副鼻腔炎の手術を医師が解説 日帰りも可能? 痛みや麻酔、手術後のことも知りたい
しつこい鼻詰まりや鼻水、鼻茸などが起きる副鼻腔炎。薬物療法や吸引などの治療法が一般的ですが、それでも治らない場合には手術が適応になります。一体、どのようにして手術が行われるのか、具体的な内容について深谷耳鼻咽喉科クリニックの深谷先生に教えていただきました。
監修医師:
深谷 和正(深谷耳鼻咽喉科クリニック)
目次 -INDEX-
慢性副鼻腔炎(蓄膿症)とは鼻のどんな病気? 原因は? 病院では副鼻腔炎のどんな治療が受けられる?
編集部
慢性副鼻腔炎とは、どのような疾患ですか?
深谷先生
副鼻腔炎とは、副鼻腔に炎症が発生して膿がたまる病気のこと。発症間もない段階が急性副鼻腔炎で、治り切らずに長期化したものを慢性副鼻腔炎(または蓄膿症)といいます。副鼻腔とは、鼻の穴の周囲にある空洞のことで、左右4個ずつあります。
編集部
副鼻腔炎の原因はなんですか?
深谷先生
多くの場合、風邪をひいた際などに原因となった細菌やウイルスなどの病原体が副鼻腔に感染することで発症します。また、むし歯や歯周病、鼻や喉に発生した炎症などが原因となって発症することもあります。一般的に体の抵抗力が弱くなっているときに発症しやすいとされています。
編集部
どのような症状が現れるのですか?
深谷先生
多くの場合、以下のような症状が見られます。
・黄色がかって粘り気をおびた鼻水が生じる
・鼻詰まりが起きる
・炎症が発生している部位が痛む
・鼻腔や副鼻腔の粘膜が腫れて鼻茸(鼻ポリープ)が形成され、鼻詰まりが悪化する
・鼻水が喉へ流れ落ちる(後鼻漏)
・嗅覚障害が起きる
編集部
どのような治療が行われるのですか?
深谷先生
まず、炎症や痛みを抑える消炎鎮痛薬や、細菌を抑える抗生物質などの服用を行います。また、鼻腔や副鼻腔にたまった膿や鼻水を除去するため、耳鼻咽喉科で定期的に吸引・除去の処置を受けたり、鼻の穴にノズルを差し込んで霧状の薬剤を吸い込むネブライザー療法を行い、鼻の内部を清潔な状態にしたりします。それでもあまり効果が見られない場合には、手術が適応になります。
入院なしの日帰り副鼻腔炎手術の流れが知りたい 麻酔は全身・局所? 「内視鏡下副鼻腔手術」とは?
編集部
副鼻腔炎の手術は日帰りでもできるのですか?
深谷先生
現在、副鼻腔炎に対する手術として主に行われているのは、内視鏡下副鼻腔手術(ESS)です。こちらは日帰りでも受けていただけます(副鼻腔炎のタイプや鼻中隔の曲がりなどによっては、2泊3日の入院になる可能性もある)。
編集部
手術の流れを教えてください。
深谷先生
局所麻酔、または全身麻酔をかけ、鼻の穴から内視鏡を挿入して副鼻腔を覆っている骨の壁や腫れている粘膜、溜まっている膿を除去したり、鼻茸を取り除いたりします。その後、鼻腔にガーゼを挿入し、4日〜1週間後に抜去します。また、吸収性の止血剤を副鼻腔に留置することもあります。
編集部
手術時間はどれくらいですか?
深谷先生
重症度によって異なりますが、両側の手術を行ってだいたい1〜2時間程度です。
編集部
一度手術を受けると、副鼻腔炎が再発することはないのですか?
深谷先生
手術では鼻茸が摘出されるので、鼻詰まりが大きく改善されます。しかし、なかには治りにくいタイプの慢性副鼻腔炎「好酸球性副鼻腔炎」もあり、その場合には再発するリスクが比較的高いとされています。そのため好酸球性副鼻腔炎には、ステロイドなどを使って症状を軽減させます。
副鼻腔炎の手術後の注意点も解説 合併症の心配は? 費用や保険適用についても教えて
編集部
副鼻腔炎の手術にはどのようなリスクがありますか?
深谷先生
とても安全性が高い手術なので、合併症が起きることは非常にまれです。発生するケースはとても少ないですが、副鼻腔は目と近い距離にあるため、眼球運動障害を起こすことがあります。またこれも非常に稀ですが、手術の際に鼻腔の天井に傷がつくと頭蓋内から髄液が漏れ、その結果として視力障害が起きることもあります。
編集部
術後に気をつけることはありますか?
深谷先生
術後には状態を確認するため、手術翌日、1週間後、1か月後、2〜3か月後など、徐々に間を開けながら3か月程度通っていただきます。また、手術後も少量の抗生物質を長期にわたって投与することで、再発を予防してもらいます。
編集部
手術にかかる費用はどれくらいですか? 保険は適用になりますか?
深谷先生
副鼻腔炎の手術は保険が適用になります。症状の進行具合や麻酔の種類、また入院か日帰りかによって料金に差はありますが、当院の場合は日帰りで片側2〜9万円程度です。
編集部
最後に、Medical DOC読者へのメッセージがあれば。
深谷先生
副鼻腔炎は命にかかる疾患ではないため、つい見逃してしまう人も多いと思います。しかし、慢性的に鼻詰まりなどの症状が続くと、集中力が低下したり、日中に眠気を催したり、生活の質が低下したりすることもあります。また、非常に稀ですが、慢性の副鼻腔炎があると風邪をひいたときにウイルスが眼球や脳に入り、重篤な症状を引き起こすこともあります。もし「なかなか鼻詰まりが治らない」「黄色がかった粘り気のある鼻水が出る」などの症状が見られる場合には、一度、耳鼻咽喉科を受診されると良いと思います。
編集部まとめ
軽症であれば、吸引や除去などの治療で治癒できる副鼻腔炎。しかし慢性化したり、重症化したりすると、手術をしなければならなくなることもあります。また症状が進むと、日帰り手術では難しくなり、入院して手術を受けなければならないことも。もし気になる症状があれば、早めに医師の診察を受け、早期発見に努めるようにしましょう。
医院情報
所在地 | 〒355-0072 埼玉県東松山市石橋1816-9 |
アクセス | 東武鉄道東上本線「森林公園駅」 徒歩6分 |
診療科目 | 耳鼻咽喉科 |