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「卵巣がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?治療法も医師が解説!

 更新日:2023/09/14
「卵巣がんのステージ別・生存率」はご存知ですか?治療法も医師が解説!

卵巣がんの生存率は?Medical DOC監修医が卵巣がんのステージ別生存率・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

中川 龍太郎

監修医師
中川 龍太郎(医療法人資生会 医員)

プロフィールをもっと見る
奈良県立医科大学卒業。臨床研修を経て、医療法人やわらぎ会、医療法人資生会南川医院に勤務。生活習慣病や肥満治療、予防医学、ヘルスメンテナンスに注力すると同時に、訪問診療にも従事している。日本プライマリ・ケア連合学会、日本在宅医療連合学会、日本旅行医学会の各会員。オンライン診療研修受講。

「卵巣がん」とは?

卵巣癌とは卵巣に発生する悪性腫瘍の総称です。腫瘍細胞の種類によって非常に細かく分類されています。卵巣は子宮の両隣に位置する左右一対の臓器で、正常な卵巣は2~3cm程度の大きさです。卵巣は卵子を月に1回排出(排卵)する機能や、女性ホルモンを産生する機能をもっています。
さまざまな分類のある卵巣がんですが、その多くは40~60歳代の閉経前後の女性でよくみられます。
卵巣がんの特徴は、卵巣という臓器がお腹の中で固定されていないため、ほかの臓器のように術前に生検(組織をとって細胞レベルで調べること)をしてステージを決定することができない、という点です。
そのため卵巣がんの進行期(ステージ)は、手術によって摘出した標本の病理診断(細胞レベルで詳しく調べる検査)に基づいて、手術のあとに決定されます。
手術の詳細は後で説明しますが、お腹を縦に大きく切る開腹手術が基本です。
がんの広がりと病理診断の結果によって、手術で切除する範囲が変わります。
手術は基本的に両側の卵巣・卵管摘出術+子宮全摘出術+大網(胃の下から下腹部にかけて広がる、腹腔内のひだ状の膜)切除術になります。加えて腹腔細胞診+腹腔内各所の生検+骨盤・傍大動脈リンパ節郭清(生検)を行うことが推奨されています。

卵巣がんの生存率

卵巣がん・ステージ1の生存率

ステージ1は、がんが卵巣または卵管内に留まっている状態です。
自覚症状はほとんどなく気づかれにくいです。腹水(腹腔というお腹のスペースに溜まった水)がある程度出現した場合に、お腹の圧迫感を感じる程度です。
また、性ホルモンを作りだす腫瘍の場合は、閉経後の不正性器出血が見られることもあります。
ステージ1の5年生存率(治療してから5年後に生きている人の割合)は約90%です。

卵巣がん・ステージ2の生存率

ステージ2は、がんが卵巣の外に広がって、周囲の腹膜(腹部の臓器を覆う薄い膜)・子宮・膀胱・腸などに及んでいるが、骨盤内にはとどまっている状態です。5年生存率は80%程度とされています。
卵巣がん特有の症状はあまりなく、腹水によるお腹の張り感や、膀胱への圧迫による頻尿、腸が圧迫されておこる便秘などの症状がおこることはあります。ただしこれらの症状が、みられない場合もあります。

卵巣がん・ステージ3の生存率

ステージ3は、がんが骨盤の外にも広がっていたり、リンパ節への転移がおこったりしている状態です。肝臓や脾臓の外側に及んでいるものも含みます。
5年生存率は45%程度です。
症状はステージ2と同様に、腹水によるお腹の膨満感や、周囲の臓器への圧迫による頻尿や便秘などの症状がおこることがあります。

卵巣がん・ステージ4の生存率

ステージ4は、卵巣から離れた臓器にまで転移した状態になります。5年生存率は35%程度です。肝臓や肺に転移したり、胸水(肺のスペースに溜まった水)がたまることで、息苦しさが出ることがあります。

卵巣がんのステージ別・治療法

卵巣がん・ステージ1の治療法

治療と検査は婦人科で行います。CT検査やMRI検査を行い、がんの広がりを調べ、それらの結果をもとに、悪性腫瘍の手術を行うことのできる病院の婦人科で手術を行います。
手術ではがんをできる限り取り除くことが重要なため、両側の卵巣・卵管摘出術+子宮全摘出術+大網(胃の下から下腹部にかけて広がる、腹腔内のひだ状の膜)切除術という大きな範囲を切除するのが基本術式となります。それに加えてリンパ節への転移を調べるためにリンパ節生検も行います。
この際、手術で摘出した組織を病理診断にかけることによってステージが決定されます。なお、手術前に「おそらくステージ1であろう」と思われていた場合でも、手術標本の病理診断でステージ2や3に上がることがあります。
また、手術自体の結果をもとに、ステージ1の中でも更に細かく分類されます。分類の内容によって、抗癌化学療法を追加で行う場合もあります。
抗癌化学療法の内容や回数は患者さんごとにそれぞれ異なりますが、初回は副作用やアレルギー反応の観察のため、数日間は入院し、2回目以降は外来通院で行うことが多いです。
どのステージでも抗がん剤の副作用やその対応については同じになります。
抗がん剤投与直後に重篤なアレルギー反応が出現した場合、原則中断にします。
そのほか副作用には、投与から数日以内の吐き気、手足のしびれ、筋肉痛、投与から1週間程度以降の貧血や白血球の減少(発熱性好中球減少症)、脱毛などがあります。
治療後も再発の可能性はあるため、定期的な経過観察が必要です。ほとんどの再発は8年以内に起こるので、その期間は間隔を少しずつあけながら、受診を継続する場合が多いです。

卵巣がん・ステージ2の治療法

ステージ1と同様に、CT検査やMRI検査を行い、がんの広がりを調べ、手術を行います。
手術は、両側卵巣・卵管摘出術+子宮全摘出術+大網切除術の基本術式に加えて、肉眼的に癌が広がっていると思われる部分を切除するため、腹膜切除や腸管部分切除術などが行われる場合があります。
そのため婦人科だけでなく、消化器外科、泌尿器科とも連携できる病院で手術を行う必要があります。

術後は手術で摘出した標本の病理診断に基づいて、抗癌化学療法を行います。
抗癌化学療法についてはステージ1と同様、内容や回数は患者さんごとにそれぞれ異なりますが、初回は副作用やアレルギー反応の観察のため、数日間は入院し、2回目以降は外来通院で行うことが多いです。
抗がん剤の副作用やその対応については割愛します。
治療後も再発の可能性はあるため、定期的な経過観察が必要です。ほとんどの再発は8年以内に起こるので、その期間は間隔を少しずつあけながら、受診を継続する場合が多いです。

卵巣がん・ステージ3の治療法

これまでのステージと同様、CT検査やMRI検査を行い、がんの広がりを調べ、手術を行います。ステージ2と同様に、両側の卵巣・卵管摘出術+子宮全摘出術+大網切除術の基本術式に加えて、肉眼的に癌が及んでいると思われる部分を切除するため、必要に応じて腸管部分切除術、さらには横隔膜や脾臓も切除される場合があります。
そのため婦人科だけでなく、消化器外科、泌尿器科とも連携できる病院で手術を行う必要があります。
術後は手術で摘出した標本の病理診断に基づいて、抗癌化学療法を行います。
抗癌化学療法についてはステージ1、2と同様、内容や回数は患者さんごとにそれぞれ異なりますが、初回は副作用やアレルギー反応の観察のため、数日間は入院し、2回目以降は外来通院で行うことが多いです。
抗がん剤の副作用やその対応についてはステージ1、2と同様なので省略します。
初回の手術で腫瘍が最大で1cm以上残ってしまった場合は、化学療法の後に追加で腫瘍減量のための手術を行うこともあります。
化学療法と追加手術を行っても再発の可能性は残るため、定期的な経過観察が必要です。ほとんどの再発は8年以内に起こるので、その期間は間隔を少しずつあけながら、受診を継続する場合が多いです。

卵巣がん・ステージ4の治療法

婦人科でCT検査やMRI検査を行い、がんの広がりや遠隔転移(隣り合っていない、離れた臓器への転移)の有無を調べます。
手術で腫瘍を取りきることが出来ないと判断された場合や、患者さん自身が高齢な場合、胸水や腹水によって全身状態が悪く手術に耐えきれないような場合には、まず抗癌化学療法を行ってから、腫瘍自体の体積を減らす(腫瘍減量)ための手術を行うことがあります。
抗癌化学療法の内容や回数はそれぞれ異なりますが、初回は副作用やアレルギー反応の観察のため数日間の入院下で、二回目以降は外来通院で行うことが多いです。
抗がん剤の副作用やその対応については、これまでのステージと同様なので割愛します。
治療後の再発の可能性は他のステージより高く、定期的な経過観察はより一層必要です。ほとんどの再発は8年以内に起こるので、その間は間隔を少しずつあけながら受診を継続する場合が多いです。

「卵巣がんの生存率」についてよくある質問

ここまで卵巣がんの生存率を紹介しました。ここでは「卵巣がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

卵巣がんの10年生存率について教えて下さい。

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

平均で43.9%、ステージ1~2は85.5%です。

卵巣がん・ステージ3の10年生存率はどれくらいでしょうか?

中川 龍太郎医師中川 龍太郎(医師)

29.4%です。

編集部まとめ

卵巣がんの生存率や治療法について解説しました。当然ですが、卵巣がんの進行が進んでいるほど、生存率は低く手術で切除する範囲も大きくなっていきます。早期発見、早期治療が非常に重要な病気ですので、定期的な検診をお勧めいたします。

「卵巣がんの生存率」と関連する病気

「卵巣がんの生存率」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

婦人科の病気

循環器科の病気

  • 肺血栓塞栓症

腫瘍の摘出手術だけではなく抗癌化学療法などの治療もありますが、それに付随して様々な症状や病気を発症することがあります。

「卵巣がんの生存率」と関連する症状

「卵巣がんの生存率」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

卵巣がんに特有の症状はありませんが、これらの症状から卵巣がんを疑い、詳しい検査を行うきっかけにはなります。卵巣がんの多い年代(40-60歳代)で、これらの症状が長引く場合は、一度病院を受診してください。

この記事の監修医師