「パイプカット」するとどうなるのかご存じですか? メリット・注意点を医師が解説!

避妊の方法には様々なものがありますが、そのなかで男性がおこなう避妊法の1つが「パイプカット」です。一度手術をすればほぼ100%の避妊効果があり、しかもその効果の持続期間は永久的という特徴があるそうです。しかし、その一方でリスクはないのか気になるところです。今回は、パイプカットの利点とリスクについて、「木戸クリニック」の木戸先生に解説していただきました。

監修医師:
木戸 雅人(木戸クリニック)
パイプカットとは?

編集部
まず、パイプカットについて教えてください。
木戸先生
簡単に言えば、男性がおこなう避妊治療の1つで、精子の通り道である「精管」を切断することで、二度と精子が出てこない状態にする手術です。
編集部
パイプカットは、どんなときにおこなわれるのでしょうか?
木戸先生
例えば、夫婦やパートナーの間で、年齢的あるいは経済的などの理由から「これ以上子どもを望まない」という判断をしたときにおこなわれることが多いですね。また、前回の出産の際、母体に負担が大きく、医師から「次に妊娠すると命に関わることがある」などと言われた場合、女性に身体的負担を与えないようにパイプカットをおこなう男性もいます。
編集部
なるほど、そういう男性もいるのですね。パイプカットをおこなうことで、どのようなメリットがあるのですか?
木戸先生
まずは、コンドームなどの避妊具が不要で、確実に避妊ができるということです。パイプカットをすると、精子が二度と出てこないようになるので、ほぼ100%の確率で避妊効果があります。コンドームをしても避妊に失敗する可能性はあるため、高い避妊効果はパイプカットのメリットと言えるでしょう。
編集部
避妊効果が高いということが、一番のメリットなのですね。
木戸先生
そうですね。女性がおこなう避妊方法は色々ありますが、いずれも多かれ少なかれ身体的な負担を伴います。「奥さんやパートナーに負担を与えたくない」という男性が、マナーやエチケットとしてパイプカットをおこなうケースも見受けられます。
編集部
一度手術をしたら、効果はずっと続くのですか?
木戸先生
基本的に手術を一度すれば、効果は永久的に持続します。そのため、手術前には夫婦間やパートナー間で意思を一致させる必要があります。よく話し合い、お互いの意思を確認した上でパイプカットという選択をしていただきます。
編集部
ほかにも、パイプカットのメリットはありますか?
木戸先生
男性側の心理的な要素として、「コンドームを装着する鬱陶しさから解放される」というメリットがあります。場合によっては、コンドームをつけるという動作がEDにつながることもあるため、そうした不安から解放されるのは大きなメリットと言えるでしょう。また、子どもを望まない場合には、「妊娠したら・させたらどうしよう」という不安も解消できます。
パイプカットをしたら何が変わる?

編集部
パイプカットをすることで、精力が下がるといったデメリットはあるのでしょうか?
木戸先生
パイプカットをすることで精力が下がることはありません。また、見た目や量の変化も特になく、ただ精子が含まれなくなるだけです。
編集部
男性ホルモンの値が下がるといった影響はありますか?
木戸先生
男性ホルモンも精子も精巣で作られて分泌されますが、男性ホルモンは血管を通して運ばれるので精管を結紮(けっさつ)しても影響はありません。
編集部
パイプカットをしたら、すぐにコンドームが不要になるのですか?
木戸先生
パイプカット手術を受けても、しばらくの間はまだ精子が残っていることがあります。そのため、例えば当院では手術終了後2カ月が過ぎてから精子の検査をおすすめしています。そこで精子が出てこないことを確認したら、避妊をする必要がなくなります。
編集部
パイプカットの手術は自由診療ですか? 費用面が気になります。
木戸先生
はい、保険は適用にならないので自由診療になります。手術費は医療機関によって異なりますが、当院の場合は8万円程度です。なお、術後の精子の検査は3000円が別途でかかります。
パイプカットのリスク・注意点

編集部
パイプカットのリスクはありますか?
木戸先生
一度手術をしたら、二度と精子が出てこない状態になるため、「元に戻したい」と思っても難しいということです。精管を閉塞した部分を再吻合することも困難です。そのため、「今後は絶対に子どもを作らない」という強い意思を持って手術に臨んでほしいと思います。
編集部
そのほか、手術によるリスクはありますか?
木戸先生
基本的に安全な手術ですが、出血や感染症のリスク、腫れや痛みなどがみられるかもしれません。また、体質的な要因などにより、治療跡が残る可能性もあります。
編集部
パイプカット手術が受けられない人はいますか?
木戸先生
局所麻酔のアレルギーがある人、幼少期に精巣の手術を受けた人などは、手術できない場合があります。また、極度な肥満の人など、体型によっては手術が困難かもしれません。不安なことがあれば、あらかじめ医師にご相談ください。
編集部
基本的には誰でも安心して受けられる手術なのですね。
木戸先生
パイプカットを受けるのは青年期から壮年期の男性が多く、人生初手術というケースが少なくありません。そのため、手術に対する恐怖心を覚えて、手術前にためらったり、大きな不安を感じたりすることもあるでしょう。しかし、パイプカットの手術は安全性が高く、30分弱で終わりますし、基本的には局所麻酔で済むので、手術後すぐにお帰りいただくことも可能です。また、パイプカットをした後、どうしても子どもが欲しくなったら人工授精であれば、子どもを授かることもできます。悩んでいることや不安なことがあれば、まずは医師に相談してほしいと思います。
編集部
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
木戸先生
日本ではあまり周知されていませんが、パイプカットはアメリカやヨーロッパ、韓国などでは一般的なこととして普及しています。海外ではレディーファーストの文化があり、「男性が避妊をすることで、女性に負担をかけない」という考えが定着しているのです。日本でもそうした考えでパイプカットをする男性が少しずつ増えています。安全性が高く、基本的には傷跡も残りにくい手術なので、ぜひ安心して手術を検討してほしいと思います。
編集部まとめ
パイプカットは、女性側の身体の負担を減らしたり、男性側の精神的ストレスを軽減できたりするメリットがあるとのことでした。周囲でパイプカットの手術を受けた人がいない場合などは、あまり知識がなく、不安を感じることも多いと思います。しかし、海外では男性がおこなう避妊として広く定着しているとのことでした。パイプカットをするか悩んでいて不安や疑問が出てきたら、まずは気軽に医療機関で相談してみてはいかがでしょうか。
医院情報
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診療科目 | 泌尿器科 |