保険治療でむし歯を治す場合の治療内容は?自費診療との違いも解説

むし歯の治療方法はさまざまですが、できればあまり費用をかけず、保険治療で治したいという方は多いのではないでしょうか。
この記事においては、保険診療で行うむし歯治療の内容や、自費診療で行う治療法との違い、などについて解説します。
むし歯治療を受ける際の参考にしてみてください。

監修歯科医師:
松浦 京之介(歯科医師)
目次 -INDEX-
むし歯に対する保険治療の主な内容

むし歯ができてしまったとき、保険治療で行う内容は主に下記のようなものです。
むし歯の検査
保険治療の第一段階は、むし歯の状態の詳しい検査です。むし歯の有無や進行状況などをしっかりと調べることで、実際にどのような治療が必要かを見極めます。
検査は鏡を使用して行う視診のほか、専用の器具で歯を触り、ざらつきや硬さなどを確認して初期むし歯などを探す触診にはじまり、歯と歯の間や神経に近い部分など、目視では判断しにくい場所を調べるためのレントゲン撮影などが行われます。
また、歯科医院によってはダイアグノデントペンというレーザーでむし歯の大きさを測定する医療機器を導入し、治療が必要なむし歯かどうかなどを客観的に評価できる場合もあります。
このほか、むし歯の検査を行う際には歯周病の状態を確認するための歯周基本検査や、検査のために歯に付着した歯石を除去するスケーリングなども行われます。
これらの検査はすべて保険治療で行うことが可能で、3割負担の場合にかかる費用は下記のとおりです。
- 初診料(視診や触診費用を含む):約800円
- レントゲン:約1,200円
- 歯周基本検査:約150円~1,200円(検査本数による)
- スケーリング:約200~800円
- 歯科疾患管理料:約300円
上記のほか、歯科医院が口管強の認定を受けているかどうかや口腔内写真の撮影を行うかなどによって費用が加算される可能性があります。
なお、むし歯の検査として行う視診には拡大鏡などを用いてより精密に検査を行う場合がありますが、この場合も特に加算などはありません。同様に、ダイアグノデントペンによる検査などにも加算はないので、費用面を心配せずに受けることができます。
歯を削る治療
むし歯治療の基本は、むし歯に感染している部分の歯を削って除去し、それ以上の進行を止めることです。原因菌を徹底的に除去しないと、そこから再度細菌が増殖してむし歯が進行してしまいます。
むし歯を削る、う蝕処置と呼ばれる処置は、歯1本あたり約50円(3割負担の場合)ですが、この処置のみで治療を終えることは基本的にありません。
詰め物(インレー)
むし歯を削った部分に人工的な素材を充填し、歯にできてしまった穴を塞ぐ処置が詰め物です。
むし歯がまだ初期段階であり、削る量が少ない場合にはコンポジットレジン(CR)という樹脂素材で削った場所を埋めて固めるCR充填と呼ばれる治療が行われることが多く、この場合は歯を削るのと同日にすぐ治療を終えることができる場合もあります。
一方で削る範囲が広い場合にはコンポジットレジンの充填では強度などが不十分になってしまう場合があり、金属製の素材などでむし歯を削った箇所にぴったりはまるインレーを作り、それを歯に固定する方法で治療を行います。インレーは削った歯の型取りをしてから作成を開始し、できあがってから装着する必要があるため、1日で終わらない場合が多いといえます。
治療にかかる費用については、3割負担の方で、CR充填が数百円から千円程度、インレーを作る場合で数千円程度です。治療する歯の種類による複雑さや使用する素材などによって費用が変動します。
被せ物(クラウン)
被せ物は、歯の全体を覆うような形の人工の歯で、冠のように歯に被せることからクラウンとも呼ばれます。
むし歯が進行して歯の大部分を削る必要がある場合に行われる治療で、歯を削って土台を作り、そこに金属やハイブリッドセラミックなどの素材で作った人工の歯を被せて固定します。
なお、少し前までは人工の歯を安定させるために土台とする歯に穴をあけ、そこに差し込むような形をしていたことから、差し歯と呼ばれることもあります。
被せ物は作成するまでに数日から数週間かかることが多く、その間は仮歯と呼ばれるもので過ごすこともあります。
治療にかかる費用は数千円で、被せ物の素材や治療する歯の種類などによって異なります。
根管治療
根管とは歯の根っこ部分のことで、神経や血管が通っている部位です。根管治療は、根管にある神経などを取り除いたうえで清掃を行い、根管内部に広がったむし歯の感染を除去するための治療です。
根管治療は歯の神経にまで到達してしまったような、重度のむし歯の治療で行われます。
細い根管の内部に対して行う治療であるため、細菌の取り残しなどが生じやすく、歯科治療のなかでも難易度が高い治療とされています。
根管治療は保険治療のほか、より精度の高い治療を行うために自費診療で行われることもあります。保険治療の場合は、3割負担の方で数千円程度の費用で、治療を行う根管の数などによって加算が行われます。
抜歯
むし歯が深くまで進行し、歯を残しておく治療が行えない場合には抜歯が選択されることもあります。3割負担の方が保険治療で抜歯を受ける場合、前歯で500円ほど、奥歯で800円ほどの費用がかかります。
保険治療で扱える詰め物・被せ物の種類

詰め物や被せ物の治療は、人工の歯の種類によって費用や特徴が異なります。
保険治療で扱うことができる詰め物や被せ物の種類には下記のようなものがあります。
コンポジットレジン充填
コンポジットレジン充填は、特殊な光を照射すると固まる樹脂製の素材で、むし歯を削った箇所を補う治療法です。
歯を削ってからコンポジットレジンを充填し、光を当てて固めた後に削って形を整え、噛み合わせを補います。歯型を取るなどの必要がなく、すぐに治療を終えられる点がメリットですが、コンポジットレジンは強度が強いわけではないため、削る範囲が小さい初期のむし歯など限られた症例にしか適応がありません。
また、経年劣化しやすいため定期的に歯科医院を受診してメンテナンスを受ける必要がある点や、歯科医師が直接口腔内で噛み合わせを調整するため、歯科医師の技術力に左右されやすい点が特徴です。
銀歯
銀歯は銀色の金属製の素材で作った人工歯で、詰め物と被せ物のどちらでも利用されます。
銀歯といっても金属の銀そのものを歯にしているわけではなく、金銀パラジウム合金という金や銀、パラジウムといった複数の金属からなる合金を材料にしています。
金属製素材のため破損などのリスクが低い一方で、見た目が目立ちやすい点や金属アレルギーのリスクがある点がデメリットです。また、破損はしなくても経年による変形などがおこり、歯と銀歯の間に隙間ができることでそこからむし歯の原因菌が侵入してしまうというリスクもあります。
硬質レジン前装冠
硬質レジン前装冠は金属で作ったフレームの表面に、歯科用レジンを貼り付けた被せ物です。
表面が白いレジン部分になるため、銀歯よりも見た目が自然になりやすく、前歯の保険治療で用いられます。
内側が金属素材のため、金属アレルギーのリスクがある点や、前歯以外では利用できないなどのデメリットがあります。
硬質レジンジャケットクラウン
強度の高い歯科用レジンのみで作る白い被せ物が、硬質レジンジャケットクラウンです。銀歯より見た目が自然で、金属アレルギーの心配がない点がメリットの一方、強度が低いため、前歯や小臼歯の治療にのみ用いられます。
ハイブリッドセラミックを使用したCAD/CAM冠
ハイブリッドセラミックは歯科用レジンとセラミックをかけ合わせた素材です。歯科用レジンよりも強度が高く、白い自然な見た目の歯を作ることができます。
また、CAD/CAM冠はコンピューター上で設計し、専用の機械がコンピューターによる制御で削りだす人工の歯のことです。コンピューター制御のため素早い製作が可能で、治療期間の短縮が期待できます。
ハイブリッドセラミックを使用して作るCAD/CAM冠は以前は保険適用外でしたが、診療報酬の改定で現在はほぼすべての歯に保険治療で利用できるようになっています。
保険治療で行える検査の種類と条件

保険治療の範囲では、下記のような検査が行われます。
歯科医師による視診・触診
むし歯は口腔内の細菌が作り出す酸などによって歯が溶かされる病気で、多くの場合は歯の表面から症状が進行します。そのため、むし歯の検査はまず歯科医師による視診が行われ、鏡を使いながらすべての歯をチェックし、むし歯の有無を確認します。
また、むし歯になると歯が表面から酸によって溶かされてやわらかくなり、表面がざらついたり、凹みができたりします。歯科医院の検査では、探針(たんしん)細長い金属製の器具を使用して行う触診で、こうした初期のむし歯を発見します。
レントゲン
むし歯の多くは歯の表面や裏側ではなく、歯ブラシなどが届きにくい歯と歯の隙間に生じます。この場合は視診による確認ができないため、レントゲンによる撮影でむし歯の検査を実施します。
また、過去に治療を行った歯がある場合、歯の内部に細菌が入り込んで内側からむし歯が進行していることもあるため、レントゲンによる検査でこうしたむし歯を見つけます。
歯科用CT
歯科用CTは、複数方向からX線を照射して撮影したデータをコンピューターが処理して立体的な画像を作るもので、歯や顎骨の状態を通常のレントゲン撮影より精密に確認できる検査です。
難しい根管治療を行う場合など、通常のレントゲンでは対応が困難と歯科医師が判断した場合に保険治療で扱われます。
歯科用CTを保険治療で受ける場合、自己負担額は3割負担の方で3,500円ほどです。
ダイアグノデント
ダイアグノデントは、レーザー照射でむし歯の進行状態を確認するもので、主に経過観察でよい初期むし歯と、治療が必要なむし歯の判断を行う場合に保険治療で用いられます。
ダイアグノデントによる加算などは特にないため、検査によって費用が高くなるということはありません。
むし歯治療における根管治療について

むし歯が進行して根管にまで感染が拡大している場合、根管治療が行われます。根管治療は保険治療と自費治療の内容に差が生じやすいので、それぞれについて解説します。
保険治療が可能な範囲
根管治療で行われる、歯を削って神経を取り除き(抜髄)、根管内部を清掃した後で、根管内部を充填剤で埋めるという基本的な流れは、すべて保険治療で受けることができます。
また、根管治療にはマイクロスコープと呼ばれる視野を拡大して精密な治療を行うための診療機器が使用されることがありますが、根管の数が多く複雑になりやすい大臼歯の治療や、歯根の先端を切除して再感染を防ぐ歯根端切除術の場合は保険治療が可能です。
マイクロスコープを使用するような難しい治療の場合は歯科用CTによる検査も保険治療で利用可能です。
さらに2022年の診療報酬改定で、ニッケルチタンファイルという器具も一部症例で保険治療に利用ができるようになりました。この器具は根管内部の清掃を行うための器具で、柔軟性があり根管治療の質の向上が期待できる一方、使い捨てで器具の金額も高いため、これまでは自費診療でのみ扱われるケースが大半でした。診療報酬の改定で、3本以上根管がある歯の治療など、一部のケースで保険治療での利用が可能です。
保険治療で行えない内容
保険治療で行う根管治療は使用する道具や薬剤に制限があり、決められたもの以外はすべて自費診療です。
具体的には、上述したようなケース以外でマイクロスコープや歯科用CT、ニッケルチタンファイルを使用する場合は、保険適用とならず自費診療になります。
また、根管を清掃した後には歯の強度を高めて再感染を防ぐために内部の空洞を密封しますが、保険治療の場合はガッタパーチャと呼ばれるゴム状の材料とシーラーのみが利用可能です。より隙間なく密封することが可能なMTAセメントなどの素材は保険治療では利用できません。
なお、歯科医院によって保険治療で使用するかどうかがわかれやすいものの一つが、ラバーダムです。ラバーダムは治療中に唾液などが歯の内部に入り込んで感染につながるのを防ぐための器具で、根管治療の成功率を高めるために大きな役割を果たすものですが、現在のところ保険治療での加算が認められていないことなどから、使用するかどうかが歯科医院の判断によって異なります。
むし歯の保険治療におけるメリットとデメリット

保険治療でむし歯を治すことのメリットやデメリットは下記のとおりです。
保険治療でむし歯を治すメリット
保険治療での特に大きなメリットは、やはり費用負担を抑えられる点です。保険治療なら、むし歯がある程度進行してしまった場合でも、数千円から治療を受けることができます。
また、保険治療は全国どの歯科医院でも基本的に同じ内容の治療であるため、安定感のある治療を受けやすいという点もメリットといえます。
むし歯を保険治療で治すデメリット
保険治療には費用面などのメリットがありますが、一方で下記の点については、自費診療での治療と比べてデメリットと感じる可能性があります。
治療に時間や回数がかかる
保険治療は、一度に治療を行える範囲に制限があるため、複数の歯がむし歯になっている場合などで、治療完了までの時間や通院回数が多くなってしまう可能性があります。
自費診療なら複数の歯の治療を1日で行えるケースもあり、早く治療を終えたい方はそういった治療を受けることを検討してもよいかもしれません。
精密な検査が難しい可能性
歯科用CTやマイクロスコープといった精密な検査、治療のための機器は、一部の症例でしか保険治療で利用できません。精密な検査が治療の成功率や安全性を高めるケースもあり、保険治療でそうした検査を行えない点はデメリットといえるでしょう。
見た目の自然さ
保険治療では、天然の歯に近い白さや透明感を作ることができるセラミック素材の人工歯を作ることができません。最近になってハイブリッドセラミックのCAD/CAM冠のように自然に近い見た目の人工歯を保険治療で作れるようになりましたが、やはり自費診療で作るセラミックの歯と比べると、審美面では劣りやすいといえます。
耐久性が低い
保険治療で扱える人工歯の素材は、セラミックと比べて破損や経年劣化を起こしやすい素材です。耐久性が低いため、定期的に調整や再治療などが必要になる可能性があります。
神経の保存が難しい
重度に進行したむし歯でも、方法によっては神経を残して治療を行うことが可能で、神経を残すことで歯の健康状態をより長持ちさせられる可能性があります。歯の神経を残しておく歯髄保存療法は保険治療でも認められているのですが、加算可能な診療報酬が低く、MTAセメントなどの歯髄保存に有用な薬剤を利用すると患者さんではなく歯科医院側が費用を支払う必要が生じるような状況にあるため、現実として保険治療では神経を保存する治療が行われるケースはあまり存在しません。
神経の保存を希望する場合、自費診療での治療を選択することが一般的です。
まとめ

むし歯は保険治療で治すことができる病気で、数千円で治療を終えることができます。
ただし、治療の質を高めるための方法や素材の利用が保険治療では扱えないことも多く、より高品質の治療を求める場合は自費診療が推奨されます。
ダイアグノデントやラバーダムの使用など、同じ保険治療でも歯科医院によって使用する器具などに違いが生じることもあるので、保険治療でより質の高い診療を希望する方は、こうした取りくみを積極的に行っている歯科医院にかかるとよいかもしれません。
参考文献
