「卵巣がん」が疑われる場合に行われる「検査方法」はご存知ですか【医師監修】

卵巣がんは乳がんや子宮頸がんに並ぶ、女性特有のがんの一つです。ところが市町村で行われるがん検診に卵巣がん検診は含まれておらず、卵巣がんの対策は個人に委ねられています。
また、卵巣がんが進行すると痛みを感じることがあり、痛みがきっかけで卵巣がんに初めて気付くケースも少なくありません。痛む場所によっては、卵巣がんを疑いましょう。
この記事では、卵巣がんの痛みの検査について詳しく解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「卵巣がん」を発症すると体のどこに「痛み」を感じるの?症状も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
卵巣がんとは?
卵巣がんとは、卵巣にできる女性特有の悪性腫瘍です。卵巣は下腹部の中央にある子宮の両側に位置し、親指の第一関節程の大きさで、女性ホルモンの分泌に関わっています。
卵巣がんは、年齢が上がる程発症リスクが高くなり、乳がん・卵巣がんの既往がある家族がいる人は注意が必要です。また、卵巣がんの症状は自覚しにくいため、進行してから見つかることがほとんどです。
卵巣がんの原因は判明しておらず、日常での対策はむずかしいでしょう。それゆえに定期的な検査の実施や、わずかな体調の変化に気付くことががんの早期発見につながります。
卵巣がんが疑われる場合に行われる検査
卵巣がんが疑われる症状がある場合、症状はないけれど定期的な検査をしたい場合は、がんの有無を確認するための検査が4種類あります。なお、卵巣がんは進行した状態で見つかることが多く、ほかの臓器に転移している可能性があることを考慮して複数の検査を実施します。がんを見逃すことがないように、徹底した検査が大切です。
触診・内診・直腸診
卵巣がんの症状には腹部のハリやしこりなどがあり、医師による触診・内診・直腸診でがんの有無を確認します。触診は腹部、内診は膣から入れた指先の感触で子宮や卵巣に異常がないか調べる検査です。
直腸診は直腸に指を入れることで、卵巣周囲にある直腸に異常がないか確認します。指で触れることで腫瘍の大きさや硬さ知ることができ、悪性か良性なのかの判断材料になります。
画像診断
画像診断とは超音波・X線・磁気などを利用し、体内の状態を画像化する検査のことです。画像化することで、がんの発生部位や形などを正確に把握できます。卵巣がんの画像診断では、主に超音波検査・CT検査・MRI検査の3つです。それぞれ目的に応じた検査を実施します。
例えば、超音波を使った超音波検査では、卵巣の状態を把握する目的です。X線が使われたCT検査では、転移の有無を調べるためです。なお、磁気を使ったMRI検査ではCT検査では確認できなかった骨盤の内部まで撮影できます。
しかし、ペースメーカーを装着した患者さんにはできない検査であるため、持病などがあれば事前に医師に伝えておきましょう。
病理検査
病理検査は切除した卵巣の一部や腹水に含まれる細胞を調べて、悪性腫瘍かどうか判断するための検査です。病理検査は細胞診と組織診に分けられ、それぞれ検査の目的が異なります。
細胞診では卵巣がんの症状の一つである腹水を皮膚から針を刺して採取し、腹水のなかにがん細胞が含まれるか検査します。
組織診では手術の際に、どこまで切除する必要があるか判断するために事前に卵巣の一部を切除して調べる検査です。組織診によって良性・境界悪性・悪性などを知ることができ、細胞診よりも精度が高いため確定診断することができます。
血液検査
血液検査ではがん特有の腫瘍マーカーを調べる検査です。腫瘍マーカーとは、がんの種類毎に作られる特有のたんぱく質などの物質です。
卵巣がんでは血液中にCA125という物質が作られ、その数値を調べます。なお、がんの有無がわかるだけですので、場所の特定はほかの画像診断で調べる必要があります。
卵巣がんの痛みについてよくある質問
ここまで卵巣がんの症状・検査などを紹介しました。ここでは「卵巣がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がんで痛みが出た場合かなり進行していると考えられますか?
馬場 敦志医師
痛みが出る場合、進行している可能性が高いです。卵巣がんが神経に浸潤した場合、痛みを伴うことがあります。特に腹膜には痛みを感じる部位があるため、腹膜播種によって痛みが生じる場合は多いです。腹膜播種はステージ3期以降に起こり、進行がんの分類に移行しているため、卵巣がんでは進行している可能性が高いです。
がん性疼痛について詳しく教えてください。
馬場 敦志医師
がん性疼痛とはがんに関わる痛みの総称で、がんと診断された患者さんの約20〜50%の人にみられます。例えば、がんの転移により腹水が溜まることで生じる腹痛やがん治療で行う化学療法の副作用などです。なお、進行がんの場合はさらに痛みを感じる患者さんの割合が増える傾向があり、痛みをコントロールすることががん治療の課題といえます。
編集部まとめ
本記事では、卵巣がんの痛みや症状・検査などを解説しました。卵巣がんは自覚症状が出にくく、気付いたときには進行していることがほとんどです。
気付くきっかけは腹部や腰部に起こる痛みです。しかし、痛みが起こる頃にはがんの進行はかなり進んでいると考えられます。
たとえ、がんが進行しても痛みや吐き気などの症状が出ない場合があるため、発見が遅れることも少なくありません。
卵巣がんを早期で発見するためには日頃から体調変化を意識し、原因を追究することが大切です。原因不明の痛みや食欲不振などの症状があれば早めに受診しましょう。
卵巣がんと関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんは年齢が上がるにつれて、発症リスクが高まるといわれています。年齢が重なるにつれ、生理の数が増えることが原因と考えられているためです。それゆえ、女性ホルモンが関わる疾患にも影響があると考えられるでしょう。また、遺伝も発症に関係しているといわれ、女性疾患である乳がんや子宮頸がんを発症した家族がいる方は注意が必要です。
卵巣がんと関連する症状
「卵巣がん」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんは進行すると、日常で起こりうる症状が出る程度で特有の症状はほとんどありません。そのため症状の変化があった場合は、なぜそのような症状が起きたのかを言及するようにしてください。思い当たる症状がなければ、早めに医師に相談しましょう。