「梅毒」などの性病検査や治療は保険適用になる? 受診から治療までの流れも教えて

梅毒をはじめ、淋病やクラミジアなど性感染症が増加している現在。ほかの人に感染させないためには、まず性病検査を受け、早期に治療を開始することが不可欠です。そこで性病検査や治療法について、KANDA NISHIGUCHI CLINIC院長の板東先生を取材し、受診から治療の流れなどを詳しく聞きました。

監修医師:
板東 大晃(KANDA NISHIGUCHI CLINIC)
性病検査はどんなことをするのか?

編集部
性病検査ではどんな検査をするのですか?
板東先生
性病検査は、感染の種類によって検査方法が異なります。たとえば、クラミジアや淋菌は尿や喉・性器の分泌物から検査をします。また、HIVや梅毒、B型・C型肝炎は血液検査でわかります。最近は唾液や自己採取キットも市販されていますが、医療機関で検査を受けるほうが、精度が高くてよいと思います。
編集部
検査時間はどれくらいですか?
板東先生
尿や血液をとるだけなので10分ほどが多いです。結果は数日~1週間程度のものが多く、迅速検査(保険適用外)は10~30分ほどで判明します。
編集部
保険は使えますか? それとも自由診療ですか?
板東先生
地域によって異なりますが、性病検査は月に2~3種類までなら保険が使えるものが多いです。ただし、どう頑張っても一切保険が使えない検査もあります。たとえばマイコプラズマやウレアプラズマ(いずれも性病。肺炎とは異なる)の検査では4種類の細菌を調べる必要がありますが、このうち1項目のみの検査だけが2022年6月に保険適用となりました。しかし、それ以外の3項目は保険適用外です。このように保険適用にならない検査もあるので、詳しくは医師に確認してください。
編集部
検査費用はどれくらいですか?
板東先生
保険診療であれば「2000円〜」で、自費診療だと検査項目数によりますが大体1項目「8000円~」というのが相場です。検査項目、検査項目数によって保険が使えるかどうかが変わってきます。
編集部
どこで検査を受けられますか?
板東先生
性病検査は、泌尿器科や婦人科、皮膚科、性感染症科などで受けられます。自治体が実施する無料・匿名の検査もありますが、たとえばHIVや梅毒など一部の感染症に限定されるなど、検査の内容が限られていることも少なくありません。しっかり検査したいという人は、医療機関の外来を利用するのが確実です。
編集部
検査に痛みはありますか? 恥ずかしくないですか?
板東先生
検査自体はそれほど痛くありません。採血や綿棒による採取、尿提出など簡単なものがほとんどです。性器からの分泌物を採取する場合に少し不快感があるかもしれませんが、数秒で終わります。また、医師やスタッフも日常的に対応しているので、恥ずかしがる必要はありません。プライバシーにも配慮されているので、安心して受けてください。
受診から治療までの流れについて

編集部
検査を受けるには予約が必要ですか?
板東先生
医療機関や検査の内容によって異なりますが、検査を受ける際には予約が必要な場合があります。
編集部
検査の後、どういう流れで治療になるのですか?
板東先生
検査結果が出るまでに数日かかることが多いですが、症状が強い場合には結果を待たずに治療を始めることもあります。感染が確認されたら、原因となる菌に応じて抗生物質の内服薬を処方します。菌によっては筋肉注射や点滴が必要なものもあります。
編集部
性病の治療にはどれくらいの期間がかかりますか?
板東先生
治療期間は感染症の種類によります。クラミジアや淋菌は、1回の内服や注射で完治することもありますが、再検査をして治癒を確認する必要があります。梅毒は数週間の治療が必要で、HIVは一生涯の服薬が基本です。症状が消えても治療を途中でやめないことが重要です。処方された日数分はすべて内服しましょう。
編集部
パートナーも一緒に受診した方がよいのでしょうか?
板東先生
はい、非常に重要です。性病はパートナーと感染を繰り返す「ピンポン感染」が起こりやすい病気です。たとえ相手に症状がなくても感染している可能性があるため、2人で一緒に検査・治療を受けることがすすめられます。治療後に再感染を防ぐためにも、関係者全員が適切な対応をすることが不可欠です。
編集部
治療に保険は適用されるのでしょうか?
板東先生
基本的に保険で治療ができることが大半です。中には、念のため薬を保持しておきたい、パートナーの分も薬が欲しいと希望する人もいますが、その場合だと保険はききませんので自費でお渡しする形になります。
性病検査を受ける時の注意点は? 受けた方が良い人は?

編集部
性病検査を受けるタイミングはいつがいいですか?
板東先生
心当たりがあると感じた時点で、なるべく早く検査を受けることが大切です。ただし、感染してすぐでは検査で反応が出ないこともあります。たとえば、梅毒の検査は感染後3〜4週間経たないと正確な結果が出にくいことがわかっています。自己判断で安心せず、タイミングを医師と相談するのがベストです。
編集部
どんな人が検査を受けるべきですか?
板東先生
コンドームなしの性行為をしたことがある人、不特定多数の相手との関係がある人、性病の症状がある人(排尿時の痛み、かゆみ、分泌物など)は、積極的に検査を受けるべきです。また、妊娠を考えているカップルも一度は検査しておくと安心でしょう。最近は症状がないパターンも頻発しています。特定の相手との性行為であっても、その相手はどこで何をしているのかはわからないので、粘膜の接触があるのであれば感染しているものと捉え、検査を実施した方が安心です。
編集部
性病検査を受ける際の注意点はありますか?
板東先生
検査前に抗生物質を自己判断で服用すると、正確な結果が得られないことがあります。また、直前に排尿してしまうと結果に影響が出る場合があります。医療機関から指示がある場合はしっかり従いましょう。匿名で受けたい場合も、受けられる医療機関を事前に調べておくとスムーズです。
編集部
性病の予防には何が効果的ですか?
板東先生
予防の基本はコンドームの正しい使用です。すべての性行為で一貫して使うことで、多くの感染症のリスクを減らせます。また、不特定多数との関係を避けることや、定期的に検査を受けることも予防になります。
編集部
最後にメディカルドック読者へのメッセージがあれば。
板東先生
性病もほかの病気と一緒で、まさか自分がかかるとは思わないものです。特に最近はパパ活、SNSやマッチングアプリによって容易に出会える環境があり、性病は増加の一途を辿っています。性病は不妊(男女とも)の原因になったり、放っておくと神経系や心血管系まで侵されたりすることがあります。たかが性病、されど性病です。オーラルセックスのみでうつるもの、キスのみでうつるものもあります。つまり、粘膜の接触があった場合には性病になってしまっている可能性があるわけです。また厄介なのは症状がはっきりしないことも多いということです。上記のことを念頭においた上で、心配があるという人は、検査を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
性病検査を受けるのは心理的にハードルが高いと感じる人もいるかもしれません。しかし、放置するとあとから大きなトラブルにつながることもあります。最近ではほかの患者さんと顔を合わせないよう、待合室が工夫された医療機関もあるので、気になる人はぜひ受診してみることをおすすめします。
医院情報
所在地 | 〒101-0047 東京都千代田区内神田3-12-4 第一岸ビル3階 |
アクセス | JR「神田」駅西口より徒歩1分 |
診療科目 | 性感染症内科(性病科)、婦人科、泌尿器科、皮膚科、内科 |