためには、刺激伝導系という回路を通った電気刺激が必要です。
心電図は、この電気信号を測定することができる検査であり、心臓の中の電気の流れの異常により引き起こされるような不整脈などの検出、血流障害や筋肉の異常による電気の伝わりやすさの変化などを評価することができます。
通常検査を行う際には、12誘導心電図といって、12種類の心電図波形を評価する方法が行われています。この検査では、さまざまな方向から心臓の中の電気の流れを評価することで、異常を起こしている部位や異常な電気の流れをより正確に評価することができます。

心電図で体の何がわかる?

心電図でわかることとしては、以下のようなものがあります。
・不整脈
最も大きな役割は、心臓内で異常な電気刺激によって引き起こされる不整脈を検出することです。不整脈は、異常な部位から電気刺激が生じ、通常と違う経路を電気が通ることで発生することが多いです。
動悸などの自覚症状を伴わない・自覚症状が乏しいこともあり、心電図による評価が非常に重要となります。

・心臓の血流障害(狭心症や心筋梗塞)
狭心症や心筋梗塞によって心臓の筋肉に血液を送っている血管の流れが悪くなると、心臓の細胞に障害が加わり、電気刺激の伝わり方に変化が生じます。心電図ではその変化を検出することができるため、狭心症や心筋梗塞などの診断にとても大切な役割を果たしています。

・心肥大や心筋症など
血圧が高いことなどによって心臓の筋肉が分厚くなる心肥大や、心臓の筋肉に異常を生じる心筋症の診断に、心電図は役立ちます。
心肥大では心臓の筋肉の電位が高くなるため、心電図では波形が高くなりやすいです。心筋症などでは、種類にもよりますが心臓の筋肉の成分が変化することで電位が低くなり、波形が低く小さくなることがあります。
このような心肥大や心筋症による心電図変化は症状が出現する前から認められることが多く、早期診断のためにも心電図検査は非常に有用です。

心電図の検査費用は?

心電図は保険の適用なのか?おおよその費用
病院などで心電図検査を行う際は、保険診療で行われ、人間ドックなどでは自費で行います。
心電図検査は診療報酬点数130点(1,300円)であり、3割負担であれば390円、1割負担であれば130円になります。
そこに読影料や初診・再診料が加わるため、窓口の支払いは約1000円程度になります(処方がある場合や他の検査も一緒に行うと追加の費用がかかります)。

健康診断や心臓の検査で心電図でひっかかる原因は?

ここではMedical DOC監修医がよく遭遇する心電図異常について解説します。

期外収縮(上室性・心室性)

よく指摘される不整脈として最も多いのが期外収縮という不整脈です。
心臓の中は4つの部屋に分かれており、上の部屋は心房、下の部屋は心室と呼ばれます。
心房のどこかから異常な電気刺激が発生して期外収縮が生じると上室性期外収縮と呼び、心室から生じた場合には心室性期外収縮と呼ばれます。
健康な方でも90%以上に認められるとする報告もあり、非常にありふれた不整脈であり、中高校生や20歳代の若年者でも比較的認めることがある不整脈です。
症状としては、動悸、脈が飛ぶ、胸が詰まるような感じなどが出ることが多いですが、無症状なこともとても多いです。
症状がない、または軽い状態で、持病もない若い方であれば緊急性は低いことが多く、特別な治療を必要としないことが多いです。
ただ、症状が乏しくても期外収縮の数が非常に多い場合や連続で出ている場合には、危険な不整脈や心臓に過度の負担がかかった心不全などを引き起こすこともあるため、注意が必要です。
原因としては、ストレスや疲れ、睡眠不足、自律神経の乱れなどが関連することも多いですが、なかには狭心症や心筋梗塞、心筋症、心臓弁膜症などさまざまな心臓病が原因となって期外収縮が出やすくなっていることもあるため注意が必要です。
診断は心電図や24時間心電図でされますが、原因疾患の検索や状態の評価のため採血、心臓超音波検査、レントゲン検査などが行われることが多いです。
治療については、合併症や不整脈の頻度などにもよりますが、特別な治療を必要としないことが多いです。
しかし、心臓病や他の疾患を合併している、期外収縮の頻度が多い、症状が強い場合には内服治療やカテーテルアブレーション治療などが行われます。
基本的には、健診で期外収縮を指摘された場合、動悸などの症状を自覚する方や、治療中の持病がある方は早期に循環器科の受診を検討するのが良いでしょう。
特に症状がない場合でも、一度は循環器科を受診して評価を受けることをお勧めします。

その他の不整脈や脈の異常

期外収縮以外の不整脈も時々指摘されることがあります。
・脈が速くなる「頻脈(洞性頻脈)」もよく見られる所見ですが、多くは緊張することなどで脈が速くなることが原因のことが多いです。ただ、なかには頻脈性の不整脈や甲状腺機能の亢進状態(体を活発にするホルモンが過剰になり脈が速くなりやすい)などが隠れていることがあるため、注意が必要です。脈拍が1分間当たり100回を超えている、普段から自分で脈を測定しても速い、動悸を自覚する、といったことがあるならば早めの受診が必要です。
・脈がゆっくりになる「徐脈」も若い方などにも見られやすいです。特に運動や肉体労働を日常的にしている方などは、スポーツ心臓といって1分間の脈拍が40-50回台の方もよくいます。
基本的には脈拍が40回以上あり無症状であれば特に心配はいりませんが、40回より少ない、ふらつきや立ち眩み、動悸などの症状を自覚する際には脈がゆっくりとなる不整脈も懸念されるため早めの受診が必要です。
・心房細動も健診でしばしば認められることがあります。動悸などの症状を伴うことが多いですが、なかには全く症状がない方もいます。心房細動は脈が速くなりやすく、さらに心臓内に血栓ができやすくなるため、脳梗塞などの血栓症の原因となりやすいという非常に危険な不整脈です。
もし健診で指摘された際には、症状がなくても必ず速やかに受診し、精密検査を行い、適切な治療を受ける必要があります。

脚ブロック

よく指摘される心電図変化の一つに「脚ブロック」があります。
心臓内の電気の流れは心房の上の方から、左右両側の心房を通り、心房・心室の境目付近にある中継地点である房室結節を経由し、左右の心室に刺激が伝わり、これはほぼ左右対称にみられます。
右心室側の電気の伝わりが悪いと右脚ブロック、左心室側の伝わりが悪いと左脚ブロックと呼ばれます。脚ブロックの波形の幅によって、完全右脚ブロック、不完全右脚ブロックなどと若干呼び方が変わります。
完全(不完全)右脚ブロックは、健診でも比較的よく見かける所見ですが、基本的にはあまり慌てることはありません。ただ、初めて指摘がされた場合には何か心臓の病気が隠れていないかはっきりさせる必要があるため、一度循環器内科を受診して、心臓超音波検査などでしっかり評価しておくことが大切です。
一方、左脚ブロックは重大な心臓病が隠れている可能性が高いため、危険性が高まります。もし症状がない、若い方であったとしても必ず循環器内科を受診して、精密検査を受ける必要があります。

狭心症や心筋梗塞

健診では時折、狭心症・心筋梗塞の疑い、といった所見がつけられることがあります。
これは心筋梗塞を起こしたときの心電図変化に似た波形があることを示します。
基本的には、心筋梗塞を起こすと強い胸痛が出現することが多いため、健診の場に発症したばかりの心筋梗塞の方が来ることはまずありません。
ただ、糖尿病がある方や高齢者などでは痛みが自覚されにくく発症に気が付かない、又は心筋梗塞を起こした範囲が小さいと、心筋梗塞を発症したことに気付かれずにいるというケースも稀にあります。
その場合には異常Q波やST異常(ST上昇、ST低下)などの所見が出現し、健診で指摘されることがあります。
しかし、このような所見は痩せている方や若年者では、体型などによっては似たような波形が見られることがあります。健診の心電図で指摘されるような「狭心症・心筋梗塞の疑い」といった所見の大部分はこれらの良性変化のことが多いです。
ただ、なかには本物の狭心症や心筋梗塞を起こした所見の場合もあるため、これらの指摘をされた際には一度は受診をして、心臓に異常がないことを評価しておく必要があります。もし胸が痛いなど症状があるのであれば緊急性が高くなるため、大至急受診をするようにしてください。

「健康診断の心電図の異常」についてよくある質問

ここまで心電図について紹介しました。ここでは「健康診断の心電図の異常」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

心電図に引っかかった場合、どうすればいいですか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

要精査ではなく、健診で経過観察でよい、と意見がつけられるような程度であれば、受診はせずに健診でフォローするといった方針でも問題ないことが多いです。
ただ、要精査となるような所見、又は初めて指摘されたような所見では、基本的には早めに一度循環器の専門医の診察を受けることが大切です。前述のように、無症状でも危険な疾患につながる不整脈や心電図変化が隠れていることもあるため、自己判断はしないようにしましょう。

健康診断で心電図が引っかかった場合、心臓の治療が必要ですか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

まずは一度循環器専門の医師の診察を受けてからの判断となります。
前述のように必ずしも必要ではない所見もあるため、治療の必要性については医師に判断してもらいましょう。

健診で心電図検査に異常が見つかりました。不整脈なのでしょうか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

不整脈というのは脈の回数やリズムの異常ですが、心電図検査では波形の形の異常を指摘されることもあるため、健診の心電図異常がすべて不整脈ではありません。

心電図にひっかかるのはストレスが原因ですか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

ストレスが原因で出現するような場合もありますが、そうではなくストレスが関与しないような心電図変化もあります。

心電図にひっかかる割合はどれくらいですか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

健診で心電図異常の指摘は、厚生労働省の健診統計データ解析からR4年は10.7%とされています。

健康診断の時に緊張していると、心電図にひっかかることはありますか?

小鷹 悠二小鷹 悠二 医師

緊張により脈が速くなる、血圧が高くなるといった反応が起こるため、頻脈や血圧高値といった指摘を受けることはありえるでしょう。
その場合は、日頃から自宅での血圧測定を行って普段の自分の血圧や脈拍を確認しておくことで、普段から血圧が高い・脈が速い状態なのか、普段は正常だが緊張などで上がっているのか、という判断ができます。

まとめ 健康診断で心電図が引っかかったら放置はせずに一度は循環器内科の受診をしましょう!

健診での心電図異常は比較的多く認められ、その大部分は特別な治療を必要としないものです。
ただ、なかには治療が必要な病気や、危険な疾患につながる所見であることもあるため、安易に自己判断はせず、一度は専門の循環器内科の病院やクリニックで評価を受けることが大切です。

「健康診断の心電図」の異常で考えられる病気

「健康診断の心電図異常」から医師が考えられる病気は10個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器系の病気

  • 上室性期外収縮
  • 心室性期外収縮
  • 洞性頻脈
  • 右脚ブロック
  • 左脚ブロック
  • 心房細動
  • 心筋症
  • 心臓弁膜症

健診での心電図異常の大部分は特別な治療を必要としないものです。ただし、ときおり治療が必要な病気が隠れていることもありますので、一度は専門の医療機関を受診しておくことが望ましいです。

この記事の監修医師