「梅毒」の感染拡大が止まらず、去年は過去2番目に多く 初期症状・気づくキッカケとは

国立感染症研究所は、2024年に全国から報告された性感染症の梅毒の感染者数が、速報値で1万4663人だったことを明らかにしました。これは、現在の方法で統計を開始してから、過去2番目に多い患者数です。この内容について五藤医師に伺いました。

監修医師:
五藤 良将(医師)
梅毒の感染状況は?
国立感染症研究所が発表した梅毒の累計報告数に関するニュースについて教えてください。

国立感染症研究所が公表したIDWR速報データによると、全国の梅毒累計報告数は1万4663人と報告されました。国立感染症研究所のホームページに掲載されている1999年以降の梅毒感染者数データによれば、2023年は梅毒の報告数が過去最多となり、2024年はそれに次いで2番目に多い記録となっています。今回明らかにされた報告から、梅毒感染者数は引き続き高い水準で推移していることが分かりました。地域別のデータでは、最も多いのが東京都で3703人、次いで大阪府が1906人、福岡県が880人、愛知県が846人と、大都市圏での報告が際立っています。
2024年のデータを2023年と比較すると、全国の報告数は1万4906人から1万4663人と約1.6%減少しました。その一方で、患者数が大きく増加した地域もあります。増加率が最も大きくなったのは富山県で、47人増加して2023年の1.96倍になりました。また、島根県では35人増加して1.52倍、石川県では83人増加して1.48倍、鳥取県では40人増加して1.43倍になりました。
梅毒の初期症状や気づくキッカケは?
梅毒について、初期症状や症状を認識するキッカケを教えてください。

梅毒は、梅毒トレポネーマという病原体により引き起こされる感染症です。「Ⅰ期」「Ⅱ期」など進行段階ごとに症状が変わりますが、初期症状での発見が鍵となります。
梅毒に感染後、3週間前後のⅠ期では、性器、口、肛門など感染部位に硬いしこりや潰瘍が表れるものの、痛みがないため気づかれにくいことがあります。これらが自然に消えても病気は進行するので、注意しなければなりません。一方、感染から3カ月前後のⅡ期では、全身の発疹(バラ疹)が特徴で、手のひらや足の裏にも現れることが多く、発熱、倦怠感、リンパ節の腫れを伴うこともあります。ただし、これらの症状は風邪やほかの皮膚病と似ている場合があるため、梅毒と気づかず発見が遅れるケースも少なくありません。
症状を認識するきっかけとしては、違和感のある皮膚症状やしこり、パートナーの感染発覚などが挙げられます。特に「いつもと違う皮膚症状」を見逃さず、早期に医療機関を受診することが感染拡大を防ぐために重要です。また、症状が出ていなくても感染が進行することがあるため、リスクがある人は定期検査を受けましょう。
梅毒の治療費や予防法は?
最後に、梅毒の治療にかかる費用や予防法について教えてください。

梅毒の治療費は、保険適用を受けることで比較的抑えることができます。診察・検査費用は、初診料や血液検査を含めて保険適用で約3000〜5000円程度です。ただし、追加検査が必要な場合は、費用が増加することがあります。
治療には抗生物質(主にペニシリン系薬剤)が使用され、経口薬の場合は2週間分で約1万円程度、注射薬では1回あたり2万円程度かかる場合があります。早期に治療を開始すれば総費用は数万円程度に抑えられますが、進行した場合や長期治療が必要な場合は、費用がさらに増加する可能性があります。
梅毒の予防法としては、コンドームを正しく使用することが感染リスクを低減する最も基本的な方法です。ただし、感染部位がコンドームで覆われない場合もあるため、コンドームだけで完全に予防できるわけではありません。また、不特定多数との性的接触を避け、パートナーと定期的に性感染症検査を受けることも重要です。特に感染リスクがある人は、保健所で実施されている無料検査を活用し、異変を感じた場合は早期に医療機関を受診してください。
編集部まとめ
今回の報告から、梅毒の感染者数は依然として高い水準であることが分かりました。特に、大都市圏での感染が目立つ一方で、地方でも感染者数が増加している地域が確認されています。梅毒の初期症状は、一見軽度に見える場合がありますが、放置すると重篤化する恐れがあるため、注意しましょう。日頃から異変を感じた場合は早期に医療機関を受診し、感染リスクがある場合は定期的に検査を受けることが、感染拡大を防ぎ、健康を守るために重要です。正しい知識を持ち、予防と早期発見を心がけましょう。