梅毒の蔓延、なぜ止まらない? ”インバウンドとの関連”や初期症状・対処法を医師が解説

近年、日本国内で梅毒の感染者が急増しており、深刻な広がりを見せています。その中で、訪日外国人観光客、いわゆるインバウンドとの関連も指摘されています。梅毒の感染状況やインバウンドとの関連、初期症状・対処法について、吉野医師に解説していただきました。

監修医師:
吉野 友祐(医師)
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梅毒の感染状況
梅毒の感染状況について教えてください。また、年々感染者が増加しているのですか?
吉野先生
今回は、国立健康危機管理研究機構が発表した梅毒の感染状況について紹介します。近年、日本全国で梅毒の感染者数が急増しています。国立健康危機管理研究機構感染症情報提供サイトによると、2025年第17週(4月21〜27日)には全国で157人、東京都では30人の感染が報告されました。
また、厚生労働省によると、2022年以降は年間1万人を超える報告が続いており、2023年には約1万5000人が報告され、2013年と比較すると約12倍に増加しています。特に東京都では、2024年の患者報告数が3760人を記録しています。梅毒の感染者は男性20〜50代、女性は20代が多く、異性間の性的接触による感染が増加傾向にあります。
梅毒とインバウンドの関連
訪日外国人と梅毒の関係も指摘されているようですが、インバウンドの影響について教えてください。
吉野先生
梅毒感染者の増加には、訪日外国人の増加、いわゆるインバウンドも一因として関係が示唆されています。2019年に一般財団法人厚生労働統計協会が発行する「厚生の指標」に掲載された研究では、都道府県別のデータを分析したところ「外国人訪問率が高い地域は、梅毒罹患率が相対的に高い傾向がある」ということが明らかになりました。ただし、感染拡大に最も強く関連していたのは無店舗型の性風俗業態であり、外国人訪問率は補助的要因とされました。したがって、梅毒の感染拡大を防ぐには、性産業と訪日外国人の両面からの対策が求められます。
梅毒の症状・対処法
梅毒の症状や予防法・対処法などについて教えてください。
吉野先生
梅毒は「梅毒トレポネーマ」という細菌の感染によって発症する性感染症で、性行為や皮膚・粘膜の接触によって感染します。初期には性器や口、肛門などにしこりやただれができ、数カ月後には全身に発疹が出ることもあります。初期症状は自然に軽快することもありますが、治療せずに放置すると、数年から10年以上経過した後に心血管や中枢神経系などに深刻な合併症を生じることがあります。
梅毒の予防にはコンドームの使用が有効ですが、完全ではありません。感染を疑う場合は早めに血液検査を受け、パートナーとともに治療を受けることが大切です。
編集部まとめ
梅毒の感染者が全国的に増えており、特に若い世代で報告が多くなっています。「性行為の際はコンドームを使う」「気になる症状があれば早めに検査を受ける」など、日々のちょっとした心がけが自分やパートナーの健康を守る第一歩になるでしょう。